ティーハウス 2007年3月16日 〜 2007年8月16日掲載分

 


絵門ゆう子さんに学ぶJDVDその2

前回このページで、絵門さんの「その手を胸に」という曲を機会があったらぜひ聴いてみてください、と書きましたが、実はちょっと無責任な発言でした。なぜなら、「その手を胸に」は今のところ、今回ご紹介するDVD「絵門ゆう子・講演と浪漫朗読コンサート」にしか収められていないからです。「その手を胸に」を聴くには、このDVDを入手するしかありません。

●絵門さんは癒しの人
私は最近、「絵門さんにかなり癒されている」ということに初めて気がつきました。考えてみるとこの癒しの効果というのは、私たちが気がつかなければいけない、絵門さんのもつ大事な一面なのかもしれません。つまり絵門さんのメッセージや活動する姿は、私たちを正しい方向に導くだけでなく、その苦難が多い“正しい道を歩く”という行いの中で、私たちが負った傷を癒してくれるという効果があったわけです。私たちを正しい方向に導いてくれるだけでもとてもありがたいことなのに、さらに心の傷を癒してくれるなんて、感謝の言葉も見つかりません。

絵門さんの癒しの効果を得るには、やはり絵門さんの動く姿を観ることに勝るものはありません。朗読コンサートの模様を収めたDVDが存在することは、私にとってはとてつもなく貴重でありがたいことです。 2006年2月に八千代で行なわれたコンサート。私は生で観ていませんから、「どうしても観たい! DVDにしてほしい!」と心の底から願っていたのですが、そういう気配や情報は一向にありませんでした。しかし、以前にも書いたように、今年4月に八千代で行なわれたイベントの会場で、突然そのDVDが発売されて、私はほとんど無意識にそれを買っていたというわけです。そのイベントで私は「絵門さんは天国から何かを伝えてくれるはず」と思って行ったのですが、まさかこんな素晴らしいプレゼントが用意されているとは夢にも思いませんでした。今回の「静かなひととき」は、そのDVD「絵門ゆう子・講演と浪漫朗読コンサート」を観ていきたいと思います。

●第1部・講演会「命は命がつなぐもの」
前半は絵門さんの講演。絵門さんの講演の模様を収めた貴重な映像です。「ふうちゃん」の物語を織り交ぜながら、「いのち」についてのお話。絵門さんの講演については、他のものと合わせて後日とり上げたいと思っていますので、詳しい内容についてはその時に。ただ、いつものように、にこやかにふかーい話をしています。

●「その手を胸に」
講演に続いて、ここで先ほども触れた「その手を胸に」という曲が演奏されます。この曲は絵門さんが作詞した曲で、作曲者の樹原涼子さんとデュエットで歌っています。Aメロからいきなり全力で歌い始めるところがとても絵門さんらしい。まさに絵門さんの魂から発せられる歌。この曲の詞は本当に最高に素晴らしい! 私個人的には形容のしようがないくらいに感動しています。今の世の中、「競争に勝つ」「幸せを勝ち取る」「勝ち組」といったようなことがもてはやされる中、私はこのサイトのコンセプトのページで「自分が勝ったときは他の誰かが負けているということに気づくのも大切です」と書きましたが、そういったことに気がついている人はまだまだ少ないのが現実です。しかし絵門さんはこの歌の中で、「君が勝てば誰かが負ける。誰かが悲しんで幸せになるの?」と歌っているのです。この歌は、競争や戦いのバカバカしさを歌った歌です。

この詞は絵門さんのサイトで紹介されていますが、トップページからリンクされているページに掲載されているものはだいぶ古いもののようで、その後にかなり修正されています。完成版の詞を見るには、「一周忌イベントを終えて」のページから「プログラム」のページに行き、プログラムの4枚目の画像をクリックします。

●第2部・浪漫朗読コンサート「うさぎのユック」
そしていよいよ浪漫朗読コンサート「うさぎのユック」が始まります。それまでの朗読コンサートとは違って、ユックたち5匹のうさぎのセリフは八千代市の子供たちが朗読。みんなそれぞれのキャラクターの特徴を見事に表現しています。音楽はアンサンブルアレーズのお二人に加えて、八千代市の方たちがフルートで参加。賑やかなステージになっています。

前半ではいつもの元気な様子で話をして歌っていた絵門さんでしたが、後半ではさすがに疲れが出てきたのか、息が苦しそうな様子が見受けられます。それもそのはずで、このころの「がんとゆっくり日記」(朝日新聞社)を読んでみると、肝臓は肝硬変になり、体の真ん中に大きな漬物石が入っているような感じ。貧血で、5段ごとにしゃがみこまなくては階段を上がれないというほど体調は悪くなっていました。特に驚くのは、このコンサートの前日は講演先の名古屋にいたそうで、全身の激しいかゆみのために、一睡もせずオリンピック観戦をしたと書かれています。そんな状態で東京へ戻り、翌日のこのコンサートであの笑顔… 超人としか言いようがありません。

この日の絵門さんにとっては「うさぎのユック」の絵本は重たそうで、終始ひざの上に置いたままでしたが、物語のラストで改めて気合を入れると、まるで無重力のようにふわぁ〜っと絵本が浮き上がるように見えます。

●「光る星があったから」
疲れも見え始めてきた絵門さんですが、しかしここからがすごい! ユックたちうさぎのセリフを朗読した5人の子供たちに加え、オーディションに参加したすべての子供たちがステージに上がって「光る星があったから」を合唱(曲名が「光る星があったなら」となっているのは間違い)。絵門さんは客席に降りて、みんなに指揮。でも明らかに、絵門さんが一番目立ってます! このときの絵門さんの優しい表情はまるで常人を超越した存在か、天使が舞い降りたかのようです。

