建物名称 ゴールドタワー
所在地 香川県綾歌郡宇多津町
高さ 避雷針高158m 建物本体高144m 展望室(3階)床面高127m
竣工 1988(昭和63)年
概要 四国の人々の永年の悲願であった瀬戸大橋が開通したのは1988(昭和63)年4月のことだった。20世紀最大の国家プロジェクトと言っていいこの巨大な橋が四国にもたらした恩恵は、特に観光の分野において絶大であった。にわかに「瀬戸大橋ブーム」が巻き起こり、全国から怒濤のごとく観光客が押し寄せたのである。そんななか、瀬戸大橋の四国側玄関口・坂出市の西隣に位置する宇多津町に巨大な展望タワーがオープンした。それがゴールドタワーである。避雷針までを含めた全高158mは、電波塔、灯台、ホテルなどといった機能を付属させない純粋な展望タワーとしては日本一だといわれている。
ゴールドタワーの建設・運営の主体となったのは生理用品やベビー用品などでおなじみのユニ・チャーム(本社・愛媛県)で、オープン当初は連日入場者の長い行列ができ、駐車場は本州からの観光バスでびっしり埋まるほどの人気施設であったという。
しかし、ブームが一段落するとタワーを訪れる観光客は減少する一方となり、開業4年目から赤字を出すようになる。事業開始時には年間300万人の集客を見込んでいたが、実際は開業した年の158万人がピークで2000(平成12)年には33万人にまで落ち込み、累積赤字も50億円に達した。そしてついにゴールドタワーは2001年9月限りで営業を中止してしまったのであった。
TF式分類 第1種 I類
登頂日 2001年8月4日
注意事項 ゴールドタワーは全面的なリニューアルを経て2004(平成16)年に営業を再開しています。詳細は当ページ最後の「memo」欄を参照してください。
 2001年8月4日の登頂記録
青空を背景に聳え立つゴールドタワーの威容であります。その名のとおり全身を金色に輝かせ、圧倒的な高さも相まって周囲の風景とはまるで調和しない姿を晒しています。

なんだか輝きがくすんで見えるのは、たぶんとっくの前に外壁ガラスの清掃をやめてしまったからなのでしょう。客足がすっかり遠のいた斜陽の塔は今まさに光を失いつつあり、鉛直方向においてはおそらく日本最大の廃墟に変身する日を静かに待っているのです。

ゴールドタワーはタワーだけがぽつんと単独で建っている施設ではなく、周囲には飲食店や各種ショップ、ゲームコーナーなどが軒を連ねています。これは敷地内の案内図。閉鎖したりテナント替えがあった部分にはべたべたとシール貼りで訂正してあって見苦しいことになっています。

左下の方に「北野印度会社」という表示が残っていますが、そういえばタレントショップというのが一時期大流行したことがありましたね。かつて私が大ファンだった酒井法子の「NORI-Pレストラン」もこの一角にありました。レストランオリジナルのコーヒーカップを東京ののりピーショップで買ったこともあったっけなぁ……(遠い目)。

カウンターでチケットを買ってエレベーターホールへと進みます。この写真はフラッシュを発光させて撮っていますが、実際はもっと暗い空間です。エレベーターは向かい合わせに2器あって、上り客用と下り客用とに使い分けているようです。
ボタンを押して待つことしばし。展望階行きのドアが開きました。エレベーターガールのおねえさんにチケットをもぎられてさっそく乗り込みます。
タワーのエレベーターといえばシースルーなのはお約束です。外壁は金色ですが内側からはご覧のとおりちゃんと下界を眺めることができます。そうです。ハーフミラーになっているんですね。

この金色のハーフミラーは6000枚以上使用されているとかなんとか、おねえさんがタワーの概要について細かい数値データを織り込みながら流暢な語り口で解説してくれたのですが、あとでパンフレット等を見てもそれらの数値がどこにも書かれていない。あぁ、こんなことならちゃんとその場で解説の内容をメモしておくんだったと後悔しきり。

タワーのエレベーターにはこれまたつきものの高度表示計です。

ところで、当然といいましょうかエレベーターの客は私ひとり。それでもおねえさんがちゃんと手抜きをせずにガイドしてくれるわけなんですが、この1対1で解説を聞かされるというのはどうにもいたたまれないものがあります。黙って外の景色を眺めているのも無視してるみたいでイヤだし、さりとていちいちうなずいて聞いているのもヘンだしね。おねえさんのほうは慣れっこなんだろうけど。

それより気になるのは、エレベーターは客が来なけりゃ動かさないわけで、するとおねえさんはいつ来るかわからない客をこの小さな箱の中でじーっと待っているのだろうかということです。それを想像するとなんだか息がつまる。

で、最上階の展望室のようす。私のほかに3組ほど客がいたのでちょっとだけ安心。展望室は3フロアから成っていて、ひとつ下のフロアは「カフェシャンテ」という名前の喫茶スペースになっています。さらにその下のフロアは後述。
この日は快晴だったのですが、遠くの方はやや視界がわるい状況。画面中央を瀬戸大橋が横切っているのがおわかりになるでしょうか?
こちらは宇多津の市街地の展望。中央付近に見える高架がJR予讃線で、右側から奥へのびる太い道の先に宇多津駅があります。

