建物名称 六本木ヒルズ森タワー
展望台名称 東京シティビュー
所在地 東京都港区
高さ 建物本体(塔屋天端)高238.05m 展望台(52階)床面高218m
竣工 2003(平成15)年
概要 六本木ヒルズは森ビルとテレビ朝日が中心となって推進した11.6haに及ぶ大規模な都市再開発エリアである。当地は1967(昭和42)年に現在の六本木六丁目という住居表示が設定されるまでは麻布北日ケ窪町と称していたことからもわかるように周囲より標高の低い窪地であり、再開発以前は木造住宅や小規模な集合住宅が密集していた上に一方通行の狭隘な道路しかなく緊急車両の通行が困難であるなど防災上の問題点を抱えていた。1986(昭和61)年にテレビ朝日が本社機能を赤坂へ移したのを契機にこのエリアが東京都の再開発誘導地区に指定されたことが端緒となって新しい街づくりがスタートしたが、多数の地権者との調整や都市計画案の策定などに年月を費やし、着工に漕ぎつけたのは実に2000(平成12)年のことであった。
2003(平成15)年に華々しく街開きした六本木ヒルズにはオフィス、住宅、商業施設、ホテル、放送局、文化施設などさまざまな用途のビルが集積し、就業者・居住者をはじめショッピング・観光客などを含め年間4000万人もの人々が往来する都内屈指の賑わいを見せるエリアに発展した。ここにオフィスや住居を構えることは特にIT分野の若手起業家にとってステータスとなり、彼らを指す「ヒルズ族」なる言葉が一時期流行語になるなど、話題性にも事欠かない。
その六本木ヒルズの中でひときわ大きな存在感を示す超高層建築が「六本木ヒルズ森タワー」である。54階建ての8階から48階までがオフィス用途で占められ、森ビルの本社もここにある。7階までの下層階は主にファッションを扱うショップや飲食店が連なる商業施設だ。49階から上は美術館、展望台、会員制クラブなどからなる複合文化施設「森アーツセンター」で、森ビルが六本木ヒルズの開発コンセプトとして掲げた「文化都心」を象徴する部分と位置づけられている。
TF式分類 第3種 I類
登頂日

2011年10月26日

 2011年10月26日の登頂記録
六本木ヒルズ森タワーの建物デザインはニューヨークの建築事務所コーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツが手がけました。鎧をまとったような多層的なフォルムは和の要素として武士の甲冑のイメージを採り入れたもの。縦横の寸法比がおよそ3対1というどっしりした構えも相まって力強さを感じさせます。ほぼ曲面だけで構成されている外壁はテレビ電波の乱反射によるゴーストの発生を抑える実利的な効果を計算に入れつつ、躍動感やスマートさを演出。全体を覆うメタリックな色彩はコンクリート壁に塗装されたもので、シャープな折り目があることによって生じる陰影も建物の表情をより豊かなものにしています。

美術館と展望台へは、2階東側に設けられた専用のシンボルゲート「ミュージアムコーン」が入口です。高さ30mのガラス張りのパビリオンで、内部はエレベーターシャフトの周囲を螺旋階段が取り巻く構造。頭上に見えるブリッジを渡ってビル本体へアプローチします。

ミュージアムコーンおよび展望台を含む美術館ゾーンのデザインはニューヨークのグラックマン・メイナー・アーキテクツが担当しました。六本木ヒルズ内にある建物のデザイン・設計は積極的に外国人建築家が起用されています。

