2 天平丸A型 (長刺型)
Gymnocalyium spegazzinii Br.& R.(1922)
写真の球の栽培者 東京都 平尾 博 氏   径7cm、高10cm


Borg1)並びにシャボテンの研究誌2)に発表されたタイプである。
当時の輸入球は皆このタイプであったらしく、竜胆寺3)も平尾4)も奥5)も津田6)もこのタイプを典型的な天平丸のタイプと考えているようである。
成長点に黄灰色の綿毛が多く、刺は黒褐色、錘状でかなり太く、下に廻るにつれて5〜7本の縁刺が全部下に向かって伸びる。中刺はなく、長さは4〜5cm、丸刺である。
直径10cm内外で円筒状に育つ。稀に15cm位になると言う。稜数10〜15、丸味を持った稜はあまり高くない。アレオーレの下に低いこぶがある。成長は至っておそく、花付きも良くないようである。花色は白で丸弁、底は深紅色6)である。産地はアルゼンチン、サルタ州。
前記シャボテンの研究誌2)に発表されたのと同じタイプの個体が昭和10年当時何本かドイツより輸入された事実が伝えられている。今なおその内のいくつかは生存していると思われるが、私の知っている範囲では京大古曽部園芸場にある直径15cm位の球と、この写真の球である。
異和名「紫王丸」については、津田7)が Echinocactus spegazzinii Web. に対して命名したものであると記されているが、Backeberg8)によると、E. spegazzinii Web. は九紋竜 Gym. gibbosum のシノニムとしているので、天平丸の異和名ではなく、九紋竜の異和名である。
学名と和名の対照については岸9)の報文がある。 (山名利三郎)


追加資料

天平丸A型(戦前型天平丸)
写真の球の栽培者 西宮市 團上 和孝 氏 径7.8cm

天平丸A型(戦前型天平丸)の一つの典型として掲載しました。
刺は5本或いは7本で水平より下に向かって肌より離れてゆるやかにカーブしながら垂れ下がり、新刺は黒褐色から赤褐色或いは黄色がかった濃い褐色で、古くなると次第に灰色がかります。
生長点に黄灰色の小判型の綿毛が多く、体径10cm位までは球形でその後は円筒状に育ちます。
稜数10〜15、あまり高くなく刺座の下に低い隆起と切れ込みがある程度です。
肌は濃い緑から紫又は茶色がかる個体が多いです。
写真の球はこの特徴を良く現している標本球の一つと言えると思います。


天平丸A型(ハーゲ天平丸)
写真の球の栽培者 宝塚市 村主 康瑞 氏 径9.5cm
写真提供 西宮市 團上 和孝 氏

上記分類集の写真の天平丸も戦前のハーゲ商会から輸入された天平丸ですが、この写真の球は故 伊丹勝吉氏が愛倍されていたハーゲ商会輸入の天平丸の直系にあたります。
天平丸は仔を吹きませんから、芯止めなどの特別な作業を行わないと全く同じ形質の球は得られませんので、この球はハーゲ商会天平丸を片親とするF1から、親木に似た球を選別したものと思われます。
肌から離れて長く垂れ下がった刺が優美な銘球です。


天平丸A型
写真の球の栽培者 更埴市 柿碕 碩 氏 径13cm

天平丸A型の標本球。
上に少し伸びていますが、このタイプとしてはかなり径が出ています。
稜が低くて殆どこぶになっておらず、白点も大きく、刺も5本ないし7本が下に向かって肌から離れて垂れ下がっており、典型的なA型天平丸の特徴を良く再現しています。