曲刺天平丸
1965年、アルゼンチンから輸入された原産地球。
庵田知宏氏栽培。 径20cm


中刺のある曲刺天平丸。10数本同時入荷した。
庵田知宏氏栽培。


曲刺天平丸 Gym. spegazzinii var. major Backbg.

賀来(かく)氏1)が昭和33年に輸入された天平丸は前項のタイプとは異ったもので、通称山掘天平丸と呼ばれていた。これはBackeberg 2)がかつてGym. loricatum var.cachensisとして記載し、更にGym.spegazzinii var. major 3)として同じ写真を載せた品種と同じものと思われ、筆者 4)がそれらの輸入球と前項のA型天平丸とを区別して曲刺天平丸という和名を提唱した。この品種もG.Frankの定義のうちに入るかも知れないが、そのピンク色がかった刺の色と爪の様に曲った頑丈な刺の形及び肌の色等からみて、一見別物のような感じを与えるので、Backebergの分類に従って1変種として区別しておく。この品種も固体差が大きく、多数の原産地球を見たところでは次の様な特徴をもっている。
肌色は白粉を帯びた青緑色で、刺は7〜9本、錆色がかった暗褐色又は赤褐色、時にはアメ色のものもあり、全体にピンク色を帯びている。爪の様に曲っているものや中には素直に伸びたものもあり、長さも1〜4cm、稜数約20。体径10〜25cm、高さ20cmで、原種に比べて大型になるようである。
最近天平丸として入ってくる原産地球は大低このタイプであるが、その中で特筆すべきは昭和40年にアルゼンチンから輸入されたものの中に中刺を有する球がまざっていたことである。普通天平丸は中刺がないとされているし、今までに輸入されたものには見られなかったのであるが、明らかに中刺が突出している。おそらく同じ所で採集されたものであろうが、今まで記載されたことがないので写真で紹介しておこう。
天平丸並びに曲刺天平丸の輸入球は比較的栽培しやすい品種であるが、実生苗は最初の2〜3年が非常に陽焼けしやすく、こじらさない様にしなければならない。親木も最初は強光線に強いと思われたが高温度で直射日光が当ると案外陽焼けする。原産地が相当高地であることから見て、寒さには強いと思われる。特に曲刺天平丸は冬期でも生長するから冬期加温し、夏期に涼しくしてやる様な栽培法が適しているかも知れない。(参考;優型ギムノを守る会々報品種解説No,2 天平丸C型)

(註)1,賀来得四郎;シャボテン,18,13 (1958)
2,Backeberg;Kaktus ABC ,p289 (1935)
3,Backeberg;Die Cactaceae,V,1746(1959)
4,山名利三郎;サボテン日本,20,16 (1961)