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タイの話題(2007年以降)⇒クリック


2007年以降のタイ経済

T09-9.タイの09/3Qの成長率は-2.8%まで回復(09年11月24日

T09-8.タイの09年2Qの成長率は-4.9%やや改善か?(09年8月24日)

T09-7.タイの6月の輸出-25.96%と依然回復せず(09年7月20日)

T09-6.タイ政府のコメ在庫は700万トンに達する(09年7月15日)


タイの自動車生産目標を130万台から94万台に引き下げ(09年6月23日)

TE09-4.タイの輸出、09年5月も不振続く(09年6月20日)

TE09-3.タイの09年1Qはマイナス7.1%成長(09年5月26日)

TE09-2.タイ中央銀行総裁曰く1997年不況よりはずっとマシ(09年3月17日)

TE08-15,タイの08年4QのGDPは-4.3%、通年で2.6%(09年2月23日)

⇒タイの09年1月の輸出は前年比-26.5%、輸入は-37.6%(09年2月20日

TE08-14.タイの輸出は11月-20.5%、12月-14.6%と激減(09年1月23日)


TE09-1.タイの財政赤字が拡大、税収減少響く(09年1月9日)

TE08-13.タイは11月に7万人が失業(08年12月29日)

TE08-12.タイ基準金利を1%下げ2.75%に(08年12月4日)

TE08-11.タイの08年3Qの成長率は4.0%に鈍化(08年11月26日

TE08-10. タイの08年10月の輸出は5.2%増と鈍化(08年11月22日)

TE08-9:タイの9月の輸出は前年比+19.4%と好調を持続(08年10月22日)

TE08-8.タイの08年2Qの成長率は5.3%に鈍化(08年8月28日)

TE08-7.タイの家計の負債急増(08年8月24日

TE08-6.タイの08年上期の成長率は5.9%か、財政局試算(08年7月23日)

TE08-5.タイ中央銀行金利0.25%引き上げ3.5%に、株価急落(08年7月16日)

TE08-4.タイ・バーツ売りに中央銀行介入(08年6月10日)

TE08-3. タイの08年5月のインフレ率は通貨危機以来の7.6%(08年6月3日)

TE08-2.タイの08年1Qの成長率は6%と製造業中心に好調(08年5月28日


TE08-1.米価の高騰にもかかわらず農民に恩恵なし(08年3月31日)

TE08.2008年のタイ経済

127-23. タイの07年4QのGDPは5.7%、輸出好調、消費低迷(08年2月27日)

127-22.タタ自動車が08年3月からタイで1トン・ピックアップ車生産(07年12月7日)

127-21.⇒.タイの07年3Qの成長率は4.9%とやや上向き(07年12月3日)

127-21.タイの消費と投資は3Qから回復基調にあり(07年10月30日)

127-20.タイの輸出は年間目標をクリアーの見通し(07年10月23日)

127-19.日系食品加工メーカーが中国からタイにカムバックの動き(07年10月12日)

127-18.マツダ・フォード5億ドルを小形乗用車生産に投資(07年10月10日)

127-16.⇒タイの07年2Qの成長率は4.4%(07年9月3日)

127-15.⇒07年7月の輸出の伸びは5.9%と鈍化 、自動車は好調維持(07年8月23日)

127-17.タイの上場企業の07年上期の純利益は17%減(07年8月20日)

127-16.タイの07年2Qの成長率は1Q並みの4.3%(07年7月27日)

127-15.07年上期の輸出は18.6%増加(07年7月25日)

127-4.⇒金利を0.25%カットし3.25%に(07年7月19日)

127-14.タイ・バーツは2重レート?(07年7月18日)

127-13.タイ株式急騰813.52に、バーツも10年前の水準に近づく(07年7月3日)

127-12.タイの5月の景況感は大幅上昇(07年6月20日)

127-11.タイへの投資は楽観的(07年6月19日)

127-10.タイの07年1Qの経済成長は4.3%と前期並み(07年6月4日)

127-4.⇒金利を0.5%下げて3.5%に(05年5月23日)

127-9.タイの4月の自動車国内販売は-7.3%(07年5月12日)

127-8.タイの07年3月末の銀行不良債権は1.6%増(07年4月27日)

127-7. タイの07年3月の輸出は130億ドルと史上最高(07年4月25日)

127-6. タイ財務省、景気刺激策として70億バーツの追加支出を提案(07年4月20日)

127-5. タイの3月の国内自動車販売は15%減(07年4月17日)

127-4.バーツ高解消策として金利低下と財政赤字拡大を検討(07年4月11日)

  ⇒政策金利を0.5%カットし4.0%に決定(07年4月11日)

127-3.タイの1月の輸出は18%の伸び、07年計で12.5%を予想(07年3月23日)

