新天地(ギムノカリキウム属) 左=夏 右=冬
この新天地、仙太郎がサボテンの趣味をはじめてから最初に専門業者で買ったサボテンなんです。 昭和36年当時、愛知県小牧市の駅前にあった「愛知園芸」で4センチほどの大きさで130円でした。 以来40年、途中で根の故障などで何度もこじれたりしながら仙太郎の下手な栽培に耐えて来てくれて、今では我が家の大切な一員になっています。 毎年春先になると、頭の回りに鉢巻きのように数輪白い花を咲かせて楽しませてくれます。 津田宗直氏も書かれているように、古来より新天地には大きく分けて2つのタイプがあります。 一つは刺が黒くて大型になるタイプで、今の新天地は殆どこの型です。このタイプは大きくなっても扁円形のままで、いぼはどちらかと言えば出る方で、刺は比較的太くて大抵の場合新刺が黒く、古くなると先端以外が白く消し飛んで白刺っぽくなり、先端に残る黒とのコントラストが美しい刺となります。ただし刺の色には比較的個性があり、新刺の時代から黄刺のものもあります。 とにかく貫禄があるので鑑賞価値が高く、そのために淘汰されてこのタイプが後世に残されるようになったのではないかと想像します。 花には必ずと言って良いほどピンク色が混じり、美しい花です。 もう一つはこのページのタイプの新天地で、あまり大きくならず、かつあまり扁円形ではなくてどちらかと言うと球形に近く、なおかつ20センチ前後からは上に伸びるようになります。 いぼは低く、刺は全体に細く、新刺は赤褐色で特に根本は赤味が強く、古くなると白っぽくなり、先端にもあまり色が残りません。 花は底部に赤味が残る以外は殆ど白と言って良い色をしており、前者よりも地味な花です。 昭和30年代にはまだいっぱい残っていたタイプなのですが、今ではあまり鑑賞価値が高くないためか、淘汰されて殆ど見られなくなってしまいました。 一口栽培メモにも書きますが、このタイプは特に夏の刺の出が悪く、そのために夏と冬とでは姿が大きく違って見えます。 取り敢えずここでは仮にこれを古来型と呼ぶ事にしておきます。 |
現代型の新天地で、我が家に来てまだ4年ですが、成長が早く、すでに来たときの倍くらいの重さになりました。 原産地では直径1メートルにもなるというのはうなずける感じがします。 フレーム栽培には恐ろしい性質です。 刺が太くて立派なのであまり大きく見えないのですが、実物はかなり貫禄があります。 古来型の新天地ではありませんから夏でも刺をあげて成長を続けます。 因みにこの写真の撮影日は2016年7月17日。 この球は購入したときの名称はゼガラエでした。 ゼガラエは1967年にシャボテン社他に原産地球が大量に入荷していますが、同時に入ってきた天賜玉やラグニラセンセに似て赤刺系の、特に特徴的なのが浅緑色のざらざらした肌色でした。天賜玉は子吹きするのでカキ仔で繁殖されており、輸入当時の姿を今に伝えていますから、天賜玉をご存知ならその肌色は分かると思います。 更には、大量入荷したゼガラエは12センチ程度までの大きさで、とても大きくなる性格には見えませんでした。当時の輸入球は大きくなるサボテンは必ず大球も混じっていたのです。 でもこの球は肌色も刺色も大きさも新天地です。 昭和の芦屋の白仙園にたくさん置いてあって、仙太郎が買い求めてきたことがある戦後型のあの貫禄たっぷりの新天地そのものです。 なのでこの球を新天地としました。 この球に限らず、最近のゼガラエは輸入当時の姿と違っていて、殆ど新天地と同じ肌色と刺色をしていますが、もしかすると種で導入されたゼガラエは新天地の姿をしていたのかも知れません。 あるいはザラザラ肌のゼガラエと新天地の大球になる性質を狙って交配が行われたのでしょうか。 |
<ひとくち栽培メモ> 弱い光線を好む種類が多いギムノ類の中にあって、新天地類は比較的強光線を好みますから、遮光は少な目とします。 丈夫な種類ですから、培養土は水はけに気を付けてあげれば特に他に気を遣う事はあまりなく、水やりも多少過多になっても問題ありません。 新天地類は大変面白い生育の仕方をするサボテンで、春から夏の成長期は刺を殆ど出さず、球体だけが大きくなります。 成長点が動かないように見えるので調子が悪いのではないかと心配してしまいますが、実は球体だけはしっかり太っているのです。 秋から冬にかけては今度ははっきり見える形で成長点が動き、新刺を盛んに出してきます。 特に古来型の新天地はその傾向が強いようですが、写真の左が夏の姿、右が冬の姿で、冬になると遅れてしっかり刺が出て来る事が分かるでしょうか。 ですから新天地類の刺を立派に育てようと思ったら、秋から冬にかけての成長期にしっかり成長させることが大切だと言う事が分かりますね。 冬も加温設備を整えて、完全に休眠させない方が春からの機嫌が良くなるようです。 |