建物名称 横浜マリンタワー
所在地 神奈川県横浜市中区
高さ 建物本体高106m 展望台2階床面高94m
竣工 1961(昭和36)年
概要 1853年に浦賀沖に来航したアメリカのペリー提督による開国要求に応じるかたちで締結された日米修好通商条約に基づき、函館、長崎とともに横浜が開港されたのは1859(安政6)年のこと。これを契機として横浜は貿易港として栄えると同時に西洋文化が続々と流入して日本の近代化をリードする都市となった。
その横浜開港100周年記念行事の一環として、1958(昭和33)年に市と市民有志の間でモニュメントの創設が発議され、それはやがて展望塔、海洋博物館、レストハウスを併せ持つ横浜海洋文化センターとして計画が具体化する。これが横浜マリンタワー建設の発端であった。
同年、海運会社や貿易会社などが発起人となって横浜展望塔株式会社が設立され、山下公園に隣接して昭和電工、日本郵船などが所有していた土地を買収して建設地とした。1960(昭和35)年5月には県内を中心にペットネームの公募が行われ、2470人の応募の中から「ヨコハマ・マリンタワー」と決定。オープンは翌1961年1月で、国内に現存する展望タワーとしては最古参のグループに属する。当初は計画どおりタワー下部のビル3階に海洋科学博物館を併設していた。タワー最上部には東海汽船によって灯台機能が設置され、地上高世界一の灯台としてギネスブックに認定されている。
1972(昭和47)年に氷川丸観光株式会社と合併して氷川丸マリンタワー株式会社が発足、長らく横浜港の二大シンボルを一手に運営してきたが、横浜観光の中心がみなとみらい地区に移ったことや施設の老朽化などから1991年をピークに観光客数は減少を続け経営が悪化、ついに2006(平成18)年12月25日を最終日として氷川丸ともども営業を中止し、同月末で会社解散という結果となってしまった。
TF式分類 第1種 I類
登頂日 1回目 2006年12月10日
2回目 2010年12月31日→この日の登頂記録へスキップ
注意事項 横浜マリンタワーは内外装の全面的なリニューアルを経て2009(平成21)年5月23日に再オープンしました。
 2006年12月10日の登頂記録
首都圏にあるタワーへは、その気になればいつでも行けるので何かよっぽどのことでもないとなかなか行こうと思わないものなのですが、横浜マリンタワー閉鎖はこれ以上はない「よっぽどのこと」なので出かけることにしました。閉鎖まであと2週間と迫った土曜日のことです。

塔体はオープン当初、航空法に則った7分割の赤白塗装が施され、TOYOTAのネオンサインが取り付けられていましたが、1989(平成元)年に開催された「横浜博覧会(YES'89)」を機に赤白のグラデーションに塗り替えられ、ネオンサインは撤去されました。

遠目には円柱形に見えるマリンタワーですが、鉄骨組みの塔体は10角形で展望台部分は20角形であることがこの写真からもよくわかると思います。
2層の展望台は29・30階に、最上部の灯台は33階に相当します。