127-2.タイの07年1月の自動車国内販売は-23%と激減(07年2月14日)

127 2007年のタイ経済

127-1.タイ0.25%の利下げ、バーツは逆に急騰(07年1月18日)




127 2007年のタイ経済

127-1.タイ0.25%の利下げ、バーツは逆に急騰(07年1月18日)

タイ中央銀行はインフレ懸念がやわらいだことと景気悪化のリスクが出てきたためとして2006年6月以来、5%に据え置いてきた基準金利を0.25%引き下げ4.75%とした。

NESDB(National Economic & Social Development Board=国民経済社会開発委員会)によれば2006年の経済成長率は5%前後に収まる見通しだが、07年については4.5%~5.5%と若干低下する可能性があるという。

タイ政府としては早めに手を打っておこうということであろうが、一方においてバーツ高が周辺諸国よりも進んでおり、これへの対策もニランだうえでのことであろう。しかしながら0.25%という数字は小さすぎて具体的効果は期待できず、政府の「問題意識」の表明にとどまるであろう。

肝心の為替のほうは本日(1月18日)は急騰し、最近の最高値である1ドル=35.35バーツに戻ってしまった。国際金融機関も意地が悪いというべきであろうか。こういうことは現地政府イジメとして1997年の通貨危機時にも起こった。

彼らに好きなようにやらせておくほかさしあたり手はないのだが、国内の輸出企業に与える心理面での影響は大きなものがある。為替を完全にフリーにすべきだなどということはそもそもありえない。ヘッジ・ファンドの儲けのタネにされてはたまったものではない。

日本では、公定歩合の025%引き上げが、本日見送られた。景気に悪影響があるということがその理由のようだが、これくらい上げても銀行の株が一時的に少し下がるくらいでたいした影響はない。

その分、庶民の預金金利は上がるだろうから冷え込んでいる消費マインドを上向かせる効果が多少なりとも期待できる。

円が多少高くなるだろうが、それとて大したことはないであろう。金利据え置きで逆にさらに円安になってしまった。米国政府は膨大なドルを蓄積している円が安ければ、ドルの暴落を防ぐ「ツッカイ棒」になってくれるので大歓迎であろう。

これは人民元とて同じ役割を果たしている道理で、人民元は最近少しは上がってきているが、タイのバーツに比べれば大したことはない。人民元もバーツのように1年で15%も上がったら、ドルは到底今の水準は維持できないで下落が加速されるあろう。

その辺に気が付いたとみえて米国も人民元を切り上げろなどと最近はあまり言わなくなった。日本も大変な大男の酔っ払いに寄りかかられたものだ。そのおかげで輸出企業が儲かっているので満更悪くはないといったところか?

 

⇒タイ、今年2度目の利下げで基準金利4.5%に(07年2月28日)

タイ中央銀行は2006年6月以来、5%に据え置いてきた基準金利を1月に0.25%引き下げ4.75%としたが、2月28日さらに0.25%引き下げ、4.50%とした。

これは今年に入って停滞色の強まった内需の活性化とバーツ安を狙ったものである。株価暴落の「上海カゼ」の影響はタイにはあまり来ていないようだ。タイの証券市場はバブル状態にはもともとなかったためである。 (図表は下方に移動)

 

127-2.タイの07年1月の自動車国内販売は-23%と激減(07年2月14日)

タクシン首相が昨年9月クーデターで追われ,軍事政権にかわりロクなことがないなどという風説がカマビスしくなってきた。日本の一般紙もそういうトーンの記事が 未だに少なくない。毎日の青木保先生のお説なはその典型ともいうべきものである。(すぐ上の記 事参照)

2月15日に、「まっすぐ、真剣(真実一路ではない!)」NHK「落ちてきた軍事政権の人気とタクシンの人気回復」という主旨の特別番組をやるらしい。楽しみである。 すこしでも真実に迫ってもらいたいものである。

見る前からとやかく言ってはナンだが「ああいう説もある。こういう話しもある。ゆえに成り行きが注目される」という日本ではおなじみのシンク・タンク流の解説みたいなストーリーに終わらないことを祈る。

いまのタイでハッキリしているのはタクシンの復権などはありえないということと、タクシンの方が良かったなどというのはいつも発信源が同じだということである。日本でも今もってスハルトのほうが良かったとかマハティールの方が良かったなどという学者やジャーナリストが少なくないのだ。

はじめから脱線気味だが、タクシン派にとって都合の良い数字(?)がで出てきた。それはタイの自動車の今年1月の国内販売が前年同月比-23.4%と大きく落ち込んだということだ。販売台数38,643台でこれは48ヶ月ぶりの低い数字である。

