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関連ページ;台湾の政治経済(2007年以降

台湾の政治経済(2006年以前)



17-5.台湾の7月の輸出は好調を持続(06年8月8日)

17-4. 台湾の4月の輸出受注は好調を維持(06年5月25日)

17-3. 台湾の06年1Qの成長率は4.93%、 輸出が主導(06年5月19日)

17-2. 06年4月の輸出は15%の伸び、ハイテク品種伸びる(06年5月9日)

17-1.台湾の06年3月の輸出の伸びは7.1%増と鈍化(06年4月11日)

14-5.台湾の05年4Qの成長率は6.4%と 回復、輸出が貢献(06年2月24日)

14-4. 05年3Qの成長率は4.38%(速報)とやや回復(05年11月18日)

14-3. 台湾経済は輸出不振により06年も低成長が続く?(05年10月28日)

16. タイ人労働者が待遇改善を求めて暴動(05年8月23日)

14-2.05年2Qの成長率は3.03%とやや回復(05年8月20日)

15. 国民党党首に馬英九台北市長が当選(05年7月18日)

14-1. 05年1Qの成長率は2.54%にスロー・ダウン(05年5月21日)

13.奇美グループ許文龍会長の変節?(05年3月29日)

10-3. 04年4Qの成長率は3.25%に低下するが、通年では5.71%(05年2月27日)

12. 中国の「反分裂国家法」に台湾企業は戦々恐々(04年12月22日)

11. 国会議員選挙の敗北により.陳水扁総統、民進党党首を辞任(04年12月14日)

10-2. 04年3Qの成長率は+5.27%(04年11月22日)

 

1. 2003年の成長率は3.53%を予想‐台経院(03年7月23日)

台湾経済は製造業の中国投資の急拡大による「空洞化」という構造的な問題を抱えている。加えて、近年はITバブルの崩壊により、いっそうの苦境に立たされ、今年はSARS騒動にも見舞われた。

そのような中で、台湾のシンク・タンクであるThe Taiwan Institute of Economic Research(台経院)は今年の経済成功の見通しを従来の3.02%から3.53%へと上方修正した。

その根拠として、台湾政府が景気刺激策が相次いで打ち出されていることを指摘している。具体的には@SARS救済策として500億NT(新台湾元)、A公共投資の追加として777億NT,B5,000億NTの新公共投資と不動産債券化計画である。

台経院はこの措置により、従来は政府投資を−3.72%と見ていたが、今回は+4.2%と大幅な改善を見込んでいる。一方、民間投資は従来の+2.71%から今回は+1.96%へと下方修正している。

輸出は従来の+7.18%から、今回+7.54%へと若干の上方修正をおこなった。これは、パソコンの売れ行きがやや向上していることを考慮しているためであろう。

(Taipei Times http://www.taipeitimes.com 03年7月23日付 参照)

(03年7月24日)これに対して、Academia Sinica 経済研究所は今年の台湾の成長率はSARSの影響もあり、2.65%にとどまるであろうという見解を発表した。

個人消費は1.22%、民間設備投資は-1.54%、輸出は+6.82%、輸入は+5.83%と見ている。

 

(03年8月18日) 03年2Qはマイナス成長(-0.08%)、

台湾政府の発表によれば2QはSARSの影響をモロに受け、マイナス0.08%(前年同期比)成長に落ち込んだ。

同時に、統計局は03年の経済見通しを2.89%から3.06%に上方修正した。その根拠は下期の輸出が6.9%増(上期7.3%増)と比較的好調を持続できるからであるとしている。目下のところ台湾経済の支えは輸出のみといった観を呈している。

(続く)

2. 台湾ノートPCの出荷回復の兆し(03年9月1日)

台湾経済全体としては上に見るように2Qの成長率は-0.08%と厳しいものがあった。しかし、2QのノートPCの出荷台数は560万台と前年同期比23%増であった。

ただし、金額ベースでは36億ドルと+6.2%であった。1台当たりの単価は平均13.7%下がった計算になる。引き続き3Qの生産も2Q比+20%増の勢いにあるという。

IT産業といえどもいったん市場が飽和状態になれば市場が収縮するのは当然であるが2001年の大不況から2年もたてば回復してくるのはこれまた自然の動きともいえよう。

ただし、このまま1本調子に増加するかどうかは問題は別である。また、ノートPOは最近性能が向上してきたのでデスク・トップに対する代替需要もあるという。

台湾は世界全体の3分の2のノートPCを製造しているという。なかでもQuanta Computer Inc.(廣達電脳)は最大の下請けメーカーで世界の22%を生産しているという。

このような動きを受けて台湾での雇用も回復の動きにある。

(http://www.taipeitimes.com/ 9月1日)

 

3. 03年8月の輸出は好調(03年9月12日)

台湾の8月の輸出は前年同月比13%増となり、123億ドルに達した。輸入はもっと好調で14.3%増の104億ドルとなり、差し引き19億ドルの貿易黒字を記録した。

輸出の増加は中国、東南アジア、ヨーロパ、韓国向けによるものであった。米国向けは8月は22.3億ドルにとどまり、2.7%の減少になった。これは米国向けのパソコンなどの輸出が台湾系の中国企業にとってかわられたものであろう。

1〜8月の累計では輸出は907.5億ドルと前年同期比7.6%増であった。輸入は798.1億ドルと前年同期比10%増であった。

輸入の増加はとりもなおさず、国内景気の反映である。機械設備の輸入が増えており、設備投資の回復が目立ってきているという。また、輸出用原材料の輸入も増加している。

今後の見通しとしては半導体チップの受注が上向いてきており、TSMC(台積電)社などは強気であるという。

 

4. 04年の総統選挙を控え、野党国民党の連戦党首、中国寄り政策を転換(03年12月21日)

来年の台湾総統選挙を控え、陳水扁総統は台湾の将来について、民進党の本来の主張である、「台湾独立」を意識した政策を打ち出し、最近も「国民投票法案」を議会に認めさせた。

一方、前回の選挙で野に下った国民党の連戦党首は、台湾と中国の統一問題に前向きに取り組む姿勢を見せてきたが、台湾の一般民衆は「反統一派が依然多数」であることから、最近急に方向転換を図っているという。

国民党幹部が普段接触している、大陸に投資を活発化させている資本家グループと一般大衆との間にはかなりの意識の隔たりがあるのである。

また、中国が台湾を標的にしたミサイル攻撃態勢を大掛かりに整備しつつあることが、台湾の人々の中国共産党に対する嫌悪感をいっそう刺激している。

このままでは来年の総統選挙に連敗することを悟った連戦党首は「中国寄り」の姿勢を修正せざるを得なくなってきた。

また、最近、陳水扁総統が国民党の資産を政府に返還するように強く要求している。これは、蒋介石が共産党との戦闘に敗北し、台湾に逃げ込み、独裁政治を行う間に、国有財産をかなり国民党の所有に移した。

台湾には国営企業のほかに「国民党営企業」という他国にあまり例を見ない企業が多数存在している。

その起源は、日本が敗戦時に台湾に残した「資産」が国民党政府に接収され、その一部が「党有資産」として、横取りされたものであり、また国民党の独裁支配下で、国民党が勝手に国家資金を流用して「企業規模を拡大」したものなどがある。

