@十日前

 やけに醒めた目で微笑みながら、土を掛けさせて下さいと、若い騎士が云った。
 もう一人の騎士に支えられて危なっかしく立って、地面に掘られた穴に視線を落とす。
 背景で若い魔女たちが泣いている。
 掘り返した土が濡れている。
 空は曇っている。
 お願いします、と若い騎士が云って、こちら見上げた。
 痛いところを上から刺されるような気分で、頷いて返す。
 ありがとうございます。
 沁みるように笑う。
(何故)
 そんな顔ができる。
 問いたい気がして、けれど問えない。こんなこと訊いてはいけない。
 穴の縁に屈んで土を掬う背中をじっと眺める。
 己れには無理だった。
 あの日自分を引き戻したのは恐れだった。何を恐れたのかも既に定かではないが、ただひどく恐かった。
 何もなければ、どれほど掛かったことか。
(拙者が子供なのであろうか)
 俯いて穴の中を見下ろす。
 急拵えのいびつな棺の中には、騎士に想いを寄せていたニンジャが眠っている。
 もう一つの穴の中の大きな棺は、年嵩の、先輩である剣闘士のものである。こちらはもうほとんど土を被って、板の面がほとんど見えない。
 不意に若い剣闘士が、吠えるような声で喚いて、新しい盛り土に拳を打ち付けた。
 何を云っているのかはよく聞き取れない。
 聞き取れてもきっと、掛ける言葉が見当たらない。
 指先が痺れるような無力感。
(拙者に出来ることは何だ)
 騎士団の団長として、皆を率いるものとして。
 思い浮かばない。
 頭が回らない。
 気持ちばかりが焦って空回りする。
 三歩前に屈んで、若い騎士は黙って土を掬っては穴の中へ落としている。
 泣き叫ぶ声に圧されて、その音は聞こえない。


@九日前

 どうしようもないこの無力感をどうすれば良い。
 浮かぶのは沢山の後悔。幾つもの時点時点で、あのとき一歩を違えればこの結末には到らなかったのではないかと思う。そもそもの全てを始めたことをも悔い悩む。
 けれどここに立っているのは自分。ここまで進むことを決めたのも自分。全ては自分の決めたこと。
 けれどこんなにも後悔するのはなんなのか。こんなにも悲しいのは何故なのか。悔いては彼らに、逆に申し訳がないと思いつつ、悔しくて悲しくて、どんな言葉にも表せない。
 言葉にできない。
 言葉にならない。
 ふと消えてしまいたくもなる。けれど消えることは出来ない。このまま歩き続けることが弔い。倒れ動けなくなるそのときまで歩き続けることが彼らへの弔い。
 だからどうか、まだ私に歩くことを許して下さい。
 どうか。


@八日前

 会うのは多分、これで三度目だ。
 壊れた庁舎代わりに使われている高台の建物の下。
 自警団の集会を終えての帰り道、ラーン・サラズラムはやたら胸を高鳴らせながら、階段を降りて行く後ろ姿に声を掛けた。
「あのっ、騎士団の、団長さん!」
 名前は忘れてしまっていたので、役職名で呼んだ。
 若いサムライは足を止めて振り向いて、軽く首を傾げた。
「自警団の」
 向こうもこちらの名前は覚えていないらしい。
「ラーンです」
 名乗ると、騎士団の団長は呟く音量で復唱した。
(やっぱり若いな)
 日の下で見て改めてそう思う。
 三つか四つか、それくらい下に見える。
「……拙者に、何か?」
 訝しげに尋ねられ、ラーンは慌てて背筋を正した。
「あ! あの、魔物を倒して下さって、ありがとうございます」
 きょとん、と緩やかに目が丸くなる。
 ラーンは慌てて早口になる。
「俺たちじゃ、全然手に負えなくて。家もいっぱい壊されて、だけど騎士団が魔物を倒してくれて、助かりました。他にも、あ、うちの奥さんも、すごい安心してて。……とても感謝しています」
 まとまらない。
 騎士団の団長は少し笑った。
「そう云って貰えると、死んだ者も浮かばれる。有難う」
「いえ……」
 もにょもにょと語尾を曖昧にすぼめる。
 こっちとしてはろくに何もしていないので、礼を云われると居心地が悪い。礼を云うのはあくまでこちらの方なのだ。
「あの、お役所に何か用だったんですか?」
 気を紛らわすために話題を変えた。
 若いサムライは、うむ、と頷いて。
「こちらでの滞在の延長を請いに。負傷者が多く出てしまったゆえ、回復の時間が欲しくてな」
「はあ」
「いつもなら誰か添わせて置いて即日発つこともあるが、今回は多過ぎる。怪我人と、付き添いまで残しては、騎士団の人数が半分になってしまう」
 それでは魔物に対応しかねるし、遠征中の盗賊団への対応も辛い、と半ば独白のように続ける。滞在の期間を延びれば、その間に何人かは歩けるまでに回復しているだろう。
 代わりに、出るときは一人も残すなと云われてしまったらしい。
「怪我人を連れているのもあまり良い事態とは云えぬが、拙者はそちらの方が良いと、そう思ったのだ」
 眉間に少し皺を寄せ、起伏の少ない云い方で話す。
 街から一歩も出ない自警団に於いては、想定すらしないようなことだ。
 ただ、大変ですね、と間抜けな答えを返した。