特に落ち込みが激しかったのはタイではもっとも販売台数の多い1トン・ピックアプ・トラックで23,576台しか売れず、前年同月比33.5%ものマイナスであるという。

この車種はタイの農村部を主なマーケットとしているが、昨年末から大洪水に見舞われた中部・北部の農村部では新車購買どころではないということであろう。タクシンがいなくなって「気落ちして自動車が売れなくなった」というものではないであろう。

しかし、スバンナブミ空港の滑走路キレツ事件でタクシンの脅しに屈して記者を解雇したバンコク・ポストは「空港のキレツはたいしたことはない」とか「タクシンがいなくなって自動車産業は悪影響を受けている」などという記事をチョコチョコと書いている。

軍事政権のチョンボを心待ちにしている雰囲気すら感じられる。

新聞も一度ダメになると編集スタッフを大幅に変えないと回復困難なものの如しである。それは「大東亜戦争中」の日本の新聞もそうだった。はっきり言って彼等は「戦犯」の烙印を押されても抗弁できなかったであろう。

あのときはそうするほか仕方がなかったということであろうが、今の報道姿勢を見ていてもアヤウイことかぎりない。FTA問題や「東アジア共同体」の議論をみても「問題点」を指摘するような論説にほとんどお目にかかれない。

タイ・トヨタの広報担当は昨年12月に売りすぎたので、反動がきたのだという説明をしている。また、3月に開かれるモーター・ショー待ちという雰囲気もあるだろう。ヘッジファンド規制による株価の一時的下落も影響を及ぼしていることは確かである。

タイの農業について言えば、今年はコメの輸出が相当増えるであろう。インドネシアでは前々からの干ばつの影響もあり、米価が目下急上昇中であり、タイからのコメの緊急輸入を計画している。フィリピンも今年はかなりコメを輸入しなければならい。

そのうち、国内の自動車市場は回復する。タイが昨年はマイナス3%だったが、周辺諸国でこんな低いマイナスの数字でおさまった国はほとんどない。タイ経済は今年はさほど悪くない。問題はタイ・バーツが東南アジアで最も上昇率が高いことである。

タイに進出している日系企業は輸出産業が多いだけに今年は大変である。バーツの異常な高騰を抑えようとしているタイ中央銀行のアシをひっぱているのが日本の経済団体だという話しもある。それは誤解であると信じたい。

GE「タイの外資政策や外貨政策は正当な範囲内のものであり、外国企業として文句をつける筋合いのものではない」といっている。おそらく正論であろう。

 

127-3.タイの1月の輸出は18%の伸び、07年計で12.5%を予想(07年3月23日)

タイの07年1月の輸出は104.9億ドルと前年同月比17.7%の伸びとなった。一方輸入は96.0億ドルで2.4%の伸びにとどまった。その結果貿易は黒字8億9000万ドルに達した。

その理由は今年の旧正月は2月にずれ込んだため、06年より稼動日数が多かったというのが最大の理由であろう。しかし、バーツがこの1年で10%以上も高くなっていることを考えれば非常に良好な結果といえよう。

タイ商業省は07年通年の輸出見通しを12.5%とみている。これは06年の17.4%増(1,459億ドル)よりも低いが当初見込んでいた1ケタ台よりはよほど改善されると見ているようだ。

それにしても最近のタイ・バーツの高騰は異常である。今年に入ってまだ3ヶ月もたっていないのに対米ドルで13%も上昇している。これはタイ中央銀行の為替政策(バーツ高抑制)に対する国際投機筋のイジメではなかろうか。

タイの株価と為替の最近の動き

株価指数 バーツ/ドル 円/バーツ
2005年3月1日 738.75 38.270 2.726
10月3日 717.42 41.177 2.768
2006年1月3日 725.64 40.860 2.869
12月5日 742.45 35.64 3.217
12月18日 730.55 35.55 3.312
12月19日 622.14 35.495 3.325
12月20日 691.55 35.825 3.294
12月28日 680.36 35.350 3.362
2007年1月2日 679.84 36.090 3.293
1月9日 616.75 35.995 3.309
1月17日 651.47 36.060 3.344
2月1日 654.04 35.430 3.402
2月22日 693.61 33.830 3.587
2月28日 677.13 34.100 3.479
3月5日 679.02 33.10 3.483
3月15日 674.31 33.18 3.538
3月20日 671.76 32.80 3.591
3月22日 674.84 31.95 3.690
4月10日 689.48 32.52 3.664
対1月2日比 +10.98% +11.27%

 

127-4.バーツ高解消策として金利低下と財政赤字拡大を検討(07年4月11日)

タイは異常なバーツ高(今年に入ってから約11%、上の表参照)にみまわれ、それを解消するため、中央銀行は短期資金の流入を阻止する政策を取り袋叩きにあったが、さほどの効果は見られなかった。