●「やっぱり今がいちばんいい」
コンサートのラストはやはりエム ナマエさんの「やっぱり今がいちばんいい」。 コンサート終了後は舞台袖のソファに倒れこんだと言いますから、もう疲れがピークに達しているはずの絵門さんですが、むしろそれまで以上に心のこもった朗読。第一部からずーっと一緒に演奏してきたアレーズのお二人にもその様子が伝わってか、ますます気合の入った演奏です。

あれほど病状が悪化しているにもかかわらず、「やっぱり今がいちばんいい」とまるで天使のような素敵な表情で言えるなんて… やっぱり「常人を超越している」としか言いようがありません。最後はとても穏やかに「やっぱり今がいちばんいい」を読み終えた絵門さん。目を潤ませながら、客席に向かって手を振っているところでDVDは終了します。

●魂のステージ!
医学的に言えば「重体」と言ってもおかしくない状態だったと思います。あまり書きたくはありませんが、敢えてこのときの絵門さんの病状をざっと挙げてみると、乳がん、そのがんがほとんどの内臓と骨に転移、肝臓のがんから来る肝硬変と黄疸、全身のかゆみ、骨転移の影響による首の骨折、貧血…。それに加え、前日は一睡もしないまま名古屋から帰宅。この帰宅した日もあまり眠れなかったと思います。普通の人ならとても動けないような状況の中、絵門さんは天使のような素敵な表情で話し、歌い、朗読したのです。これを観て癒されないわけがありません! 私の個人的な悩みなんてどうでもいいという気持ちになります。この舞台がたとえ今生の別れとなっても!(がんとゆっくり日記) と決死の覚悟で臨んだこのコンサート。まさに“魂のステージ”です。

絵門さんは最高に美しい! ぜひ観てください!

2007年8月16日

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格差社会は、あと13年続く見込みです

1週間ほど前ニュースを見ていたら「敵対的買収に対するブルドックソースの防衛策が高裁によって認められた」と報じられていました。最近の敵対的買収に関する話題は、私のような経済に無関心な者にはまったく訳がわかりません。敵対的買収というのは、早い話“乗っ取り”なのでしょう。これが合法的に堂々と行なわれるというのは、その仕組みの根本に欠陥があるように思えてなりません。防衛策が認められたと言っても、ブルドックソースは無傷で済むわけではなく、スティールパートナーズに多額の金を支払うことによって赤字に陥るのだと言います。これでは経営陣のみならず、従業員や関連会社、株主にも相当な損害が出るわけで、こんなことが何の罪にも問われない、あるいは法律で禁止されていないというのは、理解に苦しみます。

●現在は資本主義最後の段階?
そもそも「株式」とは一体何なのでしょうか。ご存知のとおり、フジテレビやニッポン放送は相当な損害を出したと思いますし、TBSは現在ももめています。株式を公開することは、メリットよりもデメリットやリスクの方がはるかに高いのではないでしょうか。このままでは、「株式」というものが一部の資産家が全世界を支配するための仕組みとして利用されてしまいそうです。以前、このコーナーで歴史問題を取り上げたときにも書きましたが、「帝国主義」という単語を辞書で調べたとき、とても興味深いことが書いてありました。一つめの意味はいわゆる「軍事的に他国を征服して大国家をつくろうとする立場」ですが、二つめの意味として「経済上で、独占資本が幅を利かす、資本主義の最後の段階」とありました。 …いよいよ資本主義は、最後の段階を迎えているのでしょうか?

●金の亡者がのさばる社会…そのカラクリは…
それと同時に、最近相次いでいるのが、勝ち上がり組企業の不祥事です。ライブドア、NOVA、コムスン(グッドウィル)、ユニマット、ミートホープ… 不祥事というより、「正体を露呈した」という方が正確なのでしょう。いつだか「報道ステーション」の古舘さんが「派手な宣伝、ずさんな経営」と言っていたのは、まさに的確な表現だと思います。こうした企業の経営者たちも今まで一生懸命やってきたのかもしれませんが、ただ、何事も一生懸命やればいいってもんじゃない。豚肉と牛の血を混ぜて牛ひき肉に見せようと一生懸命がんばったって、悪いことは悪いことなのです。ところが現在は、道徳心なき経営者、つまり金の亡者がのさばってしまう社会になってしまいました。

なぜこんな社会になってしまったのでしょうか。そのカラクリを暴いてみましょう。現在は「格差社会」と言われています。格差社会や競争社会を肯定する人は、だいたい次のようなことを言います。「一生懸命努力した人が報われる社会なのだから、正しい社会なのだ」と。先日も、こんな様なことを言っていた人物がフランスの大統領になってしまいました。しかしここにカラクリがあります。だまされてはいけません。「一生懸命努力した人が報われる社会」という言い方には、ある言葉が省かれています。その言葉を省かずに正確に言うとこうなります。「一生懸命金儲けのために努力した人が報われる社会」。“金儲けのために”が省かれていたのです。

振り込め詐欺にしても電車内の痴漢にしても、おそらくやるときは一生懸命やっています。何事も一生懸命やればいいってものではありません。では、ここで問題です。金儲けを一生懸命やることは、良いことでしょうか?悪いことでしょうか? …「金持ちが神の国に入るのは、ラクダが針の穴を通るより難しい」 聖書の有名な言葉です。答えは皆さんの魂が知っているはずです。

金を儲けても、そのお金を福祉の団体に寄付するとか環境保護のために使うなど、社会のために役立てるならむしろ立派ですが、豪邸を建てたり自家用ジェット機を購入したり一回の食事に何十万もかけたりというのは、治療代が払えなくて病院に行けずに亡くなる人が現実に出てきている今、そういった人たちを見殺しにしているのも同然だと言わざるを得ないでしょう。