@七日前

 墓参りなんて、するとは思わなかった。
 橙色の光を浴びる墓を睨んで、ガルゴスはぶっすりと仏頂面をしている。
 彼の腕にしてみれば一抱えもない、気合いを入れれば容易く砕けてしまいそうなこんな石の下に、己れの師は眠っている。
 もう会うことも声を聞くこともない。
 鉄球の回し方のコツを教えて貰うことも、叱られて拳骨を喰らうこともない。
 これからいろいろする筈だったことを全部まとめて、こんな土の下に持って行ってしまった。
(ちくしょう)
 身内の墓になんてお参りなんてする気はなかったし、知り合いが死ぬなんて、そんなの物凄く遠いことだと思っていた。
 自分は騎士団にいるのに、自分の周りだけは死神は避けて通ると。
 そんな馬鹿馬鹿しいことを信じていた。
 いやそれは、信じているのとも違って、ただ漠然と、それが当然だと思っていた。
 そして、そんなのはただの夢だった。
「ちくしょう」
 声に出す。
 どうせなら自分が成長して活躍する様を見せてやりたかった。もっとずっと強くなって、鉄球の一万回なんか簡単に回して、強くなっただろ、と胸を張って云ってやりたかった。
 最後は喧嘩したまま、それっきりになってしまった。
 それがとても悔しい。
 いつもなら悩みごとなど、大声を出していれば忘れてしまう筈なのに、どんなに喚いても、気分はスッキリしなかった。
 でも難しく考えるのも、うだうだとずっと悩んでいるのも嫌だ。
 元から楽観的なのが自分のウリだし、事実、今日は最初の日より断然元気になっている。
 ただ。
(恨まんでくれよお)
 お別れがそんな言葉では、イヤでも引っ掛かる。
(恨んでなんかいねェのに)
 言い訳をしても今更、届きはしない。そんなことが分からないほど子供ではない。
 悲しいより、苛々する。
 今までのことを感謝したいのに、口を突いて出るのは悪態ばかりだ。
「ちくしょうッ」
(よりにもよって、何で最後がそんななンだよォ)
 ずっと、むしゃくしゃしている。


