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ASEANの政治経済PartI
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ASEANの政治経済PartII


29.ASEAN外相会議で「共同宣言」だせず。カンボジアが中国の走狗として妨害(2012-7-13)


28.米クリントン国務長官のラオス訪問の意味(2012-7-11)


27.アジア株の暴落続く、10月23日は韓国が-7.5%(08年10月24日)

⇒10月24日はさらに下げる。韓国-10.6%、インド-11.0%、日経-9.6%

26.アジア株式の大暴落(08年10月6日)

24.ASEANと日本が自由貿易協定の大筋合意、コメは除外(07年8月26日)

20.⇒ASEAN外相会議で憲章に「人権条項」を織り込むことで一応合意(07年7月31日)

13-4.ASEAN-EUでFTA交渉開始で合意(07年5月5日)

23.ASEAN+3財政・金融実務者会議で外貨準備プールの創設を提案(07年4月6日)

13-3. EU-ASEANが貿易、エネルギーなどで協力促進合意(07年3月19日)

22.アジア株さらに暴落(07年3月5日)

21.アジア諸国、中国株の暴落の影響を3月に持ち越す(07年3月1日)

20. ASEAN首脳会議でASEAN憲章討議、中国の影響力は曲がり角(07年1月14日)

19.タイ・バーツ防衛ショックが東南アジアに波及(06年12月19日)

18. 香港株大幅下げ、アジア株全般に安い(06年11月29日)

17.ASEANと中国でサミット、FTA促進、安全保障などを議論(06年10月31日)

13-2.ASEAN5とEUは貿易協定について話し合い(06年9月13日)

16. ASEANと米国が投資と貿易 の拡大のための協定(06年8月26日)

15. アシア株さらに全面安(06年6月8日)

 ⇒6月8日に大暴落、6月9日に反騰(06年6月11日)

14. アジア株の暴落(06年5月22日)

 ⇒5月25日にはさらに下げる(06年5月25日)

13-1.EUはASEANと自由貿易協定(FTA)を結ぶ用意あり(06年5月18日)


 

13.ASEANとEU

13-1..EUはASEANと自由貿易協定(FTA)を結ぶ用意あり(06年5月18日)

EUの貿易代表のマンデルソン(Mandelson)は先にマニラで開かれたASEAN貿易閣僚会議とあわせマニラに滞在しASEAN側と会談した。

その後、5月17日(水)にクアラルンプールに立ち寄り、財界人などと懇談した際に、EUがASEANと自由貿易協定を結ぶことの相互のメリットについて述べたという。

マンデルソンはまず、149カ国が参加しているWTOのドーハ・ラウンドをまとめることの意義を強調した。

さらに、EUは従来は何かにつけ中国に傾斜しがちであったが5億3千万人の人口を擁する地域との経済関係の強化はEUにとってもきわめて大切であり、ASEANとのFTAについて話し合う用意があると語った。

ASEANとしてもASEAN+3(日本、中国、韓国)というアジアに限定した狭い経済ブロックの形成よりも、米国とEUとも幅広い自由貿易関係を締結する必要があることは自明である。

まごまごしていると、「中国にいいようにやられてしまう危険」がむしろ差し迫っていると見るべきであろう。タクシン政権の崩壊によって対中国傾斜は少しはブレーキがかかるかもしれないが、インドネシア、フィリピン、マレーシアは目下のところ表だって危機感について発言していない。

一方、ASEAN貿易閣僚会議で2020年を目標にしていた「経済統合}を2015年に前倒しでやろうなどという今回のマニラ会議での議題が、掛け声倒れになる危険性は十分にありうる。景気のいいスローガンを掲げれば掲げるほどかえって内容がなくなるのは世の常である。

実際問題としてビルマ(ミヤンマー軍事政権)をどう取り扱っていけばよいのかという困難な問題がある。EUもビルマ問題抜きにことを進められるはずもない。また、ASEAN内部の経済格差は簡単には埋まらない。

後発4カ国のなかではベトナムのみが外資の進出によって、何とか浮上する可能性があるが、ビルマにいたっては軍事政権は経済発展の意欲の有無すら外部には見えてこない。ラオスやカンボジアは意欲はあるが先進工業国が投資する段階にはほど遠い。

ASEANの内部のキレツが表面化する恐れは十分にある。

また、この会議で韓国はASEANのうちタイを除く9カ国とFTAを締結したといわれる。タイは韓国の「米の輸入制限」について、強い不満をもっており、今回韓国との協定調印を保留した。

しかし、韓国に言わせれば、日本の「米輸入」問題には大幅に譲歩しておいて、韓国との協定で「米問題」にこだわるのはいかにも見え透いたダブル・スタンダードだということであろう。

そもそも、貿易協定などというものは「機会均等」の原則が何よりも重視されるべき事柄である。それができなければ、FTAによって世界の貿易秩序はズタズタになってしまう。WTOどころの話しではなくなる。

 

13-2. ASEAN5とEUは貿易協定について話し合い(06年9月13日)

フィンランドのヘルシンキで06年9月10日(日)と11日(月)にASEAM(アジア・ヨーロッパ)首脳会議が開催されたが、EUは現在、ASEANの議長国を務めるフィリピンに対し、貿易協定についての予備的な話し合を申し入れ、9月12日(火)に実現のはこびとなった。

EUとしては日本や中国がASEANとFTA(自由貿易協定)を結ぶ動きが具体化している事実に対応するため、ASEAN内の主要5カ国(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポール)に対しFTAを締結する用意があるとし、予備的な話し合いを開始することとなった。

WTOのドーハ・ラウンドが農業問題をめぐって米国、EU、日本が譲歩することをかたくなに拒み、暗礁に乗り上げた形となっているが、その中でも日本はWTOの話し合いよりも、ASEANとのFTA締結に向けて狂奔している。

このような姿をみて、ついにEUもASEAN主要国とFTAの締結を覚悟したものと見られる。これはEUとの貿易を今後いっそう拡大し、かつEUからの投資を呼び込みたいASEANとしては歓迎すべきことである。

マンデルソンEU通商代表は2007年早々から締結にむけての交渉を開始したいとしている。この場合、人権問題を抱えるビルマについてはEUは話し合いをするつもりはないであろう。

また、ベトナム、ラオス、カンボジアといた工業化が遅れている国々との話し合いをどうするかの議論はこれからである。

ブルネイは別としてこれら4カ国は「別扱い」ということになるとASEAN内部で新たな問題が生じることにもなりる。問題を避けるには形式的には「個別の国とのFTA締結」という方法をとらざるを得ないであろう。ASEAN5カ国にとってはそれで十分である。

もしこれがうまくいけばASEANは日本と中国の「呪縛」から逃れ、グローバルな舞台に飛び出す好機であろう。

既に米国もASEANとのFTA締結には意欲を示しており、シンガポールとはFTAを締結済みであり、タイとは現在、交渉をおこなっている(実現はかなり困難を伴うが)。

 

13-3. EU-ASEAN貿易、エネルギーで協力促進合意(07年3月19日)

ASEANとEUの閣僚旧会議がドイツのニュールンベルグで3月14日・15日の2日間おこなわれた。EUの対外関係委員長のBenita Ferrero-Waldner女史は双方はFTAを早期に締結すべきことを確認した。

また、政治的対話と世界および両地域の安全保障問題について協力関係を密にしていくこととしたという。

これらの話しは特に目新しいものではないが、双方の定期的協議を年1回から2回に増加することも取り決められた。また、両地域のFTAの締結は従来の2020年から5年前倒しして2015年には実現させるべきことを合意した。

その中で、ASEANのなかでの先進国は2010年から自由貿易協定をスタートさせたい意向を示したといわれる。ASEANを自分の勢力圏に取り込みたいなどという中国や日本の保守政治家・財界人の身勝手はごめんですよというのがASEANのメッセージである。

要するにASEAN-EU間でいままでにない、具体的な動きが今後出てきそうな雰囲気が双方から盛り上がってきたということのようである。

タイについては早期に憲法を定め選挙を実施し「民主制」に復帰すべきことを指摘されたという。これに対しタイはなぜクーデターが必要であったかを説明し、今の暫定軍事政権が「民主主義に背を向けるものではない」ことを説明し、EU側の理解を得られたという。

特に、戦前ドイツはナチスが「民主主義的選挙」の中で台頭し、議会で圧倒的多数を占めるやヒトラーの独裁体制に移行した歴史的体験があるだけにタイのタクシン政権の問題点と、その政権の打倒ということについては理解が早かったという。

タイのクーデターの必然性をナチスの台頭と重ね合わせて理解しているヨーロッパの人たちの方がアジア理解や歴史認識が深いということなのであろうか?