●狂信家とそれを崇める人々が時代を作る
本当に恐ろしいことだと思います。いつも時代を引っ張っているのは「狂信家」たちです。狂信家が現れること自体は、さほど恐ろしくもありません。本当に恐ろしいのは、狂信家を崇める人たちが大勢出てくることです。そして、世の中全体が狂信家の引っ張る方向へどっと動いていくことです。昨年、ライブドアに強制捜査が入るまで世の中が堀江氏をどんな目で見ていましたか? 思い出してください。昭和の前期には軍国主義が起こりました。結果、日本の各地で壊滅的なダメージを被りました。昭和の中期には若い世代を中心に社会主義革命運動が起こりました。しかし最終的には、仲間同士で殺し合いをするようになっていました。昭和の後期から平成の前期にかけてはバブル経済が起きました。しかしその名のとおり見事に弾けて、残ったのは多額の不良債権でした。そういった時代の流れの先頭に立ってきた人たちを思い浮かべてみてください。いつも狂信家たちが時代を作っています。

では、今現在はどういう時代でしょうか。何の問題もない、平和な時代になったのでしょうか。答えはノーです。現在はまさに「格差社会時代」です。格差社会… 考えてみれば、これは当然の結果です。なぜなら、企業は「できるだけ少ない人数で、できるだけ大きな利益を上げる」ことを目的としているからです。戦後だけ見てもすでに60年以上経っています。その間に企業は着々と合理化・機械化し、従業員数を減らしてきたはずです。失業者や非正規雇用が増えるのは当たり前です。金儲けに向かない人たち、金儲けが嫌いな人たち、つまり“まともな人たち”が、金の亡者とそれを崇める人たちの奴隷と化してしまっています。そのことにはっきりと気づいている人はまだ少ないですが、そのことに心のどこかでなんとなく気づいて、その状況を拒絶している人たちが、フリーターでありニートであり引きこもりの人たちなのです。格差社会というのは、正確に言うと「競争は国家繁栄の最大の源なり」という間違った考えに基づいた社会、「行き過ぎた競争社会」のことなのです。

狂信家たちによって引き起こされる大きな時代の流れは、実は25年周期で「始まり」⇒「崩壊」を繰り返しています。それで言うと、現在の格差社会=行き過ぎた競争社会は2020年ごろ崩壊するはずです。しかし、その後また別の狂信家たちが現れて、大きな悪い流れが引き起こされるでしょう。バカバカしいと思いませんか?

●この社会をどう生きるか
では、どうすればいいのでしょうか。社会のしくみを変えるとか、こういう職業に就くとかという対症療法的なことよりも、まずは自分の精神面を磨くこと、高めることが大事です。社会の大きな流れに惑わされなくするためです。というか、それしか解決法はないのです。そういう意味でもやはり、このページでずっと取り上げてきた絵門ゆう子さんのメッセージはとても有効です。特に「うさぎのユック」。まず、本来の自分を取り戻すことが大事です。そうすれば自ずと「一日一日がいのちの記念日」の意味がわかってくるはずです。そして、全体のことをゆっくりとよーく考えながら一つずつ決断して生きていくことです。

なぜ、絵門さんのメッセージがそれほど重要なのか? それは、絵門さんのメッセージには心の栄養素がバランスよく配合されているからです。昨今のスピリチュアルブームも結構ですが、栄養に少し偏りがあります。あまりスピリチュアルなことを重視し過ぎるのもよくありません。その点、絵門さんのメッセージにはスピリチュアルなことだけでなく、現実的、具体的なヒントがたくさん含まれています。絵門さんは格差社会が間違いであることをすでに見抜いていました。最後に私たちに遺していった歌「その手を胸に」を、機会があったらぜひ聴いてみてください。こんなに素晴らしい曲はありません。

私たちが今やるべきこと、それは社会の流れに惑わされず、本来の自分を取り戻した上で、自分の道を進むこと。そしてもう一つは、地球温暖化をストップさせることです。

2007年7月16日

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絵門ゆう子さんに学ぶIDVDその1

●スピリチュアル・アナウンサー
私たちには「なぜこの世に生まれ、なぜ生きていくのか?」という基本的な情報さえ与えられていません。この状態を「無明」(むみょう)と言いますが、しかし、そういう情報を絶対に得ることができない、というわけでもないと思います。私たちは誰でも、睡眠中には魂の世界と情報のやり取りをしていますし、瞑想とか座禅という方法もあります。ただ、たしかに、深い情報を明確に受け取るのはそう簡単なことではありません。その点、絵門さんの場合は私たちには真似できない、もっともっと直接的な方法で、魂の世界と情報のやり取りをしたのだと思います。特に2001年の暮れから2002年の初めにかけては“死の一歩手前”という状況、別の言い方をすれば「魂が元の世界に戻りかけた」という体験を通して、とてつもなく深い情報を明確に受け取ったのだと思います。絵門さんはその後、聖路加病院の適切な治療によって健康な人とそれほど変わらない状態にまで回復したので、結局、魂の世界で得た深い情報をこちらの世界にたくさん持ち帰ってきてくれた、という状況になったのです。だから、絵門さんのメッセージはとてつもなく貴重で、高い価値があるのです。

絵門さんの本当にすごい所は、その持ち帰ってきた貴重な情報を全国に向けてアナウンスしたということです。本当に偉大なアナウンサーです。死の一歩手前という状況を経験したからといって、誰でもそういう活動ができるわけではありません。魂の世界で得た深い情報を的確に分析して処理する能力、つまり精神性の高さが必要です。だから、絵門さんのメッセージは本当に貴重なのです。