美術館の入口をわざわざビル本体から分離させることに構造上の必然性はありませんが、あえてこういうスタイルを採用したのはビル最上部にある森アーツセンターの存在を強くアピールすることに加え、コーン内の緩やかな階段を登りブリッジを渡ることで来場者にアート空間への高揚感を与えようと意図したものです。
なるほど、このコーンがなければ美術館の入口を探してビルの内外をさまようことにもなりかねないですし、印象的な造形のゲートを設けることは来場者にわかりやすいという点でも有益だと言えるでしょう。
そうして3階にたどり着くと展望台と美術館のチケットカウンターがあります。今回私はコンビニで割引付きの前売券を買って行ったのですが、正確には“引換券”なのでここで所定のチケットに引き換えます。人によっては面倒な手順だと思うかもしれませんが、森タワーのイラストをあしらった半券が手元に残せるのでタワーファンなら異存はないかと。
エレベーターホールの手前には空港のような危険物探知ゲートが!
最近のオフィスビルはどこもセキュリティが強化されていますし、六本木ヒルズくらい目立つビルならなおのこと備えを万全にする必要があるのは理解できるのですが、ここで警備員にチケットの提示を要求されることには少々イラ立ちを覚えます。どうせまた美術館と展望台で提示しなくてはならないのだし、最初からここに入場口を設ければ手間は一度で済むでしょうよ。
まあ、ぶっちゃけて言うと私が気に入らないのはその程度の手間なんかよりもエラソーな警備員のほうなんですが。
白と黒のツートーンでまとめられたエレベーターホール。階床パネルがないのでエレベーターがいつ到着するのかが読めないし、照明も薄暗いので1人で待ってると孤独感が強調される冷たい空間という印象。観覧を終えて下りてきた客を出口へ誘導する巨大な矢印もなんだか不気味に思えてきます。
エレベーター内も黒い内壁に白い光天井というツートーン。液晶モニタが2面設けられ、展望台や美術館の案内映像を流しています。
3階から52階へノンストップで一気に上昇……と思いきや、到着直前で停止してドアが開かない。モニタには「下かご乗降中です」との表示が。
実はこれ、ダブルデッキエレベーターなのです。51階の会員制クラブに行く人が2階から乗っていたわけですね。ダブルデッキなんだから52階も同時に乗り降りできるはずなんですが、2〜3階の階高と51〜52階の階高が異なるので対応できないのです。
もっとも、森タワーで稼働する全67台のエレベーターの中にはその問題を解決するために上下のカゴの間に伸縮装置を仕込んだタイプが37台採用されています。おそらくオフィス階行きに集中配置されているのでしょう。
52階に到着し、まずは53階の森美術館を観覧すべくセンターアトリウムからエスカレーターに乗ります。このとき開催されていたのは「メタボリズムの未来都市展」。現代建築好きには見逃せない非常に充実した展覧会で、今回私がここを訪れた第一目的はこれです。
美術館のチケットを持っていれば展望台も観覧できる(逆もまたしかり)ので、こんな機会でもなければ高価な入場料を払って展望台だけ見に来るなんて私でもしませんよ。
展望台は「東京シティビュー」と名付けられています。エントランスは52階東側にあるんですが、これはきっと周到に計算された配置に違いない。というのは……
入ってすぐ目の前の窓は真っ正面に東京タワーを望み、第一印象が抜群なんですよ。約1.5kmという近さもさることながら、この高さからだと見下ろす感覚になるのが新鮮な驚きです。
視線を少し右へ移せばレインボーブリッジから臨海副都心、ここには写っていませんが羽田空港も思いのほか間近に眺められます。
展望台内は回廊でひとつながりになっていますが、東、南、西面それぞれにイベントなどにも活用される広いスペースがあってスカイギャラリーと名付けられています。特に東側と西側は最大12mもの天井高があり、全面のガラス窓があたかも巨大スクリーンのごとく都心の風景を映し出します。
先ほど「展望台だけ見に来るなんて」と軽く悪態をつきましたが、迫力ある眺望を前にしてそんな先入観は吹き飛び、むしろすっかり気に入ってしまいました。
東京タワーのインパクトが強すぎて、東京スカイツリーは「ああ、見えるね」程度の感慨しかありません。
赤坂・六本木のビル群の中ではグリーンのガラスカーテンウォールに覆われた泉ガーデンタワーが目を引く存在です。
新宿の超高層ビル群まではちょっと距離がありますね。手前の青山霊園、左奥の代々木公園、右手の神宮外苑と新宿御苑は新緑の季節ならもっと鮮やかな色彩を見せてくれるでしょうか。
展望台内にはSOUTH、WESTの2つのおみやげショップがあります。六本木ヒルズオリジナルグッズが充実しているのはこちらのWEST SHOP。買ってきたものは後ほどご紹介しましょう。

ドリンクや軽食を扱うお店としては「SUNSET CAFE」と「マドラウンジ スパイス」があります。後者は西側のスカイギャラリーに位置し104席のキャパシティがありますが、通常のテーブル席が満席だったのに対し窓際のカウンター席には誰も座っていません。陽射しがきつくて敬遠されたのだな。

展望台はここで行き止まり。北側の一角はレストラン「マドラウンジ」となっているので帰りは東側エントランスまで回廊を戻るしかありません。ビル本体がだいたい80m四方というサイズなので展望台内の往復距離はざっと400mくらいあるはず。

