スラムの「NBA STORY」レビュー
スラムの「NBA STORY」レビュー
このページは、かつて「月刊少年ジャンプ」で連載された高岩ヨシヒロ氏の実録NBA漫画についてのレビューです。
第1巻(LAKERS編)
レイカーズで活躍した往年の名選手のマジック・ジョンソンがNBAデビューする1979−80シーズンから、1990−91シーズンの
カンファレンス決勝までがこの巻に収録されています。マジックの他に、彼のチームメイトだったカリーム・アブドゥル=ジャバー、
ジェームズ・ウォージー、マジックの終生のライバルのラリー・バード等という選手たちが登場します。印象に残る名場面には、
マジックとジャバーの友情、ジャバーが開幕戦勝利で浮かれるマジックに「まだ81試合残ってるんだぜ」と言う場面(名言らしい)、
ファイナルで優勝したときに、入院しているカリームにメッセージを送る場面、マジックのチームメイトだったマイケル・クーパーが
「本当のスーパースターはお前なんだよ」と言う場面があります。この巻の第3話は、カリームが引退した後のレイカーズが描かれ、
マジックが自身の膝の故障やチームメイトと調和をとること(バイロン・スコットに怒られたり)で苦悩する場面が描かれています。
1980年ぐらいのシクサーズには「グローバー・ワシントンJr.が国歌を演奏すると負けない」というジンクスがあったようです。
ファイナル第6戦の前に、チームメイトがマジックにそのジンクスの話をし、マジックが「でも今日はレイカーズが勝んだ」と
言ったシーンで、それが分かります。調べましたら、グローバー・ワシントンJr.は、1999年に亡くなられたサックスプレイヤーです。
マイケル・クーパーといえば、田臥勇太選手がDリーグのアルバカーキ・サンダーバーズと契約したときに、そのチームの監督の
名前として登場しました。クリッパーズのキャンプの時のマイク・ダンリービーに続き、マジックと関わった人物から指導を受けるのです。
第2巻(LAKERS編 BULLS編)
レイカーズ編(2話)はレイカーズとブルズが激戦を繰り広げた1991年のファイナル、ブルズ編(2話)はマイケル・ジョーダンが
ブルズに入団した1984−85シーズン、大怪我を乗り越えた2年目の1985−86シーズンまでが描かれています。マジックとバードが
ファイナル前に電話をする場面が印象的です。コート外では最大の親友という感じです。レイカーズやブルズの選手だけでなく、
当時のレイカーズの監督のマイク・ダンリービー・シニアも出ています。彼は、現在ウォリアーズのマイク・ダンリービー・ジュニアの
親父さんでもあります。彼は、橋本龍太郎元首相っぽいオールバックです(笑)この時、ジュニアは小学生(11歳)だったのですか。
ウォージーとスコットが故障で第5戦に出場できず、苦悩するダンリービーにマジックが「自分のチームを辱めるな!」と渇を入れる
場面も好きです。ブラデ・ディバッツやエルデン・キャンベルという当時の1〜2年目選手が活躍する場面も少し描かれています。
ブルズ編では、ジョーダンが全体3位指名でドラフトされる姿が描かれています。ジョーダンの活躍に苛立つオーランド・ウーリッジや、
1年遅れてブルズに入団したチャールズ・オークリーとの友情も描かれています。ジョーダンがシーズンの多くを欠場する大怪我から戻り、
チームが活気づく場面、そして、ジョーダンがプレイオフでバード率いるセルティックス相手に63点を決める場面もこの巻の中では好きです。
その試合のジョーダンは「まるでここ(アリーナ)は遊園地のようだ」、試合後のバードは「奴(ジョーダン)が神への階段を登るように見えた」と
言っている場面もあります。ウーリッジといえば、ダンクが得意な選手として知られていますが、86年オフにブルズからネッツへ移籍してから、
ジャーニーマンへと変貌してしまいます。マジックやアイザイア・トーマスともチームメイトになった選手でもあるという凄い経歴もあります。
第3巻(BULLS編)
この巻では、ウーリッジが放出された1986−87シーズンから、スコッティ・ピッペンとホーレス・グラントがブルズに加わった1987−88シーズンの