台湾の民衆感情から言えば、台湾人の資産を、武力に物を言わせ「国民党が強奪」したものであるということになり、そこを陳水扁は選挙戦術として突いているのである。

これには、さすがの連戦党首も困ってしまい、一部を国庫に返すことを認めざるを得なくなった。連戦候補の旗色は目下のところ良くないようである。

 

5. 03年の輸出は10.4%の伸び−中国向け増で救われる(04年1月8日)

台湾の03年12月の輸出は前年同月比20.6%の伸びとなり、また輸入は33.4%伸びた。2003年合計では輸出は1,442.4億ドルに達し10.4%の伸びとなった。輸入は1,276.6億ドルと13.1%の伸びとなた。

輸出の伸びた品目はエレクトロニクス製品、光学器械、鉄鋼製品などであった。向け先としては中国(含む香港)が伸び率、シェアともトップであった。

03年の中国・香港向けの輸出シェアは34.5%に達した。米国向けは20%を下回った。これは台湾企業が中国の子会社を通じて米国向けに輸出を増やしたもので、台湾の実質的な対米輸出が減ったとは限らない。

輸入は日本からのものが圧倒的に多く、326.4億ドルと輸入シェアの25.6%を占めている。

中国の輸入統計で見ると約半分が電機・機械製品であり、ついで鉄鋼、化学、繊維など装置産業型の製品が多い。

 

表2 中国の台湾からの輸入(実績と伸び率とシェア、単位;100万ドル、%)

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

03/02

VI

化学製品

893

978

1,173

1,681

1,965

2,568

3,289

28.1

VII

プラスチック・ゴム

2,718

2,687

3,118

3,846

3,914

4,395

4,896

13.7

XI

繊維

3,455

3,304

3,126

3,318

3,081

3,365

3,457

2.7

XV

基礎金属

1,893

2,104

2,647

3,504

3,753

4,859

5,779

18.1

72

鉄鋼

790

953

1,358

1,871

2,132

2,952

3,605

22.1

XVI

機械・電機

5,322

5,593

7,413

10,646

11,777

18,037

23,865

32.3

84

機械・部品

2,731

2,295

3,104

4,233

4,500

6,374

6,790

6.5

85

電機・部品

2,591

3,298

4,309

6,413

7,277

11,663

17,075

46.4

XVII

輸送機械

136

126

157

225

194

194

404

108.2

XVIII

光学・精密機械

309

289

333

521

906

2,597

5,273

103.0

その他

1,716

1,550

1,562

1,753

1,750

2,048

2,400

17.2

合計

16,442

16,630

19,528

25,494

27,339

38,063

49,363

29.7

VI

化学製品

5.4

5.9

6.0

6.6

7.2

6.7

6.7

VII

プラスチック・ゴム

16.5

16.2

16.0

15.1

14.3

11.5

9.9

XI

繊維

21.0

19.9

16.0

13.0

11.3

8.8

7.0

XV

基礎金属

11.5

12.6

13.6

13.7

13.7

12.8

11.7

72

鉄鋼

4.8

5.7

7.0

7.3

7.8

7.8

7.3

XVI

機械・電機

32.4

33.6

38.0

41.8

43.1

47.4

48.3

84

機械・部品

16.6

13.8

15.9

16.6

16.5

16.7

13.8

85

電機・部品

15.8

19.8

22.1

25.2

26.6

30.6

34.6

XVII

輸送機械

0.8

0.8

0.8

0.9

0.7

0.5

0.8

XVIII

光学・精密機械

1.9

1.7

1.7

2.0

3.3

6.8

10.7

その他

10.4

9.3

8.0

6.9

6.4

5.4

4.9

合計

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

資料;中国「海関統計」より作成

 

6. 台湾のチップ・メーカーCSMCなど続々と中国へ投資(04年2月6日)

CSMC(華潤上華科技)はシンガポールのCSM(Charterd Semiconductor Manufacturing Ltd.)が11%出資するオーダー・メードの半導体チプ製造会社であるが、需要増に対応すべく無錫の工場に10億ドルを投じ設備を増強する計画である。

その工場では既存の6インチ・ウェハー製造ラインに加え、2007年に8インチ・ウェハーのラインを増設する。今年は能力を倍増し、月間55,000個のウェハー生産能力とする。

ガートナー(Gartner)社によれば今年は中国のファウンダリー生産能力は8インチ・ウェハー換算で昨年より75%増の200万個に達するであろうということである。これは世界の生産能力の12%のシェアに相当する。2002年の中国のシェアは4.6%であった。

CSMCの主な顧客は富士通と中国のHangzhou Silan Microelectronics Co.(杭州士蘭微電子)である。

CSMCは1997年にMosel Vitelic Incの社長であったPeter Chenによって設立され中国商業省の企業China Resources Logic Ltd. や3i Group Plc.や Templeton Asset Managementなどの出資を受けている。

CSMCは6インチ・ウェハーという、最新の12インチ・ウェハーからみれば、いわば2世代遅れの者を生産しているが低賃金を武器に安い価格で提供しているといわれている。(http://www.taipeitimes.com/ 2月6日付参照)

 

United Microelectronics Corp.(UMC-聯電,)と Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.(台積伝)は世界の2大オーダー・メイド半導体チップ・メーカーであるがフル操業を行っている。

UMCは今年は中国での投資を3倍増とし、21億ドルの投資を行うという。

 

7. 台湾の03年4Qの成長率は5.17%、通年では3.24%(04年2月22日)

台湾の03年4Qの成長率は前年同期比5.17%を達成し、2003年通年では3.24%となった。 台湾経済は目下のところ輸出に支えられてきたといって過言ではない。向け先はどこかというというまでもなく中国である。これは日本、韓国、ASEAN共通の現象である。

政府は04年は4.7%になると予想している。 しかも内需中心の成長を目指しているという。その中でも民間設備投資が半導体を中心に14.5%増となる見通しであるという。03年の民間設備投資は-0.7%であった。

次に、台湾の輸出についてみると、2003年の輸出総額は1442.4億米ドル(速報値)であり、前年比10.4%の増加であった。品目別の数値は第3表に見るごとく電子が21.6%で最も多く、その伸び率は20..6%であった。

伸び率の高かったのは精密機器62.7%、基礎金属14.3%、プラスチック13.5%といったところであり、マイナスが大きかったのはIT(情報通信)機器の-12.3%であり、紡織品も-2.2%と減少している。

これは何を物語っているかというと、半導体、ICチップなどの電子部品は中国で不足しており、大量に輸出されたが、組み立て製品(情報通信機器=コンピュータを含む)は中国大陸に生産移転が行われ、台湾からの輸出としては大きく減り始めたということである。

さらに、基礎金属が増えたのは中国向けに鉄鋼製品の輸出が増えたことによるものである。精密機械の輸出については内容が良くわからないので判明しだい報告する。

表3 台湾の主要輸出品目(2003年)

