10A 多花玉A型
Gymnocalyciumu multiflorum Br.&R
写真の球の栽培者 守口市 庵田知宏氏


昭和7年頃、ドイツのハーゲ商会より輸入されたもので、体肌はモンビー玉より若干黄色がかった緑色、稜は菱形のこぶ状に分かれ、アレオレの下に斧状の低い突起がある。径15cmくらいまでは扁平に育つが、その後は長球形に育つ1)。
刺はやや透明な黄色で、古くなると灰褐色となる。刺は7本で、長さ約3〜4cm、1本は下向きに左右3本づつが肌を包むように両側に広がる。中刺は出ない。刺の基部はあまり紅色を呈しない2)。
アレオレは楕円形で、その間隔は割合に詰まっているので、刺は重なり合う。刺は割合に細く、次のBと比べると女性的である。
花はピンクのあか抜けした美麗なもので、径6cm位になると開花するので1)、多花玉の各タイプの中では小球で開花する方である。花弁は外側が丸弁、内弁はやや尖った巨大重弁花で、同時に数輪開花する。
ピンクの色も他のものに比べてより鮮やかである。
これと同じ形のものが原産地に自生しているかどうかの確証は今のところ原産地球が採取されていないので不明である。
一昨年末、この球の実生苗とかき仔が市販されているが、実生苗はこの球より強制結実によって採種したものである。昨年も結実したので、どうやら自家受精するのではないかと思われる。
実生苗はやや親木とは形質が異なっていて、刺の太いものも出ている。

参考文献
1)伊丹勝吉;サボテン12ヶ月、p65(1962)
2)山名利三郎;多花玉考、シャボテン誌,31、24 (1961)