為替高は輸出主導型のタイ経済にとっては深刻な問題で、中央銀行はさらに金利引下げを検討している。しかしながら中央銀行としては今年に入り5.0%から4.5%に金利を下げており、さらに大幅な下げは難しいという見方をしているという。

経済界としてこの際思い切って3.5%くらいまで下げてはどうかという意見を述べているようだが、そこまでやると預金金利の大幅引き下げなど庶民の生活に影響するなど副作用も出てくるので、そこまでは一気に踏み切れそうもない。

ということは0.5%の下げで、4.0%までがせいぜいであろう。しかし、それでバーツ高が食い止められるかというとさほどの効果は望めそうもない。

そこで中央銀行と財務省との話し合いがおこなわれており、財政赤字をもっと拡大させてはどうかという議論が浮上している。

タイ政府は2008年度(07年10月~08年9月)の予算を作成し、歳出1兆5700億バーツ(≒5兆6000億円)、歳入1兆4200億バーツ、赤字1500億バーツ(≒5500億円)という枠組みにしている。

一方、2007年度の予算の執行状況をみると7ヶ月経過した現在で42%しか消化できず、使い残しがかなり出ることが確実であり、2008年の赤字をさらに800億バーツ程度積みまして国内景気の刺激に役立てたらどうかという意見が中央銀行から出ているという。

これに対し、チャロンポブ財務相は難色を示しているらしい。彼の懸念は財政赤字は一旦拡大したらその傾向に歯止めがかからなくなるとか、インフレを心配しているのであろう。この辺に学者としてしか経験のないチャロンポブの弱点がある。(ソムキットならやってしまうであろう)

金融政策と財政政策を組みあわせていけば、為替政策としてのみならず、景気対策としても有効であること間違いない。

タイの財政赤字はタクシンのポピュリズム政策である医療費の実質無料化(30バーツ診療)などを始めてしまったら止められない。

ムリに抑えようとすればそのほかの歳出にシワがより、不況を作る原因になる。どうなるか2008年だけでもやって見る価値がある。景気拡大して税収を増やすという積極財政が今のタイでは必要であろう。

東南アジアでは最も実力がありながら株価などでインドネシアやフィリピンに後れをとっているのは経済政策の消極性にその一因がある。

(ネーション、インターネット版、4月11日参照)

⇒政策金利を0.5%カットし4.0%に決定(07年4月11日)

4月11日(水)に開かれた金融政策委員会で政策金利を0.5%切り下げ4.0%とすることが決まったとスチャダ(Suchada Kirakle)バンク・オブ・タイランド総裁輔佐が語った。

 

⇒金利を0.5%下げて3.5%に(05年5月23日)

タイ中央銀行は5月23日(水)に基準金利を0.5%下げて3.5%にすると発表した。これは国内景気の上昇(設備投資と個人消費)を狙ったものである。同時に高めに推移してきたバーツ高を緩和する効果を狙ったものである。

タイの個人消費信頼指数は4月は5年来の最低水準にあり、個人消費の拡大は重点的な政策目標になっている。

07年1~3月は自動車の販売も大きく落ち込み、上場企業の純利益率も前年同期比-21%とかなり悪い状態であった。しかし、最近景気は多少持ち直し気味であり、下期からは回復傾向に向かうと中央銀行では見ている。

 

⇒金利を0.25%カットし3.25%に(07年7月19日)

7月18日(水)にタイ中央銀行は金融政策委員会を開き、基準金利を0.25%下げ3.25%とすると発表した。

これはバーツ高対策というよりも低迷する個人消費や設備投資の回復を狙ったものだとしている。

現行の銀行の貸出金利は7.5%と変わっておらず、一方で普通預金金には0.75%、定期預金金利は2.25%となっており、基準金利の引き下げは銀行が利幅をただ取りする形になっている。

中央銀行としては民間銀行への貸出金利低下を指導しなければ儲かるのは銀行ばかりという昔ながらの構造から抜け切れない。

異常な高金利(銀行貸付)が海外からの短期資金の大量流入を招き、それが不動産投機などに流れ、結果的に利潤率の急落から短期資金が逃げ出し、通貨危機の原因となった10年前の記憶を呼び覚ます必要がある。

タイのインフレ率は2%程度であり、コア・インフレーションは1%にとどまっている。このままでは銀行が儲かりすぎであり、銀行株は急騰しているという。

金融業界の不透明さは日本でも同じことであり、金融当局の指導があるのかどうか良く分からないが、1株53,000円もの利益を上げながら株主への配当は1,000円という異常としか言いようのない銀行が日本には存在する。

 

127-5. タイの3月の国内自動車販売は15%減、回復の兆しも(07年4月17日)

タイの07年3月の自動車の国内販売は56,021台となり前年同月比-15%と大きく落ち込んだ。07年1Q(1~3月)では138,270台と前年同期比-18.7%と不振であった。

