@4年111日  夜  街外れの森

 浮かんだ月が葉影から覗く。
 木々の下までその光はあまり届いて来ないが、女神の姿はそれでも闇から浮いて見える。
 黙って佇む女神を見上げ、ナガイはぽつぽつと報告を述べる。
「あのような魔物は、今まで見たことがない」
 話すのは専ら、初めての魔物のこと。
 ケルベロス。
 まだどれほどのレベルかは分からないが、すぐにフェルフェッタが調べあげるだろう。本人がそう息巻いていたから間違いはない。
 彼女の話によれば、以前に該当レベルの魔物が出たのは百年以上も前だと云う。
 そんなのはナガイの祖父の祖父の時代のことだ。父親の顔すらおぼろにしか覚えていないナガイにとっては、想像も出来ないほどずっと昔の話である。
 報告の間、女神は冷徹とも云える表情でナガイを見下ろしている。
 ナガイはその視線を受けながらしばし黙り。
「女神は、知っていたことか」
 睨んで問うた。
「強い魔物が出ること。これは、女神の云った災いに繋がるものか」
「この世界を見舞う大いなる災いは、あの程度ではありません」
 長い髪の女神は冷ややかな声で云う。
「あの程度の魔物で苦戦しているようでは、大災厄どころか、二十年後の災いにすら打ち勝てませんよ」
「それはこれから、あのような魔物が、多く出ると云うことか」
 厭な気持ちで訊ねる。
 女神の沈黙がその言葉を肯定した。
(あんなものがこれから先も出続けると云うのか)
 ふつふつと、苦い思いがこみ上げる。
 前情報がほとんどなく、今回はただただ苦戦した。勝ちはしたが辛勝であった。
 二人も、犠牲を出してしまった。
(あんなものが)
 こちらの悶々とした沈黙を会話の終了と受け取ったか、女神は、報告は以上ですね、と云った。
「ナガイ・コーレン、あなたの役目は来る災厄に備えての騎士団の強化です。あれしきで挫けてしまっては困ります」
 そう付け加えた淡々とした女神の言葉に、ナガイは唇を噛む。
 挫けてなど居ない。
 挫けてなど居られない。
 ただ、朗報でないことは確かなのだ。
 あのレベルの、もしかしたらもっと強い魔物との戦いが続く。二十年の災いの主は、きっと先日のケルベロスよりずっと強いのだろう。
 また、誰かが死んでしまうかも知れない。
(それは駄目だ)
 ポールランを思い出す。ガルゴスを思い出す。
 己れとて、亡くし残された身だ。
 女神と別れて森の中を歩きながら、手にした刀をぎゅっと握る。
 確かに女神の云うように、騎士団は強くならなければならない。ただ力をつけるだけでなく、知識等の他の面に於いても強くなっていかねばならないだろう。
(それにはどうしたら良いのだろうか)
 歩きながら悶々と悩む。
 己が強くなるためには鍛練をすれば良い。
(腕を磨き、感覚を磨き、経験を積み、多くを知って身の内に取り入れれば、自ずと成長していくものだ)
 師からはそう教わった。
 だが騎士団として強くなるためにはどうすれば良いのか。
 必要なのは戦い方だろうか。それとも結束であろうか。
(分からぬ)
 悶々とし過ぎて頭から煙が吹きそうだ。
 集団を率いたことはない。ナガイの知る者の誰もがそうだ。
 師や、先代の団長である父であれば何かヒントを知っていたかも知れないが、どちらも故人だ。
 頭をぐしゃぐしゃにして何も思い付かないまま、ナガイは酒場に到着した。


@Round-1

マルメット   「団長〜、おっそいわさー!」
ガルゴス    「ドコ行ってたンだよォ。メシ冷めちまうじゃねェかよォ!」
ナガイ     「すまぬ。……先に食べていても良かったのだが」
フェルフェッタ 「まだそんな遅れた訳じゃないもの。二人とも大袈裟に云い過ぎなの!」
ガルゴス    「ンだってハラ減ったんだもんよォ!(ぶすっ」
アズリット   「さっきつまみ食いしたクセに(ぼそ」
フェルフェッタ 「ガルゴス!」
ガルゴス    「だ、だってよォ(こそこそ」
リコルド    「まあイイじゃない(笑)。団長も来たことだし、始めようよ」
フェルフェッタ 「(溜息)そうね」