  億ドル 伸び率;% 構成比:%
電子 311.7 20.6 21.6
基礎金属 143.3 14.3 9.9
IT機器 140.6 -12.3 9.7
紡織品 118.8 -2.2 8.2
機械 100.5 8.5 7.0
プラスチック 99.9 13.5 6.9
精密機械 74.3 62.7 5.2
電機機器 60.1 2.0 4.2
輸送機械 56.7 17.5 3.9
輸出総額 1442.4 10.9 100

また、主要向け先は中国・香港が34.5%を占め、伸び率も22.1%と最大である。米国向けは-3.1%と減少している。これは台湾メーカーが中国で生産し、直接中国から米国に輸出する量が増えていることを物語っている。

欧州向けも着実に増えているが、日本向けは振るわない。

中国の台湾からの輸入統計は表2を参照してください。ただしこれは中国の通関統計によるものです。

4、台湾の輸出主要向け先(2003年)

    億ドル 伸び率;% 構成比;%
中国および香港 498.0 22.1 34.5
米国 259.5 -3.1 18.0
欧州 204.5 10.2 14.2
日本 119.2 -0.5 8.3
シンガポール 49.8 13.8 3.5
韓国 45.7 18.3 3.2
輸出総額 1442.4 10.4 100

資料出所 表3,4とも http://www.dgbas.gov.tw/

 

8. 台湾と韓国がTFT-LCDで激烈な競争(04年3月4日)

TFT-LCD(Thin Film Transistors−Liquid Crystal Display =液晶ディスプレー用薄膜トランジスター)をめぐって韓国と台湾メーカーが激しい設備投資競争を展開している。

現在は韓国が生産量世界一となっているが、台湾は第5世代生産ラインの増設を行っており、それらが完成すれば台湾が世界一となる可能性がある。今年は台湾のTFT-LCD生産能力は5,780万ユニットになる。

台湾には現在5社のTFT-LCDメーカー(@AU Optrnics, AChi Mei Optoelectronics, BChina Pure Tube,CHannStar,DQuanta Display)がある。

これらに加えて、かって、韓国の現代グループに所属していたHynix Semiconductors Inc.のTFT-LCD部門が台湾の所有となり、BOE-Hydis Technology社(310万ユニット)となり、昨年から国籍が変わったことも影響している。

日本のID Tech(年産220万ユニット)も台湾資本が入ったことにより台湾企業として分類される。

一方、韓国は三星電子とL.G.Philips LCDの2社で、今年の生産は5,680万ユニットとなるものと予想されている。世界シェアーでは台湾42.2%、韓国41.4%と僅差で拮抗している。

2000年においては台湾のシェアーは僅かに5.2%であったが、2002年には台湾34.9%、韓国37.0%にまで追い上げたが、2003年には台湾35.8%、韓国43.9%と再びシェアーの差は開いた。しかし、今年は台湾が韓国をついに追い抜くことになりそうだ。

台湾のAU Optrnicsは月産5万ユニットから今年の1−3月期には12万ユニットに能力を拡大する。Chi Mei Optoelectronicsも年末には月産12万ユニットに設備増強を行う。

HannStar は第5世代TFT-LCD(基板サイズ1.2X1.3m)の生産を今年の3月には4倍増して12万ユニット/月とする。また、Quanta Displayは第6世代の生産ラインを2005年末には新設(6万ユニット/月)するとしている。

調査会社DisplaySearch社によれば今年の世界のTFT-LCD設備投資は昨年より43%増えて94.2億ドルに達すると見ている。2003年は対前年比26%増の65.9億ドルであった。

韓国は三星電子がソニーと合弁で第7世代(1.9X2.2m)までのパネル工場新設投資を行うことを含め、総額約26.3億ドルの投資を行うが、台湾は韓国をしのぎ44.1億ドルの投資を計画している。

このような韓国、台湾の猛烈な競争の前に日本勢はタジタジの観がある。(http://www.koreaherald.com 04年3月4日参照)

これらの液晶パネルは小型のものはパソコンのディスプレーに大型のものは薄型テレビに利用されている。例えば日立ディスプレイは提携先の台湾のハンスター(HannStar)から28インチ型テレビ用パネルのOEM供給を受ける。

もちろん日本でも生産されており、シャープは今年1月三重県亀山市に大型パネル用工場を稼動させ 、引き続き3年間で3,000億円かけて第6世代(1.5X1.85m)のパネル工場を建設していく。

 

9. 陳水扁総統僅差で再選(04年3月21日)

チェン・スイピアン( 陳水扁)総統が僅差で国民党党首連戦を破り、総統に再選された。結果は陳水扁;6,471,970票(50.11%)、連戦;6,442,452票(48.89%)という実に3万票以下の僅差であった。

問題は無効票が337,297票もあったことである。連戦は無効票の最チェックなど表の数えなおしを要求して「敗北」を認めていない。裁判所は票の封印を明示、近く再集計が行われる見通しである。

陳水扁サイドは全て裁判所の判断に任せるとして、余裕の態度をみせている。陳水扁が勝ったのはどう見ても前日の「暗殺未遂」事件が影響していることは間違いなさそうだ。

連戦は銃撃には国民党は関与せず、陳水扁の「お芝居」だということをほのめかしている。しかし、あれがお芝居だったら余りに巧妙にできすぎた手品師の業とでも言うほかない。

数センチ弾が内側を通過していれば、陳水扁はお陀仏の可能性があったのである。

一昔前の台湾を知っている私などの目から見れば、良くぞ民進党がここまで来たものだと思う。国民党に反対した台湾人は万という単位で殺されてきたのである。

連戦候補は勝利をもう一歩のところで逃して連敗した。大陸にいる100万人とも言われる台湾人に猛烈なキャンペーンを繰り広げ、飛行機の切符まで手配して、台湾に帰らせて投票させた。

また、陳水扁への攻撃も執拗を極めた。陳政権になってから確かに台湾は不況となった。その最大の理由はIT産業に特化したため、2000年秋からの米国のITバブル崩壊の連鎖反応があったことが上げられる。

上の表1で見るとおり2001年にはGDPがマイナス2.2%になってしまった。しかし、これは陳水扁の責任ではない。また、台湾企業が多数中国大陸に工場移転を行い、台湾が空洞化したこともあげられる。これも陳水扁の責任ではない。

陳水扁総統の本当の問題点は台湾人の自立(独立)指向の強さの表現である。台湾は中国固有の領土であるかもしれないが、中国共産党は台湾を1日たりとも支配したことはない。今までで自力でやってきたという思いが強いことは理解できる。

ここに大きな問題がある。また、台湾には元来、高砂族という言い方で日本人が呼んできた原住民がいる。彼らは語族的にはマレー系語族であり、フィリピン人などと変わらない。

アメリカ大陸におけるインディアンみたいなものであろう。「白人」に相当する華人は明らかに後からやってきた。原住民のことは皆が忘れてしまっている。(実際は民進党は多少意識して議論している)

漢族が移住し始めたのはおそらく16世紀以降であり、オランダが砂糖栽培を行った1600年代から急激に華人の数が増していった。特に明朝末期に鄭成功が軍隊を引き連れて台湾に立てこもり、清と対抗していこうさらに増えたものであろう。