その点、3月19日付けの毎日新聞の特集記事を読んでいると、タクシン政権の復活をタイ人が望んでいるかのごとき書き方がしてある。こんなことを書いている新聞は日本以外あまりお目にかからない。クーデターが起こって半年で全ての「混乱」がおさまるなんてことはありえない。

いまだにタクシン政権の手先となってきた官僚・警察はほとんど温存されたままであり、彼らが暫定政権に協力するはずもない。混乱は今後も続くがそれは民主政治のための代価であり、長期的にはそのほうがはるかにメリットがあるからタイ国民はクーデター受け入れたのである。

スラユット首相が支持率が下がったからといって、タクシンをもう一度受け入れるというよなことはありえない。

日本のメディアは民主主義の真のトリデになってくれるのだろうか?彼等は日本で「小泉劇場」の演出に軽々に乗ってとんでもない方向に既に道を開いてしまった。メディアに余計な幻想や期待感を持っているとトンデモないことになりかねないと思うのは取り越し苦労というものか?

 

13-4.ASEAN-EUでFTA交渉開始で合意(07年5月5日)

ASEANはブルネイで10カ国の経済閣僚会議をおこなっているが、EUとの間でFTA(自由貿易協定)の交渉を始めることを合意した。また、日本とは07年11月をメドに協定締結を目指すことも決めた。日本からは甘利経済産業相、EUからはピーター・マンデルソン通商代表が参加している。

日本とはコメなどを最初から外すという「汚いFTA」といわれる協定であって既にタイとも締結している。要するに日本は力任せにコメや砂糖などを強引に外して自国の「農業を安全地帯に避難させた上でのFTAの締結」であり、ASEAN諸国の国民の間に不信感がくすぶっている。

一部医療補助労働力の受け入れなど他の点で日本は「譲歩」しているので何とかまとまったといったところであろう。これとて実績があがらなければ新たな紛争の火種になることは間違いない。

「譲歩」どころか東南アジアの看護婦や介護士に来てもらわなければどうにもならなくなることは目に見えている。

ASEAN=EUの話し合いは双方から協定作成のための委員を出し合い「合同委員会」を設置して協議していくことになったが、開始の時期は明らかにされていない。

EUが最も問題にするのはビルマ(ミヤンマー軍事政権)の民主化問題である。アウンサンスーチー女史の自宅軟禁や政治犯の釈放など民主化へ向けてのプログラムが明らかにならなければどうにも前に進まないことは明白である。

ASEANもビルマ(ミヤンマー軍事政権)に対してどういう態度で臨むかが緊急の課題となっている。EUとFTAを結びたければビルマを外してやるほか仕方がない。そういうことも考えながらASEANはやっていくであろう。おそらくSEANの主要国はビルマの除名も視野に入れているであろう。

日本はビルマの民主化の遅れなどは気にする様子もないのでコメや砂糖やコンニャク芋などが外れれば問題はなかろう。これさえかなえば、WTOがどうなっても「知ったことか」という態度がミエミエである。これでは「国際社会で名誉ある地位を占める」のは到底ムリである。

世界貿易の自由化体制(ガット体制)で最大の受益国である日本のとるべき態度としては大いに問題である。

 

14. アジア株の暴落(06年5月22日)

06年5月22日(月)のアジアの株式市場は中国、フィリピン、パキスタンを除いて「暴落」といってよいほど下落した。特にインドは一時、10%程度下げ、その後-4.18%にまで戻したそうである。同時に、為替もドル高に転じている。(表14参照)

下げのキッカケは東京株式市場が午前中は100ポイントほど上昇したが1時少し前から外国投資家から売りが大量に発生し、それが瞬時にアジア諸国に波及した模様である。

下げの原因は、よく分からないが原油価格が下げ基調に転じ、金や銅などの相場が下がり、素材関連株が売られ始めたからだという 。ところが、ほとんどの業種が売られたというのだ。

これが世界全体に波及するのかどうか、また短期に終わり、明日ぐらいから上げに転じるかは予想の限りではない。

しかし、全般的に言えることは2006年の景気は上昇を続けるなどと年初からいわれながら、アジア経済を見る限り、中国やインドといった上昇気流に乗っている国を除いては、昨年後半ぐらいからあまりパットしない経済情勢が続いているということである。

それと、最近になって業績不振の企業も某女性タレントを会長にいただく電機メーカーなどボチボチ出てきている。こういう傾向にはニューヨークの株式市場はきわめて敏感に反応しており、先週のニューヨーク市場は不振であった。(日本はその前から変調だが)。

明日から、また株価が持ち直すかもしれないが、いままでどおりにはいかないであろう。中国の独り勝ちの恩恵にあずかれる国は日本以外そう多くはなくなってきた。ASEANなどは最早被害者に転じている。このところ韓国や台湾も日本の「円安」にやられている。

日本は「小泉改革がうまくいって市場最長の景気拡大が続いている」ということらしいが、4月7日の1万7563ポイントをピークに下げに転じ、ついに1万6000円を割ってしまった。

それにしても、日本の庶民は哀れな境遇にある(一部の勝ち組とやらを除いて)。史上最長の好況にしては、銀行に預金をもっていっても金利はまさに「スズメの涙」で電車賃のほうが余計にかかるといった有様である。ただし、銀行は史上最高の利益でウハウハ笑いが止まらないらしい。

こんなことだから国民はよほどのお人よしを除いてお上のいうことなど簡単には信用しなくなってきている。「改革を止めるな」などとなおもお説教を頂戴しているが「方向の間違った改革」など真っ平御免を蒙りたい。

この上戦前の治安維持法にも勝る「思想犯罪法(共謀罪)」や「愛国心」に点数をつけたりする「日も丸君が代教育」ですか?お人好しで無知な国民が悪質な政治リーダーを選ぶと,最後はどうなるか、直近の歴史がよく教えてくれるし、さんざ痛い目に会った高齢者もまだ大分生き残っている。

政治環境は日増しに悪くなっている。このうえ株まで下がったら(その代わりと申してはナンだが、老人医療費は上がる)、老後のたくわえが日に日に薄くなる国民は浮かばれない。 おりしもNHKで夜7時半からライブドアの株の暴落の被害者の特集番組があった。

60台の被害者が最も多いのだという。ホリエモン流にやられたのである。ホリエモンのせりふで「貧乏人はカネ持ちに食わしてもらえばよいのだ」というのがあったが、これこそ小泉流のネオ・リベラル(新古典派)の経済学の根本思想である。このての経済学者が日本にもやたらにバッコしている。

カネ持ちは村上ファンドのように税金逃れか何か知らないがシンガポールあたりに逃げ出しているものが増えているらしい。貧乏人は残念ながら「飛び立ちかねつ、鳥にしあらねばー山上憶良」といったところだ。

マテマテ悲観するのは早いぞ。「郵政改革をやればナニもかも良くなる」という御託宣もあったっけ?