ポールラン   「(ごくごく)これ、メゾネアのお酒ですね」
リコルド    「そうだよ。あとオストの麦酒。よく分かったね〜」
ポールラン   「弔いの宴ならパターンでしょうコレ。ですよね、フェルフェッタ先輩」
フェルフェッタ 「そうよ。やっぱり生まれの酒で弔うのが一番でしょ。今回は予算の都合で料理はちょっとショボいけど、お酒はきっちり用意させて貰いました」
リコルド    「さすが!(笑」
ポールラン   「どっちも高級なお酒じゃないですもんね(笑」
フェルフェッタ 「云うなれば庶民のお酒よ。ラリーがいたら絶対満足しないでしょうけどねー」
リコルド    「ああそれは云えてる。もっと強い酒は無いのか、とか云いながらガバガバ飲むねきっと」
フェルフェッタ 「なんだかんだ云ってありったけ飲むんだもの。底なしは怖いわ」
リコルド    「今のメンツは下戸多いからね」
ポールラン   「団長とかダメですよね」
リコルド    「そだね。クルガもけっこー弱いしねえ。僕も強かないけど……ポールは飲めたっけ?」
ポールラン   「僕もそれほど。頭痛くなっちゃうんですよ。ヘルン先輩とかは飲んだら静かになっちゃいますけど、あれは頭痛の所為でしょうか」
リコルド    「や、あれはそういう酒癖なだけでしょ。クルガがはっちゃけるのと同じ(笑」
クルガ     「呼んだか?」
ポールラン   「呼んでません」
リコルド    「呼んでないよ」
フェルフェッタ 「呼んでないわ」
クルガ     「お主ら、つれないぞっ。酷いぞっ」
リコルド    「ね、もう酔っ払いだ」
ポールラン   「そうですね」
フェルフェッタ 「クルガの性癖の中でもこれが一番厄介ね」
クルガ     「人を厄介者扱いしおってからに。拙者は未だ二杯しか飲んでおらぬ!」
リコルド    「じゅーぶんベロベロなくせに何云ってるんだか(笑」
クルガ     「飲んで酔えぬ方がつまらぬ」
リコルド    「……まあ、そうだけどね」
ポールラン   「でも先輩はわやくちゃになり過ぎですよ」
クルガ     「だから、つまらぬであろう。宴だぞ? ほれ、お主も飲め。ぱーっと飲んだ方が塔でエクレスも安心するぞ(笑」
ポールラン   「先輩のそーいう根拠ってどっから出てくるんですか」
クルガ     「拙者の頭の中からに決まっておろう!(笑」
フェルフェッタ 「あんたの頭の中はいっぺん覗いてみたいものよ」
リコルド    「同感」
クルガ     「ううむ、さすがにパカッと開けて見せる訳にもいかぬしなあ」
リコルド    「そこ真剣に悩まないでよ(笑」
フェルフェッタ 「あんたも酔っ払いにツッコミ入れてどうするのよ」
ポールラン   「先輩とりあえずもうお酒控えて下さいよ」
クルガ     「何を云う。宴はまだこれからではないか!」
フェルフェッタ 「まだこれからなのに酔い潰れるのはどうかって話にはならないのね」
ポールラン   「酔い潰れたらまたイワセ先輩が大変なんですよ」
リコルド    「そうだね。また文句云いながらおんぶして本部まで持ってくんだろうね(笑」
クルガ     「終わるまでに起きる!」
ポールラン   「起きたらまた飲んで潰れちゃうじゃないですか」
クルガ     「む、そうか?」
ポールラン   「そうですよ。前の時も潰れちゃって先輩に引き摺ってかれましたよ」
リコルド    「イワセも律儀に潰れクルガ持って帰るからね(笑」
フェルフェッタ 「なんだかんだ云いながらね(笑」
リコルド    「ねえフェル、僕思ったんだけど」
フェルフェッタ 「なあに」
リコルド    「このコンビが一年以内に精霊喚ぶ方に麦酒一杯。ジョッキで」
フェルフェッタ 「あら。……次の遠征から帰ったとき、にヌマガエルのパイ包み。特大で」
リコルド    「一年以内に帰って来て喚んじゃったら?」
フェルフェッタ 「無効。もしくは当人二人におごらせる」
リコルド    「後者希望。麦酒とパイ包みって合う?(笑」
フェルフェッタ 「悪くないわよ」
ポールラン   「先輩方……(嘆」


