建物名称 横浜港シンボルタワー
所在地 神奈川県横浜市中区
高さ アンテナ高58.5m 建物本体高48.19m 展望室床面高36.5m
竣工 1986(昭和61)年
概要 横浜港シンボルタワーは横浜市港湾局によって本牧ふ頭D突堤の北東端に建てられた。市民に一般開放されている展望塔であると同時に、海上保安庁本牧船舶通航信号所としての機能を兼ね備える。
横浜港の本牧ふ頭と大黒ふ頭の間には長さ約4500m、幅約650mにわたって横浜航路と称する法定航路が設定されており、1日平均1000隻以上の船舶がこの狭隘な航路を通過して各埠頭に入港している。同航路の航行管制は本牧、大黒、内港の3ヶ所の信号所によって行われ、このうち本牧船舶通航信号所では横浜ベイブリッジの外洋側にあたる東水路を航行する船舶に対して信号や情報を送るとともに、3信号所を集中管理する管制室が設置されている。
展望台部分は常駐係員のいない無人施設であり、入場は無料である。2006(平成18)年に指定管理者制度が導入され、タワー周囲の緑地を含め商船三井興産が運営・管理を行っている。
TF式分類 第1種 I類
登頂日 2013年9月7日
 2013年9月7日の登頂記録

横浜港シンボルタワーへは横浜駅・桜木町駅からズバリ「横浜港シンボルタワー行き」の市営バスでアクセスします。ところが初めて利用する横浜駅東口バスターミナルで乗り場がよくわからずうろうろしているうちに、1時間に1本しかないバスに乗り遅れてしまいました。でも大丈夫。シンボルタワーのひとつ手前の停留所「海づり桟橋行き」なら15分おきに走っているので、それに乗って終点まで行けばタワーまでは約1km、歩いて10分ほどの道のりです。

タワーの南側は古墳のように土を盛った「芝生マウンド」と称する緑地になっています。この春には斜面を覆うようにシバザクラが植えられ、開花シーズンには一面がピンク色に染まります。

建物3階に位置する展望室入口を目指して長〜い階段を登り詰めた先に鎮座するのは、『遙かなるもの・横浜「貝」』と題された高さ6m・重さ15tという巨大なステンレス製の鋳造彫刻。田辺光彰氏による作品で、海づり桟橋から歩いてくる途中にある『遙かなるもの・横浜「花壇」』と対をなしています。同じ横浜市内にある日吉の森庭園美術館のWEBサイトに掲載されている田辺氏の年譜によると「遙かなるもの・横浜」は三部作となる構想だったそうですが、3作目は実現しませんでした。
彫刻の右脇を抜けると、展望室への入口がひっそりと扉を開けています。
入ってすぐのところにはカウンターテーブルがあり、タワーの概要や信号所の役割を解説したB4サイズ・両面1色刷りのリーフレットが常備されて自由に持ち帰れるようになっています。入場無料かつ無人のタワーにパンフレットの類が用意されているのは非常に珍しいケースです。
1階から3階まではエレベーターが設置されているのに、より需要が高いはずの3階から上へは通じておらず、空調もなく風も通らない階段を汗をかきかき登るしかありません。途中何ヶ所かに断面図が掲出されて現在位置を示しているのはせめてもの気休め?
断面図に描かれた階段が4色に色分けされているとおり、床面は下から青→緑→黄→赤の順にペイントされています。塔内はまるで殺風景なので、少しでも彩りを添えるとともに単調さを緩和しようということなのでしょう。

展望室は直径10m程度の狭い空間なのに、四方に骨組の鉄柱を貫通させた構造なので余計に狭さを感じます。窓に沿って数脚の椅子が並べられ、有料の望遠鏡も設備されていますが、階段同様空調がないのでかなり暑く、夏季の登頂はあまりおすすめできません。

階段は展望室よりさらに上へ通じていますが、この先は立入禁止。信号板やアンテナ類の保守点検用と思われます。
真北に見えるのは大黒ふ頭。その向こうに架かる鶴見つばさ橋は主塔だけが遠望できます。
そこから視点を少し西へ移すと、左手には本牧ふ頭A突堤から大黒ふ頭へと渡る横浜ベイブリッジが見えます。右奥に聳える白い建物は横浜火力発電所の煙突です。
南側に本牧ふ頭D突堤の全景を望みます。左奥の海面上にL字型に突き出しているのは市営本牧海づり施設。
正面の銀色に光るドーム屋根は無料の休憩所です。迂闊なことにタワーの付帯施設だとは思わなかったので入館しなかったのですが、実はここで記念バッジ、ハンカチ、ネクタイピンといったタワーグッズが販売されていることを後で知りました。しかし聞くところによると係員は必ずしも常駐していないらしく、買いたくても買えないケースがままある様子。
地上高12.5mの3階でタワーの海側を半周しているのは展望ラウンジと称するオープンデッキ。階段と展望室で汗だくになった直後だけに、吹き抜ける風の心地よいこと!

バス停や駐車場からタワーへアプローチすると、本牧船舶通航信号所が入居する1・2階部分は動線より下に位置するため視界に入りにくく、私のように建物そのものに関心のある来場者でなければほとんど存在が意識されないように思います。

ところで、タワーの海側に下りてこの写真を撮影していると「まもなくクルーズ船が通過します」という主旨のアナウンスが流れました。先ほどから妙に展望ラウンジに人が集まってきてるなぁと思っていたのですが、それが理由だったのか! 私もいそいそとエレベーターで展望ラウンジに戻ります。

ほどなくやってきたのはイタリアの豪華客船「コスタ・ビクトリア」。全長252.9mの巨大な船体がゆっくりと東京湾へ進んで行きます。
横浜航路の航行船舶を終日順光で狙えるこのタワーは絶好の撮影ポイントとあって、あの密閉状態で暑苦しい展望室でもゴツいカメラを三脚に据えた二人組が陣取っていました。クルーズ船の通過時には毎回多くの船舶ファンで賑わうそうですが、展望ラウンジがあるおかげで狭い展望室で場所を取り合うこともなく撮影できる。はたして当時そこまで想定していたかどうかはわかりませんが、実に上手く設計したものです。
このタワーを画像検索すると冒頭に掲載した写真のように芝生マウンド側から撮ったものが多数を占め、一般にはそちらがタワーの“正面”と認識されているのだろうと思います。しかし航行船舶への信号表示という本来の機能を考えると、海側こそが正面であるという解釈も成り立つ。でも公式サイトの施設案内のページでは芝生マウンド南側の階段を「正面のぼり口」と記してあるのでやっぱりあっちが正面のようです。
横浜港シンボルタワー

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