建物名称 鶴見緑地展望塔
所在地 大阪府大阪市鶴見区
高さ 避雷針高90.0m 展望室床面高54.0m
竣工 1990(平成2)年
概要 鶴見緑地は大阪市公園協会が監理する都市公園で1972(昭和47)年に開園した。同市鶴見区と守口市にまたがる約126haの広大な敷地には庭園、競技場、乗馬場など多彩な設備が整っている。一般には1990(平成2)年に開催された「国際花と緑の博覧会」(通称・花の万博、花博)の会場となったことで知られ、会期終了後は名称を「花博記念公園鶴見緑地」と改め、園内の再整備が行われている。
園内には花博のパビリオンのうちのいくつかが恒久施設として残存しているが、鶴見緑地展望塔もそのひとつである。会期中は「生命の大樹・いのちの塔」という名称だったこのパビリオンでは、1人2000円の参加費で会員を募って写真やメッセージを光磁気ディスクに永久保存するという一種のタイムカプセルプロジェクトが行われた。しかし当初100万人の参加を目標にしていたものが実際には半分にも達しない47万人しか集められずに会期終了、18億5000万円の建設費用を償還するどころか、逆に巨額の負債を抱える事態となってしまった。このため一時はタワーの解体撤去も取り沙汰されたが、関係者が負債圧縮に尽力した結果、1992年にはタイムカプセルごと大阪市に引き取られて現在に至っている。
TF式分類 第1種 I類
登頂日 1回目 2002年5月4日
2回目 2010年4月29日→この日の登頂記録へスキップ
注意事項 鶴見緑地展望塔は2010(平成22)年3月限りで内部の一般公開を中止しました。建物は解体しない方針なので、今後はイベントなどの機会に限定的な公開が行われる可能性はあります。
 2002年5月4日の登頂記録
どよ〜んと曇った空をバックに、新興宗教の本拠地でもあるのかと思わせる異形の塔が立っていますが、これが鶴見緑地展望塔。
博覧会のパビリオンは意表をつくデザインの建物が多く、それが楽しさや華やかさを演出しているわけですが、こうやって単独で残されるととたんに周囲の景観から浮いてしまうという危険性(?)を孕んでいます。

それはともかく、晴れた日に出直せばよかったな……。

鏡張りのファサードの左隅に出入口の扉があります。中の様子が見えない、いかにも重そうな鉄扉は、入場することを一瞬躊躇させますが、中へ入ると目の前にチケット売場があり、コンパニオンのおねえさんもいてちょっと安心。案内に従ってエレベーターに乗り込みます。

エレベーターの中はほぼ真っ暗。しかも外の景色は見えないのにガラス張りのシースルータイプになっています。それはなぜかというと、エレベーターシャフトの内壁に描かれた絵をライトアップして見せるための演出なのです。原色を用いてデフォルメされた動植物が描かれているのですが、暗いうえに速度があってデジカメでの撮影は無理でした。

展望室はパノラマ・フロアと呼ばれています。
おやおや、なにやら窓の外にはトラスのような柵があります。気になりますねぇ。
窓の外の柵がものすごく邪魔なんですが、大池の向こうに国際庭園を望む北側の風景。
窓の外の柵がものすごく邪魔なんですが、眼下の建物は花博後も継続公開されている咲くやこの花館。熱帯から極地圏まで地球上のさまざまな気候条件のもとで生育する2600種・1万5000株を集めた植物館です。建物は睡蓮をイメージした意匠なんだとか。

余談ですがタワーと咲くやこの花館の間には大阪市と守口市の境界線が走っており、厳密には咲くやこの花館は守口市に建っています。でも管理の便宜上、所在地は大阪市鶴見区緑地公園2-163ということになっています。

窓の外の柵がものすごく邪魔なんですが、咲くやこの花館の反対側のお隣(東側)は市立鶴見スポーツセンター。もともとは花博に3館あった国際展示館のひとつ「水の館」だった建物です。
遠くには門真市のなみはやドームも見えます。

で、結局この展望塔は客に景色を見せたいのか見せたくないのか、どっちなんだろう?