●絵門さんのメッセージは言葉だけではない
「魂の世界で得られる深い情報」というのは、言葉だけとは限りません。情報というのは言葉だけではありません。言葉以外にもさまざまな種類の情報があります。絵門さんのメッセージに触れようとするとき、もちろん絵門さんの著書はとても貴重で大事なものですが、しかしそれだけでは「言葉」という種類の情報にしか触れられません。言葉以外の絵門さんのメッセージも大変重要です。例えば、朗読コンサートや歌や音楽、映像、おひるねうさぎ… 絵門さんの行動や生き方そのものも重要なメッセージと言えます。そして今、そういったものに触れることができるものとして、朗読コンサートの模様を収めたDVDがあります。

大変貴重なものです。言葉以外の要素にも、たくさんの重要なメッセージが詰まっているからです。いや、メッセージだけではありません。私たちが生きる上で、とても有益なエネルギーがたくさん詰まっています。理屈ではどうにも説明ができないので、できれば、とにかく、まず見ていただければと思います。

私が持っているのは、2005年 3月に四谷で行なわれた朗読コンサートの模様を収めた「絵門ゆう子浪漫朗読コンサート・うさぎのユック」と、2006年 2月に八千代で行なわれた講演と朗読コンサートの模様を収めた「絵門ゆう子・講演と浪漫朗読コンサート」の二つです。この二つのコンサートはどちらも「うさぎのユック」の朗読ですが、実際の内容としてはまったく異なる性質をもっていると言えます。

●DVD「絵門ゆう子浪漫朗読コンサート・うさぎのユック」
とにかく、まず、見ていただきたい! くどいようですが。絵門さんの全身からオーラというか、有益なエネルギーが大量に放出されているという感じです。そして、絵門さんの朗読は完全に完璧です。読み間違えたり噛んだりする所が一度もありません。感情がこもっているというより、魂がこもっています。コンサートが始まってから終了するまでの絵門さんの集中力は、本当に神がかりです。かといって、堅苦しい雰囲気ではありません。このときの絵門さんは48歳。がんが全身に転移していて、抗がん剤の治療中で髪の毛が抜けて、ウイッグをつけている… っていうようにはまったく見えません! 普通の人より何十倍も元気で、桐生ゆう子さんより若い!

ディスクやパッケージ自体はかなり手作り感がありますが、内容は撮影、録音ともにしっかりと作られています。余計なお世話ですが、だいぶお金がかかっているように見えます。なのにこのDVDを知っている人が少ないなんて、本当にもったいない! コンサートは第一部と第二部から成り、第一部ではユックの前半の朗読と演奏者の紹介、山中翔之郎さんとのトーク、樹原涼子さんによる「光る星があったから」ピアノ弾き語り。第二部は、ユック後半の朗読と エム ナマエさんの「やっぱり今がいちばんいい」の抜粋の朗読、児童たちの感想文の紹介。「アンサンブルアレーズ」の演奏による音楽はとても効果的で、コンサートをより感動的なものにしています。3人の優れた演奏家が淡々と演奏する姿は本当にかっこいい。アレーズの3人やゲストとのトークは、絵門さんの人柄に触れることができる貴重な映像です。

●偉大な作者が超一流の朗読家
そもそも「うさぎのユック」は以前にも書きましたように、世界のあらゆる文学の中で最も素晴らしいと言えるものです。その物語の作者が、なんと元NHKアナウンサーで、朗読の腕前も超一流(絵門さんが池田裕子時代に書いた本に、「味のある朗読のできるアナウンサーになりたい、そんな希望を抱えてNHKに入った」という記述がある)。物語の作者自身が超一流の技術で朗読するのですから、聴く側からすればこれほど恵まれた状況はありません。

このときの朗読コンサートの裏話も面白くて、例えば当日の準備開始から開場までの時間はたった30分しかなかった(山中翔之郎さんのメッセージ)ことや、ホールの利用予約を「誰に相談もせずに私が入れてしまったというのが全ての始まりです」絵門さんのメッセージ)、つまり本当にまったくの“絵門さん主催”であったことが明かされています。たしかに舞台上はとてもシンプルで、余計な装飾が一切ありませんが、しかしそれがかえっていい。中身がないのに派手な装飾や演出でごまかす手法が多い中、絵門さんは敢えてそういったものを捨てて、中身で勝負したのでしょう。事実、うさぎのユックの朗読を終えたときの、おそらく会場全体を包み込んでいた感動の渦と鳴り止まない拍手が、その絵門さんの手法が正しかったことを証明しています。

●DVDでも伝わる特別なエネルギー
本当はこの朗読コンサートを生で観ることができれば一番良かったのですが、しかし客席から観る場合はやはりどうしても出演者までの距離があって、その細かい表情まではなかなか確認することができません。その点では、細かい表情まではっきりと見ることができるDVDの方が良いかもしれません。この映像を観ていると元気と幸せをもらえるため、私はもう数え切れないくらい観ています。このディスクにキズがついたり破損したら一大事なので、別のDVD−Rにコピーして観ています(違法コピーではない)。

このDVD、つまり朗読コンサートの最大の見所は、“絵門さん”でしょう。うさぎのユックの最後の文、ユックの最後のセリフを読むときの絵門さんは、全身全霊を込めているという感じです。それに続いてすぐにバッハの「主よ人の望みの喜びよ」(実質のうさぎのユックテーマ曲)が奏でられます。その時の絵門さんの充実感に満たされたような、しかしコンサートが終わりに近づいて少し寂しそうな表情。この場面は何度見ても感動します。このときの絵門さんからは、観ている私たちに特別な良い影響を与える強いエネルギーが発せられているのが、DVDというメディアを通してもはっきりと伝わってきます。

●どうでもいい、「業界」
ぜひ多くの人に観ていただきたいDVDです。ただ、一般の店では売られておらず、基本的には絵門さんの事務所から直接購入することになります。VHSもあるかもしれません(私は絵門さんの関係者ではありません。念のため)。世の中には数え切れないほどのくだらない(と言っては失礼か)DVDが出回っているのに、こんなに素晴らしいDVDが通常のルートで出回っていないなんて… 結局音楽とか映像の「業界」っていうのは、金儲けが目的だから関係ないか…。そんな所にはお構いなく、独自のやり方で制作・販売した絵門さんは本当にすごい!