 礼拝堂の中は閑散としていた。
 珍しく皆、出払っていて、一人最前列のベンチにフェルフェッタが横になっている。
「なんて顔してるの」
 膝の上に広げたノートから顔を上げ、年嵩の魔女は片眉を上げた。何か記していたのか、片手にペンを持っている。
 ガルゴスは鼻を鳴らした。
 どうも気まずい。
「どんな顔してたってオレの勝手だァ」
 そっぽを向く。
「何云ってるの。不機嫌な顔してると良いことが逃げてくのよ」
 のしのしと大股で歩く背中に、声が投げられる。
 苛立ったまま、ガルゴスは振り向いて魔女を睨んだ。
「知らねェよ。フェルだって、そんな顔してンじゃねェか」
 年嵩の魔女は緑の目でこちらを見上げた。
「あたしが?」
 口元に苦笑を浮かべて、首を軽く傾げる。
「あたしは、いつも通りよ」
「ウソ吐けェ」
 苛立ちに任せて、フェルフェッタの目をギッと睨む。
「ずっといじけてンじゃねェか。おっさんのことでだろ。おっさんが死んだからだろ」
「……」
 視線が揺らぐ。
「馬鹿ね。あたしがいつまでも、そんな感情的にうじうじしてると思って?」
 戯けた調子を装って、声が震える。
 表情は強張った苦笑を浮かべたままだ。
「だって、……してるじゃねェか」
 予想以上に相手が揺れて、ガルゴスは怯んだ。
 いつものフェルフェッタなら軽くいなしたろう。同じ台詞をひょいと肩を竦めて、あんた子供ね、という感じの笑いでも浮かべながら発した筈だ。
 確かにヴァルガの死の現場に彼女がいたと、そう聞いた。
 だがそれだけで、気丈な魔女がこんなに不安定になるだろうか。
 いつもと違う。
 ガルゴスは何だか酷く不安になった。
「そうね、そうかもね」
 困惑気味にぐるぐると考えを廻らせていると、フェルフェッタが先に、呟くように云った。
 え、と見ると、魔女はすいと視線を逸らした。
 膝の上に広げたノートに目を落とす。
 臑まであるスカートに隠れて見えないが、腿には添え木を当てられて、包帯が巻かれている。
 見事にぱっきり折れたらしい足は順調に回復している。薬のお陰か、神官のキャナルが日々精霊に捧げる祈りのお陰か、ただ放っておくより治りは早いらしい。
 落とした視線はノートを透かして、その辺りを眺めているように思えた。
「あたし、何も出来なかったから」
 その日の広場のことを、ガルゴスは詳しくは知らない。
 ただ、フェルフェッタが負傷したのはヴァルガが死ぬ前で、彼女はそれでもう動けなくなっていたと、それくらいは知っている。
 緑の眼が、自嘲を含んで若い剣闘士を見上げた。
「ごめんなさいね」
 喉をきゅうっと絞られた気分になった。
 違う。
 彼女が謝ることなんかない。
 自分が不機嫌な顔で、怒ったみたいに云ったから、だろうか。
(違ェよ)
 責めてなんかいない。
 自分が単純な所為か、そんなことしてもしょうがないと早々に割り切っている。師は魔物のために死に、その魔物は倒された。何処にも遺恨はない。
(恨まんでくれよ)
 不意にまた言葉が蘇ってきて、ガルゴスは鳥肌が立った。
(恨んでなんかいねェよ!)
 目線の先、ベンチの上で、フェルフェッタは今にも崩れそうな苦笑を保って、目元を痙攣させる。
「ごめんなさい」
(誰に云ってンだよ、それ)
「違ェよ」
 ガルゴスは云って、またもう一度そう云いながら首を横に振る。
 魔女の視線が、すう、とこちらのそれと重なる。
 眉間に思いっきり皺を寄せて、若い剣闘士は俯き加減に唇をへの字にした。
「フェルのことなんか、だァれも責めねェんだ。謝ってもしょうがねェ」
 云ってから、どうにもまた誤解を招きそうだと気付いて、ぼそぼそと続ける。
「あれァ、全然、なンも、フェルの所為とかじゃ、全然ねェんだ」
 語彙の少なさにまた苛々する。
 あの日もそうだ。己れの足の遅さに苛立った。走っても走っても前に進めなくて、ずっと広場に着けないような錯覚さえ覚えた。
 当たり前だが走って辿り着けない訳はない。
 ただ辿り着いたその先で、現場のあまりの惨さに、思いっきり吐いてしまったりしたけれど。
「だから謝ったりすンなよ」
 云いながら、だんだん蚊の鳴くような声になった。
「いつものフェルじゃねェと、落ち着かねェし」
「……」
 魔女は何も云わずに顔を背けた。
 ガルゴスは続きの言葉も思い付かずに、その場で情けなく立ち尽くす。
 随分と居心地の悪い間があってそれから、ありがと、とフェルフェッタが呟いた。
 とても小さな声だった。
 彼女が泣いているような気がして、若い剣闘士はやたらバクバクとして、更に居心地が悪くなった。
(ちくしょうめェ)
 また悪態を吐いた。
 湿っぽいのは、苦手だった。