 

表14. 06年の直近のピークと5月22日の株価指数と各国の為替相場(対米ドル)

直近のピーク 06年5月22日の指数 5月25日の指数 5月10日 5月22日
韓国  1464.7  5月8日 1338.6 -33.70 1295.8 -37.62 929.25 951.75
台湾  7474.1 5月8日 6938.3 -135.89 6861.7 -15.36 31.330 32.138
シンガポール 2657.8 5月8日 2416.69 -77.29 2404.45 -32.10 1.5648 1.5896
マレーシア 966.9 5月9日 925.51 -18.89 923.97 -3.70 3.5791 3.6295
タイ 785.4 5月9日 724.94 -21.89 701.03 -13.07 37.615 38.375
インドネシア 1553.1 5月11日 1309.04 -83.94 1323.15 -3.11 8722.0 9325.0
フィリピン 2589.2 5月8日 2357.98 1.96 2229.33 -23.25 51.470 52.682
インド 12612.4 5月10日 10481.77 -456.89 10666.22 93.17 44.940 45.592
中国(上海A株) 1659.5 5月19日 1657.69 -1.86 1591.42 0.50 8.0037 8.0260
香港ハンセン指数 17301.8 5月8日 15805.52 -501.84 15393.89 -152.75 7.752 7.754
日経平均 17563 4月7日 15857.87 -297.58 15396.75 -213.45 110.46 112.37

 

⇒5月25日にはさらに下げる(06年5月25日)

06年5月22日(月)に暴落したアジア株は翌日はやや持ち直した国もあったが、5月25日(木)にはインドとインドネシアを除いてさらに下げた。5月22日に比べると中国もフィリピンも「例外」ではなかった。タイもついに701.03ポイントまで下げてしまった。(上の表14参照)

今回の下げは米国を中心とする外国の機関投資家のアジア離れが原因だということのようだ。香港で上場された中国銀行の株式に97億ドルが集まったといわれ、その影響もあったかもしれないが、投売り同然の下げを記録した銘柄が少なくいといわれる。

確かに異常な雰囲気ではある。アジアから外資投機家が逃げ出すのはかまわないが、一体どこに逃げ出すのであろうか?アジア以外に安定的な成長(日本を除けば悪くとも4〜5%は期待できる)を遂げる国は一体どこにあるのだろうか?

インド、ブラジル、ロシアにそれど透明性のある投資対象企業がゴロゴロ転がっているようにも見えないが。

いずれ近い将来、短期の外資もアジアに回帰してこざるを得ないであろう。日本の「小金持ち」諸君も今はタンス預金をしておくよりも下げすぎの優良株を買ってジット待っていたほうが良いような気がする。何が「優良株]かはこの方面にはズブの素人の私には分からないが。

何時までも外国の投機家に振り回されるような日本経済やアジア経済であっては良いはずはない。

 

15. アシア株さらに全面安(06年6月8日)

⇒6月8日に大暴落、6月9日に反騰(06年6月11日)

6月7日に暴落したアジア株はさらに6月8日に暴落した。しかし、6月9日になってようやく反騰に転じたが6月8日の下落幅をカバーするに至らない。

中国は6月8日(木)はややあげたが、1日遅れで6月9日(金)に大幅な下げを記録した。

インド株は激しい乱高下を続けている。

日本の下げは大きかったが、その割りに回復力はやや弱い。

表15-2. 06年の直近のピークと6月7〜9日の株価指数

直近のピーク 6月7日の指数 6月8日の指数 6月9日の指数
韓国  1464.7  5月8日 1266.84 -34.78 1223.13 -43.71 1235.64 12.51
台湾  7474.1 5月8日 6612.74 -117.53 6331.81 -280.93 6444.63 112.82
シンガポール 2657.8 5月8日 2355.43 -34.58 2297.11 -58.32 2337.44 40..33
マレーシア 966.9 5月9日 923.57 -1.92 917.25 -6.32 915.40 -1.85
タイ 785.4 5月9日 688.22 -13.82 675.63 -12.59 670.41 -5.22
インドネシア 1553.1 5月11日 1287.18 -29.77 1241.33 -45.85 1274.75 33.42
フィリピン 2589.2 5月8日 2218.42 -71.38 2157.68 -60.74 2159.50 1.82
インド 12612.4 5月10日 9756.76 -200.56 9295.81 -460.95 9810.46 514.65
中国(上海A株) 1659.5 5月19日 1589.54 -89.58 1591.49 1.94 1551.38 -40.11
香港ハンセン指数 17301.8 5月8日 15816.55 -156.56 15450.11 -366.44 15628.69 178.58
日経平均 17563 4月7日 15096.01 -288.85 14633.03 -462.98 14750.84 117.81

 

16. ASEANと米国が投資と貿易 の拡大のための協定(06年8月26日)

クアラルンプールでASEANの経済閣僚会議が開かれ、日本、中国、韓国も参加していたが、8月25日(金)に米国がASEANと「貿易と投資の拡大」協定を結んでいた。

TIFA=The Trade and Investment Facilitation Agreementなるものが米国のスーザン・シュワブ(Susan Shwab)通商代表とASEAN10カ国の経済閣僚の間で調印されたのである。

協定の内容についてはあまり明らかではないが、米国は「アセアンの単一窓口=ASEAN Single Window」の発展であると、その性格を説明している。協定そのものは2国間協定ではなく、ASEANを窓口とする米国との地域間の協定であると言うことのようである。

この協定のツメはこれからなされるが、ASEANと米国の間で「商品の貿易」が共通の基準で処理される(関税など)というメカニズムの構築にあると考えられる。これは、今まで米国による個別規制に悩まされてきたASEAN各国にとっては大きなメリットとなるであろう。

また、この協定よって米国で開発された「新薬」などが、それを緊急に必要とするASEANにスムーズにデリバリーされることにもなると説明されている。また、農産品の「衛生問題」についても速やかな協議がおこなわれるようになるとのことである。

ラフィダ代表は「この協定は今の段階では包括的な経済協力協定の前提になるものではない」とわざわざコメントしている。

ASEAN諸国にとっては米国は1位か2位の輸出相手国であり、米国にとっても世界で4番目の貿易対象国であり、2005年には貿易額が1,250億ドルに達し、2004年に比べ12%増加したという。

また、スーザン代表はビルマ(ミヤンマー軍事政権)に対する「投資と貿易」についての制限は今後も続けると明言している。米国は1997年に対ビルマに対して新規投資を禁止し、2003年に金融業務と輸入を禁止した。

ASEANはその前日(24日)に、それまで暗礁に乗り上げていたインドとの自由貿易協定の話し合いを再開することで合意した。また、ニュージーランドとオーストラリアとは来年に話し合いをまとめることで合意した。

また、中国とASEANの間では「サービス分野」にける自由貿易協定 を2006年末までに調印し、2010年には「自由貿易地域」の形成に向けて前進していくと中国の代表は述べた。

また、韓国とはASEAN(タイを除く)は2007年1月までに商品の関税大幅削減を実現し、2007年末までにサービス分野の自由化協定を実現し、2012年には「自由地域協定」締結に向けて話し合い を進目ていくことで合意した。

肝心の日本とはこれといった「話し合い」はなかった模様でWSJの8月26日付のこの記事のなかには「Japan」という単語は見当たらなかった。

その前に日本は16カ国の「自由貿易地域」協定の提案をしたとのことである(8月24日付けWSJ).16カ国とはASEAN10各国プラス日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドである。

しかし、この提案は参加国によって事実上無視された。それもそのはずであり、APECというものがあり、そこで「自由貿易地域」構想が提起されている中で、なぜ16カ国地域協定なるものが必要なのかということになる。

しかも、日本の提案には「コメや砂糖は別」という前提がつきものなのである。要するにあまり説得でない提案を日本はおこなったのである。

ASEANプラス日本、中国、韓国の13カ国協定では今の自民党政権下ではまとまらないから、こういう提案を「ムリを承知でおこなった」と見られているのである。そもそも日本は13カ国地域自由協定すら結べないのである。いつでもコメと砂糖が問題になるからである。

それ以外に、ASEAN諸国が最近、小泉首相の「靖国参拝」問題をキッカケに、日本の近隣外交に対する姿勢に「警戒感」を抱き始めていることは間違いない。日本の中国への「対抗意識」も当然感づかれていることは間違いない。

また、同時に、日本に根強い「大東亜戦争聖戦論」的なイデオロギーが闇の中から再び頭をもたげてきていることを彼等は感づいていると見るべきであろう。 その前時代的ナショナリズムが政治的に利用されてきていることは問題を大きくしている。

それでも自民党が選挙で勝ちさえすでば俺達はシアワセなのだということなのだろうか? しかし、手前勝手な屁理屈が世界で通用するはずもない。そんなことをすれば日本がアジアや世界で孤立するのは目に見えている。

今回のASEAN閣僚会議の初めに、NHKのニュースでは「日本とASEANおよび中国と韓国が集まって・・・」という言葉で始まり、あたかもASEANの会議を日本が主導権をもって取り仕切るかのような「誤解」を与えかねない報道の仕方であった。

私はテレビをみながらハラハラした。会議の結果や途中経過が容易に想像できたからである。日本の出る幕がそもそもあったのか?それすら疑わしくなるような結末であった。「アジアのリーダーとしての日本」などという姿も形も消えうせつつあるかのごときで有様である。

次の自民党総裁確実といわれる安部氏の経済外交の基本は「FTA=2国間協定」であるという。イイカゲンにしてもらいたい。WTOをどうなさるお積りか?