歴史をたどればさまざまな議論があろうが、台湾人としてのアイデンティティ(自己認識)も持っている人たちがどういう選択をしていくのか見守っていくほかない。しかし、中国政府はそういう選択を許さないとして、武力で威嚇するのだけはどうにも見苦しい。

⇒高等裁判所は 陳水扁総統の再選を支持(04年11月5日)

わずかに3万票差で敗れた国民党は選挙は不公正であったと高等裁判所に提訴していたが、11月4日に訴えは却下された。国民党としては当然ながら最高裁に控訴する構えである。

ところが国民党の連戦党首は11月3日に開かれた同党の中央常務委員会で「陳水扁が裁判で勝つようなことがあれば、彼を殺してしまえ」という穏やかでない発言をしていたことがすっぱ抜かれた。

これには親民党(PFP=People First Party)の党首James Soong(宋楚瑜)や台北市長の馬英九(Ma Ying-jeou)も賛意を表したというから驚きである。

与党民進党の張俊雄(Chang Chun-hsinug)書記長は不穏当な発言を撤回し、謝罪をするように要求した。

しかし、連戦側からは何の反応もない。(タイペイ・タイムズ、インターネット版 11月5日)

こういう発言を聞くと、投票の前日に起こった陳水扁に対する狙撃事件を日本の良識ある中国学者までが、民進党のやらせ(自作自演)であるなどとわめきたてていたが、「国民党の仕業かもしれないな」と素朴に考えてしまう。

⇒弾丸を製造した人物を特定(04年12月14日)

台湾警察は12月13日、陳水扁総統の狙撃に使用された弾丸を作った人物を特定したと発表した。その人物とは覚せい剤製造の容疑ももたれている唐守義(Tang Shou-yi)というもので、武器密売容疑で8月15日に高雄署に逮捕されていた。

10月12日に台南の検事が唐の自宅を捜査したところ、自家製弾丸用の「青写真」を発見したという。

唐は既に死亡したもう1人の仲間とともに03年1月から40丁のピストルと1,000発の弾丸を製造していた。

しかし、唐からピストルと弾丸を買って、陳水扁に向けて発射したのは誰なのかは今のところ明らかではない。

(http://www.taipeitimes.com/ 04年12月14日参照)

 

10. 04年の台湾経済

10−1. 04年2Qの成長率は7.6%(04年8月21日)

台湾経済は輸出の好調に支えられて、民間設備投資も盛り上がりを見せ、04年2Q(4−6月)の実質GDPは前年同期比+7.67%の好調な伸びを記録した。

2004年の上期では7.17%の成長が既に達成されたことになるが、2003年上期はSARs騒動による異常に低い実績の反動的要素が数字面に反映されている。2004通年では5.87% (当初5.41%)の成長が見込まれると政府当局は見ている。

これは2000年以来の高い成長である。

03年3Qから台湾は好況局面に入っていることが下の表からもうかがわれる。景気回復の起点は中国向けの輸出である。

 

10-2. 04年3Qの成長率は+5.27%(04年11月22日)

台湾経済研究院は04年の実質GDP成長率を5.93%になるという見通しを発表した。また、04年3Qの成長率は5.27%と2Qの7.67%から見るとかなりスロー・ダウンした数字を発表した。

しかし、成長率は5%大を維持しており、まずまずの状況で推移していると考えられる。GDPの内訳の数字は発表されていないが、輸出、民間消費が引き続き好調であると説明されている。

半導体・チップ関係が先行きかげりが出ていることが気がかりである。また、中国向け輸出が年末から05年にはかなりスロー・ダウンする可能性もある。

なお、04年通年ではほぼ6%に近い成長が達成される見込みであると述べている。

(04年11月23日追記)

なお、10月の失業率は4.31%と過去3年半でもっとも低かった。今年の台湾経済は中国経済の好調に引っ張ぱられた格好でまずまずであったことがうかがわれる。

 

10-3. 04年4Qの成長率は3.25%に低下するが、通年では5.71%(05年2月27日)

台湾政府行政院主計処が2月24日発表した04年4Qの実質GDPの前年同期比伸び率は3.25%にとどまった。これは04年後半に顕著になった原油価格の高騰により世界的に経済がスロー・ダウンンしはじめ、台湾の輸出に悪影響を及ぼしたということが主な原因であると見ている。

04年4Qについてみると、民間消費は3.3%の伸びにとどまった。しかしながら民間の投資は活発で30.4%の伸びとなった。特に、機械設備関連は43.7%、輸送機械関連は22.1%という驚異的な伸びを記録した。工場・建物は9.5%の伸びであった。

ただし、政府消費は-0.6%と低調であった。政府・公共投資は鉄鋼・セメントなどの建設資材の高騰の影響もあり、マイナス10.8%と大きく落ち込んだ。

輸出は電子部品や精密機械・部品の伸びが低調となり、3.4%の伸びにとどまった。一方、輸入は鉄鋼、機械、航空機、石油の輸入が活発で10.3%の伸びを示した。

部門別の生産では度重なる台風の影響により、農業が-5.3%と落ち込んだ。工業生産は2.9%の伸びにとどまった。そのうちの製造業はわずかに3.1%の伸びにとどまった。その理由は機械、輸送機械は増加したが、コンピューター、通信機器などは減産となったためである。

運輸・通信業は4.9%、商業は6.7%、サービス業は3.7%の伸びであった。

なお、2005年の実質GDPの成長予想は4.21%と見ている。これは、世界経済の伸び率が2004年よりも全体的に悪化する影響を受けるという見方である。

 

2004年通期で見ると台湾の中国向け輸出は31.2%の伸びを示し、好調であったが年末にかけて伸びが鈍化したのかもしれない(要追加調査)。

 

表10-3 中国の台湾からの輸入(単位;100万ドル、右欄伸び率%)

2002

2003

2004

01/00

02/01

03/02

04/03

I

動物・同製品

20

30

28

-25.6

-30.2

54.3

-7.8

II

植物製品

18

22

23

-27.0

5.0

26.4

4.4

III

動植物油

5

6

11

2.5

59.9

36.4

79.1

IV

飲料・タバコ

27

30

36

-5.0

34.7

12.5

19.6

V

鉱物製品・石油

249

375

694

41.2

20.2

50.7

85.3

VI

化学製品

2,568

3,289

4,518

16.8

30.7

28.1

37.4

VII

プラスチック・ゴム

4,395

4,896

6,101

1.8

12.3

11.4

24.6

VIII

皮革製品

599

621

618

-5.3

21.3

3.6

-0.4

IX

木製品

32

35

34

-28.1

-0.2

9.9

-3.1

X

紙・パルプ

537

544

571

4.6

18.0

1.4

5.0

XI

繊維

3,365

3,457

3,551

-7.1

9.2

2.7

2.7

XII

履物・傘

58

59

75

-6.9

-25.1

1.4

26.9

XIII

窯業製品

334

429

586

-1.0

22.6

28.6

36.5

XIV

宝石類

11

17

21

-25.5

16.0

58.7

22.3

XV

基礎金属

4,859

5,779

6,494

7.1

29.5

18.9

12.4

72

鉄鋼

2,952

3,605

3,666

14.0

38.4

22.1

1.7

XVI

機械・電機

18,037

23,865

31,121

10.6

53.2

32.3

30.4

84

機械・部品

6,374

6,790

7,270

6.3

41.6

6.5

7.1

85

電機・部品

11,663

17,075

23,852

13.5

60.3

46.4

39.7

XVII

輸送機械

194

437

465

-14.0

0.2

125.3

6.2

XVIII

光学・精密機械

2,597

5,274

9,608

73.9

186.6

103.1

82.2

XIX

武器

0

0

0

-

-

-

-

XX

その他製造品

160

193

220

-10.9

20.7

21.0

13.6

XXI

美術工芸品

0

0

0

-

-

-

-

XXII

分類不明

0

2

1

-

-

-

-

合計

38,063

49,362

64,779

7.2

39.2

29.7

31.2

資料出所;中国「海関統計」より作成

 