@六日前

 夜の礼拝堂。
 明かりは燭台の光のみ。
 その光の下に座って、ナガイは荷物を仕分けする。
 死者が二名、怪我人が数名。
 ここまで運んで来たもの全部は持って行けないだろう。怪我人に多くは持たせられないし、死人は荷物を持てない。
 いらないものは、ここで処分する。
 遠征に持って行くのは必要最低限の物品だ。貧乏な騎士団には新品を買う余裕もほとんどない。だから本当はいらないものなんかないけれど、選ばなくてはならない。
 こんなことも役目だ。
 けれど一人ではなくて、荷物の山を挟んで向かいにリコルドとヘルンが互いに離れて座って、仕分けを手伝ってくれている。
「あと六日」
 山越え用のシルズ炭を、要らない物、の方に押し遣りながら、リコルドが呟く。
 ナガイはその動きを目で追う。
 王都までは山はないから、勿体無いがこの炭は処分する。次の遠征の準備の時に、改めて買わなくてはならない。
「念のため今日もう一度、行ってみたが、これ以上は延ばせぬとのことであった」
「そっか」
「あと六日で、どれだけ歩けるようになろうか」
 出立の期日を延ばす代わりに、発つときは全員でと、それが出された条件だった。
 二者一択で、ナガイは期日を延ばす方を選んだ。
 向こうの口振りでは、当初の予定通りの日に先に自分たちが発っても、残された者が完治まで滞在を許されないかも知れないと、そう思ったからだ。
 これは邪推かも知れない。
 けれど役場と騎士団でお互い印象が良くないことを考えると、それがないとは云えない。
 第一、次の遠征のための物資援助を請うたが、街の復興のためにいろいろ予算が掛かるのだと云われて、出し渋られた。
 残りの道程が王都までの帰還のみと知って、足下を見ている。
 延々と押し問答の結果、多少は援助が望めたものの、必要な量の四分の一にも満たない。
 その結果を伝えて、表向き、皆何も云わなかったが、マルメットを始めとする何名かは納得のいかない顔をしていた。
「そうだな、あと六日だよね」
 ぽそぽそ云うリコルドの声で、ナガイは悶々とした考えから引き戻される。
「大人しくしてれば、クルガは治るね。腫れてるだけだから。イワセは、やっぱりちょっと遅くなると思う。ポールも杖が要ると思う」
「フェルフェッタは、やはり無理か」
「折れてるからね。歩かせるより、ガルゴスが背負ってった方が良い。無理して骨が変なふうにくっついても困るし」
 本人はヤな顔するだろうけどね、と片方の肩だけを器用に竦める。
 ナガイはそちらに視線を走らせて。
「お主はどうなのだ」
「僕は歩きには支障ないよ。撃てないけどね」
 弓使いは言外に但し書きが付いていそうな口調で云って笑う。
 それから、ひそめた声を更に低める。
「それよりキャナルを心配した方が良いよ。寝てないから、多分」
「自分も、同意見です」
 それまでずっと押し黙って仕分け作業をしていたヘルンがぼそりと云う。
 ナガイは、うむ、と頷いて、二人の向こうの暗がりを透かし見た。
 最前列のベンチに、痛み止めを服まされて、フェルフェッタが眠っている。その傍らにぼんやり白く、跪いて祈りを捧げる神官の姿が分かる。
 どういうことだかはよく知らないが、神官がああやって祈りを捧げることで、痛みをやわらげ傷を癒すことが出来るのだと云う。神官だけでなく幾つかの職種が、同じように他者を癒すことが出来るらしい(その力の源が祈りであるかどうかは分からないが)。
 戦いの最中などは張り詰める分だけ祈りの力が増すらしく、効果はより顕著なのだと云う。
 間近で見たことはないが、いわゆる火事場のなんとやらと同じことだろう。
 ただこの力、自分は治せないらしい。
 キャナルの場合、昼は料理や裁縫や洗濯などを率先してこなし、夜はああやってずっと祈っている。いつ寝ているのか分からない。
 このままでは遠からず体を壊してしまう。
「拙者から、云っておく」
 要らない物、の山に積まれた替えの服を始めとする布類をきちきちと几帳面に畳みながら、ナガイは云った。要らない物でも、きちんときれいにしておく。捨て値でも売れば金になる。
「彼女、頑固だから、云ったあとも見といた方が良いよ」
 リコルドが云う。
 ナガイはこくりと頷いた。
 確かに心配だ。


@五日前

 起きっぱなしは体に悪いから、きちんと寝るように。
 そう云われて、キャナルは戸惑った。
 確かに眠くて頭はぼうっとしているけれど、日があるうちはそれほどではないし、夜だって祈りの力に影響があるようには思えない。
 第一、自分が寝ては誰が祈るのか。
 出立の日は迫っている。
 それを云うと、団長は痛いような不満なような顔をして、少し黙ってそれから、ならば昼の用事は引き受ける、と云った。
「え、でも、そんな」
 団長に雑用を押し付けるなんて。
 それは自分の役目と云い募ろうとして、あやふやな言葉が口から飛び出る。
「ほら、お主は寝不足だ。疲れておるのだ。当番の時は拙者とて炊事をする。裁縫もだ」
 若い団長は生真面目な顔で云った。
「頑張りすぎて倒れてしまっては困る。お主は、お主を大事にせよ」
 心配されている。
 そう思って、キャナルは何故か顔が熱くなった。
「そ、それでは申し訳ありませんが、お昼に、お休みの時間をとらせていただきます」
 新入団員でもないのに思わずどもる。
 恥じて、更に頬が熱くなった。
 熱が出そうだった。


@四日前

 行き付けの酒場のカウンターに座って、ラーンはずっと考えていた。
 途中で何度も顔見知りが脇を通ったり隣に座ったりして、やれ昼間から飲んでるんじゃないとか、やれ家で奥さんが泣いてるぞとか、冷やかしに云っていった。
 そのどれもを大半聞き流しながら、ラーンはぼんやりと考えていた。
 騎士団のこと。
 出立の日取りを決めたのがお役人なら、自分にそれを覆す力はない。第一、わざわざ頼みに行って睨まれるのも嫌だ。騎士団には悪いけれど、自分にはこの街での暮らしと家族がある。
 でも。
 自分より若い団長は、自分よりいろいろなことを考えていた。
(俺はこのままで良いんだろうか?)
 今の立場に不満はない。仕事はそれなりにやり甲斐があるし、家に帰れば気が強いけれど優しい、美人の妻がいる。きっと来年にでも子供ができて、幸せな家庭を作れるだろう。
 そう。それをわざわざ変える気はない。
 けれど、やっぱり引っ掛かっている。
(何か)
 ぼんやりとグラスの氷が溶けゆく様を見ながら、ラーンは頭の中で呟く。
(何か、やっといた方が良いんじゃないか?)
 自分たちを、この街を助けてくれた彼らに対し、あまりにも自分たちは何もしていなさ過ぎる。
 そんな気がする。
(何をすれば良い?)
 それが思い付かずに、時間だけがじりじりと流れて行く。