これは3月に再びガソリン価格などが値上がりしたことと、株価の下落や政治的不協和音が消費心理に悪影響を及ぼしていることなどが原因として考えられる。

特にタクシン派が政治的巻き返しを図り、反軍事政権デモを誇大に宣伝し、第2次クーデタが起こる(TRT党が流している噂)などという風評も影響しているであろう。デモも大したことはなかったし、第2次クーデターなどは到底起こる雰囲気ではない。

トヨタの見通しでは4月から売り上げは回復に向かい、07年合計では06年比3%プラス位は行くであろうという。金利が低下していることが寄与するという見方である。経済も輸出は好調であり、内需不振は心理的要素が影響している。これからは政治もそれなりに安定するであろう。

根拠のハッキリしない風評を朝日新聞などがいい気になって流しているので、タイの治安に相当問題があるかのごとき懸念が日本でも広まっている。スラユット首相のメディカル・チェックまで政治危機と結びつける報道姿勢は全くどうかしている。これでは日本からの観光客は減るかも知れない。

 

127-6. タイ財務省、景気刺激策として70億バーツの追加支出を提案(07年4月20日)

タイ財務省は景気の浮揚策として70億バーツ(≒260億円)の追加支出を閣議に提案し、来週承認される予定であるという。財務省によれば今年度上半期(07年3月末で終わる)は94億3000万バーツの歳入赤字であったという。

70億バーツの追加支出で何とか4%の成長を達成したいというのが財務省の考えである。

経済界は70億バーツでは少なすぎて大した効果はないとしながらも、政府の景気対策という姿勢は評価するというのが大方も見方のようだ。暫定政権としてはあまりに大きな赤字を作って次の政権に引き継ぐわけにはいかないというのが本音であろう。

コシット経済担当副首相はこれに金利の引き下げと緩和政策が加われば、そこそこいけるのではないかと語っている。私も同感である。もっと金利を下げてバーツ高に歯止めをかければ輸出も伸びるし、4%くらいの成長はタイ経済の実力からして十分可能である。

タクシンが始めたポピュリスト政策は財政の硬直化を生み、こういうときに政府として景気刺激策を打ちにくい構造にしてしまった。タイ国民はタクシンの作った「負の遺産」をこれから何年もかかって弁済していかなければならない。

日本のジャーナリストはタクシンは「改革派」で既存勢力と対立して政権を追われたなどとマジメに考えている向きが少なくないのに驚かされる。タクシンのクローニであるチャロン・ポカパンやイタル・タイなどは「既存勢力」ではないかのごときである。

過去にも論じてきたが、タクシンはポピュリスト政策をとり、無知な大衆から票をあつめておいて、一方では一族やクローニーが大金儲けをできる体制を作ってきたのである。

自分の子供たちが親の遺産で天文学的数字の利益を得ながら税金を1バーツも払わないことを正当化するしかけを一生懸命考えながら政治をおこなってきたのである。そのために「Ample Rich Investment」などというダミー会社をバージン・アイランドに作ったりもした。ともかくやることが腹黒い。

軍事クーデターを批判する正義の味方の某日本人記者は「汚職が悪いなら裁判にかければいいではないか」などと言っている。ではその汚職をそもそもジャーナリストとして報道してきたのかと先ず聞きたい。

次にタイでタクシンを告発し裁判にかけるにはどういう手続きが必要なのか?警察はタクシンの手先だから全く動かない。検察庁も法務省のトップがタクシンの親族だから動きが取れないという体制が作られてきたことをこの記者は特派員でありながらご存じないのであろか。

会計検査院長の ジャルバン女史がスバンナブミ新空港汚職事件を告発しようとしたときにどういう処遇を受けたかご存じなかったのであろうか?事務所から追われたのでなかったか?記事に書く書かないはご自由だが、知らなかったでは済まされまい。

唯一タイの何社かのメディアやジャーナリストが名誉毀損で訴えられたり、さまざまな危険を冒して頑張って、結果的にあれだけの反タクシン運動を盛り上げてきたのである。

その運動を支えてきたのはバンコクを中とする市民の政治意識である。そういうやり方がケシカランというのがその記者の見方のようだ。

その某記者は「国営企業の民営化がすばらしい」などと小泉流筆法でいっているが、大きな利益を上げたのはタクシンのクローニーだからタイ国民は怒っているのである。

それくらいのことが分からないような新聞記者が書いた記事を読まされる (実際はたいしたことは何も書かないから読まされてはいない)われわれ日本の読者はいい面の皮である。

某記者は大胆にもこうした意見を個人的意見としてホーム・ページで発表している。もちろん言論は自由である。それにしても今風にいえば「マジスカ?」と思わず問い返したくなるようなヤカラが新聞記者としてバッコしているのである。こいつらは頼りにならないばかりか恐ろしい存在である。

