建物名称 明石市立天文科学館
所在地 兵庫県明石市
高さ 全高54m 展望室(14階)床面高40m 展望室(13階)床面高37m
竣工 1960(昭和35)年
概要 日本標準時の基準子午線である東経135度線は、京都府網野町から兵庫県東浦町までの16市町村を縦断しているが、その中でもとくに明石市が「子午線のまち」として有名なのは、市立天文科学館の存在によるところが大きいのではないだろうか。
同館ではタワー部分を「高塔」と呼んでいる。外観上の特徴はなんといっても標準時を刻む大時計だろう。正確に東経135度線上に位置し、同館のみならず明石市のシンボルとして広く親しまれている。また、塔の最上部には口径40cmの反射望遠鏡を備えた観測ドームがあり、昇降するエレベーターの振動が望遠鏡に伝わらないよう、外壁部分の外塔とエレベーターシャフト部分の内塔とが分離した二重構造になっているのも特徴である。
なお、経度には天体観測の結果に基づいて決定される「天文経度」と、基準地点からの地上測量に基づいて決定される「測地経度」の2種類があり、このため同じ経度であっても両者の間にはズレがある。同館の高塔が立地する東経135度とは天文経度の方で、地図上の東経135度線(日本測地系)は同館の約370m西を通過している。
TF式分類 第1種 II類
登頂日 1回目 2002年5月5日
2回目 2013年4月20日→この日の登頂記録へスキップ
 2002年5月5日の登頂記録
人丸山の中腹に建つ明石市立天文科学館の建物はJRや山陽電車の車窓からもよく見えます。
上部の大時計は直径6.2m。日本標準時を示すだけでなく、12時と6時を結ぶ垂線の位置を東経135度子午線が通過していることを示す標識でもあります。ちなみにこの大時計はセイコーから寄贈されたもので、現在のものは1997年に稼働を始めた3代目。2代目は神戸学院大学の校庭に移設されています。
2層になっている展望室の上層にあたる14階。でもここは最上階ではなく、てっぺんは16階の天体観測室です。したがって本当にこの高塔を極めようと思ったら毎月1回開催されている夜間の観望会に参加しなくてはなりません。
この日は好天に恵まれたものの、明石海峡大橋は霞んで見えています。画面中央の鉄道線路は手前がJR山陽本線で、海側をぴったり併走するのが山陽電車。右手に見える人丸前駅は東経135度線が横切っている唯一の鉄道駅で、ホーム上に子午線を表す白線が引かれています。
視点をちょっと西に向けて、こちらは明石駅の方角。毎年6月10日には「時の記念日」にちなみ、市役所が発行する「子午線通過証明書」を明石駅で配布しているのだそうです。そうと知ると欲しくなるな〜。
下層の13階は直径が小さくなった分、ぐっと狭くなっていますが、望遠鏡はこちらにだけ設置されています。
13階だ14階だとは言っても、サロンやホールのある4階から13階までは中間階床がありません。塔内のらせん階段が半周するごとに踊り場があって、それをワンフロアとみなすという考え方に基づいているようです。
エレベーターが混雑していたのでこの階段を下りてきましたが、ぐるぐるまわったおかげで、さすがにちょっと頭がくらくら……。
3階展示室の一角には、大時計を制御する親時計があります。と言うと、ここから日本標準時が発信されているのかと勘違いしてしまいそうですが、そうではありません。
東経135度というのはあくまでも基準でしかなく、実は標準時を発信しているのは東京都小金井市にある独立行政法人通信総合研究所のセシウム原子時計なのです。
この親時計は通信総合研究所のテレホンJJYと呼ばれる電話回線による標準時供給システムから時刻情報を受信して自動補正しながら動作しているというわけです。

まあ、非常に難しい話なので詳しいことは専門のサイトでも探してみてくださいな。

建物の規模の割には小ぢんまりとまとまった3階展示室。全体的に照明を落としてあるのは宇宙空間をイメージさせる演出を狙っているのでしょう。
売店で販売されている科学館のオリジナルグッズには、ご覧のように月夜の高塔をデフォルメしたイラストがあしらわれているので、これは立派なタワーグッズであると言っていいでしょう。ひと目でこのデザインが気に入ってしまったので、レターセットとステッカーとキーホルダーを買ってきました。