ヴァーサ    「精霊を喚ぶってどういうことですか?」
アズリット   「あれでしょ、確か、熱〜い友情には降りてくるってやつ」
マルメット   「聞いたことあるわさ。河原で殴り合って、夕陽に向かってバカヤローって叫ぶんだわさ」
アズリット   「……多分それ相当デマ入ってるわ。あ、そっちのスープ取ってくれる?」
ガルゴス    「ほいよ。それで出るんだったら、すげェ楽だな(笑」
ナガイ     「殴り合いが楽かどうかは、人にもよると思うが」
アズリット   「だからデマだって! その辺は!」
キャナル    「教会でも云われてましたわ。固い絆で結ばれた方々には、精霊がお力を貸して下さるのだそうです。……あの、恐らく、殴り合いは関係ないと思います」
マルメット   「えー。精霊って、バカヤローって叫んだあとに夕陽の方から飛んでくるんじゃないんだわさ?」
アズリット   「あんたドコからそんな話、引っ張ってくるのよ(呆」
マルメット   「クルガ先輩とリコルド先輩から」
ガルゴス    「からかわれてンじゃねェか、それ」
ナガイ     「恐らく」
ガルゴス    「クルガ先輩、リーヴェ行く時もヘンなこといっぱい云ったしよォ」
ナガイ     「云われたのか」
ガルゴス    「おォ。リコルド先輩の方ァぜってェ悪ノリだよなァ(笑」
マルメット   「じゃあさじゃあさ、河原で殴り合ってバカヤローしても、精霊来ないんだわさ」
アズリット   「来ないわよ」
ナガイ     「それで精霊が来るとしたら、あの二人がその通りのことをせねばならぬぞ」
ガルゴス    「見てェっちゃ見てェな、ソレ(笑」
マルメット   「イワセ先輩が夕陽に向かってバカヤローって怒鳴るのはあんまし想像つかないわさ(笑」
アズリット   「それはそうね(笑」
ガルゴス    「殴り合うって云えばよォ、クルガ先輩って手合わせとかしねェよな」
ヴァーサ    「そうなんですか」
ガルゴス    「おう。オレこないだ勝負だーってやったンだけどよォ、クルガ先輩ぱーって逃げちまってよォ」
ナガイ     「そう云えば、拙者もクルガとは手合わせをしたことがござらぬ」
キャナル    「あら」
マルメット   「あたしもチャンバラ誘うけど、絶対逃げられるんだわさ」
アズリット   「どっちかって云うと、あんたがチャンバラするってのが変だとあたしは思うけどね」
ヴァーサ    「あの、サムライのお二方なら、対決しているの見たことあるんですけど」
マルメット   「クルガ先輩と? 誰だわさ?」
ナガイ     「拙者ではござらぬ。相手はイワセか」
ヴァーサ    「はい。そうだったと思います」
キャナル    「そのお二方が打ち合っているところなら、私も見たことがありますわ」
ガルゴス    「イワセ先輩となら手合わせしてンのかァ」
マルメット   「それだと精霊が降りてくるんだわさ?」
アズリット   「何でもそっちに繋げるんじゃないわよ。別にそれが条件とかそういうんじゃないと思うけど、あの二人って云ったら、腐れ縁って云うか、コンビって云うか」
マルメット   「うーん」
ナガイ     「確かに二人は同郷であるし、組になることも多いし」
ヴァーサ    「いつも一緒にいますよね」
マルメット   「入ったばっかのヴァーサにそう云われるってことは、よっぽど一緒にいるってことだわさ(笑」
キャナル    「精霊と云うのは強い絆に降りてくるものですから」
アズリット   「強い絆ねえ。腐れ縁も強い絆のうちに入るのかしら(笑」
ガルゴス    「でも降りて来ても驚かねェなァ、なんとなく」
マルメット   「そうだわさね。降りて来たら、精霊って見せてもらえるんだわさ?」
アズリット   「見せるようなモンじゃないんじゃない?」
ヴァーサ    「今まで他に、精霊を喚んだ方はいないんですか」
キャナル    「私は存じませんわ」
アズリット   「あたしも」
ガルゴス    「オレも」
マルメット   「……そうだ! ね、あたしさ、見たことはないけど」
ガルゴス    「けどォ?」
マルメット   「団長のお父さん、喚んだことあるって」
キャナル    「まあ!」
アズリット   「それって、団長、ホント!?」
ナガイ     「いや、拙者、覚えておらぬ。残念ながら」
マルメット   「えー」
ナガイ     「父が亡くなったときは拙者まだ小さかった頃ゆえ、そういう話は聞いたことがあったとしても、覚えておらぬのだ」
マルメット   「うー、そうなの」
キャナル    「あ、あの、でも、ナガイ団長のお父上ということは、結婚してらしたのですよね」
ガルゴス    「でなきゃ団長、生まれねェだろ?」
アズリット   「そりゃそうよ」
キャナル    「それですと、その、精霊の祝福を受けて結婚した方は、他の方と精霊を喚ぶことはないと、私はそう聞いたのですけれど」
アズリット   「なによ、じゃあコレもデマ?」
マルメット   「うー」
ヴァーサ    「結局、マルメット先輩も本物の精霊は見たことないんですよね」
マルメット   「うぅー」
ガルゴス    「けどよォ、先輩たちが喚んだらすぐ見れンだろ(笑」
ナガイ     「しかしまだ喚ぶと決まった訳では」
ガルゴス    「団長、楽しみじゃねェのかよォ」
ナガイ     「……決まっているなら、楽しみではあるが」
ガルゴス    「じゃあ楽しみにしようぜェ」
アズリット   「あんたの単純頭と団長の頭を一緒にすんじゃないわよ」
ガルゴス    「うるせェよォ!」


@Round-2

クルガ     「(ZZZ)」
イワセ     「もう潰れたのか。早いな」
フェルフェッタ 「潰したのよ。うるさいから。はい保護者、ちゃんと見といてよね」
イワセ     「誰が誰のだ」
フェルフェッタ 「あんたがクルガの」
イワセ     「……」
フェルフェッタ 「全く、よくこんな面白いサムライが育ったものね。親の顔が見てみたいわ(笑」
マルメット   「そうだわね〜(笑」
イワセ     「これの親兄弟は至極まっとうなサムライでござるよ」
ナガイ     「まっとう……」
フェルフェッタ 「まっとうなサムライってのも変ね(笑」
イワセ     「致し方あるまい。こやつがまっとうでなさすぎるのだ」
マルメット   「クルガ先輩だけがこんなわちゃわちゃなんだわさ?」
イワセ     「そういうことだな」
ナガイ     「しかし、クルガには兄弟がいるのだな。拙者にはおらぬゆえ、羨ましい」
イワセ     「それをこやつに云うなよ。勇んで兄貴面をし始めるゆえ(苦笑」
マルメット   「先輩、されたんだわさ?(にや」
イワセ     「……」
ナガイ     「イワセは兄弟がいないのか?」
イワセ     「うむ。だからこやつがのさばったのだ」
フェルフェッタ 「いいわねえ。あたしなんかチビどもがいっつも周りで煩くって。まあ周りが煩いのは今もなんだけど(笑」
イワセ     「確かにな」
ナガイ     「だが、兄弟が多いと云うのは、賑やかで楽しそうだ」
フェルフェッタ 「賑やかなのは良いんだけど、修羅場よ? 特にメシどきはね」
マルメット   「団長なんか絶対食いっぱぐれるわさ(笑」
フェルフェッタ 「そうねえ。いっぺんうちのチビたちの中に放り込んでみたいわね。ちょっとは図太く逞しくなって戻って来るかしら?(笑」
ナガイ     「む、むむ」
イワセ     「団長、冗談」
フェルフェッタ 「そうよ。いくらチビどもって云っても、とっくの昔におっきくなってるわよ(笑」
マルメット   「そー云えば、フェルんちって王都にあるんだわさ? いっぺん行ってみたいわさ!」
フェルフェッタ 「来たって何もないわよ。まあ、ウチの親は騎士団員として先輩なワケだから、長〜い体験談とお説教を聞きたいなら止めやしないわよ(笑」
マルメット   「う」
フェルフェッタ 「さー、どうする? 行くならあたしが案内するわよ(笑」
ナガイ     「……頼めるだろうか」
イワセ     「? 団長?」
ナガイ     「フェルフェッタのご両親は、騎士団に在籍しておられたのであろう?」
フェルフェッタ 「ええ、まあ、そうだけど」
マルメット   「団長行くんだわさ? お説教されるかも知れないんだわさ!?」
フェルフェッタ 「まあ説教は大袈裟だとしても、話は長くなるわよ? うちの親、話好きだから」
ナガイ     「構わぬ。先達の話を、聞いてみたいのだ」
フェルフェッタ 「何だか深刻そうね」
ナガイ     「……」
フェルフェッタ 「良いわ。でも明日ね。今日はまだこれから宴会続けなくちゃ」
ナガイ     「うむ」
マルメット   「団長も物好きだわさ〜」
イワセ     「団長には団長で考えることがあるのだろう」
マルメット   「ふぅん」
イワセ     「あまり抱え込むでないぞ、団長。悩み過ぎで体を悪くしては、塔でヴィレイスも嘆こう」
ナガイ     「うむ。重々気を付ける」