展望室から一旦1階に下りて、エスカレーターで展示棟2階に上がると、そこには花博メモリアルコーナーがあります。花博に関する展示でもあるのかと楽しみにしていたのですが、ご覧のとおりの小さな空間。立体会場図と数枚のパネルがあるだけでした。
同じ2階の一角はいのちの塔会員コーナーとなっており、花博開催時に登録した写真やメッセージはここでテレビモニターに映し出して見ることができます。有料でプリントアウトもできるようです。

47万人も会員がいるのに、ゴールデンウィークのさなか誰もおらず、テレビモニターは花博の記録映像を垂れ流していました。

1階にはこのとおりショップもあるのですが、売っているのはもっぱら植物をモチーフにしたファンシーグッズや子どものおもちゃなどで、タワーや鶴見緑地のオリジナル商品というのは作られていないようです。したがっておみやげにできるものはありませんでした。
 2010年4月29日の登頂記録

前回登頂時の写真が曇り空という悪条件下だったため、晴れた日に再訪して撮影し直したいと思いつつ早や8年。あろうことかタワーの公開が3月末日をもって中止されてしまいました。ところがわずか1ヶ月後、鶴見緑地で花博開催20周年を記念するイベントが行われ、その一環で鶴見緑地展望塔が限定公開されるということで馳せ参じたのであります。

幸いに天候は文句のつけようのない快晴ですが、この塔は“正面”が北向きなので終日逆光になってしまうのが難点。そこで今回は順光での撮影を優先し、塔の“裏側”から狙うことになるのを承知でなるべく全体を写し込める場所をと探しまわった結果、公園の緑地橋口ゲート付近でいいポイントを見つけました。塔下部の建物が木々で隠れてしまうものの、塔の周囲には建物や温室が立て込んでいるのでおそらくここがベストポイントでしょう。展望台付近のディテールが大きな庇の影になってしまうのはいたしかたありません。

園内には塔をリアルに象ったステンレス製の案内標識が立っています。大阪市へ移管されて18年も経過していますが、花博当時の呼称である「いのちの塔」の方がいまだに通りがいいようです。
あのいかにも重そうだった入口の鉄扉はグリーンに塗り替えられていました。今日はずっと開け放たれたままになっており、来場者が続々と吸い込まれていきます。
扉をくぐると目の前にはチケット売り場。博覧会のパビリオンだった当時はチケットを販売する必要がなかったので、いかにも後付けされたことがわかる狭いハコです。

エレベーターホールに掲げられた、塔の来歴を記したパネルは大阪市移管後に設置されたもので、確か前回来たときにもあったはず。

解説によるとこの塔は全国の子供たちから集まった1500点のデザイン画をもとに京都大学工学部の川崎清教授が設計したもので、「自然界の生命ある森羅万象が樹の形をとりながら宿り、集い、共存共栄する大樹の姿をモチーフにしたもの」だそうです。
マスコットキャラクターは日本画家の中島潔氏デザインによる「ふしぎちゃん」。せっかくかわいいのに商品展開されなかったのは残念です。

パノラマフロアは大盛況。限定公開という言葉につられたか、あるいは無料開放だからか、いずれにしても公開中止以前にはこれほど賑わうことは少なかったのではないかと思います。なにしろ景色の見づらさが致命的だしねぇ……。

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これだけ混雑しているのに下りのエレベーターは他に2人しか同乗していないという状況に恵まれ、エレベーターシャフト内側のペイントを難なく撮影することができました。ぜひ動画でご覧ください。

※音声は出ません。

2階のいのちの塔会員コーナーは画像閲覧の端末(フォトカプセル)がカウンターに設置されてブースが取り払われたためいっそう閑散とした雰囲気に。会員でなければ見るべきものは何もないスペースなので、パノラマフロアの盛況をよそにほとんど立ち寄る人がいません。
なお、会員コーナーはその後近隣にある「水の館ホール」へ移設されました。
エレベーターシャフトの外周はコンクリートの壁面に草木の絵が彫り込まれています。2階まで吹き抜けなのでそれなりに巨大な絵ですが、特に凝った図案ではありません。
かつてのショップスペースは遅くとも2007(平成19)年までにはギャラリーに模様替えしており、絵画や写真の展示などに利用されていました。

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