9 竜頭(たつがしら)
Gymnocalyciumu quehlianum (Hge. jr.)Berg
1929
写真の球の栽培者 守口市 庵田知宏氏
通常単幹で扁平に育つ。一般には直径7〜8cmであるが、時には15cmに達するものがある。高さは5〜7cmくらいで、中型のギムノである。肌色は灰緑色、光線が強いと紫がかってくる。稜数13〜16、稜線ははっきりと立つが、あまり高くなく、疣状にくびれ、刺座の下で突出する。この疣の突出の仕方は個体によってかなり変化があり、するどくあご状に尖っているものや、やや丸味を持ったもの、あまり突出しないものなどがある。昨年輸入された球は写真の程度のものであった。
刺は縁刺のみで5本。針状でやや曲がっている。長さは約5〜8mm、肌に添って横に伸び、1本は下向きに伸びる。刺の色は褐色がかった黄灰色で基部は赤みを帯び、古くなると黒褐色がかってくる。
輸入球にはこの基部の赤いものとオレンジ色のものとがあったが、前者がタイプであろう。
頂点はややくぼんでいる。アレオレは丸く、最初は短い白色の綿毛があるが、次第に少なくなる。
花は漏斗状で長さ5cm、直径4.5cm、白色で花底は薄いオレンジ赤色、日本で出回っている実生苗はもう少し濃く、赤紫色。刺色の赤味に薄いものは花の赤味も薄いようである。花弁は外弁で丸味を持ち、褐色を含んだ緑色の中筋がある。内弁は剣弁、高温にすると花弁の先は垂れ下がる。花糸は緑黄色、雄蕊はクリーム色、花柱は緑黄色、雌蕊は白黄色で8裂、雄蕊より下にある。花筒は緑色から濃緑色で、白粉を帯びている。種子は暗赤色で白色の縁取りを持ったお椀型、果実は紡錘型である。5月頃より初秋まで連続してよく開花する。
自生地はアルゼンチン、コルドバ州。
この品種は良く普及していて、誰でも栽培している。割合に強健で、古くから作っている人は相当大きな球を持っているようであるが、成長はどちらかと言えば遅く、冬は堅くしまって小さくなり、春から秋にかけて成長期にはぐっとふくらむ。小苗から中苗までは割合に早いが、大球になると成長は遅々として進まず、栽培もやや難しくなる。表皮はやや堅いので、時折稜線のところではち切れることがある。
斑入り種は黄斑と赤斑があり、特に赤斑は紅竜と称して珍重されている。綴化種は綴化面が綺麗に広がるので見事である。割合に綴化しやすいらしく、中球になって突然綴化し始めることもあり、接ぎ木による繁殖も容易である。
緋花玉との交配種は竜緋玉と呼ばれ、ピンクの花を開く。
変種にもいくつかあるが、現在日本では標本となる中大球は殆どない。二、三年以前よりドイツ種子が実生されている現状である。追って写真に撮れる標本球が出来た時、変種のみをまとめて解説するとして学名と和名を記しておく。
Gym. quehlianum var. albispinum Bozs (白刺竜頭)
Gym. quehlianum var. caespitosum Fric. & Krzgr (群竜頭)
Gym. quehlianum var. flavispinum Bozs n.v.(黄刺竜頭)
Gym. quehlianum var. cinerascens S. D (紫光玉)
Gym. quehlianum var. rolfianum Schick
Gym. quehlianum var. zantnerianum Schick (白拍子)
形おかしく、花清らかに、その真白の美を誇らずや(竜頭)
シャボテンの研究、6、213、(昭和10年6月号)
参考文献
伊藤芳夫;サボテン図説、P191、(1957)
津田宗直;シャボテン、23、113、仙人掌栽培法(昭和11年)
平尾秀一;原色シャボテン、p174(1957)
Backeberg;Kaktus ABC、p295 (1935)
Backeberg;Die Cactaceae,V,1721(1959)
Borg;Cacti,p297(1951)
W.O.Rother;kakteen u.Anderer Sukkulenten,p123
伊丹勝吉;サボテン12ヶ月、p67(1962)
山名利三郎;サボテン日本、23、16 (1961)