@三日前

 真新しい盛り土と真新しい墓石が、昼の光にぽっかりと、そこだけ場違いみたいに据えてある。
 慣れない杖を突き、若い騎士はふらつきながら、二つの墓の間に進み出る。
 それから杖を脇に挟んで手を合わせた。
 日の光はぽかぽかとして、きっと墓の下でも暖かいだろうと思う。それで何も変わらないかも知れないけれど、寒いよりはずっと良い。
 じっと合わせた手を下ろし、片方の墓石を眺める。
 この下に彼女が眠っている。
 目を閉じなくても姿を思い描くことができる。
 流れる金髪。ぴんと伸びた背筋。顎をひいて、零れるように笑う顔。
 彼女の付けていた片耳のイヤリングは、今、ペンダントヘッドとして首から下げている。二人分のイヤリングは全く同じ作りで、触れあって微かに音を立てる。
(エクレス)
 自分が想い、想われた人。
 その名前。
 二度と会えない。自分が塔に行くその日までは。
 守れなかった。
 盾を持ち、人を守るという、騎士の役目を果たせなかった。
(折角)
 倦んだ頭で呟く。
(折角、僕は騎士になったのに)
 働き口を探して王都まで出て来て、酒場にいたところを入団希望者と勘違いされたのが五年前。
 騎士団のことも魔物と戦うことも知らず、知っていたのは余り物を使った料理の作り方とか、板張りの床や石壁やテーブルの傷を隠してどれだけきれいに磨けるかとか、そんなことばかり。
 十七種類あるという勇者のことすら、何も知らなかった。
 でも一番最初のその日に会ったエクレスに、あっさり一目惚れしてしまった。
 騎士団に入れば一緒にいられる。
 そんな単純な理由だった。
 でもあんまり何も知らなくて、職種のどれに自分が当てはまるかも分からなかった。
 だから自分を引き込んだ先輩のクルガに責任を取ってもらって、三日間くらい額を突き合わせて考えた。あの時、お主が連れて来たのだからお主が責任を取れ、と云ったのは同じく先輩のイワセだったが。
 その結果が騎士だった。
(守れると思った)
 一度目はその場にいなかった。
 二度目は側にいながら、助ける術を持たなかった。
 仕方ないと云われればそうだ。その場で自分に出来ることはなかった。
 消えていく温もりの感触は、まだ、この掌に残っている。
 自分の中身はほとんど空っぽだ。
 外身はどうだか知らないが、中身はひどくぽっかりとしている。悲しいのかどうかすら分からない。
(……)
 不意に足音が聞こえて、ポールランは考えるのをやめて顔を上げた。
 さっくさくと不規則な足音の主は、足を止めて気まずそうな顔をする。
「参ったな、人がおったか」
 眉間に似合わぬ皺を寄せ、クルガはもそもそと云った。独り言なのかも知れないが、音量が独り言になっていない。
「先輩もお墓参りですか」
 笑みを返して訊く。
 童顔のサムライは、ううむ、と唸った。
「それもあるが、日に当たらずにいてはモヤシになりそうでな。こっそり抜けて来た」
「怒られますよ」
「うむ。だから内緒にしてくれ」
 可笑しいほど真剣な顔で、人さし指を口に当てる。
「……バレると思いますよ」
「お主が云わねばバレぬ」
 妙な確信である。
 苦笑を浮かべるポールランをよそにヒョコヒョコと隣に来て、二つの墓にそれぞれ一礼する。くしゃくしゃに結んだ髪が頭上でぴょんと揺れる。
 少し長めに頭を下げた後、真面目な顔になってこちらを見た。
「お主、これからどうする」
「どうって」
「残るか抜けるか」
 ぱ、と見ると、淡い色の目と視線が合う。
 何気ない顔をしながら眼差しだけが真面目だ。彼には珍しく器用な表情である。
 ポールランは黙って、墓を見遣る。
 クルガはこっちを見ている。
「お主は未だ若いから、ここにいれば幾らでも伸びよう。だが居て辛いのなら、抜けるも手だ」
「……クララクルル先輩が、そうでしたね」
「そのようだな」
 本人から聞いた訳ではないけれど、いつの間にか全員が知っていた話だ。
 今頃どこでどうしているのか。
「どっちつかずで腐れてゆくのが一番悪い。そうなるようなら」
 クルガは言葉を切り、すっと背筋を延ばす。
 さりげなく片手が刀の柄に掛かっている。
「分かってます。覚えてますよ」
 淡く苦笑して返す。
 同様のことを云われたのは三年前。
 選択肢こそ違うものの、云いたいことは同じだろう。
「斬り捨てられたくはありません」
 返事に、童顔のサムライは口元だけを笑ませた。
 それから、とんとん、と掌で柄を叩きながら。
「拙者としては、今騎士団は人も足らぬゆえ、お主にはまだまだ残っていて欲しい」
「元よりそのつもりです」
 顔を上げて、きっぱりと答える。
 クルガがすっと目を細める。
 その視線を感じながら、俯く。
「僕は未だ、騎士の役目を果たしていません」
 目を閉じて、首から下げた元イヤリングに触れた。
「折角、僕は騎士になったから」
 まだ自分の盾を役立てていない。騎士として、他の誰かを守れていない。
 このまま抜けてしまっては、何のために騎士団の騎士になったのか。
 何のためにこの職種を選んだのか。
 あの日、守ろうと思った人は守れなかった。
 だから。
「せめてここにいる間は、誰にもこんな気持ちになって欲しくない。こんなのは」
 云いながらどんどん、空っぽの気持ちに何かが溜まって来る。
 そう、最初の日はいっぱいだった。この感情でいっぱいだった。だから笑えた。笑うしか出来なかった。
 やるせない、いたたまれない、もどかしい。
 こんな、どうしようもない気持ちは。
「もう沢山だ」
 気が付けば両手で祈るように、ペンダントにした二つのイヤリングを包んでいた。
 肩に、とん、と手が置かれる。
「無茶はすまいぞ」
 呟くように、声が落ちて来た。
 見上げるより早く手は退けられ、童顔のサムライは既にそっぽを向いている。
 この先輩は真面目なことを云って、たまに自分でひどく照れているときがある。
 ポールランは目元を緩めて小さく頷いた。
「……はい」
 そのまま沈黙が流れる。
 しばし黙ってから、クルガがぽつりと。
「花が枯れておる。買いに行かねばな」
 見ると、下を向いたその先で、初日に供えた花がくたりと萎れていた。
(買いに行かないと)
 目を閉じずとも描くことのできる、ニンジャの姿を思い浮かべる。
 どんな花が似合うだろう。
 きっと大輪の、鮮やかな花が似合うだろう。