こういうヤカラがアジアの実態を日本国民から隠蔽しているのである。だから日本国民はアジアというものの理解がなかなか進まない。

 

127-7. タイの07年3月の輸出は130億ドルと史上最高(07年4月25日)

タイの07年3月の輸出は130億ドルに達した。これはタイ史上最高の実績である。1~3月の合計では340億ドルとなり前年同期比18%となり、これまた四半期としては最高記録であった。

一方輸入は07年1Qで305億ドルと2%増にとどまり、貿易黒字は3ヶ月間で35億ドルに達した2006年1Qは4億9200万ドルの赤字であった。輸入の伸びが鈍化しているのは国内の消費の停滞と設備投資の鈍化によるものと考えられ、あまり好ましい現象ではない。

バーツ高(+8%)にもかかわらず輸出が好調だったのは米国、日本、EUなどの主力市場に加えインドなどの新興市場への輸出が伸びたためである。

07年の政府の輸出目標は1,300億ドル(+12.5%)であるが、1Qの水準が続けば悠々クリアーできる。ただし、世界的なパソコン需要のカゲリなど不安要因も見られるので年後半にかけて鈍化も考えられる。

パソコンや半導体の不振では台湾・韓国などが先に大きな打撃を受けることは間違いなく、その兆しは既に06年12月ごろから表れている。

タイは輸出品目が自動車からコメなどの農産品に至るまで幅が広いため、半導体不況の影響は比較的軽微にとどまるであろう。ただし、バーツ高の企業業績に与える影響は大きい。

 

127-8.タイの07年3月末の銀行不良債権は1.6%増(07年4月27日)

バンク・オブ・タイランド(中央銀行)のまとめによれば07年3月末のタイの商業銀行の不良債権(NPL)は総融資額の4.18%の2,377.7億バーツとなり、06年末の2,341.3億バーツに比べ1.6%増えた。これはタイの景気の悪化を反映したものといえよう。

国内銀行のNPLの比率は4.6%であるのに対し、外国銀行のNPLは0.52%であった。

下記の表は主要銀行の不良債権の金額と総貸出額に対するNPL比率であるが、優劣がかなりはっきり分かれている。NPL比率が高いのはクルンタイ・バンクの7%、TMB(タイ・ミリタリー・バンク)の6%、アユタヤ銀行の6.3%である。

クルンタイ・バンクのNPL比率が高いのは国営銀行という性格もあってタクシン政権時代にかなりムリな融資をさせられた影響があると見られる。

主要銀行の不良債権(金額単位;億バーツ)

07年3月末のNPL NPLの比率 06年末のNPL   増減率  
Bangkok Bank 405 4.4% 380 6.6%
Krung Thai Bank 640 7 590 8.5
Siam Commercial Bank 234 3.4 227 3.2
Kasikorn Bank 220 3.3 209 5.3
TMB Bank 309 6 333 -7.1
Bank of Ayudhya 280 6.3 254 10.2

(Bangkok Post,07年4月27日、インターネット版参照)

 

127-9.タイの4月の自動車国内販売は-7.3%(07年5月12日)

タイの07年4月の自動車の国内販売は49,658台となり前年同月比-7.3と連族して落ち込んだ。07年1Q(1~4月)では187,724台と前年同期比-15.9%と不振であった。

これは3月以降再びガソリン価格などが値上がりしたことと、株価の下落や政治的不協和音が消費心理に悪影響を及ぼしていることなどが原因 であるが、農村部に余りカネが回っていかなくなったことも影響している。

トヨタの見通しでは5月 は雨季入りや、新学期の開始で学費が要り自動車の購買意欲が衰えるとみている。しかし、ニューモデルの投入もあり、下期にかけて売り上げは回復に向かい、07年合計では70万台と06年比3%プラス位は行くであろうという。

しかし、そうなるには6月以降かなり大幅な伸びの回復が必要であろう。

 

127-10.タイの07年1Qの経済成長は4.3%と前期並み(07年6月4日)

タイのNESDB(国民経済社会開発委員会)によると07年1Qの経済成長率は前年同期比4.3%と06年4Q並みの水準であった 。これは06年大晦日のバンコクの爆弾事件などがあり、07年1~3月のタイ経済は大幅に鈍化したという予想を覆すものであった。

内需は民間消費は不振だったが、政府消費が+11.2%と予算の執行遅れを取り戻す努力が効いたのか、高い伸びであった。しかし、タイ経済全体を支えたのは輸出 であったことは明白である。その主役は日系企業であったといっても過言ではないであろう。