ポールラン   「? ヴァーサどうしたの、こんな隅っこで。まだ食べるものありますよ。ショボいですけど」
ヴァーサ    「あ、私は」
ポールラン   「ああー、リコルド先輩こんなとこで寝ちゃって」
ヴァーサ    「……」
ポールラン   「れ、もしかしてヴァーサ、先輩見張ってる?」
ヴァーサ    「はい」
ポールラン   「……お酒入ってる?」
ヴァーサ    「はい」
ポールラン   「そ、そう。別に見張ってなくても、先輩どっかに行ったりしませんよ」
ヴァーサ    「分かりません。先生はいつも、いつの間にかどこかに行ってしまうんです」
ポールラン   「ええあー、そりゃサンパロスでは勝手に居なくなって困りましたけど、ここからどこかに行くって云ってもたかが知れてますし。そんなに睨んでたら目が疲れちゃいますし」
ヴァーサ    「でも、見張ってなきゃいけないんです」
ポールラン   「まあまあそんな依怙地にならずに。ほら美味しいですよ、このパイ」
ヴァーサ    「……」
ポールラン   「……」
ヴァーサ    「……あの」
ポールラン   「はい?」
ヴァーサ    「この度は、御愁傷様、でした」
ポールラン   「あ、ああどうも。でも、そんな気を遣わなくても良いですよ(笑」
ヴァーサ    「……」
ポールラン   「サンパロスでは皆、大変だったんだから。ヴァーサは初めてだったからもっと大変だったろうし」
ヴァーサ    「わ、私は全然、大丈夫でした。先輩こそ私に気を遣ってるじゃないですか」
ポールラン   「だって僕は先輩だもん。それに見ててもどかしくって」
ヴァーサ    「何がですか」
ポールラン   「あのさヴァーサ、リコルド先輩は鈍いから、ちゃんと云わないと伝わりませんよ」
ヴァーサ    「な、何を云うんですか?」
ポールラン   「いや、だから、自分の気持ちってやつをです」
ヴァーサ    「……?」
ポールラン   「僕も一方的な片思いしてた身なので、つい。一目惚れでもあるし」
ヴァーサ    「ちょちょちょっと待って下さい先輩!(慌」
ポールラン   「え?」
ヴァーサ    「片思いって、だ、誰が誰にですか!?」
ポールラン   「? え、そりゃあ、ヴァーサがリコルド先輩に」
ヴァーサ    「わ、私が? 先生に?」
ポールラン   「そう。あれ、そうでしょ?」
ヴァーサ    「ど、どどどこをどう見たら、そんな、私が先生を、なんて」
ポールラン   「そんな恥ずかしがることじゃないですよ。人を好きになることは良いことです。ドキドキしたり苛々したり、喧嘩したりとかするけども(笑」
ヴァーサ    「……」
ポールラン   「思い切って告白してみたらどうです? スッキリしますよ」
ヴァーサ    「で、でも私、先生のこと、好きなんて思って」
ポールラン   「?」
ヴァーサ    「そりゃ苛々しますし、先生以外には教わりたくないですし、いないと気分がグズグズになりますし、でも一緒にいると苛々しますし」
ポールラン   「? ヴァーサは、リコルド先輩に一目惚れしたんじゃないんですか?」
ヴァーサ    「そんな、そんなこと誰が云ったんですかっ」
ポールラン   「ヴァルガ先輩」
ヴァーサ    「……」
ポールラン   「聞いただけでなくて、僕が見てもそうだと思いますよ。まあ、僕は他に目をやってる余裕はあんまりなかったですけど、そう見えましたから」
ヴァーサ    「でも、私そんな風に、先生のこと思ってないです。……すごく、すごく苛々します」
ポールラン   「苛々するのは良くあることですよ。自分にも相手にも」
ヴァーサ    「でも」
ポールラン   「居ないのは、イヤなんでしょ? サンパロスで先輩探してるとき、ヴァーサすっごく真剣だった」
ヴァーサ    「それは、それは、そうですけど。私は分かんないんです、私が先輩のことどう思ってるか」
ポールラン   「あ。……あー、それか、そういうことか。何か変なのは」
ヴァーサ    「変って」
ポールラン   「いやごめん。決めつけてしまったりもして」
ヴァーサ    「い、いえ」
ポールラン   「でもやっぱり、僕にはそう見えます」
ヴァーサ    「……」
ポールラン   「気持ち決めるなら、もたもたしてちゃ駄目ですよ。云わなくてもずっと一緒だなんて思ってると、そうじゃなくなったりすますから」
ヴァーサ    「……。はい」


