紅蛇丸(津田豪刺紅蛇丸カキ仔)(ギムノカリキウム属)

中学から高校生時代、紅蛇丸はサボテン業者に行けばどこにでも置いてあるごく普通のギムノでしたから、仙太郎のフレームにも常に置いてありました。

紅蛇丸の中でも特別な存在だったのが戦前の伝説的名人、津田宗直氏が昭和12年のシャボテン誌に写真を掲載した通称「豪刺紅蛇丸」と言われる球で、津田氏のコレクションの中ではカキ仔が現在に至るまで保存され続けている数少ない球でしたから、いつもその写真を眺めながら、いつかはそのカキ仔が我が家にも来ないものかと夢見ていたものでした。
それがどうでしょう、2002年の春に偶然にも黄泉の国の山名さんからのプレゼントによって我が家にそのひひ孫が出現することになってしまいました。
詳しくは表紙の下部にある「見えるかなあ」を参照していただきたいのですが、この出来事があって以来、これからはなんとか工夫してこの球から次の世代を残していく努力をしなければならない立場に入れ替わりました。
絶やしてはならない、数少ない津田宗直氏の生き証人だからです。
正木栽培ではいつ根腐れで失ってしまうかも知れませんので、見てくれは悪いですが、次の仔を吹いてくれるまではずっと接ぎ木のままで保存していこうと思っています。

津田豪刺紅蛇丸には一目で分かる特徴があります。
それは写真を見て頂ければ解る通り、刺がきれいなカーブを描いて上に向かって伸び、決してうねったりしないことです。
中刺も上に向かって1〜2本が素直にカーブを描いて伸びます。
時々そっぽを向いている刺がありますが、成長点で刺が出る時の絡み合いによるものです。
昭和時代に沢山見た紅蛇丸の中には似たタイプはありましたが、ここまで整った姿の球は見たことがありませんでしたから、津田氏の選別眼はさすがに大したものです。

 



紅蛇丸(伊丹氏紅蛇丸カキ仔)(ギムノカリキウム属)

3年前の夏、大阪のサボテン業者の元に伊丹紅蛇丸と札のついた、こじれて型くずれした紅蛇丸がありました。
関西のギムノ好きの趣味家が、
台風の被害か何かで温室がつぶれた際に、処分したギムノの中にあったものだそうで、かつて伊丹さんの栽培しておられた紅蛇丸から分けてもらったカキ仔のようでした。
優型ギムノを守る会で言うところの、A型紅蛇丸の典型ですが、津田豪刺紅蛇丸に比べると少々荒っぽいバンカラな姿をしており、伊丹さんのイメージに合っています。
型くずれしてみすぼらしくても、伊丹と名が付いたら、伊丹氏の駄目弟子を自称する仙太郎としてはこれは見過ごす訳にはいきません。
早速買ってきて、球体際まで進んでいた根腐れも整理し、発根管理を続けていたらやっと蘇ってきました。
それにしても、仙太郎の元にはこじれたギムノが本当によくいらっしゃるなあ。
まだ姿形はみすぼらしく、下の方に見えているかつての立派な刺が出るまでにはもう少し根を張らせる必要がありますが、今年はついに花も咲かせてくれました。
見てくれがなんですが、ま、将来良い姿になったら再度掲載すると言うことでここはご勘弁を。



<ひとくち栽培メモ>

紅蛇丸は強刺系のギムノの中では根が丈夫で、栽培にさほど苦労することはありません。
光線も強めが良く、比較的気易くつきあえる品種です。