建物名称 日本海タワー
所在地 新潟県新潟市中央区
高さ 全高40m
竣工 1970(昭和45)年
概要 日本海タワーは新潟市水道局の南山(なんざん)配水場に付属する展望台で、同市の水道事業創設60周年を記念し、観光および水道事業のPRを目的として開設された。
南山配水場は1910(明治43)年に稼働を開始した同市最初の水道施設のひとつで、信濃川と関屋分水路に囲まれたいわゆる"新潟島"一帯を給水エリアとしている。高度経済成長期に人口の増加や産業の発展などによって高まる一方の水需要に対応するため、同市は第4回拡張事業として新規施設の建設や既存施設の更新といった増強策を図ることとなり、その一環として南山配水場は1968(昭和43)年に上下二層の水槽を内蔵する日本で最初のビル式配水池として生まれ変わった。もともと同配水場は高台に位置し自然流下方式で給水していたが、充分な水圧を確保するためには配水池をさらに高い場所へ設置しようという発想で誕生した画期的な構造である。また、これによって貯水能力は従前の4000立方メートルから2万立方メートルへと飛躍的に増大した。
新しい南山配水場の竣工から2年後の1970(昭和45)年には屋上に回転展望台が完成。建物の規模にはやや不釣り合いにも思える「日本海タワー」というスケールの大きな名称は公募で決定したもので、「南山タワー」や「南山スカイランド」など279点の応募があった中から市内在住の主婦の作品が採用された。運営は日本海タワーのオープンを機に設立された財団法人新潟水道サービスが行っている。
TF式分類 亜種
登頂日 2012年4月16日
注意事項 日本海タワーは2014年6月30日をもって営業を廃止しました。建物は当面存置する予定です。
 2012年4月16日の登頂記録

日本海タワーが立っているのはごくふつうの住宅街の一角。バス停が目の前にあり運転本数も多いのでアクセスは便利です。もっとも、今回私が宿泊した古町のビジネスホテルからだと乗るほどの距離でもないので歩いてきました。
タワーの基部となる配水池の巨大な躯体は高台に立っており、沿道からでも約6mの高低差があるためアプローチはこんな急坂です。ゆえにここから撮影するとどうしてもタワーを見上げるアングルになる上、他の建物が被るので建物の全体像が今ひとつつかみにくい。

そこでちょっと引いたアングルを求めて隣接する新潟大学医学部の構内から写してみました。日本海タワーは「タワー」と名前がついているものの塔状の建築物とは言い難く、当サイトでは亜種に分類しています。しかし躯体部分の高さは25m、展望台部分単体の高さは15mですから展望台部分の突出具合はそれなりに塔らしい雰囲気を漂わせています。
注意すべきはこの建物が標高(=海抜)23mの地点に立っていることで、しばしば展望台の高さを「60m」と表記しているガイドブックやWEBサイトがありますが、それはあくまでも土地の高さとの合計であって建物自体の高さではありません。
展望台への入口はアプローチ側を正面とすると左側面の2階相当に位置しています。
ロビーにはささやかなギャラリーがあって、市営水道草創期の写真やメーター、木製水道管の一部などが展示されています。
入場券売場の脇には南山配水場のしくみを解説するパネルが掲示されています。今いるロビーの下には6000立方メートルの低地向け水槽、躯体上部には同じく6000立方メートルの高台向け水槽があり、中央をエレベーターが貫いています。また躯体の外にも8000立方メートルの地上式水槽があって低地向けに配水しています。
エレベーターはだいぶ古びているもののこれといった特徴のない平凡なタイプ。ただ今どき必要とも思えない操作方法の説明が掲示されているのがちょっと面白い。階床ボタンは数字による階数ではなく「上」「下」と表記されています。
到着したのは躯体の屋上階。ここから上は階段だけで登ります。ガラスケース内に展示してあるのは昔の水道職員が着用した法被タイプの制服と制帽。同じフロアには中国のハルビン、ロシアのハバロフスク、アメリカのテキサス州ガルベストンといった新潟市の姉妹都市・友好都市を紹介するコーナーもあり、ご当地の工芸品などが展示されています。
では階段を登るとしましょう。壁面には退屈しのぎ(?)に新潟の方言を紹介する短冊が貼られています。
「んなが ずったすけや」は「お前が動いたからさ」という意味。どんなシチュエーションで発する言葉なんでしょうか。
「柿がふっとつ よんだれ」は「柿がたくさん熟したよ」、「だっちもね がんだろも」は「つまらない物ですが」。こんな暗号みたいなドギツい方言はさすがにもう話者が少なくなっているようで、最後には「現在一部の人達が用いている懐かしい言葉です」とのことわり書きが掲示されていました。
朝9時のオープン直後に入場したのでまだ他の客が全然いない展望台。今や貴重な回転床が稼働中です。鉄柱の位置が悪く、柵から窓まで遠いのが難点。
古い建物ですが明るくて清潔感もあり、座席数は充分すぎるほど確保されているなど快適性は文句なし。建物形状だけ見て「タワーではない」と決めつけて無視してしまってはもったいない施設です。
東側には旧来からの商業地である古町エリアを望みます。新潟駅前・万代エリアまではちょっと距離があるので直接その街並みを眺めることはできませんが、真っ正面に万代シテイのレインボータワー(残念ながら営業廃止)が姿を見せています。
西側には日本海。眼下に広がる住宅地一帯の地名はその名も「水道町」といい、市営水道創設時に関屋浄水場(現在水道局庁舎がある場所)から南山配水場へ通じる水道管が埋設されたことに因む命名です。
展望台の中心には喫茶カウンターがあります。この部分は回転していません。頭上にはここを訪れた有名人のサイン色紙が飾られています。
カウンターの右手壁面には「只今の回転時間」を示すメーターが取り付けられています。針が指している数値は1回転30分のスピードですが、帰り際に窓口の職員さんに訊ねたところでは通常は1回転25分に設定しているそうです。最速14分で回転させることも可能なようですが、1分あたり25度くらいならさほどのスピード感はないだろうと思います。一度イベント的にやってみてくれないかな。
階段は上りと下りで分かれており、下り階段の壁面には県内の難読地名が掲示されています。上越市「直海浜(のうみはま)」は確かにちょっとヒネった読み方だけれども、妙高市「毛祝坂(けいわいざか)」、下田村「蝶名林(ちょうなばやし)」、阿賀町「小手茂(おても)」なんかは無理なく読めると思うんだがなぁ。

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