14a 天王丸(てんおうまる)
Gymnocalycium denudatum var. argentinense
写真の球の栽培者 守口市 庵田知宏氏 直径8cm


大球になっても5〜6稜で、それ以上増量しないのは有星類のランポー玉と本種位である1)。
5稜のものはいつまでも5稜であるし、6稜になるものは5cmくらいから6稜としての性質を現す。
体型は偏球形から球形となり、老球になると円筒状に育つ。肌色はやや濃い緑色。稜は丸々として巾広く、アレオレの下に全くくびれの出来ないものと、少し切れ込むものとがある。
アレオレは大きく、楕円形で、長さ1cm、巾5mm位、綿毛も多い。
この点が海王丸と大いに違う点である。刺は5本、時にもう1〜2本短刺を出すこともある。
丁度牛の角の如き感じの黄灰褐色のねじれた刺をぴったりと肌にそって出す。下向きの1本は1回転する事もある。
花は白色の重弁で、径5〜5.5cm、花弁の先はややとがっている。蕾は大きく、花筒が短いので、その体型に似てずんぐりしている。種子は黒色のオワン型で非常に大きい。
天王丸の仔の吹き方は特に変わっていて、青王丸のように根の付けねの近くから出て、土の中から頭を現す。
根は割合に少ない方で、従って大球になると灌水に注意を要する。一旦こじれるとなかなか大きくならない。
文献の記載は少なく、Backeberg2)も只1行だけ、「全て定義され難い」とのみ記している。
伊藤3)も海王丸は記載しているが本種には触れていない。
写真の球は和歌山の島村貞吉氏が古くから栽培しておられたもので、横溝の切れ込むタイプである。
ボデイビルで鍛えた筋肉隆々たる男性美を思わせるものがある。
学名からして、アルゼンチンで採集されたものであろう。


参考文献 1)平尾秀一;シャボテン,18,3,(1958)
     2) Backeberg;Die Cactaceae V、1703(1959)
     4)伊藤芳夫;サボテン図説,p169,(1957)      (山名利三郎)