建物正式名称 邑楽町シンボルタワー
建物愛称 未来MiRAi
所在地 群馬県邑楽郡邑楽町
高さ 避雷針高59.5m 建物本体高56.5m 展望室床面高36m
竣工 1993(平成5)年
概要 1988(昭和63)年から翌年度にかけ、竹下登内閣による目玉政策として、いわゆる「ふるさと創生事業」が実施された。当時国内に存在した約3300の市町村に一律1億円を交付して地域振興を図ろうとするもので、その使途は自由とされたことからユニークな施策を打ち出した市町村がしばしばニュースになったが、多くは公共施設や観光施設の整備に充てられた。
群馬県南東部に位置する邑楽町(おうらまち)では、この1億円の使途について14名の町民で構成する「21世紀夢倶楽部」と50名から成る「ふるさと創生事業推進協議会」を組織して意見交換を行い、公募意見364件のうち7件の提案があったシンボルタワーの建設を決定した。町域は平均標高約25mで最大高低差が約5mしかないという非常に平坦な地形であることから、町を一望できる高所施設は格好のランドマークとなり、特筆すべき観光地や名産品のない町の象徴的存在となることが期待された。
タワーの立地は既存市街地から遠く、1993(平成5)年の完成当時は周囲に農地が広がるだけの場所であった。それゆえかオープン初年度こそ約3万4000人を数えた入場者は翌年度に約1万8000人にほぼ半減するなど低迷を余儀なくされたが、ふるさと創生事業と時を同じくしてタワー周辺の約17haに公共施設を集約させるとともに公園整備を行う邑楽中央公園構想がスタート。1995(平成7)年から2006(平成18)年にかけて図書館、農産物直売所、保健センターが相次いで開設され、2008年には町役場が移転してくるなど、タワーの周囲は多くの人々が集まる場所へと変貌している。タワーの年間入場者数は相変わらず1万人前後で推移しているが、今後の活用次第で再生・発展は十分可能な環境が整いつつあると言えるだろう。
TF式分類 第1種 I類
登頂日 2014年5月2日
 2014年5月2日の登頂記録

邑楽町シンボルタワー「未来MiRAi」の塔体は1辺11mの正三角柱で、展望台部分は南北方向にやや伸長した九角形というスタイル。館内にも三角形を基調としたデザインがそこかしこに施されているのですが、これは町章が三角形であることにちなんだもの。1972(昭和47)年に制定された町章は、町公式サイトによると「三角形は旧三村合併を意味し、各先端は躍進する邑楽町を象徴」していると説明されています。
塔体にも展望台のすぐ下に町章が掲げられているのですが、この写真ではわからないですね……。

「未来MiRAi」という極めて個性的な愛称は公募によって決まったもので、「未来タワー」などの平凡な名前にしなかったセンスは讃えたいところです。
後日、ネーミングの由来について町役場に問い合わせたところ「未来に羽ばたく町のシンボルとして、また町のランドマークとして大空に伸びてほしいという意味を込めて」名付けられたとの回答をいただきました。特に、同じ単語を表記を変えて2度繰り返すこと、ローマ字表記で「i」だけを小文字にしたことにはきっと何か意味があるのだろうと思ってそこまで踏み込んだ質問をしたのですが、「応募してきた人のハガキの表記が当初から小文字が含まれた『未来MiRAi』というものでした。そのまま選定会議にて選ばれたという経緯があります」との正直な回答にはちょっと笑ってしまいました。ネーミングに込められた真実の意味は名付け親本人のみぞ知るというのが実情のようです。

入場券の販売窓口を兼ねる事務室はロビーを進んでさらに奥にあるのですが、エントランスをくぐるとすかさず職員さんが元気な声で「こんにちは!」と声をかけてくれるのが好印象。

ロビーの壁際にはこの年の2月に設置された「手づくりミニショップ」があります。町の人々による手工芸品を展示・販売するコーナーで、1ヶ月500円という低料金でスペースを借りられるとあって30区画が常に埋まる人気だそうです。

窓口の脇には開館以来のメモリアル入場者の記念写真が名前入りで飾られています。15万人目以降は5万人ごとの節目をおおむね4年半の周期で迎えており、30万人目はこの年の4月4日に達成したばかり。このままのペースで推移すると35万人目は2018年の秋ごろになりそうです。
エレベーター内の階床表示は5m刻みで高度を示しています。
同じくエレベーター内。東京スカイツリーと未来MiRAiの高さを比較するパネルが掲示されています。ここに限らず関東地方の多くのタワーが「東京スカイツリーが見える」ことをセールスポイントにしていますが、実際スカイツリー効果で未来MiRAiの入場者数が増えたという新聞報道もあり、低迷にあえぐタワーとしてはこの好機を逸するわけにはいきません。
有料の望遠鏡は展望室内の3ヶ所に設けられています。特に南側の窓は「東京スカイツリーを見ませんか」と大きく貼り紙する推しっぷり。
窓に貼り付いている赤い点はゴミや虫ではなく、ここに望遠鏡を向けるとスカイツリーを容易に視界に捉えることができるという目印。おそらく来場者から「スカイツリーはどの方向に見えるのか」と尋ねられるケースが多かったのだろうと推測します。

未来MiRAiには公式WEBサイトがないこともあって、あまり予備知識を持たずに来たのですが、高さ40mの屋上展望室があるというのは今日初めて知りました。エレベーターは通じていないので階段で登ります。

屋上はあまり広くはなく、高い鉄柵が覆いかぶさるように内側へ傾斜しているところにやや窮屈さを感じますが、オープンエアの展望台はどのタワーでも人気の施設ですし、もっと存在をアピールしたほうがいいと思います。

このあと町役場の前でタワー外観を撮影していたら通りすがりのおっちゃんに「あのタワーは登れるの?」と訊かれ、「登れますよ。入場料100円かかりますが」と答えたら「ああ、お金いるのか」とつぶやいて踵を返してしまいました。いやー、100円くらいなら払っても損はないくらいにはいいタワーだと思うんだけど、魅力を伝えきれていなんだよなぁ……。

スカイツリー以外の見どころは、北西に望む赤城山が筆頭でしょう。榛名山、妙義山とともに上毛三山に数えられて群馬県民に親しまれています。タワーからは三山のいずれも見ることができますが、特徴的ななだらかな稜線を描く赤城山の姿は、地元民でなくてもすぐにそれとわかる存在感があります。
南側には町役場の建物を挟んで中央公園が広がります。洪水調整池として整備された「やすらぎの池」に越冬のためシベリアから飛来する白鳥は、今やタワーと並ぶ町のシンボルとなっています。

階段は常時開放されており、登りでも下りでも利用できます。館内の掲示によると189段とのこと。

ところで、当タワーでは建物をデフォルメしたデザインのストラップが販売されているとの情報をつかんでいたので帰り際に窓口で尋ねてみると「発売中止になりました」とのこと。「在庫切れですか? 再販の予定は?」と食い下がってみるも、このときばかりは職員さんの歯切れが悪い。どうも「町のお金を使ってグッズを作って売るというのはいかがなものか」というような意見があったらしい。それの何が問題なのか私にはさっぱりわかりませんし、発売中止はちょっと過剰反応のような気がしますね。ただ、グッズの製造・販売に地元の人々や企業が参画できる仕組みを作るなど、町民の理解を得るための工夫の余地はありそうです。

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