11. 国会議員選挙の敗北により.陳水扁総統、民進党党首を辞任(04年12月14日)

12月11日に行われた国会議員選挙で与党連合は225議席中101議席しかとれずに敗北した民進党は陳水扁総統が責任を取って党首の座を降りることを決め、近く中央執行委員会で後任を決めると言明した。

野党連合は過半数より2議席多い114議席を確保した。残り10議席は中間派議員である。

陳水扁総統の台湾独立に向けての意欲が前面に出すぎ、中国共産党政権との対決を好まない中間層の多くが棄権したことが民進党の敗北につながったと見られている。

今回の選挙で最も議席を失ったのは宋楚瑜が率いる親民党(PFP=People First Party)であり、議席を選挙前の46から34議席に減らしてしまった。

宋楚瑜はもともと国民党に属していたが、分離独立して親民党を結成した。ただし、今年3月の総統選挙では国民党の連戦候補を担ぎ国民等とのよりを戻したかに見えた。

しかし、今回の選挙結果で国民党はすっかり強気になってしまい。連戦党首は親民党との合併をきっぱり否定した。

親民党員のなかには国民党に妥協しすぎたのが今回の敗因であるとして、心理的にすっきりしないものを感じている党員が少なくないという。

そこで、今度は親民党は民進党と連合を組んではどうかというアイデアが浮上してきている。ただし、これには宋楚瑜党首が「それは不可能である」という表現で否定している。

しかし、柔軟性が台湾の人々の真髄でもある。実際問題として将来何が起こるかは予断を許さない。(中時電子報、12月15日版参照)

 

12. 中国の「反分裂国家法」に台湾企業は戦々恐々(04年12月22日)

中国政府が12月20日、台湾の独立運動を牽制する目的で「反分裂国家法(abti-secession law)」を制定する動きに出たが、台湾企業はは少なからぬショックを受けている。

中国政府は同法の内容は明らかにしていないが、台湾独立運動に個人レベルまで刑事罰がかけられるようになると、中国に進出している台湾人は安心して企業活動ができなくなる。

なぜならば、例えば商売敵に「誰それは民進党支持者だなどと密告(中国人社会ではまま存在する)」されると、中国で警察に拘留されたり、財産を没収されたりということも起こりうる。

台北証券市場では一時「反分裂法」ショックで12月20日は株価が100ポイントも下落したが、胡錦濤主席が特段のコメント(マカオ訪問中)をしなかったため、急な話ではないという楽観論が出てきて、結局前日より23.38ポイント安の598594で引けた。

台湾の「工商協進会」の黄茂雄会長などが「中国政府は反外資政策は採らないからあわてうことはない。」という談話を発表して、一応現在は落ち着きを取り戻しているが、今後の中国政府の出方によっては台湾企業の中国進出にブレーキがかかる可能性がある。

 

13.奇美グループ許文龍会長の変節?(05年3月29日)

台湾独立運動の支援者として知られ、陳水扁総統の上級顧問でもある台湾の大財閥・奇美グループの許文龍会長が3月26日(土)に公開状を出し、突如として中国の「反分裂国家法」への支持を表明した。

許氏は台湾は中国抜きには発展できないことを強調し、もし台湾が独立を宣言すれば戦争は避けられない点を指摘している。その上で許氏は台湾政府は直ちに中国共産党政府と交通・貿易・郵便制度の協定を締結すべきであると述べている。

おりしも台湾では「反国家法」に反対する100万人の大デモンストレーションが3月26日(土)行われていた。 これには民進党支持者だけでなく、国民党支持者も可なり参加しているといわれている。それだけ、中国の「反国家分裂法」に対する台湾の人々の反発は強いのである。

民進党政権は突然の許会長の「変心」にショックを隠しきれないが、大陸で事業展開をする台湾のビジネスマンは多かれ少なかれ、中国政府から台湾統一問題で圧力を受けていることはよく知られており、今回 も中国共産党政府から著名な実業家の許氏が強い圧力を受けたものと考えられている。

奇美グループは現在、中国の淅江省で石油化学プラントの増設計画を中国政府に申請していることが影響しているのではないかと見られている。同省においては韓国企業もアクリル・プラントの建設を計画しているという。

いっぽう、台湾の野党国民党は江丙坤副主席を3月28日(月)から中国に派遣した。国民党の代表が中国を訪問するのは蒋介石国民党政権が中国を追われた1949年以降初めてのことである。

 

14. 2005年の台湾経済

14-1. 05年1Qの成長率は2.54%にスロー・ダウン(05年5月21日)

台湾政府行政院主計処が5月19日(木)に発表した05年1Qの実質GDPの前年同期比伸び率は2.54%とスロー・ダウンした。また、05年全体の経済成長率の予想も4.21%から3.63%へと下方修正した。

04年下期から顕著になった石油価格の高騰が影響しているが、世界経済全体のスロー・ダウンが輸出立国台湾に影響している。民間消費は3.0%の比較的安定した動きが期待できる。

05年1Qの実績見込みとしては民間消費が3.0%の伸びとなり、経済全体の底を支え形となった。輸出の伸びは2.2%と不振であった。

部門別生産では農業が-0.7%、工業部門の成長は2.3%であった。証券市場の不振の影響を受けた金融部門は-2.5%、商業部門は5.6%、運輸・通信部門は4.5%、サービス部門は2.7%であった。

謝長廷(Hieh)首相は5月21日に景気刺激策を発表した。その骨子は@は中小企業に2,000億新台湾元(1NTD=約3.4円)も貸付金を用意する。A政府は中小企業の銀行からの借り入れを容易にするために、1,000億NTDまでの借り入れ保証を行うというものである。

しかし、これだけでは不十分であるという批判が出ている。もちろん、今後さらに追加の景気刺激策が打ち出されるであろう。

 

14-2.05年2Qの成長率は3.03%とやや回復(05年8月20日)

台湾の05年2Qの実質成長率は3.03%と05年1Qの2.54%に比べ、若干の改善をみた。しかしながら製造業の伸び率は1.85%であり、1Qの1.88%に比べやや悪化している。これは、輸出の伸びの鈍化と対応している。