こうしてみると妙に空き地が目立ちますが、高層マンションが続々と建っている様子もうかがえます。区画整理の途上ということなんでしょうか。

右手のレンガ色の建物はビブレ。このあと乗ったタクシーの運転手さんによると、ショッピング客はすっかり対岸の岡山に流れてしまい、地元の商業施設もなかなか苦戦を強いられているとのこと。

エレベーターを下りたところにアクアダンパーの解説板と模型が展示してありました。アクアダンパーというのは建物の制震装置のことで、ものすごく簡単に言うと最上階に巨大な水槽を置くことによって地震の際に起こる建物のぶれを抑えるというものです。
模型は金属片を脚にした不安定な台座が2つ並べられ、台座の上に水槽がある場合とない場合との揺れ幅の比較ができるようになっています。
理屈はわかったけど、こんな高さで地震に遭遇したら震度1でもかなりビビるだろうなぁ。やっぱり。
展望室の一角に、あまりにも唐突に鎮座ましましているのは金箔薬師如来像。集客イベントの一環として今年のゴールデンウィークごろから安置されているとのこと。
願を掛けたい人は2cm四方ほどの金箔片を買い求めて像に貼り付けましょう。ということなんですが、いや、これが意外なことにおびただしい数の金箔が貼られている。大したヒット企画じゃないの!
どういうわけか像の傍らの立て札に貼ってるヤツも相当数いて、字が読めなくなってます。そんなしょーもないことを金払ってまでやる神経というのが理解できん。
薬師さまに関連して絵馬やおみくじなんかも売っていて、これまたおびただしい数が特設コーナー(?)に結びつけられている。薬師さまの集客効果は絶大なり!
喫茶スペースのさらに下のフロアは「ゴールドドラゴンツアー・Gパニック」と題したシミュレーションシアターがあります。ゴールドタワーがゴールドドラゴンに姿を変えて天空を飛び回り、四国の旅をエキサイティングに体感させてくれる……という内容で、画面の動きに合わせて座席も連動するしくみなんだそうです。
地元ではオープンからしばらくの間このゴールドドラゴンが登場するテレビCMが頻繁に流されていたと聞きます。

別料金が必要というのがイマイチ面白くないですが、この際なんでも見てやろうとチケットを買おうとしたら、ご覧のとおり営業していない。
おや、パンフレットをよく見ると「土・日・祝日営業」と書いてある。なーんだ、そうだったのか……って、今日は間違いなく土曜日なのだが。

展望室からまた1対1でおねえさんのガイドを聞きながらエレベーターで下りてきました。タワーの根元の部分は1階がみやげ物売り場、2階が飲食店街になっていて、下りエレベーターの客は2階で降ろされます。写真はその2階の様子。

くどいようですが客がいません。讃岐うどんやらお好み焼きやら寿司やらのお店があるんですが、お昼にはちょっと早い時間帯とはいえ、どこも開店休業状態です。店員が思いっきり伸びをしながらアクビしているのが窓越しに見えたりして、なんとも切ない気分にさせてくれます。
無謀にもバイキングの店まである。バイキングって相当数の客の回転がなければ成立しないでしょうに……。

タワーに隣接して世界のトイレ館・チャームステーションがあります。入場料が必要ですがタワーとのセット券なら割引価格になります。当然セット券を買いましたとも!
トイレ館最大の呼び物といえばこれ! 純金製トイレです。
あたりまえですが使用できませんし、見学もガラス越しです。ついでに純金製スリッパというのもありまして、これもガラスケースの中に展示されているんですが両手を突っ込むだけの穴が開けられていて「どうぞ触ってみてください」という趣向になっている。せっかくなので触っておきました。

館内の展示はいたって真面目で、便器の歴史的変遷がずらりと並んだ実物で見られるのはなかなか興味深かったです。ただ、あっという間に見終わってしまうので入場料が高い割には肩すかしという感が否めない。

展示スペースとは別に、館内には広々と快適な公衆トイレもあり、こちらは無料で自由に使うことができます。せっかくなので記念ウンコしてきました(笑)

1階のおみやげ売り場で店員のおねえさんに「なんでもいいからタワーのロゴが入ったグッズはないか」と訊ねたところ、営業中止が発表されてからはすっかり売れてしまったとのことで、唯一手に入れることができたのがこの純金テレカです。
50度数なのに1500円という価格が災いして売れ残ったんでしょうか。いや、価格よりも絵柄のせいかも知れない。せっかく純金で高級感あふれるテレカを作ったというのに、どーんとでっかく描かれているのが便器じゃあなぁ……。このデザインセンスにはまったく脱糞、じゃなくて脱帽するしかありません。
2001(平成13)年12月に一旦再開を果たしたのち再び営業を休止したが、2004(同16)年に香川県内で飲食店やホテルを展開している味匠グループが経営を引き継いで同年8月1日に屋内アミューズメント「プレイパーク ゴールドタワー」としてリニューアルオープンを果たした。残念ながら「世界のトイレ館」は現存せず、純金トイレは展望台に移設のうえ公開されていたが2007(平成19)年9月をもって展示終了となってしまった。

プレイパーク ゴールドタワー

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