@二日前

 考えたあとは散々また迷って、それからやっとラーンは重い腰を上げた。
 彼らの駐留しているのは街に二つにある教会の東の方で、とにかく古いものらしい。古いだけでなく頑丈だと云うのは、今回のことが証明してくれた。
 高台にある教会へと続く階段をえっちらおっちら上って行くと、上から人が降りて来た。
 やって来たのは未だ若い、いや子供のような容貌の小柄な少女で、数十段先からラーンを見下ろし足を止めている。
「あんた、何の用さ」
 刺さりそうな鋭い視線が、ラーンの顔を正面から睨んでいる。
 魔物と対峙したときほどではないが、思わず怯む。相手はこんな年下の、体だって小さな女の子なのに。
「だ……き、騎士団の団長さんは、おいでですか?」
「何の用だわさ」
 勇気を振り絞って云った言葉に、少女は不機嫌な声で繰り返す。
「その、お話が、あります」
 ラーンは思いっきりどもりながら云う。
 完全に気圧されている。
 少女は屹と身構えて。
「あんた、まさか役場の人? 出発は明後日だわさ。ちゃんとそう約束したわさ!」
 怒鳴るように云って、一段飛ばしでラーンのところまで降りて来る。
 ラーンは固まってしまって動けない。
 小柄な少女は怒気を孕んでまくしたてる。
「何? 文句でも云いに来たんだわさ? ちゃんと大人しくしてるじゃないのさ。云った通りに、いざこざなんか起こしてないわさ。何が不満なんだわさ? 魔物はちゃんと倒したわさ!」
「マルメット!」
 声が、今度もまた上から飛んで来た。
 少女が振り返った方を見ると、背の高い男が階段の一番上で苦笑を浮かべている。
「落ち着いて。上まで声が聞こえる。その人、お役所の人じゃないよ」
 そうですよね、とふわふわ笑顔を向けられ、ラーンはこくりと頷いた。
 マルメットと呼ばれた少女はそんなラーンを見て、ややあってから頭を下げて、ごめんなさい、あたしの勘違いだわ、とぼそぼそ云った。
 それからラーンの脇をするりと抜けて、街の方へと駆け去った。
 見た目に反し、猫のようにすばしっこい。
 呆然とそれを見送っていると、階段の上の男が、すみませんね、と云った。
「いつもは、あんな風に突っかかったりしないんだけど。実家がこんなになって、ちょっと気が立ってて」
「実家」
 ラーンは目をぱちくりさせた。
 あんな子は見たことない。街は広いから会ったことのない人も多くて、それは当然かも知れないけど。
「この街のこと心配してたから助かって嬉しいんだろうけど、今回のことで、彼女の懐いてた人が死んでしまって。それで」
 済まなそうに笑みながら、男が云う。
 はあ、とラーンは曖昧に頷いた。
(あんた役場の人?)
 彼女は怒っていた。
 ただ騎士団の団員――と云われてもまるっきり少女にしか見えないのでピンと来ないのだが――として役所の対応に怒っている訳でなく、かつての住民としても怒っているのだろう。
 懐けるような相手をラーンは持たないけれど、もし妻が死んでいたなら、きっと怒っていただろう。
 何処に対してかは、起こらなかったことだから分からないけど。
「団長に、話があるんだよね?」
 男が云って、ラーンははっとして慌てて頷いた。
「ちょっと呼んで来るから、上まで来て待ってて下さい」
 笑顔で云って、長身の男はくるりと踵を返す。
 ラーンは、はい、と声を裏返させた。