コメや砂糖やコンニャク芋を避けて通るようなFTAではどうにもならない。日ータイのFTAでも、タイ人は内心ではあきれているに相違ない。日系企業が一生懸命やってくれているから「仕方がなしに」お付き合いしているというのが実態ではないだろうか?

ASEANは2020年という当初の構想を早めて、2015年までにAEC(ASEAN Economic Community)を作るともいっている。

私はAECみたいなものができるとは到底思わない。例えば、食えない農民を数多く抱えるインドネシアではやはり、コメや砂糖が問題になる。しかし、それに向けてお互いに本音ベースで努力するのは結構なことであろうと思う。

大体今から10年経ったところでビルマがどこまで行くだろうか?ラオスやカンボジアはどうなるか?想像するだに暗澹たる気分になる。インドネシアもフィリピンも大して工業化が進まない可能性すらある。そうなるとタイやマレーシアが「遅れた国」の面倒をみるというか形ちにならざるをえない。

しかし、この両国は「EUにおけるドイツやフランスの役割」は到底果たせない。

日本がそのなかでお手伝いできることは多少はあるであろうが、アメリカの先兵になりたがったり、ナショナリズム丸出しでサーベルをがたつかせていては相手がその気になってくれない。政府首脳が隣国の中国や韓国と仲が悪いなどということではそもそも話しにならない。

最後に付け加えるがASEAN経済閣僚会議は「WTOの話し合いを再開すべきであるという」アピールを会議の冒頭に発表している。彼等は「ナニが本当に大事なのか」がわかっているのである。

残念ながら極東の経済大国日本はその辺が一向にピンときていないようだ。コメと砂糖が大事だから、いや農民の票が大事だからということか?

 

17.ASEANと中国でサミット、FTA促進、安全保障などを議論(06年10月31日)

06年10月30日(月)、中国南寧市に温家宝中国首相とASEAN各国のトップが集まり、中国ーASEANサミットが開かれた。ASEANの議長国であるフィリピンのアロヨ大統領が議長を務めた。

そのなかで2010年までにFTAを確立することと軍事、観光、エネルギーその他の協力関係を推進することが合意された。

とりわけサービス部門と投資のいっそうの自由化を目標にすべきことが合意されたという。また、関係国間でメコン総合開発についての取り組みが議論された。

さらに、これらの取り組みを日常的に強化していくために、「貿易・投資・観光促進のための中国・ASEANセンター」が設置されるという。

また、おまけとして6カ国協議の推進を呼びかける決議も採択された。

各国首脳は10月31日(火)に南寧市で開催されている「中国ーASEAN EXPO」という見本市を見学する。

参加国の個別会談もおこなわれ、シンガポールのリー・シェンロン首相はタイのスラユット首相に対し、問題になっているTEMASEK社のShinコーポレーションの買収で同社が名義株主を使って外資の持ち株制限49%をクリアーしたか否かについて、タイ政府の「善処・協力」を求めたという。

もともとシンガポールの政府としてはTEMASEKの企業買収は純粋にコマーシャル・ベースで政府としては関与していないといい続けてきたが、タイの世論の動向などが厳しいと判断して、スラユット首相に「泣きついた」と見られている。

これに対し、スラユット首相はここまできたら、後は「司法の判断にゆだねるほかない」として突っぱねたと報じられている。

タイーシンガポールの「華人枢軸」がつぶれたことは、それなりに結構なことであるが、今度はフィリピンのアロヨ政権がかなり暴力的な独裁体制に変貌を遂げつつある。そうなると、フィリピンーシンガポールービルマ(ミヤンマー)の権威主義連合が誕生する可能性がある。

逆に、インドネシアーマレーシアータイのビッグ・スリーの友好関係は促進・強化されていくであろう。

 

18. 香港株大幅下げ、アジア株全般に安い(06年11月29日)

11月28日(火)のアジア株式市場は香港株が-567.48ポイント(−2.9%)と5年ぶりの下げ幅となった。それ以外にもインドネシアがー2.19%下げるなど、各国ともかなり下げた。

06年5月下旬から6月 上旬にかけてアジア株は不振であったが、その後ほぼ一本調子に上げてきた。しかし、その流れが昨日で大きくブレーキをかけられたかのような印象を受けた。

アジアの株式市場はヘッジ・ファンドに支配されており、ヘッジ・ファンドの資金の出し入れで大きく市場が振り回される。これは日本のような「経済大国」でも同じである。

昨日の下げの主因は米国のヘッジ・ファンドが急激に資金を引き上げたためであるが、それまで高藤を続けてきたニューヨーク市場 の大幅下げ(−158ドル、終値12121.71)を機会に「利益確定」の動きに出たものと思われる。

その背景には、米国の住宅建設の鈍化と消費の沈静化という米国経済の変調があることは間違いない。

米国は中国をはじめ東南アジア諸国にとっての最大の輸出市場であり続けており、その景気動向は直接アジア経済に響いてくることは明らかである。

「東アジア経済の自立循環構造の成立」などというのは、まだ萌芽的なものに過ぎない。基本は世界市場、とりわけ米国市場への輸出でアジアは生きているのである。

中国やインド経済の内需の盛り上がりに期待したいところであるが、それとて背後で米国向け輸出が支えがあることを忘れるわけにはいかない。

 

表15-1. 06年の直近のピークと6月7日の株価指数と各国の為替相場(対米ドル)

06年前半のピーク 6月7日の指数 11月28日の指数 6月7日 11月28日
韓国  1464.7  5月8日 1266.84 -34.78 1411.47 -13.668 948.15 930.88
台湾  7474.1 5月8日 6612.74 -117.53 7444.94 -53.21 32.189 32.673
シンガポール 2657.8 5月8日 2355.43 -34.58 2787.81 -53.13  1.5823  1.5507
マレーシア 966.9 5月9日 923.57 -1.92 105723 -1106 3.6570 3.640
タイ 785.4 5月9日 688.22 -13.82 727.33 -7.33 38.230 36.355
インドネシア 1553.1 5月11日 1287.18 -29.77 1691.08 -37.85 9372.5 9185.5
フィリピン 2589.2 5月8日 2218.42 -71.38 2779.14 -38.42 52.925 49.91
インド 12612.4 5月10日 9756.76 -200.56 13601.95 -171.64 45.965 44.726
中国(上海A株) 1684.62 6月5日 1589.54 -89.58 2038.72 -8.56 8.0172 7.844
香港ハンセン指数 17301.8 5月8日 15816.55 -156.56 18639.53 -564.48 7.7614 7.7752
日経平均 17563 4月7日 15096.01 -288.85 15855.26 -30.12 113.19 116.25

各国の指数の右欄は対前日比の数字です。右の2欄は為替です。

上の表は6月7日と11月28日を比較したものである。6月は決めには香港のハンセン指数と日経平均の指数がほぼ同水準であったが、11月28日は香港が暴落した後でもまだ香港の数字が日経平均を大きく上回っている。