景色は充分堪能しましたが、ここまで来たらビル屋上のスカイデッキを見逃すわけにはいきません。入場口は展望台とは別にセンターアトリウム南側にあります。
オープン当初は森タワーの見学ツアー参加者だけが入場できたそうですが、その後有料で常時公開されたり無料化に転じたり公開中止になったりといった紆余曲折があって、2008(平成20)年から展望台入場料に追加料金という現行の体系で公開されるようになりました。
このように52階展望台とは入口も料金も別の施設ですが、スカイデッキも「東京シティビュー」の一部という位置付けになっています。
入場口を奥へ進むとチケット売り場兼ロッカールームがあります。この写真は何がどうなってるのかわかりにくいと思いますが、壁面が鏡なので背後の様子が映り込んでいるというわけです。
スカイデッキでは帽子や手荷物などが風に飛ばされるおそれがあるのと、通路が狭いなどの事情から原則として手ぶらでなければ入場できませんが、カメラの持ち込み程度はOKです。
スカイデッキへ到達するには塔屋2階まで専用のエレベーターに乗り、金網に囲まれた通路を歩き、さらに狭い階段を登ります。もともと一般来訪者に見せることを前提にしていない業務用スペースで、周囲には電気設備や空調設備が所狭しと並んでいます。
そしてここがスカイデッキです。非常用のヘリポートを囲んで1周約135mのボードウォークが設けられています。
高さ200mを超える高層ビルは数あれど、オープンエアの展望台は希少な存在。手すりが低いことも圧倒的な開放感につながっていますが、常時やや強い風が吹いているのでちょっと怖いくらいです。
東京タワーや臨海副都心を望む東側には記念撮影用デッキがあります。被写体がカメラより低い位置に立つことで眼下の風景もバッチリ写し込めるというわけ。
有料の撮影サービス「スカイショット」がここで行われていてカメラマンのおねえさんが常駐していますが、サービスを押し付けるようなことは全然なく、自前のカメラを持ってきている人には「シャッター押しましょうか?」と声をかけていたのが好感度高いです。
景色を撮るならやはりガラス越しよりオープンエアのほうがいい。とはいえスカイデッキに登ったところであいにく厚い雲が出てきてしまったので、六本木通りの向こうに渋谷の街並みを望むカットだけ載せておきます。
美術館と展望台を満喫して3階に下りてきました。出口は逆行防止のため折り戸式の自動ドアが二重に設けられています。出たところはショッピングエリアのウェストウォーク。

では買ってきたグッズをご紹介しましょう。

まずは2000分の1スケールのペーパークラフト。森タワーのみならず、レジデンス、テレビ朝日、グランドハイアット東京など、六本木ヒルズ内の全ての建物をカバーしており、街路が描かれた台紙にこれらを配置するとジオラマが完成します。展開図は5枚のシートから構成されていますがパーツ数は多くないので組み立ては簡単なはず。
私は展開図を見るだけで楽しいのと、組み立てると置き場所に困るので、今までにも各地のタワーでペーパークラフトを買ってきましたが一切組み立てない派です。

ポップアップカードは2種類をゲット。ラッキーなことに半額セールが行われていました。美術館内のショップでは定価で売っていたので、あっちで買わなくてよかった……。
左はほぼハガキ大の小型版。二つ折りのカードを開けば即座に森タワーが起ち上がります。
右の大型判は建物や窓があらかじめカッティングされているものの、完成見本のように仕上げるには自分で折り曲げ工作をしなくてはなりません。造形がリアルな分ピンセット等を駆使する細かい作業が要求されるので腕に覚えのある人向けかな。
立体系アイテムとしてはストラップもあります。森タワーを極限までシンプルにデフォルメしたメタルチャーム付き。
イギリスのグラフィックデザイナー、ジョナサン・バーンブルック氏が考案した六本木ヒルズのロゴタイプは複数の書体バリエーションがあり、台紙の一番下に描かれているのが最もよく使用されているパターン。ストラップに描かれている“6つの輪”は全てのパターンに共通しているモチーフです。
公式WEBサイトやパンフレットでもほとんど見かけないのでひょっとすると認知度は低いんじゃないかと思いますが、六本木ヒルズには村上隆氏がデザインしたロクロク星人というキャラクターがいます。大判のポストカードは絵柄が豊富に揃っている中からこの2枚を選びました。
・六本木ヒルズ
・六本木ヒルズ大展望台 東京シティビュー

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