曇り空をバックにしているせいでもないでしょうが、展望台部分が灰色にくすんでいるのが美しくないですね。

正面入口は山下公園に面しています。
このタワー下部の円筒形のビルは4階建てで、地下の基礎部分は鉄筋コンクリートで円錐形に固められています。これはタワー本体が強風によって浮き上がるのを防ぐと同時にタワーの重さで足場が沈下することも防ぐために計算された施工方法だそうです。
入場券売り場は正面入口からちょっと上がった中2階にあります。チケットは窓口の両脇にある自動販売機で買います。11月25日からは「45年間ありがとうキャンペーン」ということで入場料が半額になっていました。
閉鎖間近ということで、エレベーターホールには行列ができています。もっともこの程度の混雑は全然ゆるい方で、翌週以降はエレベーター待ちが2時間以上にもなったそうです。エレベーターは14人乗りの小さいものが2器しかありません。
満員のシースルーエレベーターから鉄骨越しに下界を眺めつつ展望台を目指します。
着いたところは展望台2階。ご覧のとおりやや狭さを感じますが、上から下までガラス張りで光がたっぷり差し込むので明るい空間です。
北西の方向にはみなとみらい地区のビル群が見えます。一番高いのは言わずと知れた横浜ランドマークタワー。クイーンズスクエアを挟んで右に見える半円を描くスカイラインが特徴的な建物はヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルです。手前の海上に突き出しているのは横浜港大さん橋の国際客船ターミナル。
足下にはマリンタワーと同じ会社が運営している氷川丸が浮かびます。戦前に太平洋航路で活躍した豪華客船をそのまま博物館としているもので、往時の華々しさを今に伝える興味深い展示は乗り物好き必見です。
北東に遠望できるのは横浜ベイブリッジ。
そこから左に目を移して白くそびえるツインタワーは東京電力横浜火力発電所の排気塔で高さは200m。トゥイニー・ヨコハマという愛称がついており、180mの位置には展望室が備わっています。事前予約制で見学も可能なので、ぜひ登りたいタワーです。
混雑でエレベーター内の撮影は不可能でしたが、この写真でもドアがわずかに曲面になっているのがわかるように、ゴンドラの形がちょっと変わっています。鉄骨の隙間をぬって最大限の床面積を確保したらこうなったというような、底面が台形とも平行四辺形ともつかないなんとも不思議な形状をしています。
横浜マリンタワーは灯火の地上高(101.2m)が世界一の灯台としてギネスブックに掲載されています。そこで認定証のかわりにギネスブックの日本語版を該当ページを広げた状態で展示してあるのですが、何年前の本なのかすっかり色褪せちゃってます。

通常非公開の灯台室には、水を利用して地震や強風時の揺れを吸収する「スーパースロッシングダンパー」と呼ばれる装置が投光器を囲むように置かれています。
事実このタワーはよく揺れます。この日はそれほど風は強くありませんでしたが、それでもはっきりと体感できるほど揺れていました。とはいえ地震でいえば「震度1」程度のものですから、立ち止まってじっとしていないと気付かないくらいです。

展望1階へ下りる階段。下りのエレベーターは展望1階から乗って下部ビル4階で降りるという動線になっています。
4階で降ろされたところで観覧できるものはなく、団体専用の食堂「マリンタワーグリル」があるだけです。グリルという呼び方にレトロムードを感じます。
4階西側半周部分と屋上の5階にはちょうど1年前までバードピアという鳥類園がありました。1976(昭和51年)にオープンした半屋外型の施設で、アフリカ・中南米・オーストラリアなどを原産とする150種1000羽を放し飼いにしており、餌付け体験もできるなどなかなか人気があったようです。あ〜、こんなことならもっと早く来ておくべきだった……。
グリルの前ではマリンタワーの歴史を写真で綴るささやかなパネル展示が行われていました。これは昔のポスターや広告類。ペットネームは社史によるとカタカナ表記の「ヨコハマ・マリンタワー」であるはずなのですが、どうもこうしてみると「よこはま」がひらがなだったり、それすらなくて「マリンタワー」だけだったりと表記が不統一なのが気になります。
3階にある機械じかけのおもちゃ館は北原照久氏のコレクションを展示する有料施設。タワー展望券を持っていれば無料で観覧できます。もともとは横浜博覧会のイベント「モーションディスプレイ(夢見る機械じかけの人形たち)」としてオープンしたのを常設化したもの。展示品はいずれもアンティークなものなので1日数回の決まった時間にしか動かず、その時間帯をはずしてしまった私はイマイチ楽しめませんでした。
2階には展望台へ続く階段の入口があります。どうやら休日を中心に開放されていて、階段で登頂した人にはボールペンなどの記念品が贈られたようです。
展望台の収容人数には制限があることから、閉鎖間近になって管理の都合上開放をやめてしまったのが残念です。
あ〜、こんなことならもっと早く(2回目)
エレベーター乗り場のある2階へ戻ってきました。このフロアはぐるり1周が休憩スペースになっていて、飲料の自動販売機とゲーム機が置いてあります。古いゲーム機を更新せずに置いといて「レトロビデオゲームコーナー」とは、物は言い様ですな。
あまり知られていない……というか、私も来て初めて知ったのですが、1階から2階に上がる2ヶ所の螺旋階段脇には山下清画伯によるモザイク画があります。横浜の今昔の風景を描いたものだそうですが、さすがにこの貴重な作品は今後も大事に保存されることでしょう。
このモザイク画、2階まで吹き抜けになっている巨大なものなのです。何か大きさを比較できるものを一緒に写し込めばよかったなぁ。
巨大なわりには通常の動線をたどると気付きにくい位置にある上、タワー側も積極的にアピールしているわけではないので知る人ぞ知る存在なのがもったいない。
「ヨコハマ・グッズ 横濱001」というのはお店の名前ではなくて、1989(平成元)年以来2年ごとに行われているコンテストで認定された横浜ブランド商品の総称。専門ショップは市内各所にあります。
崎陽軒のシウマイなど横浜みやげの定番商品が盛りだくさんの中で、タワーグッズは売りきってしまいたいらしくほぼ半値になっていました。
タワーグッズのアイテム数が少ないのは、すでに売れてしまったからなのか、もともと作っていないからなのか。