輸出が6.5%と伸びたたおかげで、製造業は4.7%と比較的好調であった(06年4Qは5.7% )。輸入が-0.3%と減ったのもタイの経済成長(GDPベース)には寄与している。もちろんこれは余り好ましいとは言い切れないが。

部門別成長率をみると、農林水産部門が4.3% と盛り返した。これは前Qの洪水の被害からの回復も影響している。運輸通信、など比較的良かった。

建設は0.2%とかなり鈍化した。これはタイ経済がバブル化を避けられたというプラスの効果があったと解釈してよいであろう。個人住宅などは大分売れ行きが鈍っている。

GDE(支出)ベースでみると民間消費は1.3%と マレーシアやフィリピンに比べ極度に低い。政治情勢の安定感が得られれば今後、住宅需要などとともに自然に回復してくるであろう。

民間の 投資は-2.3%とマイナスに落ち込んでしまった。これはクーデター騒動と、中央銀行の規制策などの影響が尾を引いているものと見られるが、政治的混乱 は収まりつつあり、07年の後半には回復してくるものと思われる。外資に対する締め付けは厳しくなったというのは国際的な誤解である。

コシット副首相(バンコク銀行出身)はタイ経済はいわれるほど悪くはないと主張しているが、私も同感である。個人消費や民間設備投資の不振は一時的なものである。

タクシンの政党TRT党の解散が決まり、幹部党員111名が今後5年間は選挙に出られないということによって政界地図が変わり、汚職や金権政治がしばらくは影を潜めることになろう。その間、タイはまともな民主政治や経済活動が成長していくことは間違いない。

軍事クーデターで「民主主義が砕け散った」などという日本の一部の新聞の論説などはワメキたてたが、それこそ妄言であったことがやがて立証されるであろう。タイのこともさることながら日本の民主主義を守るためにジャーナリスト諸君はもっと闘って欲しいものである。

 

127-11.タイへの投資は楽観的(07年6月19日)

チュラロンコーン大学院経営学研究科サシン(Sasin)研究所がおこなった最近の調査によれば、514社(うち外資系は20%強)のうち、経営規模を縮小したり、他国へ移転すると回答した企業はわずかに4%にとどまり、43%の企業が今年の拡大投資は予定通りおこなうとし、35%はタイでの設備拡張を今後も継続すると回答したという。

大部分の回答社は今年の下半期には売り上げが国内外ともに増加すると答えたという。

多くの企業がタイはインフラ、物流、知的財産保護といった面で中国、インド、ベトナム、マレーシアなどと比較して優れていると回答した。

しかしながら、石油価格の高騰、バーツ高、金融政策などの面で不安定な要素があると指摘している。

BOI(投資委員会)によれば、07年1~5月の「減免税特権を申請してきた投資案件」は2,000億バーツで、前年同期比73.6%増であるという。

昨年9月のクーデター以降、タクシン派の巻き返しなどがあり、「政治情勢が混乱している」とか「バーツ高対策で外資規制が厳しくなった」などという報道が日本でもしきりになされているが、かなり実態からかけ離れた噂や憶測に基づくものが多く、現地にいる企業関係者は比較的冷静に判断している様子が窺われる。

最近、日本でも報道されている、タクシン派のデモも日を追うごとに尻すぼみしてきており、タクシンに対する「熱烈な個人崇拝者」などは実はそれほど実在しないことが明らかになった。日当を貰って参加しているという話しは本当らしい。

彼がロンドンで録画した軍事政権批判ビデオ演説なるものも「オレのカネを返せ、とか家族の財産を守れ」みたいな話しが中心でデモ参加者からは逆に失望の声も聞かれたという。タクシンというのは徹底的に「ジコチュー人間」なのである。

最近になり、役人が隠し持っていたタクシンがらみの「証拠書類」もボチボチ出し始め、急速にタクシンやポジャマン夫人への法的措置が取られ始めている。

(ネーション、6月18日付け、インターネット版参照)

 

127-12.タイの5月の景況感は大幅上昇(07年6月20日)

タイ産業連盟(FTI)によれば07年5月の「タイ産業感指数(TISI=Thai Indusutrial Sentiment Index)」は4月の77.0から86.1と大幅に上昇した。ただし、この指数は100が「標準=普通」であるためまだ「完全回復」には程遠いが改善されてきたことは確かである。

これはFTI加盟の35業種の478社からの「回答」に基づくものである。

また、それ以外の指数も下表のとおり、大幅に改善されている。これはタイ経済が回復に向かって動き出したともてよいであろう。特に生産面では指数が100を超えた点が注目される。

