ギムノロコ N0,37 より

学名のラテン語の意味註解       山名利三郎

学名をつける時はサボテンに限らず、全てラテン語を使用するのが慣例となっています。
ラテン語は死語と言われ、現在国語として使用されれていないためにもうこれ以上変化する事がないので、永久に通用するからです。
ギムノの学名を見ていますと、ラテン語以外の言葉にラテン語の語尾をつけて使われているのがよく見られます。
そこで学名について、特に種名のつけ方についてごく平昜に説明してみたいと思います。

まず学名のつけ方ですが、次の3つの方法があります。

1.その品種の特徴をラテン語で表記したもの

(例)G.nigriareolatum 黒いアレオレの意

2.命名者がある人に敬意を表して人名をつけたもの

(例)G.megatae 目賀田氏にちなんでつけたもの

3.産地名をつけたもの

(例)G.mazanense マザンに産するの意

次にギムノにつけられている種名および変種名に使われているラテン語のうち、1に該当し、よく出てくるものをいくつかに分けて記しておきます。
抜けているものもありますが悪しからず。順不同。

(A)色を表すもの
aureo-,flavi-   黄色
rubi-       赤色
albi-        白色
nigri-       黒色
rosei-       桃色
rhod-       バラ色
cineri-       灰色
atro-       黒または暗色の意
variegatum    まだらのある
bicolor       二色の

(B)数を表すもの
mono-       1
di-,bi-       2
tri-         3
tetra-       4
penta-       5
multi-       多い

(C)形状を表すもの
minor-,mini-    小さい
major-       大きい
grandi-      大きい
tenui-       細い
lati-        太い、巾広い
longi-       長い
nibilus-      上品な
centri-       真ん中の
vari-        変化のある
hamato-     かぎ状の
denudatum    裸の
stellatum     星状の
horrido-      刺の多い、恐ろしい
pungens     刺針のある
pseudo-      にせの
felox        強い

(D)形を表すもの
gonum      稜
florum      花
hybo       疣
cephal-      頭
aster       星
areol       アレオレ、刺座
spino-,spinum,cantha   刺


次に、2.及び3.の語尾が色々異なっていることにお気付きと思います。
1.の場合は大抵-um と言う語尾で終わっていますが、これは属名のGymnocalyciumが中性であるために種名も中性を示す語尾-um をつけてあるためです。(男性は-us ,女性は-a となります)
日本語には名詞に男、女、中性の区別がありません。英語も名詞自体の性別はありませんが、フランス語、ドイツ語及びラテン語にはそれがはっきりしています。
(ドイツ語の場合、太陽は女性名詞、月は男性名詞、少女madchenは中性名詞という様に、雌雄とは無関係に名詞自体に性別があります)
Gymnocalycium が中性ですから、種名もそれに伴って中性で書くことは前に述べましたが、中性を示す語尾のつけ方は語幹のスペルによっていくつか変わって来ます。
ギムノにつけられた種名に従って分けてみますと次の様になります。
特に2.及び3.の人名及び産地を表記した種名にその例が多く見られます。

1.-a と来た時は-e,又は-ense となる。

(例) andrea-e. megata-e. tucaboca-ense

2.-a, -e, -i, -o と来た時、もう一つ -i 又は -anum となる。

(例) spegazzini-i. ochoterena-i. damsi-i. ragonesi-i. lee-anum

3.-n と来た時は -e 又は -ense がつく。

(例) saglion-e. masan-ense. tucuman-ense

4.-t と来た時は -um をつける。

(例) nigriareorat-um. stellat-um

5.-r, -tz, -s 等が来た時は -iense, -ianum, -ense となる。

(例) moser-ianum. cardenas-ianum. schutz-ianum. paris-iense. lagunillas-ense

6.語尾変化をつけないで、形容詞的な使い方をする場合。

この時は正式な学名でなく、カタログ名又は一時的につけた裸名によく見られる。
(例) Gym. sp. bicolor (二色の)
Gym. sp. aus marajes (マラヘスから来たもの)
 sp. はご存知の様に確定しない品種を総称して示す語で、species の略

以上、語学的な分類でなく、実際にギムノの各品種につけられた学名を分類して述べましたので不備な点があると思いますが、概略はお判りになったかと思います。
従って種名の語尾が間違っている場合も気が付くのではないでしょうか。
例えば -a で終わっているものは女性名詞ですから間違いですし、-is とか -us で終わっているものは男性名詞ですから、これも間違いです。
その例として以前よく使われたものに Gym. saglionis(新天地) ,Gym. friedrichii var.
melocactiformis. 〜var. longispina 等がありますが、これらは今、saglione. melocactiforme.longispinum と訂正されています。
次にラテン語の読み方ですが、英語読みをせず、ローマ字と同じようにそのまま読めば大抵間違いありません。
但し、人名、地名等は語幹の部分は元の語源通りに読んで差し支えありません。

(例) valnicekianum = バルニセキアヌム
schutzianum = シュッツィアヌム