建物名称 名古屋港ポートビル
所在地 愛知県名古屋市港区
高さ 全高63m 展望室床面高53m
竣工 1984(昭和59)年
概要 名古屋港は国内でも特に重要な港のひとつとして、港湾法に定める国際拠点港湾に指定されている。輸出においては自動車関連品目、輸入においては液化天然ガスや鉄鉱石などの天然資源がそれぞれ約6割を占める貿易港で、年間貨物取扱量は2002(平成14)年度に千葉港を抜いて以来日本一の座にある。港湾面積も広大でその範囲は名古屋市、東海市、知多市、弥富市、飛島村の5市町村に跨がる。
名古屋港ポートビルが建っているのは最も湾奥部となるガーデンふ頭と称する一角である。1907(明治40)年の開港時に2号地として整備されたエリアで、長らく港の中枢部の地位にあった。しかし戦後の埋立による港湾区域の拡大にともなって大型船対応の貨物埠頭や物流拠点が沖合側へ移動すると相対的に2号地の港湾機能は低下し、周辺地域の人口流出や商業不振をも招くようになった。そこで1977(昭和52)年の「親しまれるみなとづくり懇談会の提言」を承けて付近一帯の再開発が行われることとなり、その一環で従前の中央ふ頭と東ふ頭を統合して誕生したのがガーデンふ頭である。名称は1980(昭和55)年に公募によって決定した。ガーデンふ頭には1983年の臨港緑園を皮切りに、翌84年には名古屋港ポートビルが完成。89年の世界デザイン博覧会では名古屋港会場となり、その後も名古屋港水族館や遊園地、大型商業施設が続々とオープンした。今や船舶の出入りはクルーズ客船が不定期に寄港する程度に留まり、すっかりレジャーエリアへと変貌している。
名古屋港ポートビルは名古屋港管理組合が所有し、指定管理者として名古屋みなと振興財団が運営を行っている。当ビルの設置条例にはその目的を「名古屋港を住民に親しまれる港とするための施設を提供するとともに、海事に関する知識の普及を図るため」と謳い、メイン施設として展望台および名古屋海洋博物館を備えている。
TF式分類 第1種 II類
登頂日 2011年11月26日
 2011年11月26日の登頂記録
名古屋港ポートビルは港に立地する建物にふさわしく「白い帆船」をイメージしたデザインです。そこまでは誰が見ても一目瞭然ですが、それに加えて夜間にライトアップされた展望室と見張室(6階。現在は会議室として利用)は2基の宇宙船を、カプセル状のシースルーエレベーターは宇宙ロケット連絡船を連想させるに違いない……と設計者の村瀬夘市氏は述べています。
出入口は1階に2カ所、歩道橋に接続する2階に1カ所ありますが、地下鉄名古屋港駅からの歩行者動線上にあるここがメインエントランスと考えていいでしょう。
入るとすぐ展望室の入場券販売機があります。3階の海洋博物館とビルの目の前に係留された南極観測船「ふじ」、さらに名古屋港水族館との共通割引チケットも買うことができますが、今回はそれらを観覧するつもりはないので展望室単独券を買うことにします。
エレベーターは2基。扉に描かれた帆船が印象的ですが、微妙に異なる色遣いは朝の海と夕方の海を表しているのでしょうか?
エレベーターは水平断面が鍵穴型という特殊形状。天井部の意匠は灯台のフレネルレンズをモチーフにしているのでしょう。
7階展望室に着きました。エレベーターのドアが開くと係のおねえさんが出迎えてくれ、ここでチケットのチェックを受けます。まだ開場後30分という早い時間帯のせいか他の客はいません。
北側の名古屋駅方面の眺め。JRセントラルタワーズやこのあと登るミッドランドスクエアが見えます。右手遠方には冠雪を頂いた御嶽山もうっすらと写っています。
視点をちょっと西へ移すと、足もとには1985(昭和60)年から永久係留されている南極観測船「ふじ」。中央にある横に長い低層建物は飲食店や土産店が軒を連ねるJETTY(ジェティ)。観覧車のある一角は遊園地・シートレインランドで、トレインというのはこの場所がもともと貨物駅の敷地だったことにちなむネーミングです。
さらに西へ視線を向ければ名古屋港水族館。ポートビルとは所有者・運営者が一緒で、両館は水色のアーチが架かるポートブリッジで結ばれています。

展望室の南側の先端部からは伊勢湾岸自動車道にかかる斜張橋・名港トリトンが見えます。今や名古屋港のシンボルといえばあれが一番認知されているのではないでしょうか。

窓際には2基の航空障害灯。室内に設置されているのはかなり珍しく、思わず「これは展示品ですか?」とおねえさんに訊ねてしまいました。おねえさんは特に珍しいとも何とも思ってなかったそうで(笑)

港の展望台なのに航行船舶の姿を間近に見られる機会は少なく、月に数回やってくるクルーズ客船の入港予定表が配布されています。スケジュールは名古屋港のWEBサイトでも公開しているので事前に調べてからここへ来るのも手ですね。
名古屋港のマスコットキャラクター「ポータン」と「ミータン」。開港100周年を記念して2006(平成18)年にデビューしました。ボラード(船を係留するためのワイヤーを引っかける係船柱)を擬人化したデザインなんだとか。おお〜、これはかわいいぞ!
ポートビルのキャラクターではないもののグッズがあればぜひ欲しいところでしたが、どうも水族館だけの取扱いで、しかも常時販売しているわけでもないらしい。
北側の端っこから南側を見通すとこんな感じ。
この日はとにかく天気が良く、海側の景色は眩しさでまともに見ていられないくらいでした。
エレベーターの向かい側の非常階段はドアが開放されているので、おねえさんに「ここ通れるんですか?」と訊ねてみたら「通れますよ」とのことだったので下りは階段で。5階までは171段です。

5階から下は六角形の螺旋階段で1階までは110段。
階段で上り下りしたがる物好きは少なくないらしく、段数は1階に掲示されていました。いくら私でもわざわざ数えながら下りたりしませんよ。

3階は名古屋海洋博物館。設置条例に基づいてポートビルが存在意義を保つための施設です、と言ってしまっては辛辣に過ぎるでしょうか。有料施設ですがパンフレットや公式サイトを見る限り無料で公開している博多ポートタワー併設のミュージアムと大差ないように見えるんですが……。
2階には海の見えるレストラン「東山ガーデン」と大小4室の貸会議室があります。吹抜を囲む回廊はギャラリーとして利用されています。
1階は休憩コーナーと、特に用途がなく無駄に広いロビー(上の写真で吹抜の下に写っている部分)があるだけ。オープン当時には売店も営業していたみたいです。
こうしてみるとポートビルって規模が大きいわりには拠点性とか有用性に乏しく、中身のない建物だなぁというのが率直な印象です。
灯明台や浮標といった航路標識を並べたこのスペースは下部建物最上階の5階まで吹き抜けになっている光庭。この写真はガラス越しに撮ったもので、通常立ち入りはできません。
背後は5万枚以上のタイルを用いたモザイク画「希望」で、2対のサンゴ樹が海底から宇宙へと到達する様子が幅12m・高さ20mの壁面に描かれています。
あと辛うじて公益性がありそうなのは遊覧船と水上バスのきっぷ売場くらいかな。
名古屋港ガーデンふ頭(公益財団法人名古屋みなと振興財団)

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