@Round-3

イワセ     「ヘルン、飲み過ぎではないか? オストの麦酒は軽いのが売りだが、だからと云ってそうがばがば飲むのは感心せんな」
キャナル    「そうですよ、お身体を壊してしまいますわ」
ヘルン     「……」
フェルフェッタ 「ま、大丈夫よ。これで結構お酒には強いから。多分ね」
イワセ     「……クルガが起きておればもっと明るく飲め!とか云うのだろうな(笑」
フェルフェッタ 「そうねー。あんたホント、もっと朗らかに飲みなさいな!」
ヘルン     「無理です」
キャナル    「そ、そうですか」
イワセ     「酒癖というやつか」
フェルフェッタ 「もー、なら飲まなきゃ良いのに。暗くなるばっかりなんだからっ」
ヘルン     「……」
イワセ     「……黙ってしまったぞ」
フェルフェッタ 「あーもー辛気くさいわねえ。笑んなさいな。くすぐるわよっ」
イワセ     「は」
ヘルン     「だっ、わっ、ややややめてくだッ」
フェルフェッタ 「あら案外弱いのねー(笑」
キャナル    「せ、先輩(汗」
ヘルン     「やめてくださいッてばフェっ、わはああっ(じたばた」
イワセ     「フェルフェッタ」
フェルフェッタ 「あんたもくすぐる?」
イワセ     「いや、そうではなく」
ヘルン     「や、や、やめやめやめやめッ!」
イワセ     「椅子が倒れるぞ」
    (どがだだん)
キャナル    「!」
フェルフェッタ 「あら」
イワセ     「加減せよ(苦笑」
フェルフェッタ 「あんまり意外な反応だったから、つい(笑」
イワセ     「そんな悪ノリしてはクルガのことは云えぬぞ。お主、酔っているのではないか?」
フェルフェッタ 「まあ、あんたの相方よりは飲んでるわね(笑」
イワセ     「全く(苦笑」
キャナル    「ヘルン先輩、大丈夫ですか?(汗」
ヘルン     「こ、腰が痛」
イワセ     「悪戯けが過ぎたな(溜息」


リコルド    「あぁ、うー」
ナガイ     「……大丈夫か」
リコルド    「ちょっと吐きそう。気持ち悪い。頭痛い」
ナガイ     「飲み過ぎたか。何かタライのようなものが必要か」
リコルド    「や……だいじょぶ、それは」
ナガイ     「お主が悪酔いとは珍しい」
リコルド    「そう? 何か、起きたら頭ガンガンして。当日なのに二日酔いかな(溜息」
ナガイ     「拙者飲まぬゆえ、酒に関する気持ちはよく分からぬが」
リコルド    「(笑)団長は下戸だもんねえ。最初の日とか、飲まされてぶっ倒れたって聞いたよ」
ナガイ     「うむ。あれは……失態でござった」
リコルド    「失態ってほどのことじゃないと思うけど」
ナガイ     「しかし」
リコルド    「真面目すぎるんだと思うよ。もっと気楽に、ね?」
ナガイ     「うむ……。その、気分の悪いところ済まぬが、一つ問うても良いか」
リコルド    「ん、なに」
ナガイ     「リコルドは、拙者の父上には、会ったことがあるのか?」
リコルド    「団長のお父さんって、先代の団長?」
ナガイ     「うむ」
リコルド    「先代のかあ。僕はなあ、一回しか会ったこと、ないんだよね」
ナガイ     「……そうか」
リコルド    「うぅ、やっぱり水飲もう。でも、何でいきなりこんなコト?」
ナガイ     「マルメットが云っておったのだが、父上は精霊を喚んだことがあると云うのだ。拙者は、そんなこと知らなんだ。己れの父のことだと云うのに。……水差し取って来るか?」
リコルド    「そこのグラスで良いよ。うん。あー、ソレは僕も話だけは聞いたことあるかも。誰と〜ってトコまでは知らないけどさ」
ナガイ     「では、本当なのか」
リコルド    「多分ね。本気で調べるなら、本部の書庫漁れば記録あるかも。珍しいことだから。団長は、お父さんのこと、そんなに覚えてないんだ」
ナガイ     「……うむ」
リコルド    「そっか。僕もあんまり覚えてないけどね」
ナガイ     「リコルドの、お父上のことか?」
リコルド    「うん。ちっちゃい頃のことだもん。……団長のお父さんはね、カッコ良かったよ」
ナガイ     「そうなのか」
リコルド    「僕の故郷のね、魔物を退治してくれたの。そこで会ったいっぺんきりだけど、すごいカッコ良かった。こんな二日酔いの体たらくで云うのもなんだけど」
ナガイ     「……」
リコルド    「あと先生から聞いたことだけど、すっごい親バカだったって」
ナガイ     「親バカ」
リコルド    「団長はお父さんにも先生にも、大事にされてたんだね。……道理でお坊っちゃんなワケだ(笑」
ナガイ     「そ、そうか」
リコルド    「でも一番最初よりは成長してると思うよ。全然ね。きっとすぐ、立派な団長になれるよ、団長は」
ナガイ     「拙者など……まだまだだ」
リコルド    「謙遜しなーい。まあ、そこが団長らしいんだけどね。あ、痛」
ナガイ     「……。何か食べた方が良くはないか」
リコルド    「うううん、や、もっかい寝る。僕もう帰るね」
ナガイ     「そ、そうか」