コンサートの全編を通して、絵門さんから発せられる有益なエネルギー。これこそが絵門さんがよく講演などで話していた「生きるエネルギー」(=いのち)なのではないかと思います。

2007年6月16日

●追 記
現在、この DVDは入手困難になっているようです。また、この映像がネット上で公開されているといったこともないようです。これはとても残念なことですので、私の方で、朗読部分を中心に抜き出し、動画ファイルに変換して、YouTubeで公開いたしました。もちろん、この DVDの権利所有者や出演者から、動画の削除要請などがあった場合には、適切に対応いたします。

うさぎのユック(1)  うさぎのユック(2)  うさぎのユック(3)  うさぎのユック(4)
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2020年3月22日

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気軽にできるエコライフ(1)

ここ数年の天気予報を見ていると、一年を通して「観測史上最も暖かい日でした」「最も暑い日でした」という言葉をやたらと耳にするようになった気がします。逆に、「観測史上最も涼しい日でした」「最も寒い日でした」という言葉は、ほとんど聞いた覚えがありません。

「温暖化対策って言ったって、個人のレベルではどうしようもないだろう」と思っている人が意外と多いのかもしれません。実は私もそう思っていました。しかし、電気やガスを節約したり、車で移動するところを自転車や電車に変えるだけでもかなりの効果があるということが、「不都合な真実」に描かれています。私たちがほんの少し努力するだけで、地球環境が劇的に改善する可能性が大いにあるのです。

そこで、私が現在実践している簡単なエコをこのページで紹介していきたいと思っています。と言っても、何かすごいアイデアを紹介するというわけではなく、誰でも知っているようなものばかりですが、「具体的で詳しいやり方がわからないと、実行する気になれない」という人も多いと思いますので、敢えてそういったものも紹介していきたいと思います。

●「紙」についてのエコライフ
今回は「紙」について考えてみたいと思います。紙のムダ使いは二酸化炭素を増やすだけでなく、森林の余計な伐採を招いて、二酸化炭素を酸素に変えるという重要な機能を低下させるので、なんとしても抑えなければなりません。しかし現実には、特に職場においては、紙のムダ使いはまだまだひどい状態なのではないでしょうか。IT関連の職場では、FAXや印刷物などを送ったりしていると、「まだ紙なんかでやり取りしてんの!?」と言われてしまうくらい、だいぶペーパレス化が進んできていますが、それでも、何でもかんでもプリントアウトしないと気がすまないという人もまだまだいるようです。ましてや、他の職場となれば… お役所というところはなぜあんなにFAXというものが好きなのでしょうか? FAXは二重に紙をムダにします。プラス、税金もムダにします。お役所とやり取りしていると「ご自宅にFAXありますか?」などと時々訊かれますが、「そんなもんメールで送ればいいのに」と言いたくなります。私が現在バイトで通っている職場もそうですが、充分な台数のパソコンを導入しているのに、プリンターとコピー機とシュレッダーが大活躍しているというのは、なんともおかしな話です。

●「紙の書類」から「デジタルの書類」へ
では、具体的にはどのようにペーパレス化していけば良いのでしょうか? それにはまず、電子メールを活用することがとても大事だと思います。メールを「補助的な連絡手段」と考えるのではなく、「メインの連絡手段」と捉えることが大事だと思います。できる限り、メールで連絡する。例えば、業務のスケジュールを関係者に伝えるという場合、いちいち印刷して郵送したりFAXで送ったり、あるいは「打ち合わせ」と称して関係者を呼びつけて手で渡すのではなく、スケジュールが書き込まれた文書ファイルをそのままメールに添付します。こういったことを足がかりにして、さまざまな文書を“パソコンで見る”ことに慣れていくと良いと思います。

その場合、どのソフトで文書を作成・閲覧するかということも大事になってきます。現在はワープロソフトや表計算ソフトを使う人が多いようですが、ペーパレス化ということを考えた場合、これらのソフトはあまり向いているとは言えません。パソコンの画面で閲覧することを考えた場合は、PDFやHTMLの方が向いていると言えます。特にHTMLは、ほとんどのパソコンで特にソフトを購入したりインストールしなくても見ることができるうえ、その仕様は特定の企業が作っているわけではなく、W3Cという非営利団体が作っているため、企業の都合で仕様が変えられてしまったり、ソフトのバージョンが違うと閲覧できないといった問題がほとんど発生しません。しかも、HTMLは通常のテキストデータとしても扱えるので、作成や編集も容易で、将来的に使えなくなってしまうという心配もほとんどありません。もともとHTMLは「文書を構造的に記述する」ための規格であるので、文書を作成・閲覧・保存するための規格として、とても優れたものと言えます。

「HTMLで文書を作成するって言ったって、一体どうやってやるの?」という方は、「ホームページ作成入門」といったような本で学習すると良いかもしれません。私のお薦めは、テキストエディタ(私は「秀丸」というものを使っている)でHTMLを直接入力していく方法です。その場合は「HTMLタグ辞典」を購入すると良いでしょう。

●紙のリサイクル
かといって、あまりペーパレスにこだわりすぎると、ちょっとしたメモを見るにもいちいちパソコンを起動しなければならなくなって「紙は節約したけど、消費電力は増えた」となっては本末転倒です。私たちの生活の中で、紙はなくてはならない存在です。であれば、リサイクルを考えましょう。新聞紙や雑誌を資源ゴミとして出したり、廃品回収に出している人は多いと思います。では、牛乳パックはどうでしょうか。自治体できちんと回収している地域では、皆さんちゃんと分別していると思いますが、そうでない地域ではなかなか実行しないのではないかと思います。私の住んでいる地域も自治体は回収していませんが、ほとんどのスーパーで回収しているので、私はスーパーまで持って行っています。