04年3Qまで二桁成長を続けてきた輸出(表14-2)が04/4Qから急にスロー・ダウンし始め、それが05/2Qまで続いている。台湾の経済は輸出とそれを支える製造業主導型の経済であったが、製造拠点を中国大陸に移す企業が増えたため、このような結果になった。

 

14-3. 台湾経済は輸出不振により06年も低成長が続く?(05年10月28日)

台湾経済は主力の半導体メーカー(TSCMやUMC)の業績不振に見られるごとく、経済が停滞気味であり、このところ3%前後の成長率が固定化してしまった観がある。(上の表参照)

その主因は輸出の伸びが低迷している点に求められる。アジア諸国は台湾に限らず、どこの国でも輸出が経済成長の起点になっているのである。輸出が好調ならば、製造業が伸び⇒雇用が増え⇒個人消費が増えるという基本パターンがある。

これは日本とて例外ではない。小泉改革などは数字で云々するほどの効果が出ているとは到底思えない。むしろ小泉政権の4年間で庶民の生活はさまざまな形で圧迫され、個人消費が伸びるどころか、「個人消費不況」とすらいえる傾向にあったといえよう。

そもそもゼロ金利態勢が 異常に長く続きすぎた。銀行は喜んでいるが、一般庶民は苦しんでいる。それでも先行き不安だから貯金を続けている。庶民の大多数はいわば「負け組み」の立場に追い込まれている。

幸い食料品が安くなり、何とか暮らしていけるから、「まあこんなものか」とあきらめているだけである。

国民が将来にどれだけ明るい希望をもっ生活しているのだろうか?特に若い世代は一握りの「勝ち組」とやらをのぞいて「お気の毒」としか言いようがない。郵政改革などがそれらの問題を解決するなどというのは幻想もいいところであろう。

最近日本でも遅ればせながら少し景気が上向いてきたのは中国の高度成長の恩恵を直接もしくは迂回的に蒙っているためであることは間違いない。要は外需依存型経済という基本パターンは変わっていないのである。

預金金利が少し上がれば大分生活の圧迫感が薄れて個人消費にも良い影響が出ることは間違いない。生活資金に余裕が出てくれば外需に依存しなくてもある程度の「自律的な内需主導型」の経済成長も可能となってくる。こういう発想はネオ・リベラルのサプライ・サイダー経済学者からは出てこない。

それはさておき、台湾では今年もダメだったが、来年もいまいち(せいぜい3%前後)だという空気がエコノミストの間に流れている。その最大の原因は輸出の停滞である。

台湾企業が受注する輸出は実はかなり好調なのである。9月には「輸出受注」が40%も増えたといわれている。しかし、実際の製造はご存知の通り中国でおこなわれている。また東南アジア諸国でも台湾企業はかなり「ものづくり」をおこなっている。

その反面、台湾国内での製造業はあまり潤っていないのである。台湾に進出している日系企業の話しによると単純労働の新規募集にも応募者が多くて、かえって困惑するというケースが多いそうである。

そういう状態だから個人消費は良くない。設備投資もあまりでてこない。特に台北や高雄といった大都市以外の地方ではそれが顕著である。こういう現象は台湾だけでなく、韓国も同様な傾向にある。

日本は古くなった設備の更新や新製品技術にともなう設備投資が少し出てきているだけましである。新しいものを生み出していける力を企業や個人が持っていることが肝要なのである。

しかし、現実問題として、中国経済がズッコケたらひどいことになる。その中国経済も米国の景気動向に大きく依存している。その米国も中国もかげりが見え始めている。

 

14-4. 05年3Qの成長率は4.38%(速報)とやや回復(05年11月18日)

台湾行政院主計処は今回から1993年SNA(System of National Account)による国民所得関係の数字に置き換えた。前回までは1968年SNA に依拠していた数字である。実際どの程度の差があるかは、下の表と上(#14-2)の表14-1および14-2とを比較していただきたい。

両者の差はたいしたものではないという説明であるが、個別の項目をみると可なり、差があるものが存在する。当局もまだ計算に自信がないようで、しきりに「実績見込み」にすぎないことを強調している。

05年3Q(7-9月)の成長率は4.38%と前の2Qの3%弱に比べてやや改善している。その主役は輸出である。輸出は6.98%の伸びを示している。前Qは輸出の伸びは3.0%であった。そのことによって、製造部門の伸びが5.83%と前Qの2.23%よりは良くなっている。

 

 

14-5.台湾の05年4Qの成長率は6.4%と 回復、輸出が貢献(06年2月24日)

台湾の 05年4Q(10-12月)の成長率は6.4%と前の3Qの4.38%と2Qの2.97%に比べて大幅に改善し、通年では4.09%(04年は6.07%)となった。

05年4Qの成長を牽引したのは輸出である。輸出は実に15.17%の伸びを示している。前Qは輸出の伸びは6.98%であった。そのことによって、製造部門の伸びが12.68%と前Qの5.82%よ を大幅に上回っている。

輸出で伸びたものは液晶ディスプレイ、コンピュータ部品、その他電子部品関係が中心である。

一方、経済の足をひっぱたのは固定資本形成(設備投資)部門で、これは2004年の17.48%という異常な伸び率の反動もあったが、2005年通年で0.4%、05年4Qでは固定資本形成全体で前年同期比-11.85%、民間部門の投資は-17.99%という大きな落ち込みとなった。

公共部門の伸びが高い(05年通年で17.21%)のは、台北ー高雄間の新幹線工事が最盛期にあったためである。

民間消費は2.77%と振るわない。

 

表14-5-1、台湾の実質経済成長率(2001年価格、部門別、%)新SNAによる

 2001  2002  2003  2004  2005 05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/4Q
実質GDP -2.17 4.25 3.43 6.07 4.09 2.49 2.97 4.38 6.40
農林水産業 -1.95 4.74 -0.06 -4.09 -4.10 0.64 -6.56 -2.63 -6.06
製造業 -7.44 7.38 5.15 9.45 5.76 2.02 2.23 5.83 12.68
電気・ガス -0.35 1.40 2.72 3.91 5.78 6.18 5.67 3.95 7.53
建設業 -12.58 -3.41 -5.58 5.95 0.03 5.78 -4.21 -3.36 2.10
サービス業  0.08 3.59 3.39 5.28 3.80 2.52 3.67 4.25 4.73
うち運輸・通信 2.29 5.49 3.95 7.48 4.47 3.82 4.17 5.31 4.64
  金融 0.49 5.86 5.12 4.73 2.87 -1.89 3.69 5.36 4.52
  ホテル・飲食 -0.88 -0.27 -0.07 6.04 8.23 4.82 9.16 9.68 9.23

 

