建物名称 豊橋総合動植物公園展望塔
所在地 愛知県豊橋市
高さ 全高48.4m 展望レストラン床面高40.35m 展望室床面高37.15m
竣工 1992(平成4)年
概要 豊橋総合動植物公園は豊橋市制80周年記念事業として1992(平成4)年にオープンしたが、そのルーツは古く1899(明治32)年に個人経営で豊橋駅前に開設された安藤動物園にまで遡る。市営へ移管したのは1931(昭和9)年で、数度の移転を繰り返しながら展示内容を拡充し、現在地に落ち着いたのは1970(昭和45)年のこと。その時点では豊橋子供自然公園と称し、面積12.6haの規模であった。1982(昭和57)年にはアメリカ・デンバー自然史博物館から恐竜化石譲渡の申し出があったことを契機に博物館の建設が構想され、子供自然公園東側に隣接する名古屋営林局の苗畑用地を取得して自然史博物館を1988(昭和63)年にオープンした。
現在の総合動植物公園は子供自然公園と自然史博物館を統合するかたちで拡張再整備したもので、39.6haの広大な敷地内には動物園・自然史博物館に加え、植物園と遊園地をも備える。この総合公園化の際に名付けられた「のんほいパーク」という愛称は今やすっかり市民に親しまれている。
展望塔は総合公園化を期して完成したもので、固有の名称はないが「のんほいタワー」という呼び方が相当程度定着している。主として休憩・飲食のための施設であり、レストランが展望台よりも上階に位置するほか、セルフタイプの食堂も1階に設けられている。
TF式分類 第1種 III類
登頂日 2011年11月27日
 2011年11月27日の登頂記録
豊橋総合動植物公園展望塔は塔体の水平断面が扁平な楕円形である点が特徴的で、最上部と中段部の上縁に凹凸をあしらった外観デザインはヨーロッパあたりの城塞を思わせます。
展望塔は同園の植物園ゾーンに近接し、JR東海道線二川駅から歩いて来園する人が利用する東門からのアプローチが最も便利。その東門付近は基部を含めた塔の全景を撮れる唯一のポイントなのですが、ほぼ終日逆光になるのが難点です。2台のシースルーエレベーターが塔の両端に配置されているようすはこの角度からだとよくわかります。
中段には豊橋市章とともにシマウマのイラストが掲げられていますが、園のシンボルマークというわけではなさそうです。
基部の水平断面はアンモナイトをモチーフにしたかのような渦巻き状になっています。入口は数カ所にあり、上の写真でレストランの看板が出ている箇所が最も人の往来が多いのですが、そこから少し右にまわると「展望塔」と明示したゲートが設えてあるので一応こちらがメインの入口という位置付けのように思います。
エントランスホールで目を引くのは、コンクリート打ちっ放しの壁に彫り込まれた恐竜化石の大きな壁画。水棲の首長竜のように見えますが、この分野に詳しい子供ならすぐに「ナントカザウルスだ!」と特定できるんでしょうね。
のんほいパークの公式WEBサイトには展望塔に関する記述がほとんどないので、特に内部がどうなっているのか予備知識ゼロで訪れたわけなんですが、まさか1階エレベーターホールのど真ん中に太鼓橋のかかる池があるだなんて予想だにしませんでした。橋桁からはスプリンクラー状に水が噴き出しています。
エレベーターは橋を挟んで相対しており、南側が最上階のレストラン直通、北側がその1階下にある展望台行きです。
エレベーターホールで真上を見上げてまたびっくり。なんと最上階まで吹き抜けになっているじゃないですか! これも外観からは予想がつきませんでした。
吹き抜けは壁面に沿って階段がめぐらされているのですが、非常用なので平時は通行できません。ここを歩いて上り下りしてみたい人はきっと多いと思うので、イベントなどでの開放をぜひ検討してほしいものです。
エレベーターまわりの意匠も凝っていて、階床パネルは針で示すレトロなタイプです。頭上には鈍色に光るヒツジのレリーフも。
展望室はあまり広くありません。この上の階にあるレストランが実質的にメインの施設で、展望台としての機能はついでみたいなものです。
室内はぐるりと一周できる構造です。先述のように南北の両端にはエレベーターがあるので窓は東と西を向いています。
西側に見えるのは自然史博物館ゾーン。緑豊かな園内でカナール(浅い水路)沿いにだけ紅葉樹が植えられており、この季節にはいいアクセントです。
東側には遊園地ゾーン。規模はあまり大きくなく、アトラクションもほとんど年少者向けです。
その少し左には植物園ゾーンの大きな温室。熱帯・亜熱帯に成育する約850種の植物を見ることができます。
温室の先は東門。奥を横切るのは東海道新幹線の高架です。
最上階のレストラン「カカポ」と展望室の間は吹き抜けに階段が渡されており、相互に行き来できます。
吹き抜けといってもご覧のとおりガラス張りの屋根がかかっているので雨天時でも濡れることはありません。
階段から吹き抜けの真下を覗き込んでみる。
エレベーターが目的階に到着するとベルやチャイムが鳴る仕様はよくありますが、ここではその代わりに猛獣の鳴き声が響きます。いかにも動物園らしいギミックで、知らずに乗ると意表を突かれる。
下る際に親子連れと乗り合わせたのですが、1階到着時の「パオォーン」という鳴き声を聞いた若い母親が3歳くらいの娘さんに「あっ、いまライオンさんの声が聞こえたねぇ〜」と言うので、すかさず「今のはどう聞いてもゾウだろ!」と(脳内で)ツッコミました。
タワー単独のグッズはないので、園内の売店でのんほいパークのキャラクター「のんちゃんとほいくん」のグッズを2点ばかり買ってきました。これはファスナーホルダー。
こちらはメモパッド。キャラクター化した動物のイラストが描かれた用紙が4面に貼り付けられ、それが観音折りに畳まれているというもの。
入場するときにもらったパンフレットにもタワーに関する記述がなく、せめて建物の高さくらいわからないものかと正門脇にある事務所へ行って訊ねることにしました。日曜日で来園者が多く忙しいにもかかわらず、職員さんはあちこちの書類棚を探して調べてくれたのですが結局その場では判明せず。そんな中で職員さんがめくっていた資料のひとつがこの「動物園ものがたり」という52ページの冊子です。開園50周年を記念して2004(平成16)年に発行された非売品で、私が興味を示すとわざわざ在庫を引っ張り出してきて1部わけてくれました。これにもタワーに関する記述はありませんでしたが動物園の歴史が貴重な写真とともにコンパクトにまとめられており、本稿を書くにあたって大いに参考になりました。
のんほいパーク−豊橋総合動植物公園

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