Before⇒⇒⇒After

牛乳パックの出し方はご存知の方も多いと思いますが、全部飲み終わったら水で軽くすすぎ、2〜3時間逆さに置いておき、乾いたらハサミなどで切って開きます(これは私のやり方です)。あとはスーパーに持って行くだけですが、飲み終わるたびにこの作業をするのは結構面倒くさい気もします。しかし上の写真のように、牛乳パックを再生して作った製品を購入することによって、リサイクルを実感として感じられると、面倒くささも感じなくなります。よく「お金がもらえるんだったら持って行ってもいいけどねぇ」などと言う人がいますが、こういう考え方は結局自分自身を精神的に低い方へと追いやることになります。エコライフを実践するには「見返りを求めない」ということがとても重要なポイントになりますが、見返りを求めずに実行する人は、単に地球環境の改善に貢献するだけでなく、自分自身の精神的な成長にも想像以上の良い影響を得ることができます。ぜひ実行してみてください。

●料金明細をインターネットで
紙を節約する方法としてもう一つ、さまざまな料金明細書をインターネットで確認するという方法があります。例えば、電話料金やクレジットカードの利用明細。毎月郵送されてくる、という方が多いのではないでしょうか? 会社にもよると思いますが、明細を郵送するのをやめてネット上で確認できるようにしている会社が増えてきています。私の使っている携帯電話の会社では、料金明細をネットで確認するようにすると、毎月100円割引となり、とてもお得です。毎月送られてくる各種の料金明細は、結構すぐにたまってしまうもので、たまに引き出しの中を整理するとものすごく古い明細書が出てきたりします。しかし個人情報が書かれているために一度に大量に捨てるのは心配で、意外と処分に困るものではないでしょうか? そういった意味では、明細をネットで確認することによって、一石三鳥にもなるのです。

最近は「FSCマーク」というものがついた紙製品が徐々に増えてきています。これについては「気軽にできるエコライフ(2)」でご紹介したいと思っています。できる限り印刷しない「ペーパレス化」、古新聞や牛乳パックの「リサイクル」、そして明細書の郵送をやめてネット上で確認する「電子明細書」… ぜひ皆さんも実践してみてください。

2007年5月16日

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絵門ゆう子さんに学ぶHイベント「天国からのメッセージ」

●「いのちといのちをつなぐ朗読と座談会」
4月8日に千葉県の八千代市市民会館で「絵門ゆう子・天国からのメッセージ〜いのちといのちをつなぐ朗読と座談会」が行なわれました。私ももちろん観に行きました。当日は天気も良く、桜の花が舞い散る穏やかな日になりました。私は、青木裕子アナウンサーの朗読やアンサンブル・アレーズの演奏が生で観られる、そして絵門さんと親交の深かった人たちの話が聞けるということで、それを楽しみに観に行ったわけですが、実際にはこの日もやはり、絵門さんに「これでもか!」というくらいに圧倒される結果となったのでした。

この日、私にとって最もインパクトが大きかったのが、昨年の八千代での朗読コンサートの模様を収めた DVDが発売されたことでした。私は以前から「絶対に観たい! DVDにしてほしい!」と心の底から願っていた上に、この DVDを制作しているとか発売されるという予告がまったくなかったので、会場で目にしたときは本当に驚いて、ほとんど無意識に「これください」と言っていました。この日に発売されたそうで、「もしかして僕がこの DVDを買った人第一号!?」などと勝手に喜んでいます(多分違いますが…)。この DVDについては、また後日触れたいと思っています。

●第一部「絵門ゆう子に学ぶ患者・家族・医師」
イベントの第一部は医療に関する座談会。絵門さんのご主人も交えて、とてもいいお話が聞けました。特に印象に残っているのが、ご主人が明かされた、いろいろな人から送られてくるメールに対して、絵門さんが相当な時間を割いて返事を書いていたというお話。その中の一つ、がんを抱える人に対する返事のメールを紹介してくれました。正確に細かいところまで覚えていませんが、「この世で最も愛すべきもの、最も慈しむべきもの、最も尊敬すべきもの、それは“自分”なのです」という内容だったと思います。「最も愛すべきもの」とはよく聞くような気がしますが、「最も尊敬すべきもの」という言葉を聞いて、ハッとさせられました。

座談会の最後に「絵門さんについて一番印象に残っている言葉は?」と訊かれて、絵門さんの主治医であった中村先生が「僕は、言葉よりもあの笑顔が印象に残ってます」と答えていらっしゃいました。特に印象に残っているのが、ファウルボールが頭に当たったときのこと(2004年8月5日の「がんとゆっくり日記」に詳しく書かれている)だそうで、私も思わず笑ってしまいました。絵門さんの笑顔には人を幸せにする不思議な力があることは、誰もが認める共通した認識です。

●第二部「うさぎのユック・浪漫朗読コンサート」
そして第二部は、一年ぶりに復活する「浪漫朗読コンサート」。進行とメインの朗読は NHKの青木裕子アナウンサー。ユックたち5匹のうさぎのセリフは、昨年の朗読コンサートのときにオーディションで選ばれた子供たちが今年も集まってくれました。音楽はもちろんアレーズのお三方で、それはもう夢のような時間を過ごさせていただきました。そして、物語の最初と最後には昨年の絵門さんの映像が流れて、会場全体が深い感動に…。