要するに、この半年間日本の株式市場は全体として見た場合は、ほとんど「お休み状態」に推移してきたのである。イザナギ景気を上回るなどという誰の目にも馬鹿げた議論をし続けるノーテンキな役所と日経をはじめとする一部マスコミに猛省を促したい。

また、政治混乱の影響を受けたタイを除く他のアジア諸国もこの半年間全ての国で株式市場は上昇した。とりわけ中国株の上昇がすさまじい勢いである。6月7日の1589.54から見ると11月28日の2038.72は実に28.3%の上昇である。

6月7日と11月28日の比較ではインドネシアは31.3%、フィリピンは25.3%、香港は16.1%、インドは39.4%と大きく上げている。

然るに日本はプラス5.0%ほとんど足踏みである。ただし、ヘッジ・ファンドは今日から日本に流れて来るそうだから(?)、これから数日は投資家の皆さんは期待してよいかもしれない。

また、為替も日本円は安くなっている。台湾、香港はほぼ横ばいであるが、他は強めに推移している。

中国人民元は1ドル=7.844元まできており、香港ドル7.7752にかなり近づいている。いずれ同一水準になることは間違いないであろう。

 

19.タイ・バーツ防衛ショックが東南アジアに波及(06年12月19日)

バンク・オブ・タイランドが12月18日(月)に発表したバーツ高防止策に反発した国際投機筋がバンコク証券市場に売り攻勢をしかけ、タイでは大混乱が生じた(Th.110-15参照)。この動きは最近の通貨高に悩まされるマレーシアなどの周辺諸国に波及した模様である。

タイの動きにあわせて為替規制をおこないそうな国ということでインドネシアやマレーシアは注目されたともいえよう。

表19. 06年の直近のピークと6月7日の株価指数と各国の為替相場(対米ドル)

06年前半のピーク 6月7日の指数 12月19日の指数 6月7日 12月19日 株下落幅
韓国  1464.7  5月8日 1266.84 -34.78 1427.76 -5.47 948.15 931.90 -0.38%
台湾  7474.1 5月8日 6612.74 -117.53 7598.88 -25.74 32.189 32.743 -0.34%
シンガポール 2657.8 5月8日 2355.43 -34.58 2897.30 -66.14  1.5823  1.5434 -2.23%
マレーシア 966.9 5月9日 923.57 -1.92 1060.36 -21.24 3.6570 3.576 -1.94%
タイ 785.4 5月9日 688.22 -13.82 622.14 -108.41 38.230 35.495 -14.84%
インドネシア 1553.1 5月11日 1287.18 -29.77 1736.67 -50.59 9372.5 9120.0 -2.85%
フィリピン 2589.2 5月8日 2218.42 -71.38 2849.71 -28.21 52.925 49.65 -0.98%
インド 12612.4 5月10日 9756.76 -200.56 13382.61 -349.88 45.965 44.781 -2.54%
中国(上海A株) 1684.62 6月5日 1589.54 -89.58 2364.18 31.74 8.0172 7.8212
香港ハンセン指数 17301.8 5月8日 15816.55 -156.56 18964.55 -228.36 7.7614 7.7758 -1.19%
日経平均 17563 4月7日 15096.01 -288.85 16776.88 -185.23 113.19 118.016 -1.09&

各国の指数の右欄は対前日比の数字です。右の2欄は当日の為替です。

 

20. ASEAN首脳会議でASEAN憲章討議、中国の影響力は曲がり角(07年1月14日)

ASEAN首脳会議が1月13日(土)からフィリピンのセブ島でおこなわれている。その中で、1967年にスタートしたASEANの歴史上で最も重要なな変更がおこなわれようとしている。それは2015年にASEANが「共同体」になるなどという朝日のインターネット版のよう、お決まりの話しではない。

誰がなんと言おうともASEANは「地域関税同盟」の域を超えることはない。それも各国が必要な保護措置をおこなえる余地を残した内容になることは明らかである。

しかし、ASEANの経済的地盤沈下は中国の台頭によって急激に進んでいるのである。このままいけばASANは中国の実質的な「植民地」になる可能性も出てきた。

すなわち、中国の工業製品の輸出市場であり、かつ原材料などの1次産品供給国という地位がここ数年のうちによりハッキリした姿となって目の前に現れるであろう。中国は東南アジアで軍事的プレゼンスを増すために空母をはじめ、海軍力を強化している。

しかし、中国がいくら頑張っても、政治的支配にまでは手が届かないというだけの話しである。中国の東南アジアへの勢力拡大に手を貸してきたのはシンガポールとタイのタクシン政権であった。

しかし、朝日新聞の意図せざる声援(?)むなしく、タクシンは追放された。マレーシアでも華人資本家に対するマレー人の反発がさまざまな形で表面化しつつある。その1つが抗日義勇軍顕彰碑問題である。

また、インドネシアのユドヨノ大統領は最終日の東アジア・サミット(ASEANプラス日中韓豪ニュージーランド、インドの首脳が参加する)は欠席することが報じられている(出席の可能性も残されているが)。国内の政治的課題が山積しており、帰国せざるをえないというのである。

この会議の数日前、中国は民主主義を目指すASEANの有力国を見くびったとしか思えない行動に出た。

それは米国が国連安保理事会に提出したミヤンマー軍事政権に対する政治犯釈放要求決議案に中国(ロシアも)が拒否権を行使したのことである。その理由は「ミヤンマー軍事政権はこの地域に脅威を与えていない」からだそうである。

これはASEAN諸国に深刻なショックを与えたことはいうまでもない。中国は大国だからASEANの民主化要求などははじめから無視しているのである。すでに、中国はASEANをハイジャックしたとでも思っているのであろうか?

この責任は小泉純一郎前首相にもある。彼が個人的な政治心情とやらで靖国神社を繰り返し参拝した問題で、日本人の「暗い情念(大東亜共栄圏)」が再び「醜い頭を持ち上げて」きたことを世界に見せ付けたからである。 これは実質的に安倍晋三政権のも引き継がれている。

はっきりいって、日本はアジアで孤立してしまったのである。戦後営営として築き上げてきた平和国家日本の本音がじつは 旧時代の「帝国主義的野心」を背後に背負ったものであったことをアジアの人々は改めて認識したのである。

それがなぜ悪いといって開きなおった傲慢な態度は事態をいっそう悪化させた。

日本政府の「大失策」によって中国の東南アジアにおける立場はいっそう有利になった。

ところが、中国も持ち前の「大国意識」がこれまた「醜い頭を持ち上げて」きてビルマのミヤンマー軍事政権への「民主化要求」決議に「拒否権」を行使するという大チョンボをやってのけたのである。

中国は歴史的に東南アジアの人々を蛮族呼ばわりし、「化外(けがい)の民(文化の光の届かない野蛮人)」として蔑視し続けてきたのである。それが、今日でも残っていると現地の人は受け止めている。

例えばシンガポールのリー・クワンユー元首相は「マレー人はダラシナイとかダメだ」みたいな話を繰り返し、その都度インドネシアやマレーシアの人々から強い反発を買っている。同じような先入観の持ち主の日本人も結構いるから、時々ハラハラさせられることがある。

こういう、日本と中国との間にはさまれて振り回されてはたまらないとASEAN諸国の気の利いたリーダーたちは考えたのが、今回のASEANサミットでの「憲章」作成である。

ASEANはもっと強固な政治的集団にならなければ、中国に飲み込まれる(日本飲み込む気はないが、東アジア共同体にこだわり、痛くない腹をられる結果になった)という危機意識が急速に芽生えてきているのである。

そのためには従来の「コンセンサス・ベース(満場一致主義のナアナア主義)」を止めて、ルールーと罰則を織り込み、主体性を明確にする必要があると考えたのである。

ASEAN憲章にどういう内容が織り込まれるかは明らかでないが「民主主義・人権尊重・平和主義・機会均等・経済的繁栄・貧困撲滅」といった、世界に認められる基本的条件は織り込まれるであろう。原文は50ページにも及ぶといわれている。