表14-5-2、台湾の実質国内総支出(2001年価格、%)新SNAによる

2001 2002 2003  2004     2005    05/1Q 05/2Q 05/3Q 05/4Q
実質GDP -2.17 4.25 3.43 6.07 4.09 2.49 2.97 4.38 6.40
民間消費 0.67 2.34 0.94 3.91 3.00 2.56 2.98 3.69 2.77
政府消費 0.53 2.06 0.57 -0.54 0.71 -0.65 0.83 1.01 1.45
総固定資本形成 -19.91 -0.63 -0.90 17.48 0.46 10.81 7.38 0.27 -11.85
 民間 -26.38 4.07 -0.26 30.96 -1.34 10.52 8.95 -2.00 -17.99
 公共 1.43 -1.29 -4.09 -18.17 17.21 48.81 14.81 14.26 9.98
 政府 -6.24 -12.81 -1.08 -5.71 0.33 -0.10 -3.24 3.75 0.62
輸出 -8.08 10.48 10.94 14.83 6.93 2.04 3.00 6.98 15.17
輸入 -13.51 5.71 6.72 18.55 3.22 2.89 4.10 5.33 0.84

 

15. 国民党党首に馬英九台北市長が当選(05年7月18日)

連戦氏の辞任にともない、国民党始まって以来、初めて党員による党首選挙が7月16日(土)におこなわれ、馬英九(Ma Ying-jeou)台北市長が王金平(Wang Jin-ping)立法院(国会)議長を破って新しい党首に選出された。馬氏の得票率は72.4%、王氏の得票率は27%であった。

連戦前党首の率いる国民党は中国共産党政権との接近を強め、最近、中国大陸を訪問し、和解路線を強調したが、馬新党首も同様の路線を引き継ぐことは確実であり、中国の胡錦濤主席は早速、馬氏の当選に祝電を送り、馬党首も返電を送った。

馬党首は次期の2008年の総統選挙に立候補することは間違いないが、馬党首が過度に中国に接近することに対し、早くも警戒感が党内外から出ている。

敗れた、王金平氏は高雄を基盤とする台湾人であり、27%の得票にとどまったとはいえ、根強い人気がある。馬党首は王氏を従来どおり第一副党首として処遇し、国民党の分裂を阻止したい考えである。

馬英九氏は1950年香港生まれで、本籍は湖南省衡山県である。父親は馬鶴凌(Ma Ho-ling)は国民党の古参幹部であり蒋介石との親交が扱く、1951年に台湾に移り住んだ。

馬英九は1972年台湾大学で法律学を学び、その後国民党から奨学資金を受け、米国に留学しニューヨーク大学で法学修士、ついでハーバード大学でPh.D.を取得し、1981年に台湾に帰国した。

その後蒋経国に仕え、個人的な通訳のほか、1981年から1988年まで国民党副書記長を務めた。李登輝総統下では1993年に司法相を務めた。

馬英九は1987年に戒厳令が廃止される前に、刑法第100条、すなわち、反体制派を有罪とする法律の改正に反対するという保守派の立場をとった。1996年には国民党の要職から外され、一時教職に就き、馬氏の政治生命は終わったと考えられた。

しかし、1998年に他に有力候補者がいないことを理由に、台北市長選挙に担ぎ出され、若い市民層の支持を得て当選し、2002年には64%の得票率で再選された。彼の汚職追放キャンペーンが市民の支持を集めたといわれる。2003年3月からは国民党副党首を務めている。

馬英九が2008年の総統選挙ではかなり有力な候補者になることは間違いないが、彼が外省人(香港生まれとはいえ両親が大陸出身者)であり、安易に中国との接近を図れば、本省人(台湾人)の強い反発を招く可能性がある。

その前に国民党内部の軋轢を何とかしなければならない。

⇒王金平氏副党首就任を断る(05年7月21日)

馬英九国民党新党首(8月19日に正式就任)は国民党内の融和を図るために、落選した王金平立法院議長荷国民党の第1副党首に引き続き就任するように要請したが、王氏はこれを断ったという。

党首選挙期間中に馬氏が王氏に対して「批判的」な言辞」を弄したことに対する馬氏の謝罪は受け入れたといわれるが、国民党内の軋轢は今後拡大する可能性を秘めている。その根源はやや俗論めくが、「本省人(台湾出身者)対外省人(大陸出身者)」の対抗意識に根ざすものともいえよう。

中国共産党の胡錦濤主席が馬氏の国民党党首当選に祝電を送ったことも、台湾人の心理に微妙な影を投げかけているようである。民進党の陳水扁総統が当選したときに中国側がどういう反応を示したか(ベタ記事で事実を報道したのみ)を想起すれば、その差はあまりに大きいものがある。

国民党内の貴族階級とも言うべき馬英九氏の言動は今後意外に難しいものになろう。

 

16. タイ人労働者が待遇改善を求めて暴動(05年8月23日)

台湾南部の中心都市である高雄市において8月21日(日)夜に数千人のタイ人出稼ぎ労働者が待遇改善を求めて暴動を起こし、警官隊とと消防署員とやりあったた。建物や自動車や宿舎( 飯場)が破壊されたが、死者や重傷者は出なかった模様である。暴動は翌日の午前5時まで続いた。

暴動の出発点となったのは「高速鉄道建設局」(高雄の地下鉄工事現場)の宿舎で、タイ人労働者が違法に酒を飲み、酔った勢いで、台湾人の労務担当者と口論になり、暴動に発展したという。

自動車を破壊し、食堂に放火をし、会社の書類に火をつけ、駆けつけた警察官や消防夫に対してゴム・パチンコで攻撃を加えたという。

暴動の原因はタイ人に対する処遇が悪かったためであると言うことである。労働条件の改善を当局に要求していたが、聞き入れられなかったため、日ごろの鬱憤がタイ人労働者の間に鬱積していたものと見られる。

タイ人は宿舎で携帯電話の使用が認められず、給与の一部が現金でなくクーポンで支払われるなどしていたという。

現在台湾では約10万人のタイ人が出稼ぎ労働者として働いており、そのうち2万4千人ほどが高雄市で働いている。

台湾当局は暴動の首謀者を処罰するとともに、今後は「苦情処理委員会」を設け、問題解決に当たりたいとしている。

(http://www.nationmultimedia.com/ 05年8月23日版参照)

 

17. 2006年の台湾経済

17-1.台湾の06年3月の輸出の伸びは7.1%増と鈍化(06年4月11日)

06年3月の台湾の輸出額は177億ドルと前年同月比7.1%の伸びにとどまった。06年1−2月は14%の伸びであった。また、06年1Q合計では前年同期比11.5%増であったが、3月のスロー・ダウンは、輸出に依存する台湾経済にとってはややショックな数字であった。

特に米国向けは1−2月の合計が11.5%増であったものが、3月には0.6%と急ブレーキがかかった形になった。

EU向けは1−2月が7.1%の増加であったが、3月には-1.6%と減少を示した。

一方、輸入は06年1−2月は24%増加したが、3月に入り5%へと伸びが鈍化している。特に資本財の輸入が-16.4%と大きく落ち込んだことが注目される。それは、設備投資の鈍化傾向を示すものに他ならない。

台湾政府は06年の経済成長率を4.25%(05年は4.09%)と見ているが、既にこの数字の実現が危ぶまれている。モルガン・スタンレーは3.6%と見ているという。

日本では06年の経済は楽観できるという見方が支配的であるが、輸出環境が厳しくなるとそれも怪しくなる。日本の場合は政府も、民間シンク・タンクも「金太郎飴」のごとき予測しかやらないから特に注意を要する。

