九紋竜(G_gibbosum Pfeiff)
写真の球の栽培者 守口市 庵田知宏氏


最初球状であるが、円筒状を経て柱状となる。直径8〜10cm、時に15cmのものもある。
栽培品では高さ20〜25cm位であるが、原産地では60cm以上にもなると言われる。
肌色は暗青緑色で老球になると褐緑色又は汚れた緑色となる。頂点はややへこんでいて綿毛も刺も殆どない。稜数12〜19、稜は真っ直ぐで、切れ目があり、アレオレの下に丸い突出した瘤がある。稜線はいくらか波打っている。アレオレは1.5〜2cm離れており、円形又は楕円形で、灰色の綿毛があるが次第に脱落する。縁刺7〜10本、外側に向かって真っ直ぐか少しカーブしながら放射している。薄い茶色で古くなると褐灰色、基部は色が濃い。長さ3.5cmに達する。中刺も同様で1本か2本、又は欠けている。全て針状刺である。
花は長さ6cm、白から赤味がかっていて内弁は剣弁、、花糸、花柱は白く、柱頭は黄色、12裂。
産地は南部アルゼンチン、パタゴニア地方。Chubut州、Rio Negro州、Santa Cruz州。
大部分のギムノが中部アルゼンチン、パンパス(草原地帯)以北であるのに対し、九紋竜及びその変種と近縁種(G.chubutense 穹天丸、G.brachypetalum 鬼胆丸)だけが南へ向かってパタゴニア山系に添って一連に繋がっている。Ventana山脈で採取された記録もある。
ギムノの中では比較的乾燥と強光線を好み、Ferocactus等と一緒に栽培しても差し支えない。
古くから栽培されていたという球がかなりある。私の知る範囲でも相当数あるから、地方の古い栽培家を訪れたらかなり見られるであろう。と言うことは非常に丈夫な品種であり、戦中放任された時代があるにもかかわらず生き残ったことを示している。
ただ、この品種は人によって好き嫌いがあるようで、強刺系ギムノが好きな人でも九紋竜はあまり好きでないと言う人もある。それは老球になるに連れて基部が老化しやすく、肌色が非常に汚くなる欠点があることに原因があるようである。又写真うつりもよくない。しかしながら群生した完成球には一種の枯淡な趣があり、それを好んで愛培している人もかなり多い。
古くから九紋竜として栽培されてきた球の中には比較的短い刺が外側に向かって伸びないで、横に広がり、稜が殆ど線だけとなって、アレオレの下の瘤だけが小さく突出したものも見受けられた。これはBackebergのいうvar.leucodictyonではないかと思われるが、このように現在変種として扱われているものも、我が国に入った当時は全て九紋竜で来ているらしい。
九紋竜の変種はいくつか記載されているが、標本球が少ないので、ここでは学名だけ記し、後日標本球が入手出来た時、改めて一括して記載したいと思う。
G.gibbosum var.ferox Y.Ito.1957
           leucodictyon Y.Ito 1957
           nigrum Backeberg 黒刺九紋竜
           nobile Y.Ito 1957 貴珠玉
           schlumbergeri K.Sch.1898 土蜘蛛
           caespitosum Frio.1926
           leucacanthus K.Sch.1898 白刺九紋竜
           polygonus K.Sch.1898
           leonensis Hildm.
           ventanicolum Y.Ito
           celsianum Y.Ito
           cerebriforme Y.Ito
           fenellii Y.Ito
           pluricostatum Y.Ito
参考文献
Backeberg;Die Cactaceae V,1752(1959)
Borg;Cacti,298(1951)
Br.& R.;The Cactaceae V,158(1922)
唐木正毅;シャボテン,29,14(1960)
平尾秀一;原色シャボテン,174,(1957)
サボテン日本;No,23(1961)ギムノ特集号