14 蛇竜丸(異和名:裸丸)
Gymnocalycium denudatum Pfeiff.
写真の球の栽培者 守口市 庵田知宏氏 直径15cm、高さ18cm


本種は昔から雑交種ばかりであるとなげかれていた様に、産地が広範囲であることも原因して、実にタイプが多く、これが典型であるというものを指摘することは不可能であると思われるので、解説はJ.Borg の記載1)を引用する。
「産地、南ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、アルゼンチン。球体は偏球形で肌色は深緑色、高さ5〜15cm、径は15cm以上になる。5〜8稜で非常に幅広く、丸い稜で、わずかにくびれていて、アレオレの下にはアゴ又は突起を殆ど持たない。アレオレは丸く、殆ど綿毛がなく、1〜2cm離れている。
刺は5〜8本、針状で横又は上方にカーブしている。刺色は黄色で長さ約1cm、中刺を欠いている。
花は長さ5〜7cm、志望と花筒は細い。外弁は丸弁で白のふちどりのある緑色、真ん中は緑の中筋の入った白又は薄いピンク、内弁は白色で尖っていて歯のようである。
雄蕊は白色で花筒の半分くらいの長さ、柱頭はうすい黄色で6〜8裂。
スパイダーカクタス(蜘蛛のようなカクタス)として知られ、それは刺の形と位置のためである。
5稜の巾広いつるっとした稜で、大きな白い花を咲かせる典型が近年再発見された。非常に変化に富んでいる。
変種 var. bruennowii Haage jr. 12稜
   var. paraguayense Haage jr. より稜の突出したもの。
   var. roseiflorum Hildman 内弁ピンク
多花玉との色々な自然交配もある。」(J.Borg ; Cacti,p296(1951)

Br. & Ro.2)もBorgと大体同様の記載であるが、変種を14種挙げている。
Backeberg3)は更に多く、15種あまりを挙げている。
これら変種がたくさん記載されたということは、この品種の産地が実に広範囲にわたっており、当然各地で別個に採集される度にタイプが違ってくるであろうし、自然交配種もあり得ることを物語っている。
既に昭和12年当時、津田宗直氏が写真と共に「体型6寸に及んだ純系蛇竜丸の標本球である。3寸以下の小苗と比較するとかなり甚だしい稜型の相違がある。古くより普及されたものではあるが、只今では純系種は見られなくなり、その殆どが雑交種である。」4)と書いている。
津田氏所有の球は月刊シャボテン誌に2回4)5)にわたって紹介されているが、刺座の間の部分が大球になる程著しくなるのが特徴である6)。そして平尾氏は趣味的な見方として蛇竜丸に稜々たる男性的な味を求めており6)、津田氏の型を一番良い形であろうと述べている。これに良く似たもので、現在角蛇竜という名前を付けて三保谷南雪氏が所有しておられる球があるが、大きくなると津田型になるのではないだろうか。
写真の球(庵田氏所有)は一般的なタイプの中ではいぼの割合良く突出する方で、男性的な感じのするものである。
近年、名古屋方面に出回っている蛇竜丸は稜が丸々としており、刺が長く、カーブしながら上方に浮いたタイプである。Backeberg3)の写真に出てくる蛇竜丸は体型が天王丸そっくりで、花だけは蛇竜丸の花である。
Borgが再発見されたと記しているタイプは、このBackebergの型をさしていると思われる。おそらく地域差によるタイプ変異であろう。
これらの他に、「オカメ蛇竜」と称されるものや、「和歌山蛇竜」と称されるもの(ギムノロコNo,6,p3,参照)がある。
日本では今まで通り、天王丸のような体型のものと区別して、蛇竜丸の中の園芸的優系種を求めていく方が良いであろう。


参考文献 1)Borg;Cacti,p296(1951)
     2) Br.& R.;The Cactaceae,V,155,(1922)
     3) Backeberg;Die Cactaceae V、1701(1959)
     4)月刊シャボテン,33,3,写真(1937,昭和12年8月号)
     5)    々   ,20,口絵写真(1936)
     6) 平尾秀一;シャボテン,18,3,(1958)      (山名利三郎)


津田宗直氏栽培、月刊シャボテン、33、3 (1937)