このほか「明石市立天文科学館の40年」という冊子も購入しました。科学館そのものの沿革だけでなく子午線や標準時に関する解説も豊富でおすすめしたい一品です。

 2013年4月20日の登頂記録
明石市立天文科学館を訪れるのは11年ぶり。まずは前回撮らなかったエレベーターの天井からご覧いただきましょう。高塔は正確に東経135度の子午線上に位置しているわけですが、ということはその中心を貫くエレベーターも当然東経135度線上にあるということ。そこで天井には子午線を可視化したイルミネーションが施されています。
今回当館を再訪したのは16階の天体観測室への登頂が目的です。従来、月に1回程度行われる夜間の観望会でしか立ち入ることのできなかった16階ですが、2008(平成20)年度からは観望会が実施される日の日中に限り一般公開が行われるようになりました。さらに今年度からは毎週土曜日の午前中に定期公開されることとなり、観覧するチャンスが一気に増加! 特に私のような遠征組にはスケジュール調整がしやすくなりました。
エレベーターは展望室のある14階までなので、そこから上は階段で登ります。
16階は狭い上に通路の天井が低いのでやや圧迫感があります。中央が円形ステージのように一段高くなっていて、そこに天体望遠鏡が設置されています。
天体望遠鏡は口径400mmの反射望遠鏡に150mm、80mm、76mmの3台の屈折望遠鏡がくっついたものものしい姿。コンピューター制御で目的の星を自動追尾し常にファインダーに捉える機能が備わっています。
なにしろ巨大なので望遠鏡の接眼部にはステップを登らないと届かない。このステップ上が当館で来場者が到達し得る最も高い場所で、ここまで来てやっとこの塔を“完全制覇”したことになるのです。
ドーム屋根の開口部から明石海峡大橋を見ます。当然ながら日中は星が見えないので代わりに橋にフォーカスしているわけですが、かえってそのほうが望遠鏡の高倍率を実感できます。
天体観測するときにはほとんど意識することはないのですが、実はファインダー越しの風景は上下逆像なんですよね。
こちらは通路の窓から見た風景。右側の視界を遮るのは塔頂部の大時計です。案外薄っぺらいんだな。
高塔内の階段は二重螺旋構造になっており、1階から14階までの“青”と3階から16階までの“赤”の2系統があります。そのうち青階段の壁面にはビッグバンに始まり人類が誕生するまで約137億年の宇宙の歴史を1年=365日に置き換えた「宇宙カレンダー」が掲示されています。ちなみに赤階段のほうの掲示内容は全天88星座のイラスト。
どちらも3階展示室を全面リニューアルした2010(平成22)年に掲示を開始しました。
青階段の蹴込みの部分は壁面のカレンダーに対応するかたちで二十四節気や主な天文現象の日付が掲示されています。
オリジナルグッズのラインナップは大幅に変わっており、現在当館のイチオシは「軌道星隊シゴセンジャー」なるご当地ヒーローもの。しかし私が欲しいのはあくまでもタワーのグッズなのでそれらは眼中になく、建物をあしらったポップアップカードを買ってきました。
商品は自分でピックアップするのではなく、カウンターのおねえさんにショーケースから出してもらうスタイル。購入品を確認する際に「こちらの“正面”のと“ドななめ”のですね?」と訊かれたのでちょっと笑いそうになってしまいました。たしかに左のカードはパースをかなり強調したデザインですが、ドななめっていうのはなんだか関西っぽい表現でいいなぁ。
直接タワーには関連しないが、概要欄の「日本標準時子午線が縦断している市町村」について補足しておく。2002年に測地経度の表示が日本測地系から世界測地系に変更されたため、東経135度子午線の位置が東へ約250m移動した(天文経度の東経135度線からは約120m西方)。これにより和歌山県和歌山市が新たに加わったほか、2006年までに実施された市町村合併による異動で、現在は「京都府京丹後市から和歌山県和歌山市までの12市」となっている。
明石市立天文科学館

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