合唱組曲 『筑後川』 第3章 「銀の魚」 のまちで

團伊玖磨記念 『筑後川』 IN城島 2004
     
 

小雨の久留米を訪ねた僕は、友人に案内されて城島に向った。城島には、エツを獲る小舟が何艘かあって、事によれば、そのどれかに乗せて貰えるかもしれぬというのである。
20分ばかりのドライヴの後に、僕たちは、小雨の中にしっとりと横たわっている城島の町に着いて、「魚新」という料理屋を訪ねた。「魚新」の人たちに案内されて、筑後川に かヽった鉄橋を渡ると、対岸の佐賀県側にある舟着場から小舟に乗り込む事となった。僕たちは小さなエンジンの音を川面に伝えながら、ゆっくりと上流に舳を向けた。こうして 川の中に出てみる筑紫二郎は、陸から眺めた姿にもう一つ輪をかけた大河の様相を示していた。川幅と言い、悠々と流れる豊富な水量と言い、小雨に煙ながら遠くどこまでも続く 緑の堤防と言い、筑紫二郎は、まさに大河である上に、何か不思議な気品を漂わせていた。(後略)

これは「パイプのけむり―エツ」の中で、團先生がエツに会うために城島を訪れた時のことを著したエッセイです。今年の「團伊玖磨記念『筑後川』コンサート」は 、團先生が『筑後川』を作曲するに当たりその曲想を練るために訪れた城島町で開催されました。


歓迎の挨拶をする佐藤利幸城島町長


11月7日(日)團伊玖磨記念 『筑後川』 IN城島 2004は第19回国民文化祭ふくおかの一環 として、城島町の一連の行事の最終日に「ファイナルコンサート」として行われました。二枚看板でまさに国民文化祭に相応しい催しであったと自負しております。
『筑後川』大合唱の参加者は、今年は個人参加者、合唱団とも増え600名となり、「午前の部」「午後の部」「夕方の部」の3回公演となりました。
個人参加者の中には、遠くは宮城県から、また東京、岐阜、広島からも参加してくださいました。
宮城県から来られた三浦さんは、NHKの『ラジオ深夜便』でこのコンサートの事を知り、以前歌ったことのある『筑後川』を是非地元の方とうたいたいと思い、独りで参加されま した。
また、岐阜県から参加されたのは、昨年の「IN吉井」を見学にみえた日進中学校の高木先生が、来年卒業記念に『筑後川』全曲を演奏するという3年生の生徒さんの中から4名を 連れて参加されました。
広島から参加された佐々木さんは、ご実家が城島町の方で、広島で歌う『筑後川』がなんとも物足りなくて、是非本物の『筑後川』のほとりで歌いたいと、久し振りに里帰りしてこら れました。
このように、年々参加する人の輪が広がり、また「第2部」の―團 伊玖磨作品をうたう―のコーナーでは、毎年新しい合唱団が團先生の作品を披露してくださって、埋もれている團作品 を皆さんにご紹介できる事を大変嬉しく思います。
11月6日のゲネプロが終わった後の交歓会では、3年連続出場で顔なじみになった参加者や今年初めて参加した遠来の方など、地元城島町の女声合唱団のメンバーの方が作って くださった心づくしの手料理をいただきながら、和気藹々の楽しいひとときを過ごしました。(Y 記)