平和主義は反テロリズムという形をとるが、外国の軍事的圧力には屈しないという決意も表明されるであろう。軍事同盟も当然織り込まれる。

東アジア共同体の方は日本がいち早く「失格」状態に陥ったのですこぶる熱の入らないものになってしまった。タクシンがいなくなったので中国一辺倒も消滅した。

民主主義などは内心はあまりお好きでなさそうなフィリピンのアロヨ大統領とシンガポールが組んでみても「中国一辺倒」にまでは最早もっていけない。

要するにASEANは中国や日本とは無関係にわが道を行くほか仕方がないのである。今回の憲章ではミヤンマー軍事政権が今までのような露骨な「反民主主義政策」を採り続ければ、ASEANから除名されることもありうるようである。

今回のセブ・サミットでは人権団体のメンバーがブッシュ大統領、アロヨ大統領にくわえ小泉政権の後継と目される安倍首相の「人形」が焼かれたそうである。日本人としては不愉快な話しだが、日本に対するイメージ・ダウンを象徴する出来事である。

それに反して、中国の温家宝首相の大看板が道路に出され、空港には白シャツを北大集団が、温家宝の空港到着に出迎えたそうである。この記事はWSJに出ていた。これを資金的サポートしているのは現地の華僑資本家であろう。しかし、これが何時まで続くかが問題である。

日本政府もODAもいいかもしれないが、現地の民主化や人権問題や貧困問題にもっと国民の税金を使ってほしい。 嘘から出た誠の例えもあるではないか。

進出企業の目先の利益にコミットしてJETROが先頭切って「労働法改悪」の圧力をかけるなどという馬鹿げたマネは止めてほしいものだ。採算が合わないと思った企業はサッサト退出すれば済む話しである。

 

⇒ASEAN外相会議で憲章に「人権条項」を織り込むことで一応合意(07年7月31日)

マニラでASEAN外相会議がおこなわれ、「ASEAN憲章」についての詰の議論がおこなわれたが、人権条項と人権委員会の設置にちてはビルマ(ミヤンマー軍事政権)が最後まで抵抗をしていたようであるが、結論的には人権条項はいれるが11月の首脳会議(シンガポールで開催)までにさらに内容を詰めるということになった。結論に実質的先送りである。

人権条項についてはベトナム、ラオス、カンボジアも内心反対ではあるが「努力目標」としては拒絶するだけの根拠を見出せなかったということであろう。実質的に反対なのは実はシンガポールであるという説がある。それは国内の野党に対するこれまでのさまざまな弾圧の歴史をみればうなずける。

しかし、シンガポールといえども「人権条項」を自ら先頭に立って潰すというのは国際社会の反発と疑惑を招く行為なので、シビシブ認めたというところであろう。

本来であればタイもシンガポールと歩調をあわせて人権問題をトーン・ダウンさせるべきところであったかもしれないが、タクシン首相が失脚し、軍事政権が「人権条項」のリーダー格になったのはなんとも皮肉である。

また、タクシンがイギリスのプロ・サッカー・チームのマンチェスター・シティのオーナーになったことについてHuman Righ WatchやAmnesty International といった「人権団体」から改めて異議が提出されている。これはBBCのインターネット版で特集されている。

朝日新聞などはこの辺をどう説明するのかミモノである。

また、タイのスリン(Surin)前外相が次期のASEAN事務局長に就任することが承認された。スリン氏は民主党政権時代にタイの外相を長年務め、その人物と調整能力など高く評価され、一時期は国連事務総長の候補としても名前があがった経緯がある。

スリン氏は1949年生まれ、タマサート大学を卒業後、ハーバード大学で博士号を取得。イスラム教徒である。

 

 

21.アジア諸国、中国株の暴落の影響を3月に持ち越す(07年3月1日)

2月27日に突如中国株式市場を襲った暴落の「上海カゼ」は周辺諸国のみならず、EU,米国を回って3月1日には再度、中国、日本、香港などに襲来した。

香港以外のほとんどのアジア諸国は中国より1日遅れの2月28日に暴落に見舞われたが、香港、シンガポール、マレーシア、日本は3月1日になっても下げ続いた。 (台湾は2月28日は株式市場は休みだったので3月1日から影響が出始めた。)

しかし、日本は午後になってからやや反転し、下げ幅は縮小した。今回の「上海カゼ」は来週からは快方に向かうであろう。下の表でピーク時対比で下げ幅が6%を超えている国はバブル症候群にかかっていたと見られる国々である。これらの国々は本格回復にはやや時間がかかるかも知れない。

日本は老人病の疑いがあり、バブル症候群にかかりたくともかかれない。歳は若くとも頭脳が重度の老人病にやられてしまっている政治リーダーもいるから要注意である。

 

表21. 07年の直近のピークと2月27、28日3月1日の株価指数

直近のピーク 2月27日 2月28日 3月1日 ピーク比
韓国  1470.0  2月26日 1454.6 1417.3 1417.3 -3.6%
台湾  7935.5 1月24日 7902.0 7902.0 7678.7 -3.2
シンガポール 3310.44 2月23日 3232.02 3111.94 3092.58 -6.6
マレーシア 1283.49 2月23日 1237.08 1196.45 1180.91 -8.0
タイ 693.86 2月15日 683.95 677.15 680.60 -2.4
インドネシア 1836.53 1月2日 1764.01 1740.97 1759.49 -5.2
フィリピン 3389.37 2月23日 3331.29 3067.45 3190.12 -8.5
インド 14643.13 2月7日 13478.83 12938.09 13159.55 -11.6
中国(上海コンポジット) 3040.60 2月26日 2771.79 2881.07 2797.19 -8.8
香港ハンセン指数 20821.05 1月24日 20147.87 19651.51 19346.60 -7.1
日経平均 18188.42 2月23日 18119.92 17604.12 17453.51 -4.0

注;右欄の「ピーク比」とは最近3日間の最安値と左の欄のピーク時の値との比較である。

 

22.アジア株さらに暴落(07年3月5日)

先週末(3月2日)のニュー・ヨーク市場の大幅下落を受けて、今週月曜日(3月5日)のアジア市場も大幅な下げとなった。特に下げを先導したのは東京市場であり、円高とあいまって株式市場では全面的な下げとなった。

寄り付き前から大幅下げの動きがみられ、下げが下げを生むパニック相場に近い状況となった。

景気が本当におかしくなりかかっているニューヨークではピーク比4%強しか下げていないのに、アジア株の下げは景気実態からかけ離れた観があり、やや行き過ぎであろう。

 

表22.. 07年の直近のピークと2月27、3月2日、5日の株価指数

直近のピーク 2月27日 3月2日 3月5日 前日比 ピーク比
韓国  1470.0  2月26日 1454.6 1414.47 1376.15 -2.7% -6.4%
台湾  7935.5 1月24日 7902.0 7630.15 7344.56 -3.7 -7.4
シンガポール 3310.44 2月23日 3232.02 3078.74 2982.29 -3.1 -9.9
マレーシア 1283.49 2月23日 1237.08 1164.64 1110.69 -4.6 -13.5
タイ 693.86 2月15日 683.95 679.02 679.02 休日 -2.1
インドネシア 1836.53 1月2日 1764.01 1760.05 1698.82 -3.5 -7.5
フィリピン 3389.37 2月23日 3331.29 3140.34 2997.88 -4.5 -11.5
インド 14643.13 2月7日 13478.83 12886.13 12415.09 -3.7 -15.2
中国(上海コンポジット) 3040.60 2月26日 2771.79 2831.54 2785.31 -1.6 -8.4
香港ハンセン指数 20821.05 1月24日 20147.87 19422.01 18644.88 -4.0 -10.5
日経平均 18188.42 2月23日 18119.92 17217.93 16642.25 -3.3 -8.5

注;右欄の「ピーク比」とは3月5日終値と左の欄のピーク時の値との比較である。

 

23.ASEAN+3財政・金融実務者会議で外貨準備プールの創設を提案(07年4月6日)

チェンマイで開かれていたASEAN+日中韓の13カ国による財務および中央銀行上級実務者会議(ASEANは財務相出席)で、今後共有の外貨準備を持ち、通貨危機に際してはメンバー国がそれを利用できるようにするという方針を決め、5月5日にに京都で開催される閣僚レベルの会議に提案することとした。

