刷り込み練習                     トップページへ


 「一生懸命練習して、やっと出来るようになりました。さっそく、次のステップとして、より、高度な練習を開始したら、いつの間にか、出来るようになった事も出来なくなってしまった」、凡才にはよくある事です。

 特定の技術は、凡才を含め多くの選手が、一生懸命練習すれば、それなりに上手になるものですが、出来るようになっただけで満足して、早々にそのメニューを外してしまうと、凡才ほど持続が困難です。

 この原因は、脳にあります。一つの動作でも、沢山の筋肉が連動して動いていますので、その沢山の動き一つ一つに脳から指令信号が出されています。いわゆる、「考えながら動く」状態で、最初はだれでもそうです。しかし、同じ事を繰り返すと、脳内に規則性のある一連の信号を出す構造体が形成されます。つまり、一つの指令で規則性のある一連の信号を出す事になりますので、体を動かす為に考える事は極端に少なくてすむようになるのです。これが、いわゆる、「体で覚える」と言う状態です。この、体で覚えた状態までもっていくことを、「刷り込み」と言います。脳内構造体の形成期間(刷り込み)には個人差もありますし、本人の、楽しいとか嫌だとかの感情にも大きく左右される事が分かっています。

 一旦、「刷り込み」が出来てしまえば、量をこなす必要はありませんが、油断して、他の事ばかりやっていると、凡才ほど忘れてしまいます。プロの選手が、オフに家族旅行に出かける時でさえ、バットを持って行き、短時間であっても素振りを欠かしませんが、これは、忘れてしまう事が怖いからです。忘れてしまう事は、スランプに陥る事を意味します。凡才先生も、忘れてしまう事がとても怖かったので、忘れないための自主練習は欠かしませんでした。具体的には、新たな挑戦が半分で、残りの半分は忘れないためのものでした。

 一昔の練習方法は、刷り込みを行うために、圧倒的な練習量をこなしたものです。これは、疲労や苦痛との戦いであり、怪我や意欲の喪失と紙一重ですので、誰にでもクリア出来るものではありません。しかし、これをクリア出来た選手は、技術だけでなく、精神的にもかなり強くなりますので、悪い方法ではありませんが、凡才や初心者にはお勧め出来ません。

 ひたすらノックを続けるのは、一昔の代表的な練習方法ですね。ノックは、捕球から送球の一連の動作の練習です。もちろん、最終的には、この一連の動作が上手になるのが目的なのですが、脳内構造体は、捕球地点への移動、捕球姿勢の確保、捕球、送球姿勢の確保、送球といった具合に、ある程度分割された状態で形成されます。ノックだけで上達する選手は、やはり天才秀才ですが、こううまくいかないのが凡才です。それぞれの部分を丁寧に作り上げて(刷り込んで)から組み立てる方が、凡才にとって圧倒的に効率が良くなり、短期間でも、一定の成果を得る事ができます。こういった部分練習を計画的に行っているチームは、上位チームを苦しめたり、優勝してしまったりと、毎年のように注目を集めるものです。


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