18a 斑1 緋牡丹
Gymnocalycium mihanovichii var. friedrichii cv."Hibotan"Wananabe.
写真の球の栽培者 大阪市 山名利三郎 氏 (右端の球)


日本で作出された斑入り種は多いが、その中でひときわ光っているのが赤いサボテンで知られる緋牡丹及び緋牡丹錦であろう。緋牡丹はもはや投機家の手をはなれ、大衆の中に深く溶け込んでしまった。
百貨店でもよく売れる斑入り種である。
緋牡丹はその名の通り全身桃色若しくは濃い紅色一色である。原種は牡丹瑞雲と言われているので、牡丹玉そのものか、おそらくは牡丹玉と瑞雲丸の交配種も含まれていると考えられる。花は牡丹玉と同様うすいピンク色である。
1941年、故渡辺栄次氏の作出と記されているが1)、本人は昭和17年(1942年)に1万粒播種したうちに2,3本の紅斑の気のあるものを見つけ、接ぎ木、芯えぐりして作り出した2)と記している。
葉緑素が全く欠如しているので正木では育たない。すべて接ぎ木で栽培されている。大球はなく大体5cmくらいになると白くなって腐ってしまう。その原因については今のところ定説はないが、葉緑素欠落から来る窒息であるという説もある。どのくらいの大きさまで生育出来るのか目下データ募集中である。
緋牡丹にも色々なタイプがあり、黄色を帯びたうすいピンク色のものから、血牡丹と呼ばれる濃紅色のものまで、また稜の横縞の細いものから疎いもの、稜のするどいものから丸々として稜の低いものまである。
又、成長点付近が緑色を帯びていて、次第に赤くなるものや、成長点まで初めから赤いものもある。
前者の方が丈夫なようである
緋牡丹の花粉を牡丹玉にかけると緋牡丹錦や緋牡丹の出現率が高いようである。

参考文献
1)サボテン日本;11,3,(1959)
2)渡辺栄次;シャボテン,11,23,(1961) 私の斑生活30年
3) 々  ;サボテン日本,1,7,(1958)


18a 斑2 緋牡丹錦
Gymnocalycium mihanovichii var. friedrichii cv."Hibotan-nishiki"Wananabe.
写真の球の栽培者 大阪市 山名利三郎 氏


牡丹瑞雲の種子を播いた中から出現した紅斑を故渡辺栄次氏(藤沢の紅波園主)が接ぎ木繁殖して、緋牡丹と共に世に送り出した1)斑物中の王者である。
緋牡丹が全身紅斑一色であるのに対し、本種の方は赤、黄、緑、紫などの色が全身に散って、全く生きた宝石と言う事が出来るであろう。この斑が出現したことによって、他の斑物の影が薄くなったとさえ言われている。
斑物はそのふ廻りの良否によって価値が変わる。全身に良く散ったものが良いとされ、片斑や斑の多過ぎるもの、少な過ぎるものは値も安い。
緋牡丹がやや開花しにくいのに比べて、本種の方は牡丹玉同様良く開花し、交配により良く結実する。
花は薄いピンク色。斑の部分に出た蕾には同様に斑が入る。
緋牡丹錦は葉緑素を持っているから正木でも育つし、接ぎ木すれば相当大きくなる。
又、緋牡丹錦には綴化がある2)。2年前に三保谷南雪氏の許で作出された。

参考文献
1) 渡辺栄次;シャボテン、11、23、(1961)
2) 三保谷南雪;シャボテン、30、表紙写真(1961)