タワーを描いた真っ赤なタオルは各種サイズがあったので2種類買ってきました。大きい方はヒモ付きで、ひらがなで名前を書く欄があるところをみるとお子様用ということらしい。

タワーのミニチュアは見つけられませんでしたが、ストラップがありました。やわらかい材質のせいか塔体が微妙に曲がっちゃってます。氷川丸がくっついているタイプもあり。
もうちょっとリアルな立体モノがほしい向きにはペーパークラフトなんていかがでしょう? これはタワー限定グッズではなく、ペーパークラフト本を多数出版している集文社の商品なので、注文さえすれば全国の書店で買えるはず。
部品の数はたったこれだけ。完成させると高さ14cmになります。決して難しい工作ではないもののかなり細かい作業を要求されるので、保存用と工作用に2セット買ってきたけど作る時間がなくて手付かずです。
   2009年12月31日の登頂記録
2006年末の閉館後、一時は解体も取り沙汰された横浜マリンタワーでしたが、幸いにして市が買い取ることで存続が決定。横浜開港150周年記念事業の一環として大規模なリニューアル工事が行われ、2009年5月に約2年半ぶりに営業を再開しました。塔体の外部塗装はガラリと印象を変え、シルバーメタリックのシックな装いとなっています。
下部ビル(特に固有の名称はない)は全面的に改築され、山下公園側のファサードがガラス張りのスタイリッシュな姿になりました。館内レイアウトも従来との共通点をほとんど見出すことができないくらいの変貌ぶりです。
内装デザインもシティホテルのように洗練された落ち着きのある空間へ生まれ変わっており、1階のチケットカウンターでチケットを買い求める人もこうして見るとフロントでチェックインしているかのようです。

展望台へのエレベーター乗り場は2階にあり、そこでチケットをもぎられるという動線はリニューアル前と変わらないところ。

前回は混雑で撮れなかったエレベーター内はこんな感じ。超広角レンズを持ち合わせていないので苦しいアングルですが、ユニークな形状であることはわかると思います。

下部ビルが現代的にリニューアルされても、さすがに鉄骨組みの塔体は半世紀の年季を感じさせますね。鉄骨は外側のシルバーに対し内側はブラウンオリーブで塗装されており、横浜市のプレスリリースによると「鉄という素材が持っている力や、鉄骨が織り成す構造の美しさ、またタワー本体の存在感を表現」する配色と説明されています。

展望台は窓の柱や桟が減って視界がややすっきりしたのと、望遠鏡が撤去されたのが大きな変化。

窓際に貼りついている額縁は夜景撮影時にイルミネーションの光芒がハート型になるフィルタが仕込まれているそうで、ゆえに昼間見ても何の効果もありません。奥の箱形のオブジェは、夜景があたかもリボンをかけたギフトボックスに収まっているように撮れるという仕掛けで、これも昼間は無用の長物でしかありません。