(http://taipeitimes.com/ 06年4月11日版参照)

 

17-2. 06年4月の輸出は15%の伸び、ハイテク品種伸びる(06年5月9日)

台湾の06年4月の輸出は187億9400万ドルと前年同期比15%の伸びを示した。3月の伸びは7.1%であったが、4月に入り中国と米国向けにエレクトロニクス関連の輸出が31.8%(51.8億ドル)と大幅に伸びた。

とりわけカメラなどの精密機械は16.1億ドルと、実に60.5%の伸びとなった。

2Q(4〜6月)はいつもの年はエレクトロニクス製品の輸出はさほど伸びない時期といわれているが、4月の実績が異常値なのかもしれない。

中国向け輸出総額は香港を含めると75億ドルと19.2%の伸びを示し、米国向けは28.2億ドルと26.6%の伸びを示した。とりあえず、米国の消費は高水準を維持していることの反映であろう。

特に、デル・コンピュータ(世界1のパソコン・、エーカー)は今年は台湾からの部品などの買い付けを05年の100億ドルから125億ドルにまで増やすと明言している。

一方、輸入は原油高にもかかわらず、164.2億ドルと5%の伸びにとどまり、貿易黒字は23.7億ドルとなった。

(WSJ Internet版、06年5月9日付け他参照)

 

17-3. 台湾の06年1Qの成長率は4.93%、 輸出が主導(06年5月19日)

台湾の 06年1Q(1-3月)の成長率は4.93%と前の05年4Qの6.4%と比べるとかなり低下したが、05年の平均4.09%に比べると大幅に改善している。

06年1Qの成長を牽引したのはノート・パソコンを含むエレクトロニクス部門である。輸出は14.52%の伸びを示し、経済を牽引している。輸出の好調を反映して製造部門の伸びが8.24%と、05年4Qの12.68%と 比べれば低下しているものの高い水準にある。

輸出で伸びたものは液晶ディスプレイ、コンピュータ部品、その他電子部品関係が中心である。

一方、経済の足をひっぱたのは固定資本形成(設備投資)部門で-3.96%、 政府・公共部門(-3.82%、-4.92%)のみならず、民間部門も-3.82%と不振である。

台湾資本の投資はもっぱら海外に向かっている。建設業だけはわずかに2.48%伸びている。ホテル・飲食業の伸びは6.93%であるが、サービス部門全体としては3.96%にとどまっている。 (表は17-6に移動しました。)

 

17-4. 台湾の4月の輸出受注は好調を維持(06年5月25日)

台湾の06年4月の輸出受注は246.8億ドルと前年同月比18.57%増となり、06年3月の249.4億ドル(+19.335)並みの高水準を維持していると政府筋は述べている。向け先としては中国と米国が好調である。

また、5月に入っても輸出受注は2桁の伸びが予想されるという。

台湾経済は上にも見たように(#17-3)もっぱら輸出に大きく依存している状況である。ただし、製造業の伸びは3月が7.65%、4月が5.53%の伸びにとどまっており、台湾企業の輸出も中国での生産を増やす結果に終わっているようである。

台湾経済も輸出が不振になってきたら深刻な打撃を受けることは間違いない。問題はいつまで中国向け輸出の好調が維持できるかである。これは日本も韓国も同じことである。

 

17-5.台湾の7月の輸出は好調を持続(06年8月8日)

台湾の06年7月の輸出は過去最高となる195億8000万ドルに達した(速報値、前年同月比21.2%増)。このまま行けば06年合計で前年比13〜14%増加となるものとみられている。

輸出品の主なものはパソコンや電子部品である。

7月の輸入は17.5%増加の177億8000万ドルであり、貿易収支の黒字は18億ドルであった。

台湾は消費や投資といった国内需要が伸び悩む中、輸出だけが好調という姿になっている。これは韓国とも共通している。

 

17-6.台湾の06年3Qの成長率は5.02%と好調、輸出が支え(06年12月5日)

台湾の 06年3Q(7-9月)の成長率は5.02%と1Qの4.92%、2Qの4.57%に比べかなり よくなってきている。05年の平均4.09%に比べると大幅に改善している。

台湾政府は06年4Qをかなり慎重な見方をし3.15%の成長で、06年通年で4.39%と見込んでいるが、そう急速には悪化しそうもない。しかし、5%に近い数字は期待できよう。

06年にはいってからの成長を牽引したのはノート・パソコンを含むエレクトロニクス部門である。輸出は 金額ベースでみると(17-3-3表)3Qには前年同期比18.60%というすさまじいばかりの伸びを記録した。

GDE(国内総支出)ベースでも輸出は2桁の伸びとなっている。それに比べ3Qの民間消費は0.4%と実質的に横ばいと振るわない。05年の後半から毎Q伸び率が鈍化している。

製造業が8%台の伸びを続けてはいるが、労賃・給与にかならずしも反映されていないと。それは日本も韓国も同じような事情にある。

固定資本形成(設備投資)は3Qに入りようやくプラスに転じた。建設部門も9.93%と近来にない成長を示している。民間部門の投資がプラスに転じたが、政府・公共部門 はマイナスが続いている。

 

17-7.台湾の06年4Qの成長率は4.02%と低下、通年では4.62%(07年2月16日)

台湾の 06年4Q(10-12月)の成長率は4.02%と3Qの5.02%に比べかなり鈍化した。06年通年では4.62%と05年の4.03%をやや上回った。

4Qは農業が10.63%も成長した。通年でも5.38%と前年の-8.07%と比べ著しい回復を見た。これは好天気に恵まれ大きな洪水などがなかった点が大きく影響している。

4Qの台湾経済の足を引っ張ったのは輸出と製造業である。輸出は名目値で7.61%と久しぶりに1桁台の伸びにとどまった。エレクトロニクス関連が落ちてきたのである。それに伴い製造業が3.17%と3Qの8.23%からみると大幅に鈍化した。

06年通年では名目輸出金額も12.9%伸び、製造業は7.15%の成長を記録したが、気になるのは06年年末のパソコンを含むエレクトロニクス部門の動向である。ハイテク製品が下降サイクルに入ったという説が出てきている。どうなるかもう少し様子を見るほかないが07年前半は期待薄である。

GDE(国内総支出)ベースでも輸出は2.69%と3Qの13.09%からみると急ブレーキがかかった状態が見てとれる。

救いは民間の投資が3Qから回復してきている点である。しかし、雇用状態も良くないためか民間消費が2.36%と低いことが全体のムードを暗いものにしている。

政府の2007年の成長予想を4.3%と06年の4.62%よりやや低めに見ているが、全てはハイテク製品の輸出次第で、内需による盛り上がりは期待できない。4.0%前後がいいところであろう。

 

表17-3-1、台湾の実質経済成長率(2001年価格、部門別、%)新SNAによる

表17-3-2、台湾の実質国内総支出(2001年価格、%)新SNAによる

表17-3-3、台湾の貿易、実額と伸び率(単位;100万米ドル、%)

下の#22に移動しました。07年5月24日付けにて数字が全面改訂されました。