現在、5台のバスが学内バスに使われています。それらの車両たちは、他ではなかなかお目にかかることのできない特徴的な仕様を持っており、興味を惹かれます。
三菱U-MP218P
土浦22さ・896 平成2年納入 ※形式名は推測です
学内バス唯一の大型車で、白いナンバーや前輪脇の「自家用」の表記からもわかるように大学が自前で所有する車両です。1台のみ在籍で、呉羽エアロスターKボディを架装し、長尺・3扉の外観が目を引きます。中扉には車いすリフトが装備されていますが、他の路線バスによく見られるようなステップ内収納型ではなく、使用しないときでも機器がそのまま車内に露出しているという形態です。注意深く見ると、中扉付近だけ外板・扉が下に伸びていることもわかります。中扉は車いす専用となっており、扉には「車椅子専用乗降口」というステッカーが貼られています。一般の乗客は後扉から乗車し、前扉から降車します。但し、運賃は無料のため運賃収受上の意味はなく、単に乗降の流れをスムーズにするためのものでしょう。乗車か降車のどちらかのみが非常に多い場合は、両方の扉を開けて対応する場合もあります。
ボディカラーはおそらく呉羽の観光車のメーカーサンプルカラーと思われます。これは、学内バス用以外に学外実習への輸送用として、大学が呉羽の観光車を所有している関係から、そのカラーがそのまま採用されてしまったものと推測されます。
方向幕は、前面のみ大型方向幕を装備し、側面は標準サイズ、後面は標準より横長のサイズです。学内バスでは唯一、なぜか手動方向幕となっており、車内にハンドルがあります。前面は「筑波大学外廻り」などと表示されますが、側面・後面は「外廻り」などという表示だけで、「筑波大学」の文字は抜けています。
また、路線に狭隘路があるわけではありませんが、バックアイカメラが装備されています。
車内は全て群青色のモケットの前向きシートを装備し、(進行方向に向かって)右側は2人がけ、左側は1人がけのシートが並びます。但し、中扉付近の右側は車いすスペースとなっており、車いす2台分のスペースだけ座席がありません。
床は木ですが、車いすスペースだけはゴム敷きになっています。
運転席後ろのHポールには大きく路線図が掲げられており、その上にはウインカーやブレーキランプに連動して点灯する「←左 急ブレーキにご注意 右→」という電光表示板が設置されています。「←左」「右→」はウインカーに連動して点滅し、「急ブレーキにご注意」はブレーキに連動して点灯しますが、ブレーキの方はたまにしか点灯しません。強いブレーキの時に限って点灯するというわけでもなく、不思議ではあります。この表示板も、学内バスではこの車両のみに設置されているものです。方向幕の裏蓋部にはアナログ時計が設置されています。
学内バスには路線上に多くの停留所がありますので、一般の路線バスと同じく降車ボタンが設置されています。設置箇所は窓柱と天井という、ごく一般的な配置ですが、その他に車いす専用のブザーが車いすスペースの窓下に設置されています。降車信号装置は、ブザーが「プー」と鳴ると同時にチャイムが「コーン」と弱く鳴る珍しいものです。ブザーの音色に関しては、都営バス(90〜98年式頃までの車両)などと同じ音色ですが、車いす用のボタンが押された場合は、別に設置されているチャイムが鳴動します。運転席の降車知らせ灯も一般用と車いす用の2つが設置されています。また、降車ボタンが押されていた場合に前扉が開くと、なぜか弱々しい音で「コーン」とチャイムが鳴動します。
なお、運賃が無料のため、運賃箱、運賃表、整理券発行機などのワンマン機器は設置されていません。また、学内バスではアナウンスを行いませんので、車内放送装置、車外スピーカーなども設置されていません。
足回りは一般的なリーフサスですが、機械式AT車となっている点が特徴です。但し、発進時にどうしても急発進気味になってしまい、シフトアップ時にはしばしばノッキングを起こすなど、乗り心地はお世辞にも良いとは言えません。
大都市のバス会社では廃車になっていてもおかしくない年式ですが、走行距離が少ないせいか老朽化はまったく感じさせず、車両の状態は非常に良好です。現在は、主に外廻りで運行されており、授業日ならほぼ毎日姿を見ることができます。但し、長期休業中は運行されません。
日産ディーゼルU-RM210GSN
土浦22さ・1032 土浦22さ・1033 平成3年納入
2台が在籍する中型車で、運用に入る機会も最も多く学内バスの主力的存在です。茨城では珍しい前後扉で、富士重工8Eボディを架装しています。こちらはリフトを装備しないツーステップ車です。
富士重工製のボディではありますが、カラーは呉羽のメーカーサンプルカラーと思われるものになっています。前輪脇には、「FHI 富士重工」のエンブレムが付いています。