これは従来のチェンマイ・イニシアチブ(2000年)に盛られた2カ国ベースの通貨融通協定から一歩進んだものである。

しかし、この共有外貨準備なるものは各国から応分の資金を持ち寄るというもので総額がいくらになるか、また運用をどうするかといった根本的な問題が残されている。

額が少なく運用に手間取れば実際にヘッジ・ファンドなどに襲撃を受けた場合、間に合わないということも大いにありうる。これは「東アジア共同体構想」の中身にもつながる考え方であるが、多分にシンボリックなものにとどまる可能性がある。

目的が短期資金(ホット・マネー)による撹乱的な被害の防止であれば、評判は悪かったがタイの昨年末のような形の防衛策が必要であろう。日本や中国の全ての外貨準備を動員してもヘッジ・ファンドに勝てるかどうかは分からない。

多少の抵抗はあっても、マレーシアが通貨危機直後にとった外貨管理策のようなものの方が効果が上がる。ただし、株式市場への影響は「副作用」としてはかなりあった。

緊急時にヘッジ・ファンドに一撃食らわせるような緊急避難策を各国が普段から準備する必要がある。そういう意味で昨年末のタイの「実験」はその利害得失と今後の運用についてもっと冷静に検討すべきであろう。

「ケシカラン・ケシカラン」の大合唱では全く知恵のない話しである。

 

24.ASEANと日本が自由貿易協定の大筋合意、コメは除外(07年8月26日)

ASEANと日本は07年8月25日、自由貿易協定について大筋で合意を見た。

AJCEP(Asean Japan Comprehensive Economic Partnership=アセアン日本包括経済協力)というもので、従来の88%に対し、90%の貿易品目の関税を撤廃し、相互の貿易を促進するというものである。

しかしながらコメをはじめかなりの農産品が除外されている。どこまで除外されているかはわれわれ一般国民には分かっていない。除外した理由も国民には分からない。

東南アジアの国民も納得していない。貿易以外のメリットがあると考えるからASEAN側もサインしたのであろう。要するに日本のワガママが通ったというだけの話しであり、現地での受け止め方もサッパリ盛り上がらない。後から日本に対する不満が爆発しなければ幸いである。

日本はこんなことを何時までやっていくのだろうか?農業問題が足かせになって、日本は国際貿易交渉の場でいつもウラでコソコソしてきた。FTAで逃げようにもコメ、砂糖などが障害になって、「都合のいい相手」としか協定を結べない。

おかげでWTOはドンドン遠ざかっていく。こういう状態を学者先生は適当な理屈をつけて正当化している。そういう論文は日本経済新聞にワンサと登場してきた。

先の参議院選挙で民主党は突破口を開いた。農民の所得保障を提案したのである。これが出来れば、コメ問題の自由化もかなり進展する可能性が出てきた。今のままでは所詮日本の農民は食えないし、工業品の輸出もジリ貧の可能性がある。

「小泉改革」が徹底的に避けてきたのがこういうテーマである。5年半も時間を空費した。安倍政権はもっとひどい。日本の閉塞感はこの辺が原因になっている。

ASEANもこれ以上FTAを締結するという作業をやめて「WTOをまとめよう」という動きになってきた。彼等は日本との交渉でFTAなるものの限界を思い知ったのであろう。日本の政治家や経済官僚も考え直すときに来ているという認識を持つべきであろう。


26.アジア株式の大暴落(08年10月6日)

米国が7,000億ドルの銀行救済案をすったもんだの末10月3日に下院を通過させ、これで一息ついたと思ったら、米国やヨーロッパの実体経済が悪いということで、週明けの10月6日(月)に日本をはじめとしてアジア各国の株式市場が大暴落を演じた。

為替は日本円は対米ドルで上昇し、1ドル=103円17銭(先週末は1ドル=105円31銭)と先週末に比べ2円以上も高くなった。しかし、韓国ウォンをはじめ軒並み対米ドル比下げに転じた(香港、中国は若干上昇)。

米国のサブプライム・ローンの焦げ付きが世界的に激震をもたらしている。日本の銀行株までがトバッチリを受けて一人前に(?)暴落しているのは不思議としか言いようがない。アジア経済は米国向けの輸出がこれから減るという懸念から為替安、通貨安になったものと思われる。

しかし、アジア諸国の対米輸出は08年に入ってすでに鈍化していたのである。

アジアの銀行はスブプライム問題の影響はほとんどない(焦げ付きという意味では)と思われるが、韓国の銀行は外銀からの借り入れが多いためにかなり揺さぶられているという。ウォン相場も急落しているのは本HP10月3日号に見たとおりである。

表26. 08年の直近のピークと10月3日と6日の株価指数

直近のピーク 10月3日 10月6日 前日比 ピーク比
韓国  1502.10  8月2日 1419.7 1358.8 -4.3% -9.5%
台湾  7040.5 8月20日 5742.2 5505.7 -4.1 -21.8
シンガポール 2977.91 7月24日 2297.12 2168.32 -5.6 -27.2
マレーシア 1163.08 7月31日 1016.08 996.84 -1.9 -14.3
タイ 707.48 8月15日 590.05 551.80 -6.5
-22.0
インドネシア 2304.51 7月31日 1832.51 1698.94 -7.3 -26.3
フィリピン 2768.52 8月11日 2566.21 2499.53 -3.6 -9.7
インド 15049.86 9月3日 13055.67 12858.82 -1.5 -14.6
中国(上海コンポジット) 2910.27 7月24日 2293.78 2173.74 -5.2 -25.3
香港ハンセン指数 23134.53 7月23日 18211.11 17682.40 -2.9 -23.6
日経平均 13430.91 8月11日 10938.14 10493.09 -4.1 -21.9



27.アジア株の暴落続く、10月23日は韓国が-7.5%(08年10月24日)

米国が7,000億ドルの銀行救済案が議会を通過し、金融部門の危機は一応これで救われたと思ったら、これから「不況が深刻化する」というので株の暴落は一行に収まる気配はない。

10月6日(月)以降も日本をはじめとしてアジア各国の株式市場が大暴落を演じた。主な国は軒並み20%前後下げている。為替は日本円は対米ドルでかなり上昇しているが、他国の通貨は概して下落している。

これは経済のファンダメンタルズ(基礎)が日本は比較的安定しているからであると解釈してよいと思うが、米国のヘッジ・ファンドは日本株も「売り」に出ているようである。

いずれヘッジ・ファンドも大打撃を受けると思うが、米国政府の救済対象にはヘッジ・ファンドは含まれていないという。かれらは「万歳突撃」を仕掛けている最中かもしれない。


⇒10月24日はさらに下げる。韓国-10.6%、インド-11.0%、日経-9.6%(08年10月24日)

前日の米国のダウ工業平均がプラス172ドル高で引けたというのに、アジア株は例外なく売りまくられた。なすすべも無く暴落した。これは理屈で説明のつく数字ではない。各国政府の無策を見越してのヘッジ・ファンドの売りである。

グリーン・スパン氏も「市場に任せておけば良いという政策は間違っていた」とネオリベラル的政策思想の失敗を認めた。ところが、わが国の政府首脳はナニを考えているのかさっぱりわからない。

記者会見では下ばかり見て役人が書いてくれたメモを間違いがないように一生懸命で朗読している。こんなお粗末な閣僚はアジア諸国にはいない。もっと勉強してご自分の意見を堂々と開陳すべきでしょう。