「荷車」
 目の前に、でん、と据え置かれた物を見て、ナガイはぽつりと呟いた。
 ナガイをここまで連れて来た何度目かに会う自警団の男は、何やら恥じ入ってしまって、顔を赤くして俯いている。
 教会から少し離れた空き地。
 ここまでの案内をした男の他に数名の若者が、緊張して様子でたむろっている。
「すみません、あの、本当は馬車とかが良いんでしょうけど。あ、決して騎士団の人がモノ並みだとかそんなんじゃなくてっ」
「そこまで、邪推はせぬ。……だが、何故?」
 首を傾け見上げると、ラーンと云う男はまだ頭に血が上った様子で。
「け、怪我人が一緒だと、大変だって云ってたんで、だったら……いやまず、何か贈りたくて、それでだったら何がイイかって考えて……それで、皆でお金出して」
「確かに荷車なら、フェルとか乗せられるね。あ、荷物も」
 ナガイの隣でリコルドが云う。面会したい人がいる、とナガイを呼んで、それからラーンがここに案内するまで、ずっと付いて来ていた。
 それはそうだと、ナガイは納得する。
 馬車のように速くはないが、荷物も人も乗せられる。
 車輪のあるものの常として道は必要だが、王都までならずっとそれが続いている。地形も平坦、いやむしろ広大で緩やかな下り坂だ。道も整備されている方だし、ヴァレイまでの道のりのみなら、この道具は非常に有用だ。
 しかし。
「拙者ら、稼業が稼業ゆえ、いつこちらに立ち寄ることがあるか分からぬ。何か事故があって壊してしまうかも知れぬ。……受け取ってしまっても良いものか……」
「いいいいえ!」
 困惑顔でぽつぽつ云うナガイに、ラーンは大きく首を横に振って。
「全然構いません。貸すんじゃなくて、贈りたいんです。な?」
 ラーンの呼び掛けに、若者たちが頷いた。
 先日の件でも彼が先頭に立って主に喋っていたのを見るに、どうやら彼がリーダー格らしい。
「だから、どうぞ」
 自警団の男が緊張した声で云うのを見、ナガイは荷車に目を遣った。
 それからちらと隣の弓使いに視線を向けると、相手は頭二つより上の位置でへろりと笑う。
 ナガイは軽く頷いて、ラーンの方に向き直る。
「では、有り難く頂戴致す」
 まだ慣れない感じで、笑ってみせた。
 若者たちから、ざわめくように歓声が上がった。