方向幕は、前面はやや小型のもの、側面・後面は標準サイズのものが装備されており、電動式となっています。通常運用時は「筑波大学内廻り」「筑波大学外廻り」と表示していますが、その他に「回送」「筑波大学」という表示もあります。
また、私は確認していませんが「筑波大学本部」「筑波大学附属病院」といったコマもあるようです。但し、これらのコマは通常使われておらず、長期休業中の本部折返し便などでは「本部棟止/本部棟発」と印刷された紙をフロントガラス内に掲出して対応しています。
フロントガラス上部にはオレンジ色のマーカーランプを装備し、フォグランプはメーカー標準と異なりヘッドランプ下部に設置されています。リヤの補助ブレーキランプは設置されていません。
この車も、リヤにはバックアイカメラを持っており、車内にはメーターパネル左脇にモニターが設置されています。
車内は木床で、群青色のモケットの前向きシートが並びます。殆どの席は一人がけですが、後ろから2・3列目の右側だけ2人がけになっており、最後部の席は後扉を設置した関係でやや幅が狭く、4人がけになっています。運転席後ろのHポールは、路線図が掲げられている他は何もなくさっぱりしたものです。方向幕の裏蓋部にはアナログ時計が設置されています。
降車ボタンは側面窓柱の他、吊革の設置されている棒を天井から支えている柱にも設置されています。この車の降車信号装置はブザーでなくチャイムの設置となっています。
吊革は、一般的なものと違いベルトが2本あり、輪の左右2箇所をV字形に支える形になっています。北海道などでは時折見受けられる形態ですが、関東では非常に珍しいものでしょう。一方、天井に握り棒は設置されていません。
この車も、他の学内バスと同じくワンマン機器は設置されていませんが、車内放送装置、車外スピーカー、後扉脇のインターホンは設置されています。但し、テープや音声合成装置によるアナウンス設備は搭載されていませんので、次停留所のアナウンスはできませんし、運転手による肉声案内も行いません。インターホンは一応使用できるようですが、使用している機会は一度も見たことがありません。一方、運転席右側のダッシュボードにはなぜかAMラジオが設置されており、運転席脇のスピーカーで聞くことができるほか、車内のスピーカーで放送することもできます。車内放送装置は、今のところラジオを流すことが唯一の活用法となっています。
足回りは一般的なリーフサスですが、日産ディーゼルらしく横揺れが目立ちます。また、トルコンATが採用されており、走行音はかなり特異なものがあります。中型車のAT自体この時期のバスとしては珍しく、希少価値といえましょう。乗り心地はU-MP218Pの機械式ATよりは良いものの、それでも変速時のショックが多少気になります。
年式の割に車体の状態は良好で、学内バスの主力車としてほぼ毎日、一日中運行されています。
日産ディーゼルP-RM81G
土浦22さ・900 土浦22さ・901 平成2年納入 ※形式名は推測です
こちらも2台が在籍する中型車です。前後扉の富士重工6Eボディを架装し、仕様はU-RM210GSNと共通点が多くなっています。
塗装は他社と同じく呉羽のサンプルカラーで、前輪脇に富士重工のエンブレムがあります。方向幕は電動で、サイズ、コマ内容ともU-RM210GSNと同じものになっています。
屋根上にはオレンジ色のマーカーランプが突き出ており、夜間は目立つ存在です。後部にも赤色のマーカーランプが付いています。ヘッドライト・フォグランプ・ブレーキランプは標準的な仕様そのままで、後部の補助ブレーキランプはありません。なお、後部にはバックアイカメラが設置されています。
車内はU-RM210GSNと共通点が多く、座席配置など殆どの箇所が同一の仕様になっています。但し、降車ボタンが窓柱の他は天井に設置されている点、吊革がベルト2本のものでなく1本の一般的なものになっている点が異なります。
ワンマン機器を装備せず、放送関係の一部の機器が装備されている点も同じです。
足回りはリーフサスで、トルコンATを装備しています。この形式でのトルコンAT車はU-RM210GSNよりさらに少なく、大阪市交通局など限られた事業者で採用されている程度で、非常に珍しいものでしょう。
この車も、年式の割に良いコンディションを保っていますが、出番はやや少なく朝の運用が中心で、昼間はあまり見かけません。
筑波大学では上記のバスの他、学生が授業の実習などで学外へ出かけるためのバスを保有しています。日野RU、三菱MM(推定)2台、いすゞLRの4台で、車体塗装は全て上記の車両と同一です。いずれもトップドアの自家用仕様車で、リクライニングシート装備ですがシートピッチは狭く、いたって質素な仕様です。
なお、日野RUについては学内バスの予備車として使うことを意図したのか、車内に降車ボタンが設置されています。他の2台については乗車した経験がないため確認できていません。