建物名称 ゼファー那覇タワー
所在地 沖縄県那覇市
高さ 全高82.6m
竣工 1973(昭和48)年
概要 那覇市のメインストリートである国際通りは数十年にわたって慢性的な交通渋滞に悩まされている。その国際通りのほぼ中央、沖縄三越デパートに隣接して立つ那覇タワービルは宝不動産合資会社が完成させた大型駐車場をメインとするビルで、オープン時に沖縄タイムスに掲載された全面広告によれば同ビルの建設意図は「道路交通の円滑化を計り交通事故防止、車輌の盗難防止等の諸問題を解決するため」と説明されている。建物全体としては7階建ての駐車場棟と19階建てのタワー棟が連結したような形態で、観光客誘致の観点からタワー棟最上階には回転床を備えた展望ラウンジが設けられた。設計者は那覇市民会館やホテル日航那覇グランドキャッスルなどを手がけた金城信吉。ビルの管理・運営は宝グループの那覇タワー株式会社が行っていた。
後年、駐車場棟は地下を除いてショッピングセンター「マキシー」に全面改装され多数のテナントが入居して賑わったが、宝不動産改め宝観光開発は本業の不動産事業が不振を極めたことから1999(平成11)年に多額の負債を抱えて破産。2001年に那覇タワーの土地と建物はコンパドール(本社・浦添市/遊技場経営)が買収して2003年にファッションビル「コムディ」として再生した。さらに所有権は2005年に大里総合建材(本社・沖縄県大里村(現・南城市))、翌2006(平成18)年にゼファー(本社・東京/不動産業)へ移り、建物名称は「ゼファー那覇タワー」と改められた。
タワー部分は17階から19階までの3層で、外観上も建物から独立した造形である。完成当初は洋食レストラン「ブルースカイラウンジ」が営業していた。18階は厨房施設で17階と19階が客席だが、17階の床も回転式だったかはわからない。19階はゼファー買収直後の一時期だけ展望台として営業していたが、それ以外は店舗が入れ替わりながらもレストランやバー、喫茶店など飲食施設だったことは一貫している。
なお、外観形状からも展望フロアの業態からもこの建物は純粋な展望タワーではないと判断し、本サイトでは「亜種」として分類することにした。
TF式分類 亜種
登頂日 2008年8月28日
注意事項 ゼファー那覇タワーは2008(平成20)年9月以降すべてのテナントが撤退し閉鎖。2015(平成27)年に解体を終える見通しです。詳細は当ページ最後の「memo」欄を参照してください。
 2008年8月28日の登頂記録
沖映通りから撮ったゼファー那覇タワーです。国際通りには直接面しておらず一方通行の細道をちょっと入ったところに立地しているのですが、それでも那覇市内では超一等地に違いなく、国際通りを歩いているとよく目立ちます。

こちらは2000年4月にほぼ同地点から撮ったもの。宝観光開発が破産した翌年ですが閉鎖はされておらず、最上階も飲食店が営業中でした。かつて芸能界に旋風を巻き起こした沖縄アクターズスクールも当時このビルに入居していました。

こうして見比べてみると外装がずいぶん変わったことがわかります。上の写真のように派手な色彩になったのはコムディのオープン時のようです。

ファサードは原色が踊って賑やかですが、この時点でゼファーは民事再生法の適用を受けており、すでにテナントはほとんど撤退したあとです。

フロアガイドを見ても空き階だらけなのが一目瞭然です。2階の沖縄そば博物館はゼファー譲渡時に当ビルの目玉となった施設ですが、同じくゼファーが手がけた豊見城市のショッピングセンターへ移転したため無造作にガムテープで目隠しされています。
19階にははっきりとタワー展望台と書いてありますね。譲渡当時ゼファーが出したリリース文でもこのフロアは展望台と発表されています。詳細なことはわかりませんがどうやら300円程度の入場料でワンドリンク付きという営業形態だったようで、「ラウンジ」と添え書きされているのはそのためではないかと思われます。

なにしろビル全体を案内する公式WEBサイトが存在しないので、展望台の入場料や営業時間はおろか、そもそも営業しているのかどうかもわからない。今となっては観光施設でもショッピング施設でもなく事実上雑居ビルなので仕方ない面もありますが、そんなわけで今回はほとんど事前情報がないまま「とにかく行ってみよう」と突撃したのでした。
入口脇に「喫茶ティファニー」の看板が出ているかと思えばその背後には「展望ラウンジ涼風」の大きなペイント。葉っぱの陰には「Bar BiGo」の立て看板もあって混沌としています。
登ってみて展望台として営業しているならそれでいいし、喫茶店になっているのだとしても数百円程度の出費を惜しむこともあるまいと判断し、展望台専用と書かれたエレベーターに乗り込みます。
で、着いた19階は喫茶店でした。
実は今回の訪沖に先立つ3ヶ月ほど前に、なんと那覇タワーの19階で働いているという方から当サイトの感想メールをいただいたので、これ幸いと返信の際に現状を尋ねてみたのですが、再返信によれば「昼は喫茶店、夜はバー」という営業形態とのこと。「一応展望台としてもやっている感じです」というあやふやな回答に「自分の勤めてる場所なのに何でそんなこともわからねーんだ!」とちょっとイラついたものでしたが、どうも同じフロアを昼と夜で違う店が共用しているという妙な形態らしい。メールをくれたのはバーの方で働いている人だったのでしょうね。
座席は上の写真に見られるように4人用のテーブル席とバーカウンターがあるほか、一部はこのようにソファがセットされています。この写真では判別しにくいですが、観光施設だった名残で窓にはその方向に見える主要地名が掲示されています。

回転床の痕跡は壁際の警戒色に見てとれますが、すでに稼働していませんし、いつから停止状態なのかもわかりません。

お店を切り盛りしているおばちゃんに聞いたところではこの喫茶店も8月いっぱい(つまりあと3日)で閉店することが決まっていて、そのあとこのフロアやビルがどうなるかは全くわからないとのことでした。今回の訪沖はツアー代金が安くなる9月に予定していたのを同行者のスケジュールが合わず前倒しにしたのですが、それが結果的には絶妙なタイミングとなりました。

国際通りの東側の眺め。手前の看板は沖縄三越、右の高層建築はホテルパームロイヤルNAHA。奥にはモノレール牧志駅が見えます。
北西へ伸びる沖映通り。通りの名前の由来となった映画館「沖映本館」はとっくに存在せず、1965(昭和40)年に映画の興行をやめています。ちなみに国際通りの名前の由来も映画館「アーニーパイル国際劇場」であることは基礎知識です。
中央左手の白い大型ビルはかつてのダイエー那覇店。右奥に見えるのは泊ふ頭旅客ターミナル「とまりん」で、久米島、粟国島、南北大東島などへの航路が発着します。

南側にはアーケード商店街の屋根が見えます。左から順に平和通り、むつみ橋通り、市場本通り。もともとは那覇市民の日常的な買い物スポットでしたが今ではかなり観光地化が進行しています。

ゼファーは東証1部上場企業であったが2008(平成20)年7月に資金繰りの悪化から民事再生法の適用を申請して事実上倒産した。同社は2011年7月に民事再生手続きを終結したが、その一環で那覇タワービルは同年8月に不動産再生事業を手がける株式会社イントランス(本社・東京)へ売却されている。さらに2014(平成26)年7月にはグリーンホテル・ズ コーポレーション(本社・福岡県久留米市)が買収しており、再開発に向けて2015年中に解体されることとなった。

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