@一日前

「結局オレが引くんだろうがよォ」
 ベンチの傍らに座ってガルゴスが鼻を鳴らす。
「そうね、一番力があるの、あんただからね。あたしはラクさせて貰うわ」
 膝の上に記帳を広げ、フェルフェッタは軽く笑う。
 同じく彼自身の膝の上に巻き物を広げ、若い剣闘士は再度、ふん、と鼻を鳴らした。
「あんなボロい車なくったって、何だってオレが担いで持ってってやるのに」
 不満を装っているが、どこか嬉しげだ。
「じゃあ荷車がないときは、荷物持ち頼もうかしら」
「何だよそれッ」
 雑用じゃヤだぜェ、と云ってガルゴスは不機嫌な顔をする。
 それから巻き物に目を落とし、ややあってもぞもぞとフェルフェッタに差し出す。読めない字があったらしい。
 彼がそれを持ち出して来たのは数日前だ。
 巻き物はヴァルガに貰ったもので、読めなくて挫折して今まで忘れてた、と怒った顔で云った。
「読みたいから、字ィ教えてくれ」
 まずはものを頼む姿勢から教えるべきだったのだろうが、そのときは随分と弱気になっていたせいか、二つ返事で引き受けた。
 太い指で示された語句の読みと意味を云ってから、フェルフェッタは相手の髭面を見上げて肩を竦めた。
「全く、三年も放っておくなんて。よく虫に食われなかったわ」
「それァもう、さんざ聞いたぜ。しゃあねェじゃンか。忘れてたンだから。読めねェって馬鹿にされんのもヤだったし」
「……ならどうして今更」
「……」
 ぶす、と若い剣闘士は唇をとがらす。
「これ全部ちゃんと読んだら、恨んでなんかいねェって証明できる」
 良く分からなかった。
 恐らく本人も、それで理由の全部だとは思っていないのではないだろうか。
 ガルゴスはもぞもぞとまた座り込み、膝の上に巻き物を広げる。
 フェルフェッタも記帳に目を戻し、紙面にペンを走らせる。
 記しているのは今回の魔物のこと。
 忘れる前に書き留められるだけのことを書き留めておかなければならない。
 魔物についての資料は本部にある。帰ってからそちらと照らし合わせ、詳細を調べる。四か六か、レベルくらいは分かるだろう。
 一度あったことだ。二度あると考えた方が良い。
 また訪れるかも知れない危機については、対策を立てなければならない。
 そのためには、まず知ること。正確な情報を元に調べること。
 力技は通じないかも知れないが、頭を使えば勝てる筈だ。
(今度は死なせないわ)
 脳裏に焼き付いた髭面に呟く。
 あの日からずっと、瞼の裏で、年嵩の剣闘士はのんびり笑っている。怒った顔も凹んだ顔も見てきた筈なのに、思い出す顔はいつだって笑っている。
(そこで見てなさいな。この子は立派な剣闘士になるわ)
 それが彼の望みだった。
 自分の教え子は三人もいて、その上でガルゴスの世話を焼くのはとても無理だが、変な方に転がらないように見ているくらいは出来る。
 引っ叩くくらいするかも知れないが。
(お前さんがやったら泣いちまわあ)
 記憶の底でヴァルガが云った。
 のんびりと笑った顔のままで。


@当日

 影がうんと伸びて、道に落ちている。
 昇ったばかりの陽に照らされて、行く手に長く。
 足下の影を踏みながら、扇形の街を背に、がたごとと木の車輪が鳴る。
「くッそォ、重ェ!」
 荷車を引きながらガルゴスが怒鳴り、後ろから押すヘルンが苦笑を浮かべる。
 荷台のフェルフェッタが険悪な笑顔を浮かべ、女性を乗せてるのにそれはないんじゃないかしら、と云った。
「うむ、魔女っ子では届かぬからなあ、これは」
 ヘルンの隣、片腕で荷車を押しながらクルガが見当違いのことを云ってけらけらと笑う。隣を歩くイワセがそれを小突いた。
 それに反応して、届くわさ!と怒鳴ったマルメットが、ぱたぱたと駆けてガルゴスの隣に潜り込み、じたばたと引き手にしがみつく。
「馬ッ鹿ヤロ! もっと重てェよ!」
 若い剣闘士が喚いて、肩で魔女を押しやる。
 マルメットはぶすっとして引き手から降り、荷車の横に戻った。常より聞き分けが良い。
 下がった同輩をアズリットがつついて、二人でこまこまと云い合いになっている。
 フェルフェッタが荷台から、二度目の、重い、を云ったガルゴスの頭を杖でどついた。相席のポールランは、背後に遠くなっていくサンパロスをずうっと眺めている。
 荷車の前を弓使い二人がお互い離れて歩いている。
 そして先頭を行くナガイの斜め後ろをキャナルが行く。
 会話はないが、いつの間にかそこが定位置になっている。後半はきちんと寝ていたお陰で、体調も良さそうだ。
 左の背中から光が届く。
 進む前には緩やかな起伏を繰り返し、ウォルター平原が広がっている。
 街を離れて未だ間もないがゆえ、整備された土の道が足下にある。遠くまで、雑草を増やしながら地平線に続いている。
 草むらで、朝鳥が鳴いていた。
 平原を渡る風がさわさわと草を揺らした。
 見上げた空はぴんと澄んで、晴れ渡っている。
「きれいですね」
 キャナルが囁くように云った。
 高い空を見上げたまま、ナガイは頷いた。
 とてもきれいな空だ。
「……」
 呟く音量で、歌が口をつく。
 いつか聞いた行軍歌。
 誰かを弔っているのではない。小さすぎてきっと誰にも聞こえない。荷車の車輪の音と足音と、皆の喋る声に掻き消され、自分の耳にも届かない。
 何故だろう。
 朝焼けの空を見上げたまま己れに問う。
 理由は分からない。
 思い付かない。
 けれど分からないまま、歌は口をつく。
 ただ、空がきれいだった。
 それで充分な気がした。






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タイトルはJackson vibeの『朝焼けの旅路』のイメージ。
ああ、こんな感じだ!と流しながら書いていたので。


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