4 新天地
 
Gymocalycium saglione (Cels) Br.& R.
    写真の球の栽培者 山名 利三郎 氏  径12cm 


ギムノの内で最も大型になることと、非常に育てやすく、いつまでも型くずれしないので万人に愛され、誰のフレームにも必ずあると言ってよい位普及している。よほど根をこじらせないかぎり、少し位日陰でも長刺を出し、端正な姿で我々の目を楽しませてくれる。実生2〜3年間は仲々大きくならず、刺ばかり長いが、3cmを越えると成長は目に見えて早くなる。3cm球を買って5年も栽培すれば15〜20cmに達し、10年もすれば30cmの大球となる。そうなればフレーム内でもひときわ目立つ存在となるであろう。10cmを越えればフェロと同じような強光線下で管理した方が強大な刺を出し、見ごたえのある球が出来る。因みに写真の球は1956年錦園より2cm位の球を購入し愛培していたもので、現在直径16cm位である。昨年花を咲かせようと思って11月より2月いっぱい水を切ったが遂に蕾は上がらなかった。
これより小さい球で開花したものもあるので、今年は花が見られると思う。
品種の解説はどこにでもなされていて、ここに特に詳しいことを記すこともないので、J.Borg の記載を訳しておこう。唯、新天地系の各品種の自生地の分布を当たってみると、アルゼンチンのCatamarca州からTucuman州、Salta州を通ってボリビアへと連なる南北の分布形態をとり、タイプ変異を示しつつ天賜玉G. pflanziiへと繋がっているようである。自生地の写真はBackeberg;Kakteenjagd(1930)にあり、半日陰の石のごろごろした所に吹雪柱の類(Clestocactus aureispinus)やMicrospermia macrancistraと一緒に生えている。
J.Borg;Cacti,p301,(1951)
Gymnocalycium Saglionis(Cels)Br.& R.
=Echinocactus Saglionis Cels
=E. hybogonus Salm-Dyck.
アルゼンチン、ツクマン州産。球体は巾広い球形でやや扁平。大体単幹である。頂点にも刺がある。
濃い暗緑色で大きくなると青味がかった緑。直径30cmに達する。10〜30稜で大きな丸い突起に分かれている。アレオレの下のあごに非常にわずかな突起がある。アレオレは2〜4cmはなれ、大きくて楕円形で、綿毛も多い。
刺は暗褐色から黒色、いくらか赤味がかっている。それが灰色となり次いで灰白色となる。放射状の刺は7〜12本、外側に広がり、後方へカーブしている。長さは2.5〜4cm、中刺は大抵3本、1本は他のものより上にあり、いくらか短く、大抵直刺か又は上方へわずかにカーブしている。
花は長さ3.5cm、太い漏斗状、花筒は短く、外弁は緑色、内弁は白又はうすいピンク色。ヘラ状のとがった歯のような花弁をもつ。子房と花筒には半円形の鱗片を有する。雄ずいと花柱はうすい赤色。柱頭は12〜14裂で、黄色。美しい独特な品種で早く大きくなる。半日陰を好む。
Backeberg(Die Cactaceae,V,1746(1959)も新天地の記載は極簡単で写真も載せていない。
変種 var. albispinum,flavispinum,roseispimun,rubispinum,tucumanense は皆裸名で、募集品の未記載のもの。黒い刺のものもTucuman州のViposで採集したと記している。彼も個体変異のあることを認めている。
又、新天地類似の一連のものとして次の6種を記載した。(ibid;p1773〜1775)
G. zegarrae
G. lagunillasense
G. riograndense
G. eytianum (栄次丸)
G. marquezii
G. comarapense
いずれもボリビア産のものである。この内、G.comarapenseによく似たタイプのものが2,3年前に輸入されたが、大球になってもいつまでも扁平に育ち、いぼは小さく尖っていて、刺も多い。
新天地と似ているが、又違った趣がある。
Br.& R.(The Cactaceae,V,(1922)は又花の赤味が強く、花糸の紫色のものを観察しており、写真はDr.Shaferの採集したものと、Dr.Spegazziniの採集したものと、二つの全く違ったものを載せている。


参考文献
J.Borg;Cacti ,p301,(1951)
Br.& R.;The Cactaceae,V,157(1922)
Backeberg;Die Cactaceae,V,1772,(1959)
Backeberg;Kakteenjagd,117(1930)
M.E.Shields;Cactus and Succulent Journal ,33,26,(1961)
平尾秀一;原色シャボテン,p177,(昭和32年)
唐木正毅;シャボテン,25,12,(昭和35年1月)


追加資料

新天地
 
Gymocalycium saglione (Cels) Br.& R.
写真の球の栽培者 所沢市 兜狂さん 径25cm

新天地の標本球。
刺が古くなっても先端に黒色が残り、新刺も黒いタイプが肌色とのコントラストが高く、鑑賞価値も高いと思います。


 

新天地
 
Gymocalycium saglione (Cels) Br.& R.
写真の球の栽培者 西宮市 團上 和孝 氏 径17cm

新天地の標本球。
この球も新刺が黒く、古くなっても先端に黒色が残り、疣が大きく分かれていて鑑賞価値の高い球です。


 

新天地
 
Gymocalycium saglione (Cels) Br.& R.
写真の球の栽培者 更埴市 柿碕 碩 氏 径22cm

新天地の標本大球の更に一例です。
新天地の刺は比較的細いものですが、この球の刺は新天地としては例外的に太さがあり、従ってより風格のある姿となっています。
これも新天地としては鑑賞価値が大変高いと思われるタイプです。
近年この写真のタイプをゼガラエとする見解があるのですが、昭和35年前後に多数のゼガラエの輸入原産地球を見ている身としては違和感があり、ここでは一応新天地とします。