マルメット   「うあああん、アッタマ痛いわさ〜!(泣」
アズリット   「うっさいわねーあんたの喚き声の方が頭に響くのよっ!」
ガルゴス    「(爆笑)お前ェら酒飲みすぎなんだよォ! もっと飲みゃ治るぜェ!」
ポールラン   「どういう根拠で」
キャナル    「飲んだ上に飲んでも頭痛は治らないと思うのですが」
マルメット   「うーんじゃあもう一杯! 今度はメゾネアので!(笑」
アズリット   「あたしも同じのっちょうだいっ!」
キャナル    「えぇっ(汗」
ガルゴス    「おォぉ! 道の集いィに〜潮風ェ吹いてェ〜♪」
アズリット   「あーあんた歌下ッ手くそね〜!」
ガルゴス    「なんだとォ!」
マルメット   「こうだわさ、こう! 三叉の流れ交わるところ〜、見やれ〜栄えし我らが港ォ〜♪」
ポールラン   「よく知ってますねー」
マルメット   「地方の特色とか覚えるのに有効だって云われて覚えたんだわさ!」
アズリット   「あんたは中身ほっぽいて歌しか覚えてないけどねっ」
ガルゴス    「今度は誰の受け売りだよォ〜。ホレ」
マルメット   「誰だって良いじゃないの〜。はァい、マルメット・メルウッド、イッキしま〜す!」
キャナル    「い、一気飲みは身体によくありませんわ!(汗」
マルメット   「レッツ皆様ぁお手を拝借ゥ〜♪」
ガルゴス    「おおぉォォ〜♪(笑」
アズリット   「はぁぁ〜い!(笑」
ポールラン   「あああ〜(嘆」
マルメット   「(ごくごくごく)ぷっはぁー!」
キャナル    「ああ、飲んでしまいました(汗」
アズリット   「よっ! 体力バカ魔女! 良い飲みっぷり!(笑」
マルメット   「バカだけ余計だーわーさー!」
ガルゴス    「ンだってそうだろうがよォ(笑」
マルメット   「あんたまで云うわさー! そっちこそ頭の中まで筋肉なクセしてっ」
ガルゴス    「ンなこたァねェよっ。オレはなァ、おっさんから貰ったケンジュツコトハジメを読破したんだぞォ!」
ポールラン   「そう云えばフェルフェッタ先輩に教わってましたよね」
キャナル    「私も拝見しましたわ」
アズリット   「何それー! ガルゴスらしくないわね!」
マルメット   「だわさだわさ! バツとしてあたしと走り込みだわさ!(笑」
ガルゴス    「何のバツだよソレェ!」
アズリット   「第一ねー、フェルと二人っきりで授業なんてー、アヤシイじゃなーい?(笑」
キャナル    「あ、あやしい?」
アズリット   「オトナのオンナと生徒のボウヤ、なーんてアブナイ響き!」
ポールラン   「アズ、どこでそんなコト覚えて来るんですか(汗」
ガルゴス    「別にンな関係じゃねェよォ! オレはァ、フェルのこと別にンな風に思ってねェよ!」
マルメット   「わァーおもっきし否定するとこがアヤシイわさー(笑」
ガルゴス    「だからァ、ち・が・うってェの!」
ポールラン   「ああーっ机はひっくり返さないで下さいー!(汗」


@Round-4

イワセ     「起きたか」
クルガ     「んむむ。今、何時だ?」
イワセ     「先程、日付けが変わった」
クルガ     「それほど経っておらぬな」
イワセ     「まだ飲む気か」
クルガ     「……いや、今日はもう止める」
イワセ     「珍しいな。体でも悪いのか」
クルガ     「いや。頭が痛い。耳がキンキンするのだ。ううむ、悪酔いでもしたか」
イワセ     「それは酒の所為ではなく、魔女らが周りで騒いだからであろう。拙者もキンキンしておるゆえ」
クルガ     「そうか。お主もか(笑」
イワセ     「飲まぬのなら今宵は、お主を背負って帰らずとも良さそうだな(笑」
クルガ     「その代わりに沢山食べるぞ。何が残っている?」
イワセ     「グラタンとパエリヤとパイだな。どれにする」
クルガ     「パエリヤ頼む」
イワセ     「ほれ」
クルガ     「……流石に冷めておるな」
イワセ     「出されてから随分になるからな。今宵は皆、食うより飲みを優先したらしいゆえ」
クルガ     「だから静かなのだな、皆潰れて」
イワセ     「そういうお主も先程まで潰れておったろうが(苦笑」
クルガ     「それはいつものことだろう」
イワセ     「開き直るな。(溜息)……お主、腕はもう良いのか」
クルガ     「な、何のことだ」
イワセ     「しらばっくれるでない。どこかにぶつけたのか?」
クルガ     「むう……少々、な」
イワセ     「全く。サムライが腕ばかり怪我をしてどうする」
クルガ     「しかし利き手ではござらぬゆえ(ぼそ」
イワセ     「そういう問題ではなかろう。あまり無理をするな」
クルガ     「しておらぬ。それほど大袈裟なものではござらぬゆえ、そんなにしつこくつつくな」
イワセ     「分かった分かった。そう拗ねるでない(苦笑」


