バッテリ/春秋の壺(しゅんじゅうのこ)(ギムノカリキウム属) 径10.5cm

このサボテンが初めて原産地球で入って来た時は驚いたものです。
それまでもこのサボテンの噂はあって、刺が1本だけ下に向かって伸びる、まか不思議なギムノがあると言われていました。
それまで、ギムノで刺が1本だけなんてのは、時たま牡丹玉などの実生に出たりする程度で、それもひげみたいに小さな細い刺でしたからさもありなんと思われるようなものですが、まともな太さの刺で1本だけなんてのが本当にあるのかいな、なんて皆が思っていたものです。
それが本当にシャボテン社に原産地球がドカッと入って来た時は皆へえ〜え・・てなもんですよ。
当然たちまちの引っ張りだこ。早速当時神戸住まいの仙太郎も遠路はるばる開通したばかりの東海道新幹線に乗ってシャボテン社まで買いに行きましたっけ。(訪問記の方の昭和39年の仙太郎のフレームに写真が写ってます)
当然、サボテンの値段よりも交通費の方が高いって訳です。
知人から、入荷は3本刺が多いから、急がないと1本刺はなくなるよお、なんて脅されて急いで行ったことを覚えています。
でも、結構丈夫なサボテンなのに、単身寮時代にお亡くなりになられてしまいました。
丈夫な種類ですから、今でもどこかで当時の原産地球が生き延びてくれているに違いありません。

これは山形のつばささんが譲って下さった内地実生の標本球です。
当時の原産地球に比べると肌が非常に美しいですが、刺がしっかり曲がって肌にぴったり張り付いています。
まさに原産地球で見ていたあの姿です。
これも仙太郎にとっては色々な事を想い出させてくれる、懐かしいサボテンなんです。
今では安いサボテンですが、過去にはそう言う栄光の歴史があったサボテンなのです。

バッテリ/強刺タイプ(ギムノカリキウム属) 径5.5cm

この品種が導入された頃は人気の的は1本刺タイプに集中していたものですが、サボテン趣味を再開した時に驚いたのは、むしろ3本刺の強刺タイプが好まれていたと言うことでした。
勿論、1本刺だってしっかり残っていましたが、値段も下がったせいか、当時ほどの人気はありませんでした。
これは専門業者の元で探して来た強刺タイプの3本刺のバッテリですが、このように肌色も稜の先が濃く、谷間にかけて薄くなるコントラストを見せるタイプも登場するようになっていて、昔のように灰緑色ひと筋と言う事はなくなっており、楽しみが多くなっています。

バッテリの小苗(ギムノカリキウム属) 径2〜3cm

同じ親からの実生苗ですが、ご覧のように非常にバラエティに富んでいます。
生まれたときから1本刺のものもあれば、ずっと3本の強刺を出すものもあります。
原産地球がいっぱい入って来たときにもこのような分布を持っていましたから、原産地のコロニーでもこのような非常に巾広い姿をしているのでしょう。
静岡のマリオンさんが去年譲って下さった実生苗たちです。


バッテリ(ギムノカリキウム属) 径7.5cm

上の写真の実生苗もその後5年が経ちました。
写真右上の球も大きくなり、ご覧のような太い1本刺を優美に伸ばす立派な球に育ってくれました。
やはり想い出があるせいか、仙太郎はこのような1本刺のバッテリが好きですね。

<ひとくち栽培メモ>
バッテリはギムノの中ではその姿から想像される弱刺系にありがちな、ごく標準的なギムノの栽培法が使えません。
どちらかというと、高山性の天平丸や光琳玉に似ていると言えます。
成長期は春から秋までなのですが、夏の暑さには弱く、温室やフレームに入れ放しでいると夏バテします。
冬は完全に成長を止めて休眠します。
ですから6月から9月までは雨の当たらない軒下に出して、シンビジウムの葉陰にでも置いてあげると機嫌良く成長を続けてくれます。
強光線には強くありませんから、遮光は多めが無難です。