プレイオフ1回戦(キャブス戦)までがこの巻に収録されています。熱血コーチのダグ・コリンズが印象に残る人物で、若々しいピッペンやグラントの
姿も見られます。コリンズが当時ピストンズにいたリック・マホーン(アレン・アイバーソンの母と同級生)と乱闘する場面は、ある意味凄いです。
オークリーが35リバウンドをとったことについて話をしている場面がありますが、この本数は80年代最高の記録です。オールスターウィークエンドで、
ジョーダンがマジックと会う場面もあります。マジックが「イバラの道を俺のところまではい上がって来い」というセリフを言ってきた場面です。
この巻の中で、特に好きな場面として、キャバリアースとのプレイオフがあります。ジョーダンがピッペンに「観客席にお前のファンがいる」と言い、
「僕の素敵なスコッティ」と書かれたボードを持つ子供を言った場面が面白いです。キャブスとの第5戦の終盤で、ジョーダンがロングシュートや
ダンクシュートを決める場面の描写は迫力あるなと思います。当時のキャブスには、マーク・プライスがいましたが、歴代のキャブス選手で
唯一、オールNBAファーストチームに選出(1993年)された選手でもあります。また、この巻で「アーニー・バンクス症候群」という言葉を
知りました。「能力的には凄いがキャリアで一度も優勝できない」ということの例えです。1991年に、これを打ち返したジョーダンは凄いです!
第4巻(BULLS編)
1987−88シーズンのプレイオフ2回戦(ピストンズ戦)から、90−91シーズンのファイナル(レイカーズ戦)第1戦までが描かれています。この巻は、
ブルズとピストンズによる「激戦の歴史」が中心となっています。ピッペンがオフに故郷に帰って、母親に励まされる場面、ロッドマンとの死闘が
印象的です。ピッペンがロッドマンから肘打ちを食らう場面がありますが、ロッドマンはブルズでピッペンとチームメイトになり、ファイナルが
終わったときにそのことを謝罪しました。この作品でのロッドマンの描写が怖いです(笑)まさに「ザ・ヒール(悪役)」という感じがします。
この巻にある第9話「戦士の誇りで立て!!」は、ピッペンが好きな人は是非読んでおいた方がいいなと思うぐらい素晴らしい話になっています。
印象に残る人物に、ビル・カートライトがいます。オークリーとの交換トレードでニックスからやってきたセンターで、ジョーダンと共にキャプテンを
務めました。オークリーがジョーダンに別れの挨拶をする場面は泣けますし、ジョーダンがニックス戦の前にカートライトに話しかける場面も
感動できます。ジョーダンがワニータ夫人と電話でアドバイスされて、次の日の朝にチームメイトと会食をする場面も素晴らしいです。
レイカーズとのファイナルの場面は第2巻と違い、ブルズの視点で描かれています。カートライトは緊張のあまり、試合前に吐いたこともあります。
第5巻(BULLS編 SUNS編)
ブルズ編は1991年ファイナルと後日談、サンズ編は1993−94シーズンの話が描かれています。お気に入りの場面は、フィル・ジャクソンが
試合後にダンリービー直筆のフォーメーションが書かれているメモを拾い、「我々はその内容を完璧にシュミレートしている」と笑った場面です。
ジョーダンが今は亡き父親のジェームズ氏と語り合う場面は感動的です。ブルズ編の最後のシーンに、ジョーダンのライバルたちが登場して、
「もうひと勝負だ、エアー!」と言ってきます。ユーイング、ドミニク・ウィルキンス、チャールズ・バークリー、トーマスが確認できました。
サンズ編は「実録ドキュメンタリー・1993−94シーズンのサンズ」という感があります。登場人物は、日本でも人気者となったバークリーをはじめ、
司令塔のケビン・ジョンソン(KJ)、ロングシューターのダン・マーリー、陽気な性格のオリバー・ミラーと個性派揃いです。AC・グリーンが
バークリーと対立し、次第に打ち解けるところも好きです。グリーンは、連続出場試合数歴代1位でも知られています。このシーズンのサンズは、
プレイオフでロケッツに敗れますが、帰宅して、娘からお手製のトロフィーをもらう場面は泣けます。ここでのバークリーは、父親の顔になります。
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