樹原涼子さん、山中翔之郎さん、エム ナマエさんといった、絵門さんのファンにとっては豪華な顔ぶれの人たちも、それぞれ短いエピソードを聞かせてくださいました。皆さんまだまだ話し足りないといった感じで、もうちょっと時間があるとよかったのですが…。昨年のオーディションで選ばれた5人の子供を発表するとき、絵門さんから「では、山中さんお願いします」と突然言われてびっくりしたという山中さんの話が面白かったです。それから、アレーズの石橋さんが「いのちの記念日」という曲に関して、「フルートのレッスン始めたの」に続いて「ピアノ始めたの」「曲作ったんだけど、これ使えるかしら」と絵門さんには何度もびっくりさせられたと言っていたのも印象的です。

この日は聞き役に徹していた青木アナウンサーですが、青木アナウンサーは絵門さんがまだ学生だった頃から仕事に関するアドバイスをしていたそうで、実は一番お付き合いが長いんですね。絵門さんを朗読の活動に導いたのも青木アナウンサー。いつも絵門さんを良い方向に導いていたのは青木アナウンサーだった、という気がします。青木アナウンサーのお話も聞いてみたかったですね。

「うさぎのユック」に続いて、事前の予定には書かれていなかった「ありがとう」の朗読。私は、この「ありがとう」というエッセイ集がとても好きなので、うれしく聞かせていただきました。そして、締めくくりはやはりエム ナマエさんの詩集「やっぱり今がいちばんいい」の朗読。昨年の絵門さんの映像。最後に「その手を胸に」を絵門さんと樹原涼子さんで歌う昨年の映像。これはものすごい感動的。絵門さんの普段の姿を写したスナップも映し出され、多くの人が涙を流していました。

●2007年4月8日「絵門さん復活の日」
絵門さんが天国に旅立ってからちょうど一年の最初の日曜日ということで、4月8日が選ばれたのだと思いますが、奇しくもこの日は、キリストの復活を祝う復活祭、釈迦の誕生を祝う花まつり(潅仏会)の日でもありました。私は、絵門さんが遺したメッセージやたくさんの人たちに与えた生きるエネルギー(いのち)が、この日を境に形を変えてこれから動き始める「絵門さん復活の日」であったような気がしてなりません。

2007年4月16日

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絵門ゆう子さんに学ぶG「うさぎのユック」

●「うさぎのユック」(金の星社)
この絵本を読めば読むほど、その素晴らしさと、とてつもない深さに圧倒されます。大げさだと思われるかもしれませんが、この「うさぎのユック」は、間違いなく世界最高峰の文学です。この本は少し特殊です。私たちは絵本と言えばすぐに“子供向け”だと思ってしまいますが、この「うさぎのユック」は文章が比較的多く、難しい漢字もたくさん使われています。絵門さんは敢えてそうしたのです。この絵本はすべての年齢層の人たちに向けられて創られているのです。5匹のうさぎたちの誕生に始まり、さまざまな出来事を経験して生きてゆく姿を描いた物語の随所に、絵門さんの哲学が散りばめられています。第5刷以降の帯にはこんな一文があります。「いのち」を見つめ続けた絵門さんだからこそ書けた魂の絵本! …まったくその通りだと思います。絵門さんが「いのち」というテーマと向き合うようになったのは、ご自身ががんになってからだけではありません。愛するお母さんのがんに始まり、ご自身の流産という経験も含めて、約20年にもわたって「いのち」というテーマと向き合ったのです。

ユックについて一つだけ残念な点を挙げるとすれば、それは続編を見られなかったということです。ユックのテーマ曲として作られた「光る星があったから」(絵門さん作詞)を作曲された樹原涼子さんのコメント(「樹原涼子ようこそピアノランドへ!」)によると、絵門さんはユックの続きの話を考えていたようで… ユックたちの成長した姿を見たかったですね。

●カットされそうだった誕生シーン
この物語では、5匹のうさぎの誕生シーンが全体のちょうど3分の1を占めています。誕生シーンだけで3分の1を費やしているのは、ちょっと異例だという気がしないでもありません。「うさぎのユック」が絵本になるとき(最初は朗読用の手作りの本だった)、全体が長過ぎるので、誕生シーンを全部カットしようという話になったそうです。しかし、絵門さんの強い希望により、カットされずに絵本に収められることになりました。なぜそれほど誕生シーンにこだわったのか、絵門さんの言葉を読んでみましょう。誕生のシーンと、ライオンを目の前にして命の危機に瀕し、100に一つの可能性に向かうユックたちのシーンは重なるのです。誕生という奇跡を経験していたから、危機脱却という奇跡を起こせたのです。それは生きるための治療に向かっている少女と私にとっても絶対に必要なシーンでした。結局、絵本は、おなかの中の話から始まる、前例があまりない厚手のものとなることに決まりました。(「ありがとう」PHP研究所) 「誕生するということは、奇跡的な出来事なのだ」という絵門さんのメッセージが込められているようです。

●ある少女との出会いがユックを生んだ
「うさぎのユック」の物語が誕生したのは、絵門さんとある少女との出会いがきっかけです。静岡県のある病院で絵門さんが朗読をしたとき、その話を熱心に聴いていた少女。「うさぎの絵を描くのが好き」と言ったその少女との約束で、「うさぎのユック」は誕生しました。しかし、最初の構想では、主人公のユックが犠牲になって死んでしまう悲しいストーリーであったようです。そこには当時、死を受け入れようとしていた絵門さんの気持ちが投影されていました。しかし、少女の“無言の抵抗”に遭い、その後、困難を乗り越えて奇跡的に助かる、という話に修正されたのです。ストーリーが修正されただけでなく、絵門さん自身これをきっかけに、死を受け入れる方向ではなく、とことん生に向かうという方に方向転換しました。少女は、ユック誕生のきっかけを与えただけでなく、ストーリーを修正し、絵門さんの生き方まで変えたのでした。

