14b 海王丸
Gymnocalycium denudatum var. paraguayense
Mundt.
写真の球の栽培者 豊川市 三保谷南雪氏 直径10cm
蛇竜丸との相違はその稜と刺の形、及び花の形である。稜は深い横溝によってくびれ、コブ状を呈し、そのコブの上に刺がぴったりと肌にそって出る。
刺数5〜7,長さ1〜2cmで、新刺は黄色、次第に灰褐色となる。時折中刺1本が出ることもある。
刺が黄金色のあざやかなものもある。
花は蛇竜丸程のスマートさはないが、やや緑色を帯びた外弁と、純白の内弁を持った美しいものである。
蕾の色は肌色よりもうすい緑色を呈する。
天王丸との違いはアレオレの綿毛が小さく、刺がより長いこと、大きくなるにつれて8〜13稜となり、球の側面に仔吹きする点であろう。
写真の球は戦前の輸入球のカキ仔である。この他、和歌山の島村氏所有の、もっと刺のぴったりとつく球や、紀藤氏から出た刺の長い稜の巾広いタイプもなかなか良いものである。
蛇竜丸の数多くの変種の中で、古くから日本に伝わってきたのがこの海王丸である。
明治45年7月、東京三田育種場発行のサボテン特科植物要覧に、蛇竜丸のパラグアイ変種として出ている。
Backeberg1)は海王丸はあきらかに竜頭との交配種であると言い、蛇紋玉G.fleischerianumと混同されていると指摘しているが、我が国に早くから伝わった割に良球が少ない。
色々なタイプがあるところへ、天王丸や蛇竜丸との交配種が加わり、刺の貧弱なタイプ2)や、蛇竜丸とよく似たもの3)が出廻っている。
産地のパラグアイが次第に開拓されつつあると言うことなので、近年原産地球がわずかに入ったことはあるが、今後はたして入荷するかどうか。
参考文献
1)Backeberg;Die Cactaceae V、1703(1959)
2)瀬川与太郎;原色サボテン図鑑,p21(1962)
3) シャボテンの研究,7,(4号),142,(1936,昭和11年4月)
(山名利三郎)
追加資料
海王丸は優型ギムノを守る会が解散した後になっても各地で園芸改良が続けられた結果、この分類集に掲載されている写真のものとは異なる様々なタイプが登場しました。
そこで現在優系と思われる海王丸をいくつか掲載してみます。
但し、仙太郎の個人的な好みがかなり反映されますから、あくまでも参考ということでご了承下さい。
取り敢えず、最初は仙太郎の愛培品を2品、掲載しておきます。
これらは今では普及して、比較的簡単に手に入れることが出来るタイプの海王丸ですが、鑑賞価値は比較的高いと思います。
園芸交配によって作出されていると考えられますので、もはや原種のparaguayenseとは言えず、ここでは園芸作出種として、c.v.
"Kaioumaru"としておきます。
海王丸 直径10cm
Gymnocalycium denudatum c.v.
"Kaioumaru"
今では一般的に見られるタイプの海王丸です。
こぶが比較的突出し、太めの刺がうねって肌にぴったり添うタイプです。
肌色が昔の海王丸より比較的浅いものが多く、花も大型で、多花玉系の、おそらく昭和40年前後に大量輸入された
G. monvillei
の影響を受けている可能性が考えられます。
海王丸 直径8cm
Gymnocalycium denudatum c.v.
"Kaioumaru"
刺があまりうねらずに、素直に伸びてこぶを包むタイプです。
かつて大変人気があった、「島村海王丸」はこのタイプによく似た海王丸でした。
海王丸 シャボテン社
Gymnocalycium denudatum c.v.
"Kaioumaru"
1967年発行の逗子のシャボテン社が発行した、シャボテン誌に掲載された海王丸です。
刺が太くうねって、おそらく現在でも最も人気のあるタイプではないかと思われ、一般にシャボテン社海王丸と呼ばれています。
これも刺が疣をつかむタイプです。
海王丸
Gymnocalycium denudatum c.v.
"Kaioumaru"
写真の球の栽培者 山形県 つばささん 径 cm
山形県のつばささん愛培の海王丸です。
上記、シャボテン社の海王丸に良く似たタイプで太い刺がうねり、現在最も人気のあるタイプのひとつと思われます。
海王丸 径12cm
Gymnocalycium denudatum c.v.
"Kaioumaru"
仙太郎が豊中の山城愛仙園で見つけて来た海王丸です。
これも太い刺がうねるタイプですが、肌色も浅く、ここまで来ると、もうかつての海王丸の面影は殆ど無く、半分モンビレイか?って感じになってきます。