ヴァーサ    「先生は、もう帰られたのですね」
フェルフェッタ 「あー頭痛いって云ってたわ。馬鹿飲みするからよ全く。まぁた二日酔いの薬が足らなくなるわ(溜息」
ヘルン     「すみません」
フェルフェッタ 「あんたは二日酔いじゃなくて湿布薬だから別口よ。そもそもソレあたしの所為だし(ぶつぶつ」
ヴァーサ    「どうかされたんですか?」
ナガイ     「フェルフェッタがくすぐって、ヘルンが椅子から落ちたのだそうだ」
ヴァーサ    「……痛そう」
フェルフェッタ 「本部まで歩ける?」
ヘルン     「朝まで寝ていれば、多分」
ヴァーサ    「どなたかに運んで貰った方が良いんじゃないですか? ガルゴス先輩とか」
フェルフェッタ 「何かあの坊やが先輩扱いされてると変な気分ね。……あ、駄目だわ、もうとっくに潰れてる」
ナガイ     「さっきまで騒いでいたのだが」
フェルフェッタ 「あの辺一帯で騒いでた連中、皆揃って夢の世界みたいね」
ヴァーサ    「だからこんなに静かなんですね」
フェルフェッタ 「いつもこれくらい静かだと心休まるんだけどね(笑」
ヘルン     「あまり静かだとこの騎士団にいる感じがしませんが(苦笑」
ナガイ     「一理あるな」
ヴァーサ    「何だか不思議な感じです」
フェルフェッタ 「あそこの二人が起きてるにも関わらず静かなのも非常に不思議ね」
ナガイ     「……眠っているとばかり思っていたが」
ヴァーサ    「さっき起きたみたいですよ」
フェルフェッタ 「ああもう、あんまり静かだとしんみりし過ぎちゃうわ」
ヘルン     「たまには良いのではないですか。弔いの席である訳ですし」
フェルフェッタ 「駄目。弔いの宴でこそ浮かれ騒いで盛り上がらなきゃ。あっちに行った連中がやきもきするでしょ」
ヴァーサ    「あ、だから宴会なんですね」
フェルフェッタ 「そういうこと」
ヴァーサ    「……初めは不謹慎だって思いました。すみませんでした」
ヘルン     「それは、思いますよ、最初は(笑」
フェルフェッタ 「まあそうね、あたしも思ったもの。イワセなんかも云ったわよー。こう、眉間にシワ寄せて、このような宴は不謹慎ではござらぬか、って」
ヘルン     「似てますね」
ナガイ     「うむ」
フェルフェッタ 「好評で嬉しいわ(笑」
イワセ     「お主ら、人の噂を堂々としおって」
フェルフェッタ 「あら、聞こえてた?(笑」
イワセ     「他が静まっておるゆえ、よく聞こえる」
クルガ     「しかしフェルの物真似は似ていたぞ(笑」
フェルフェッタ 「あんたに褒められるってことはそこそこイケてたってことかしら(笑」
クルガ     「うむ、こう眉間にシワを寄せる具合がな(笑」
ヴァーサ    「……確かに」
イワセ     「そこで盛り上がられても拙者は一向に面白くもない」
ナガイ     「恐らくからかわれているのだとは思うが」
イワセ     「や、流石にソレは分かる、団長」
フェルフェッタ 「似てないより良いでしょ?」
イワセ     「別に腹が立ったなどとは云っておらぬだろうが」
ヘルン     「先輩、顔が不機嫌なのですよ。その所為です」
イワセ     「これは地だ」
クルガ     「む? ヘルンはどうしたのだ」
ヴァーサ    「フェルフェッタ先輩がくすぐったんだそうです」
クルガ     「くすぐって……机一つ占領して俯せる羽目にはなかなかならぬものだとは思うのだが」
ナガイ     「落ちたのだそうだ。椅子から」
イワセ     「まだ痛むのか?」
ヘルン     「お恥ずかしながら(苦笑」
クルガ     「次の遠征までには治ろうか」
フェルフェッタ 「そんな大袈裟なモンじゃないわよ。多分」
ヴァーサ    「多分……」
ヘルン     「不吉なことを云わないで下さい先輩」
ナガイ     「フェルフェッタの湿布があれば大丈夫だろう」
ヴァーサ    「よく効くんですか?」
クルガ     「うむ、効くぞ! コウカテキメンとはああいうのを云うのだろうな」
フェルフェッタ 「あんたジジくさいって嫌がってたクセに」
クルガ     「ジジくさいのは事実であろう。ああべたべたと湿布を貼って。効能の方は、認める」
フェルフェッタ 「あっそ。ヴァーサ興味あるなら作り方覚える?」
ヴァーサ    「良いんですか?」
フェルフェッタ 「酔いも悪いもないわよ(笑」
イワセ     「医療の術は知っている者が多くて困ることはないぞ」
ヘルン     「そうですね。クララクルル先輩もおられませんし」
ヴァーサ    「?」
ナガイ     「お主が入る前に、抜けた団員だ。医療の術に長けていてな」
クルガ     「酒にも長けていたな。今頃も何処かの地で飲んでおるのではないか(笑」
フェルフェッタ 「ありそうね(笑」
イワセ     「と云う訳で人不足なのだ」
ヴァーサ    「そうですか。……じゃあ、お願いします」
フェルフェッタ 「じゃあ、あ、明日はダメだから明後日ね、あたしの部屋来て。分かる?」
ヴァーサ    「はい」
クルガ     「明日何かあるのか?」
フェルフェッタ 「団長がね、先代関連で何か聞きたいことあるんだって。だからウチの実家にプチ遠征(笑」
イワセ     「そうか、フェルフェッタのご両親は騎士団に居たのだったな」
クルガ     「先代って、あ、もしかしてうちの師匠とかのことか!」
フェルフェッタ 「正解」
クルガ     「おお、懐かしいな。今頃どうしているかな」
イワセ     「傭兵稼業に戻ると仰ってはいなかったか」