また、「パステル画」というとても繊細で優しい独特の絵が、この絵本をいっそう素晴らしいものにしているのは言うまでもありません。この絵を描いた山中翔之郎さん(40枚近い絵を、なんと一ヶ月で描き上げた!)と絵門さんは、聖路加国際病院で知り合ったのでした。病院で出会った三人が創り上げたこの「うさぎのユック」。三人とも三月生まれ。ユックたち5匹の兄妹も三月生まれ。絵門さんが私には天使だったと思えてならない。(「がんでも私は不思議に元気」新潮社)と言うその少女。「うさぎのユック」は天使のメッセージだと言ってもよいのでしょう。

●幸せと平和の親善大使
絵本を読んだだけではなかなかわからないと思うのですが(というのも、絵本のどこにも書いてない)、ユックたち5匹のうさぎには、「幸せと平和の親善大使として活躍してほしい」という絵門さんの強い願いが込められています。この「幸せと平和の親善大使」とは、一体どういうことなのでしょうか。ちょっと探ってみましょう。

絵本のあとがきにこんな一文があります。いのち…生きることをみつめた一つのものがたりが、年齢も性別も問わず会話の輪を広げていくきっかけになればどんなに幸せか知れません。 また、絵門さんのサイトのメッセージにはこうあります。絵本『うさぎのユック』を通じて、命の大切さ、可能性を信じる強さ、助け合う優しさ…そういう人が生きていく上で心の奥の基本にしていかなくてはならないことが楽しく深く伝わっていって、幸せと平和の親善大使としてユックたちが活躍してくれることが、物語を創った私の願いであり… つまり、私はこう思います。人間は、命の大切さや本当の幸せとは何か、に気づくことはなかなか難しい。そういった人たちが「うさぎのユック」を読むことによって、次々と「命の大切さ」「ほんとうの幸せ」に気づいてゆき、やがて全体が平和になっていく。つまり、ユックたちがそういった大切なメッセージを運んでいく、それが「幸せと平和の親善大使」なのだと思います。

しかし、さらに、つい最近公開された山中翔之郎さんのメッセージ(絵門さんのサイト「ゆっくり生きよう」より)では、2004年12月に行なわれた朗読コンサート終了後に絵門さんがこんなことを言っていた話しが明かされています。「ユックは平和の親善大使! 日本発のユックたちが世界中に広まって、地球を真の平和の星にするの!」 絵門さんはもっと大きなことを考えていたようです。山中さんも書かれているように、私もこれが大げさだとは思いません。「うさぎのユック」には、それを実現するだけの価値が充分あると思います。

●わからないことはわからないままでいい
先ほども書いたように、この物語には絵門さんの哲学が随所に散りばめられています。それが、この絵本をとてつもなく深いものにしています。物語の後半。もともと心臓の弱かったユックがライオンに立ち向かうとき、誰もが「そんな激しい運動をしたらユックは死んでしまう」と思いました。しかし、兄妹のうちのノンコだけが「やってみたことないんだからさあ、わかんないと思うのよね」と言います。それを聞いたユックは「そうか、ノンコの言う通りかもしれない。わからないことはわからないままでいい、やってみる前に何も決める必要はないんだ。決めてかかってはいけないんだ」と言います。この考え方は、「がんでも私は不思議に元気」の第三章などにも見られるもので、先入観や既成概念、さらには科学的データなどで物事を決めつけるな、ということを表しています。

●一日一日が「いのちの記念日」
さらに、物語のラストでは、絵門さんの哲学の真髄とも言える言葉が現れます。それが、一日一日が「いのちの記念日」 です。これは、頭で考えただけでは理解できないと思います。聖路加病院に入院したとき、死の一歩手前まで行った、という経験をしたからこその境地だと思います。2005年12月22日の「がんとゆっくり日記」(朝日新聞社)を読むと、「いのちの記念日」とはどういうことか、もっとはっきりとわかります。自宅近くのスーパーを、普段着で、なんのあてもなく歩く。退院して生かされて以降、私にはそんな時間が至福の時になった。目をつぶる。子どもたちの声、アナウンス… 店内の平和な音の波。目を開ける。いつもの売り場の風景。そこに自分がいること、そういう日が続くことが当たり前でないと感じる。 絵門さんの魂から出る言葉。魂にとっては、「生きている」という状態は当たり前ではない。だから、生きている間はずっと毎日が特別な日なのです。毎日が「いのちの記念日」なのです。

これは、絵門さんのメッセージの中で最も重要であると同時に、世の中のあらゆるメッセージの中で最も重要なものではないでしょうか。私たちがいつも心をきれいにして、魂の声を聞きとれるようにしておけば、“毎日がいのちの記念日”という気持ちで過ごせるんだということを教えてくれています。

●「うさぎのユック」を朗読コンサートで
前回も書きましたように、来たる4月8日、千葉県八千代市で「絵門ゆう子天国からのメッセージ〜いのちといのちをつなぐ朗読と座談会」(主催:絵門ゆう子イベント実行委員会、後援:八千代市文化スポーツ振興財団)というイベントが開催されます。昨年の映像を交えながらの「浪漫朗読コンサート」も行われるということです。本当は今回「浪漫朗読コンサート」についても触れる予定でしたが、長くなってしまったので次回ということで… その素晴らしさが伝えられないのが残念ですが、とにかく活字では伝わらない、また別の次元の視覚的、聴覚的な素晴らしいメッセージが伝わってきて、心がさらにきれいになるのは間違いありません。行ける方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか(ちなみに私は絵門さんの関係者ではありません。念のため…)。きっと本当に、絵門さんは天国からメッセージを贈ってくれることと思います。

2007年3月16日

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