展望2階から展望1階への階段の壁面には多数のネームプレートが貼られています。来場者の案内のためにさっきからこの階段を頻繁に行き来している女性係員をつかまえて「これは何か?」と訊いてみたところ、タワー内で結婚式を挙げたカップルのメモリアルとのこと。下部ビル3階にはコンベンションやイベントなど多目的に使用できるホールがあるのですが、チャペルやバンケットも完備してあってウェディングが可能なんだそうです。

リニューアル時に新設されたものはいろいろありますが、展望1階の直下展望窓もそのひとつ。下部ビル4階にある「タワーレストラン ヨコハマ」のオープンテラスが見えています。

ちなみにこのあとレストランのようすもちょっと覗きに行ってみましたが、入口に掲示してあったメニューのお値段を見て「あ、ここ俺が来るとこじゃねーわ」と瞬時に判断して即退散。公式WEBサイトにいわく「大人のラグジュアリーレストラン」ですってよ。

下部ビル2階にあるマリンタワーショップです。横浜みやげはもちろんのこととして、なによりタワーオリジナルグッズの種類の多さに感激です。ついつい調子に乗って買い込んでしまいましたが、その中身は後ほどご紹介。
エレベーター脇には非常階段がありますが、通常は利用できません。年に何度か階段登りイベントが行われているのでいずれ参加してみたい。
1階ホール中央には、かつてこのタワーに灯台機能があった証しとして灯具が保存展示されています。近年は沿岸が明るくなって夜間でも視界の確保が容易になったことや、無線やレーダーなどの航行支援装置が発達していることなどからマリンタワーに灯台があることの意義は薄れており、すでにその役目は終えたとの判断からリニューアルの際に廃止されました。

ビル内のレイアウトが大幅に変わったことで、山下清画伯の巨大な壁画は階段や通路に遮られることなく全体を一望できるようになりました。右上にモザイクの貼られていない部分がL字型に残されているのが見てとれますが、これは以前2階通路がそこまで張り出していた痕跡です。

 

では買ってきたグッズの数々を見ていきましょう。
まずはタワーのミニチュア。商品名は「立体オブジェ」です。高さ16cmのポリレジン製でほどよい重量感があります。他にブルー、レッドのカラーバリエーションがありますが、ここはやはり現物のイメージに近いシルバーを選択するのが妥当でしょう。
造形はわりあいリアルにできていますが、下部ビルのディテールはかなり省略されていて正確ではなく、どの向きが「正面」なのかもわかりません。
左はタワーのシルエットを象ったアクリル製の定規。この写真ではわかりにくいですが、塔体左側に10cm分の目盛りがホワイトで刻まれています。
中央は合金製のキーホルダー。小さいながらも上で紹介したミニチュアをそのまま縮小したようなしっかりしたディテールでおすすめしたい一品。
右はメタルストラップ。錨、操舵輪、灯台など6種類のチャームが別売されており、自由に組み合わせてオリジナルのストラップを作ることもできます。
ポストカードも種類豊富に揃っていますが、特に私が注目したのが完成当時の写真シリーズ。赤白7等分塗装の塔体、建設中のようす、空撮など、いずれも貴重なカットです。
イラストでタワーを描いた図柄もあり、明治時代に建築された“横浜三塔”を組み合わせた立面図ふうのものと、氷川丸を組み合わせたラフなテイストのものが気に入りました。
集文社のペーパークラフトもリニューアル後のバージョンがリリースされています。旧塗装版も引き続き販売中なので並べてみるのも一興かと。
グッズは種類が多いだけでなく、いずれも好ましいデザインなのであれもこれもと欲しくなってしまいますが、財布に「もうそのへんにしとけ」と言われてしまったのでレジでお会計。タワーを描いた紙袋に入れてくれるのも嬉しいじゃないですか。
これ、正月間際だからって福袋を買ってきたわけではないですよ?
横浜マリンタワー

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