建物名称 水と緑の館展望タワー
所在地 岐阜県海津郡海津町(現・海津市)
高さ 建物本体高65m(屋上の柵を含む) 展望室床面高56m
竣工 1987(昭和62)年
概要 国営木曽三川公園は、木曽川、長良川、揖斐川の総延長107kmの川岸に展開する日本最大の都市公園で、下流から順に河口地区、中央水郷地区、三派川地区の3ブロックに分かれている。このうち中央水郷地区の拠点となる木曽三川公園センターの核施設として、展望タワーと展示ホールから成る「水と緑の館」がある。
木曽三川下流域は海抜ゼロメートルの低湿地帯であり、大昔から農民たちは度重なる水害に悩まされてきた。このため土地を堤防で取り囲んだ「輪中」が成立したことは周知のとおりだが、根本的な解決策として、複雑に絡み合って流れていた木曽三川を分流させるための大規模な改修工事が2度行われた。江戸時代中期に薩摩藩家老・平田靱負(ゆきえ)を総奉行として行われた「宝暦治水」と、オランダ人技師ヨハネス・デ・レーケの指揮で25年を費やした明治期の改修がそれである。このように当地の歴史は「治水」を抜きには語ることができない。水と緑の館では治水のあゆみや木曽三川の自然などを紹介する展示が行われているほか、公園センターの敷地内には「水屋」と呼ばれる輪中特有の農家の建物が復元されている。
展望タワーの建設は中日新聞社が創業100周年記念事業として岐阜県加子母村(現・中津川市)の「国民の森」造成とともに取り組んだものであり、このことからオープン当初は「中日治水タワー」と呼んでいたようである。
TF式分類 第1種 II類
登頂日 2003年5月1日
 2003年5月1日の登頂記録
木曽三川公園センターへは町営バスが1日に3本しか走っていないという不便さなので、近鉄養老線の多度駅からタクシーでたどり着きました。ゴールデンウィーク中の晴天とあって、飛び石の中間の平日なのにけっこうな人出です。
水と緑の館展望タワーは四角張った形状でこれといった特徴には乏しい外観。同じ国営木曽三川公園に立地する愛知県一宮市の「ツインアーチ138」に比べるとはるかにおとなしいデザインです。
タワー本体には直接出入りできる箇所はなく、エントランスは展示ホール棟の方にあります。なるべく他人を写さないように気を遣って撮影しているので、人の流れが途切れるタイミングを待っていたのですが、意外と頻繁に出入りがあって、こんな写真でもシャッター切るまでに時間がかかりました。
展示ホール、展望タワーともに有料施設なので、インフォメーション脇の自販機でチケットを買ってから入場します。チケットはおねえさんに回収されてしまうので手元に残りません。オリジナルグッズの類も制作・販売されていないので、パンフレットくらいしか記念に残しておけるものがないのは残念。
エレベーターホールのようす。右手には階段室があって、ドアが開いています。つまり歩いて登ってもいいですよ、ということなのですが、疲れるので遠慮しときます。
エレベーターを待つ間、ふと左手に目をやると、なんと森繁久彌の肖像写真と額が飾ってあるじゃありませんか。森繁さんは水と緑の館の名誉館長なんだそうです。
額の方は達筆すぎて何が書いてあるのか判読するのがたいへんだったのですが、簡単に言うと宝暦治水工事に携わった薩摩藩士を顕彰する内容でした。宝暦治水を描いた杉本苑子の直木賞受賞小説「孤愁の岸」が舞台化されたとき、森繁さんが主演した縁があるんだそうです。

最後は「中日治水タワー建立によせて」という一文で締めくくられています。この呼び方が当初は正式なものだったのか、はたまた通称だったのかはどうもよくわかりません。

エレベーターはご覧のようにシースルーになっているのですが、ゴンドラと外壁の窓の大きさが合ってないじゃないか!
展望室はゆったりとした広さがあり、全周にめぐらされた窓から木曽三川の雄大な風景を楽しむことができます。
西側を流れるのは揖斐川。油島大橋を渡ると三重県です。近鉄多度駅までは約3km。
東側は長良川が流れ、その向こうには木曽川。長良川大橋と立田大橋を越えると愛知県で、余談ながら帰りは4km向こうの名鉄尾西線佐屋駅までタクシーで行くことになりました。
橋の上はたびたび渋滞が発生するとのことなので、公園センターはドライバーの休憩場所としても格好なのかもしれないですね。
タワーの南方では、右の揖斐川と左の長良川が背割堤を挟んで並んで流れ、伊勢湾を目指しています。この背割堤には治水工事の完成直後に薩摩藩士が千本の松の苗を植えたといわれ、現在は国指定の史跡「千本松原」となっています。
また、右側の杜には治水の功労者である平田靱負を祭神とする治水神社が建立され、毎年春と秋の慰霊祭には遠く鹿児島からも多くの人が訪れるそうです。
展望室の西側の一角には直下を眺める窓があります。しかしガラスが曇ってしまって見通しがよくないのが惜しい! 裏側から拭き掃除するのは難しいんでしょうねぇ……。
下りは階段を使ってみました。殺風景で内装すら省略されていますが、本来は非常階段であり、混雑時にエレベーターを待っていられない人はどうぞ。という理由で開放されているにすぎません。私は別にエレベーターを待てないほどのせっかちさんではなく、単に物好きなだけです(笑)。
展示ホールではジオラマや映像によって、治水の歴史や川の周辺に棲息する動植物などについて学ぶことができ、小学生の団体が社会見学の一環で訪れることも多いようです。
この日はあいにく映像装置の調子が悪く、2度の治水工事を紹介するアニメ作品を観覧することができませんでした。
国営木曽三川公園

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