天賜玉T
庵田知宏氏栽培
輸入球のカキ子で、稜の数が少なく、刺の太いタイプ。
天賜玉U
山名利三郎氏栽培
やや刺の細いタイプ。稜数も多く、稜の幅が広い。径9cm
天賜玉 Gym. pflanzii Werd.
優型ギムノを守る会々報品種解説No,19 (1963)参照.
通常単幹であるが、新天地が殆んど仔を吹かないのと違って、天賜玉は比較的よく仔を吹く。従って次第に群生して行くものと思われる。直径50cmに達すると言われているが、今までにそんな大きいのを見たこともないし、原産地球も比較的小さい方であった。
形態はやや腰高の半球形に育つ。肌色は新天地よりも黄色味の多い黄緑色で、艶のないざらっとした感じを与える。稜の形は三角錐に丸味を持たせた様な形で、少し上向きに突き出した様に突出するが、イボ状ではなく稜線ははっきりと通っている。突出した瘤の頂点に刺座があり、刺座から約3分の2位上に下向きに弩曲した弓形の切れ目がある。ギムノの各品種は大抵刺座の下にいくらか降起があるが、天賜玉のそれは刺座が突き出した様な形をしているので、あまり目立たない。稜の巾は生長点附近はせまく、下へ行くにつれて巾広くなる。
刺は赤褐色で先端がやや黒味を帯びる。古くなると白っぽくなり、ざらざらした感じとなる。中刺は1〜2本て真直突き出して、少し上方に曲る。個体によっては中刺を欠いているものもある。縁刺は8〜9本で穹曲しながら横に伸びる。太体において新天地より短く、約2.5cm位で、少し角ばった錐状である。輸入原産地球の中には殆んど直刺に近い様なものもあった。Backeberg1)の記載した写真は刺の比較的短い、やや貧弱なタイプであるが典型的な顔をしている。
花は白又は極くうすい鮭肉色がかったピンクで花底が濃い紫紅色を呈する。径約5cmで花筒は新天地より長いが、ギムノの中では短い方である。蕾の形も新天地は先端が丸く尖っていないが、天賜玉系のものは皆少し尖った形をしている。花糸、花柱が赤紫色をしているので、花底が紫紅色に見えるのかも知れない。
以前筆者2)はA型とB型の2つのタイプに分けたが、その後に輸入された球を見ると、大きく分けて写真Tの様なタイプと写真Uの様なタイプに分けられると思う。写真Tの方のタイプは綿毛が多く、中には吹き出す様に出るものもあり、刺も太く頑丈で、昭和35年から36年にかけての初期の輸入球の中に多く見られたが、その後に入ってくるのは大低写真Uの様な、やや刺の細くて長いもので、稜の巾も狭いタイプが多い様である。採集地の相異によるものではないかと思う。
Backeberg1)よると自生地はボリビア南部のPilcomayo河の砂地の斜面とあるが、アルゼンチン北部の新天地の産地の方に連っているのではないかと想像される。
本種も栽培容易で、原産地球でも殆んど刺落ちすることなく育つ。又新天地と同じ様に冬期にどんどん刺を出し、夏期に球体が太るという生長の仕方をする。
天賜玉なんて新天地と同じ様なものだから交配するという人があるが、これはとんてもないことで、交配すると丁度中間の様な形になり、両方の特徴がぼけてしまう。市販の新天地錦の苗の中にこの新天地×天賜玉と同じ顔付きのものがあるが、斑物を作るための雑交配はつつしみたいものである。
(註)1,Backeberg;Die Cactaceae,V,1772 (1959)
2,山名利三郎;サボテン日本,23,15 (1961)