ヴァーサ    「先輩方にも、先生がいらしたんですね」
ヘルン     「それはそうですよ。入ってきた当初は誰もが皆、新人ですから」
フェルフェッタ 「これでも歴史古いものね、この騎士団」
ナガイ     「そのようだな」
イワセ     「拙者も聞いた」
ヴァーサ    「何だか、変な感じですね。先生にも先生がいるなんて」
ナガイ     「拙者らの親にも子供の時代があって、その親が居るのと同じだろう。……確かに、不思議な感じだ」
ヘルン     「私たちの子供も、そう思うんでしょうか」
フェルフェッタ 「あらヘルン、誰に子供産ませる気よ(笑」
ヘルン     「だっ、でっ!? あッつ!」
イワセ     「おい大丈夫か」
ヘルン     「は、はい、いッ」
ナガイ     「腰が痛いのに急に起きようとしてはいかんぞ」
ヘルン     「……はい……」
フェルフェッタ 「まあ子供の話は冗談として、まあね、確かに不思議な話だわ。あのお嬢や坊やたちがそのうち大っきくなって、弟子を持つかも知れないって思うとね」
ナガイ     「フェルフェッタは大勢抱えているから大変だな」
フェルフェッタ 「そう思うんなら団長、誰か他に割り振ってよ(笑」
ナガイ     「む……」
フェルフェッタ 「冗談よ冗談。よそにやったって、だーれもあの子たちの面倒見切れやしないんだから」
クルガ     「すごい自信だな(笑」
フェルフェッタ 「相性の問題よ(笑」
イワセ     「そうだ団長、次の遠征の予定はどうなっておるのだ」
ナガイ     「ハーレィとウェロー、マリスベイに出ているらしい。どちらを先にするかはまだ決めあぐねているのだが」
フェルフェッタ 「あらウェロー。懐かしいわね」
ヴァーサ    「皆、北の方ですね」
クルガ     「おお、よく覚えたな(笑」
ヴァーサ    「教わりましたから……」
ヘルン     「どちらにせよ北への遠征なら、防寒はしっかりして出なければなりませんね」
フェルフェッタ 「そうね。ルートは明日考えましょう。今日は未だ宴よ宴」
イワセ     「日付けが変わってしまったゆえ、今日も宴、だな。一遍寝ねば実感は湧かぬが」
クルガ     「拙者は寝たぞ!」
イワセ     「お主はただ潰れただけであろうに」
フェルフェッタ 「まあヘルンも動けないことだし、残りのお酒干しちゃいましょう!(笑」
クルガ     「そうだな! 宴の続きだ宴の!(笑」
イワセ     「盛り上がることになると常に乗り気だな、お主は」
クルガ     「楽しいからな!(笑」
イワセ     「今宵はもう飲まぬのではなかったのか」
クルガ     「もう耳鳴りはせんからな。存分に飲むぞ!」
イワセ     「それでまた拙者が持って帰らねばならぬのだな」
ヴァーサ    「大勢寝てますから、潰れても起きるまで待っていれば良いんじゃないですか?」
フェルフェッタ 「それもそうね。ガルゴスを持って帰るのはちょっと無理だものね(笑」
ナガイ     「しかし、あまり長居しては店に迷惑が掛かろう」
ヘルン     「朝になって誰も起きなかったら考えれば良いと思いますよ。貸し切りですし」
フェルフェッタ 「そういうこと。ヘルン寝たまんまで何か食べられそう?」
ヘルン     「食べるのは少々辛いです。飲み物だけで」
クルガ     「お主は飲むと静かになってしまってつまらぬ!」
イワセ     「そういう酒癖なのだから仕方あるまい」
ヘルン     「いえ、あの、自分は水で結構です(苦笑」
フェルフェッタ 「あらそう。でも朝になっても痛かったら飲んで頂戴よ」
ヴァーサ    「痛いのとお酒とどういう関係があるんですか?」
イワセ     「酔っ払いは足をぶつけても痛くない、という関係だ」
ナガイ     「消毒に使うのは知っていたが、そういう使い方もあるのだな」
イワセ     「うむ。こやつなど、酔って寝ておる間は蹴飛ばしても起きぬからな(笑」
クルガ     「蹴飛ばしたのか!?」
イワセ     「酔ったヴァルガに蹴られていたな、随分前の話だが」
ヘルン     「先輩が床で眠ってしまうからですよ。危うく踏むところでした」
クルガ     「うむ、次から気を付ける。踏み潰されてリタイアなどと、そんな伝説にはなりたくないからな」
フェルフェッタ 「しかも同僚にね(笑」
ヴァーサ    「痛そうですね、それって」
ナガイ     「痛いのもそうだが、少々格好悪いのも、そうだな」
フェルフェッタ 「末代まで笑い話として語り継がれるわね(笑」
ヘルン     「そうですね(笑」
クルガ     「よしっ、それでは飲み直すぞ! ヴァーサは飲める方か?」
ヴァーサ    「まだ、少ししか飲んでないです」
フェルフェッタ 「無理強いはダメよ、無理強いは」
クルガ     「分かっておるとも! 間違っても団長には飲ませたりなどせぬ」
イワセ     「その前にお主が潰れるであろうからな。拙者も少し飲むか」
フェルフェッタ 「あたしも貰うわ。ええっと、メゾネアの方でお願い」
クルガ     「こっちのか。よし、潰れるまで楽しむぞ!(笑」
ヴァーサ    「本当に、賑やかですね、ここは」
ナガイ     「うむ、そうだな」






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サンパロスより帰還して、王都ヴァレイのいつもの酒場、弔いの宴です。
先の話も考えて楽しいですが、時には昔の話もやってみたいらしいです。


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