12C 多花玉C型
Gymnocalyciumu multiflorum Br.&R Type C
写真の球の栽培者 神奈川県 平尾博氏


多花玉A型、B型についてはすでに解説したが、その続きとしてC型について説明することにする。
このC型として区別したタイプは故津田宗直氏の解説が最も詳しく、その他には文献も見当たらないのでその全文1)を引用させていただくことにする。
「ブラジル原産。本種も又古くから我が国に栽培されている有名な種類であるが、如何なるものか純正種は極めて少ない。度々云った如くに蛇竜丸やモンヴィ玉などの雑交になったものや、甚だしいのは本種のちっとも混じっていない蛇竜丸似の雑種を多花玉だと平気で称えられている。これは一面無理もないことで、小株の稜は6乃至7であるが、5寸6寸の大株になると14から16になる。そしてこの稜は株の成長するにつれて顕著な瘤状突起を現し、終いには全く疣に分裂されたかの如き外観を呈するようになる。刺点と刺点との距離は蛇竜丸などより遠い。刺点は長楕円形で白茶色の綿毛が生えている。刺は普通7,8本で、時に中刺が出ることもある。長さ1寸5分程、黄褐色で基部は紫褐色である。本種の刺は蛇竜丸や海王丸などの如くに体に密着しないで心持ち上向きに出て梢々弓形に下へ反る。
花は非常に大輪で元気な大株であったら花径4寸近くのが咲く。花弁は広くほのかなピンク色を含んだ白色の優美なもので、雄蕊の花糸、雌蕊の柱頭、花柱共に白色であるが、葯は白黄色で大きい。雄蕊の数は割合に少ない方である。又、萼の部分の外弁・・・(一部脱落しているらしい)・・・掌に於てもこういふ場合がある。
体は偏円で肌は美麗な新緑色を呈し、稜の数1、2寸の小種はその形と云ひ蛇竜丸などに酷似している。
そして一方株が非常に少ないから一般は真正の多花玉を見たことの無い人が多いので、異なった種類が本種で通るわけである。他の仙人(掌)は緑色で先端が紅色を呈している。花輪が大きいので筒部も太い。
本種は学名の直訳が和名で通っている通り甚だ多花性で3月下旬より11月末迄もたへず蕾を出して開花する。
尚本種は蛇竜丸、海王丸などと同じく大株になると古生部の刺点から続々子株を出す。」

このタイプは名古屋方面でよく見られるが、その他の地方ではあまり見掛けないようである。最近多花玉として市販されているものはB型とC型の中間のようなタイプ(D型としているもの2))が多く、その他にはドイツ種子の実生苗がある。
津田氏の解説以来、日本の多花玉の一つのタイプとして今日まで残って来たのであるが、A型、B型と比べて刺も貧弱で見劣りがするので、あまり普及していないのかも知れない。
このタイプは相当大株にならないと開花しないためか、戦前から花の咲かない多花玉として通っている。

参考文献
1)津田宗直;シャボテン,21,11(昭和11年9月号) 仙人掌栽培法
2)山名利三郎;シャボテン,31,24,(1961)