表27. 10月6日と直近の株価指数

10月6日 10月22日 10月23日 10月24日 前日比 10月6日比
韓国 1358.8 1134.6 1049.7 938.8 -10.6% -30.8%
台湾 5505.7 4862.6 4730.5 4575.6 -3.2 -16.9
シンガポール 2168.32 1821.13 1745.67 1600.28 -8.3 -26.2
マレーシア 996.84 904.28 891.32 859.11 -3.6. -13.8
タイ 551.80 465.24 休み 432.87 -7.0
-21.6
インドネシア 1698.94 1379.74 1337.20 1244.86 -6.9 -26.7
フィリピン 2499.53 2083.01 1995.92 1953.49 -2.2 -21.8
インド 12858.82 10169.90 9791.70 8701.07 -11.0 -32.3
中国(上海コンポジット) 2173.74 1895.82 1875.56 1839.62 -1.9 -15.4
香港ハンセン指数 17682.40 14266.60 13760.48 12618.38 -8.3 -28.2
日経平均 10493.09 8674.69 8460.98 7649.08 -9.6 -27.1



28.米クリントン国務長官のラオス訪問の意味(2012-7-11)


クリントン国務長官が7月11日(水)に米国国務長官としては57年ぶりにラオスを訪問する。それは中国が露骨にASEANを勢力圏に繰入ようとする最近の動きに対するけん制であることは明らかである。

7月9日のASEAN首脳会議においても南沙諸島問題でフィリピンが中国の動きに抗議しようとしたときに、議長国であるカンボジアのフンセン首相が強硬に反対したことでもわかるとおり、カンボジアは中国の「同盟国」として行動していることが明らかになった。

ラオスは中国・雲南省との陸続きであり、メコン川流域を支配下に置こうとする中国に当然狙われている。高速鉄道建設を中国が行うことになったが線路の周辺数キロを中国側の権益地帯にしろという要求を突き付けている。弱小国ラオスとしては中国の無理難題に屈するほかないとみられている。

しかし、ラオスも独立国として実質的に中国の「属国」的地位に陥ることは避けたいという気持ちがあるのは当然である。しかし、中国の属領になったほうが何かと好都合だと考える人々もいる。それは現地にいる華僑・華人の一部である。それにタイ国籍の華僑・華人も加担している。

タイにも同じような考え方の政治家がいる。それは中国との「自由貿易協定」締結に狂奔したタクシンとその仲間である。タクシンは汚職・権力乱用の罪で2年間の実刑判決を受けて海外逃亡中であるがカンボジアとラオス国内を自由に動き回り、タイ国内の政治に影響力を行使している。タクシンはある意味では中国の代理人といわれても仕方がないような動きをしている。

カンボジアは主に中国の武器を使って軍隊を維持している。現在タイはタクシンの妹インラクが首相を務めており、学童向けタブレット・パソコンは全量中国から輸入することがっ決まっている。昨年の大洪水の時にインラク政権は真っ先に中国に特使を派遣し、援助を要請している。中国は数百台の小型ポンプを提供しその要請に答えている。

このまま推移すればラオスーカンボジアータイが中国の影響下に入り、タイに大規模投資している日本は大きなタガ(制約)がはめられる可能性がある。そういうタクシン政権の動きを応援している日本の団体や学者が少なくないことはすでに別の稿で論じたところである。

こいうタックシン派の動きはタイの近代ビジネスマンの考え方とは相いれない。バンコクを中心とする近代ビジネスマンは中国中心というより「独立した経済国」として世界に立ち向かおうとしている。日本からも電機・自動車といった工業資本を積極的に受け入れ、自らもグローバルな動きに協調しながら成長しようとして今日の発展を築いてきた。そのような動きは1980年台半ばのプレム政権時代に始まった。

日本の主流の学者は彼らを「王党派・旧守派・既得権益派」だなどワメキたてタックシンがあたかもタイの資本家階級の前衛であるかのごとき幻想を振りまいてきた。新聞もそれに同調してきた。

そえがウソであることはタイにいる駐在員ならすぐにわかることである。バンコクのタイ人の多くもそのような認識に立っている。だから前回の選挙でもバンコク市民は民主党に投票した。タクシン派が勝ったのは人口の多い東北部や北部の農村地帯であり、バンコクの中心部では民主党に完敗している。

ところが日本の「タックシン派」はそのような「不都合な現実」には触れずに「反タクシン派」は「王党派」とか「旧守派」というレッテルを張って口汚くののしっているだけである。バンコクの新中間階級は「既得権益擁護」の「旧守派」に勝手に分類されている。実際は彼らがタイの民主主義の担い手であるのもかかわらずである。このような誤った分類学の大本はチュラロンコーン大学のティティナン教授である。日本の「タックシン派学者」はティティナンの口真似をしているにすぎない。

今回のクリントンのラオス訪問はそのような動きに遅ればせながらくさびを打ち込む狙いがある。日本政府はかならずしも米国とおなじような行動をとっていない。米国はバンコクの民間人などを使てこの周辺国の情報を的確に把握して米国の「地域戦略」を立案しているが、日本の政府機関や学者は根本的に「タックシン派」である。タクシン派の学者などから流される情報が政策のベースになっているとしか思えない。

日本政府や学者はこの地域の政治体制は「独裁政権が望ましい」などという的外れの偏見(開発独裁論)にとらわれているから、何のアイデアもうかんでこない。むしろ現状に心地よく満足しているかのごとしである。国民の税金をしこたま使って。


29.ASEAN外相会議で「共同宣言」だせず。カンボジアが中国の走狗として妨害(2012-7-13)


ASEAN外相会議で延々議論されていたが、なんと共同声明を出すことができずに閉幕し、ASEANの歴史上初めて深刻な分裂が明らかになった。その原因は南沙諸島問題である。南沙諸島を巡って中国は本国からはるかに南のフィリピン近海の島々を中国固有の領土である主張し、フィリピンなどと激しい対立を起こしている。下の地図を見てもわかるとおり中国本土からはるかに離れた、南沙諸島を中国固有の領土だなどと主張するのはあまりに暴論である。

同様の問題を中国はベトナムとも起こしている。歴史的に考えても南沙諸島が中国の領土であったという事実はない。10世紀の宋の時代まで中国人の海外渡航は禁止されていおり、中国人はフィリピン近海はおろか海外に出ることすらできなかった。宋の時代になってはじめて政府の認可を得た商人が海外に出ることができた。漁民が遠洋漁業をやっていたなどという話はおよそありえない。冷凍設備や氷の無い時代に遠洋漁業など成り立つはずがない。

中国はこの海域に石油・天然ガスが埋蔵されているkとを知ってからこの地域の領有権を主張し始めたのである。ここには300億立方メートルの石油と16兆立方メートルの天然ガスが埋蔵されているといわれている。中国が2010年現在保有している確認された埋蔵量は20億トンの石油と99兆立方メートルの天然ガスだから、この南沙諸島がほしくて仕方がない気持ちはわかる。そかしそれはもともと中国のものではないのだ。これを軍事的、外交的手段で奪い取ろうとしているのが紛争のきっかけである。まさに帝国主義的な妄動である。

フィリピンはASEANの場で中国の暴挙を止めようとしているが、ASEANの議長国であるカンボジアのフンセン政権がこれを阻止したのが今回の事件である。これには影でタイが支援していたフシがある。カンボジアがいくら議長国であっても1国のみではASEANの分裂につながりかねない行動をとれるはずがない。タイの英字紙はあくまで「中立」を装い、米国の干渉こそが問題だなどとさえ主張している。

フセイン政権とタクシンはすこぶる緊密である。カンボジアを陰でサポートしたのはタイのインラク政権以外にはありえない。タイがアピシット民主党政権であったらカンボジアもここまでやったかどうかはわからない。

2015年からASEANは統合に向かって動き出すというが、そんなことは絵空事にしか過ぎない。こんなことは前からわかっていたことである。ASEANができることは「関税同盟」が限界である。それすらやれる国とやれない国がはっきり分かれている。

カンボジアが中国の利害を直接代弁する行動に出たことはこれからのASEANに大きな問題を残した。中国の使い走りであるということが明らかになった以上カンボジアもASEAN内での孤立は避けられない。

ビルマ(ミヤンマー)は中国の政治的抑圧から逃れるためにあえて「民主化」への方向転換した。それは今のところうまくいきそうである。カンボジアはASEANの中で「独裁国家」として中国の庇護をうけつつやっていくつもりだろうが、そう長続きをするとも思えない。