その要因としては、輸出が好調であることと、基準金利が3.5%とほぼ最低水準にまで下がっていることが利いている。もちろん政治的な安定感も出てきている。

タクシンの動きはタイの証券市場に時々波紋を投げかけるが、いずれにせよ「勝負はついてしまっている」のである。ほとんどのタイ人はそう見ているはずである。

         4月          5月
購買発注指数(Purvhase Order Index) 82.2 95.0
販売信頼指数(Confidence in Sales Value) 79.9 94.3
生産数量信頼指数(Confidence in Production Volume) 83.3 104.9

(バンコク・ポスト、6月20日、インターネット版参照)

 

127-13.タイ株式急騰813.52に、バーツも10年前の水準に近づく(07年7月3日)

1997年の7月1日はバンコクの証券取引所はクローズされた。通貨危機が表面化した記念すべき日であった。バーツの通貨危機以前の標準値は1ドル=25バーツ前後であった。

バーツはその後連日のように下げ続け7月23日には1ドル=31.93バーツとなった。バーツがドルに対し最も安かったのは1998年1月24日の1ドル=54.40バーツであった。

2007年7月3日の為替相場は1ドル=31.748バーツであった(Bloomberg調べ)。ここまで来るのに10年かかった。もちろん、タイ経済はバーツの対ドル・レートを除き、ほとんどの分野で通貨・経済危機の前夜の水準はクリアーしている。

株式の方は7月2日の792.71から7月3日は20.81ポイント上昇して813.52と1997年1月のバブル崩壊の半年前の水準にまで戻った。株式市場の上昇を支えているのは銀行株とエネルギー関連株である。

昨年9月の軍事ク^デター以降は「政治と経済」の混乱により、タイは選挙を行い「民主体制」復活までは当分は浮かばれないというのが、いわゆる識者の見方であり、日本や米国のメディアもほぼ共通認識に立っていた。

私は、一時期の混乱はあるものの「タクシン政権の崩壊」により、タイの経済はかえって良くなるという「楽観論」をこのホーム・ページで主張してきた。

その根拠はタイの輸出競争力の強さがバーツ高にもかかわらず、成果を挙げているからである。輸出は07年4月は106億2800万ドルと前年同月比+16.5%、5月は128億9300万ドル、+19.9%という好調な伸びを続けている。(これは韓国も同じ)

これはもっぱらハイテク系工業製品(自動車を含め)の主導によるものである。額は小さいがゴムなやコメなどの1次産品も貢献しているかもしれない。しかし、残念ながらチャロン・ポカパンなど地元資本の貢献はさほど高いとはいえない。

輸出増加は製造業の雇用増大につながり、それは次のステップで必ず「民間消費」の増加につながってくる。

株価の動きは乱高下がつきものなので、その数字を追いかけて一喜一憂しても始まらないが、タイ経済が上向きに転じてきていることは間違いないであろう。

タクシンという「不安定要因」はとっくになくなっていると考えたほうが良い。マンチェスター・シティというイギリスのサッカチームを買収したとしても「もう一度タクシンに首相を」ということにはなりえない。

 

127-14.タイ・バーツは2重レート?(07年7月18日)

先日タイに行こうと思って成田空港でバーツを買おうと思ったら何と1バーツ=4.4円という表示が出ていたので両替をやめてしまった。ブルーンバーグ(Bloomberg)が毎日発表しているレートでも1バーツ=3.9円程度(1ドル=31バーツ前後)であった記憶があったからである。

ところが、バンコクの英字紙などで議論されているバーツのレートは1ドル=34バーツを切って33バーツ台に突入したなどということが大々的に論じられている。

要するに1ドル当たり3バーツもの値差がどこかに存在しているのである。成田の両替はさらに円に分が悪く多額の両替をするには躊躇させられるレベルである。どう考えても10%もの差があったのでは空港の両替としては旅行者に厳しすぎる。(実際、スバンナプーム空港で両替したら1バーツ=3.9円弱であった)

しかし、ブルーンバーグとタイ中央銀行との差はこれまた1ドル=3バーツの差とは大きすぎるではないか。その辺の議論抜きでタイのメディアは昨今のバーツ高の問題を論じてきた。

しかし、7月18日付のネーション(The Nation)のインターネット版で初めてこの問題が取り上げられている。(BOT must end rate disparity)

FTI(タイ産業連盟)がバーツの国内レートと国際レートに大きな差があるのは不都合であるという声を上げ始めたというのである。7月16日のレートでは国内が1バーツ=33.28バーツなのに対し、国際レートは1バーツ=29.90と1ドル=3.38バーツもの差があるというのである。

ブルーンバーグは国際レートを発表してきたのである。

なぜそうなったかというと、タイ中央銀行(Bank of Thailand)が従来からバーツの海外持ち出しを厳しく制限し敵寶である。しかし、どうしても海外でバーツを調達する(あるいはバーツを売る)という需要そのものが存在するのである。その結果がこの始末である。(こういう現象は通貨危機以前にも見られた)

国際価格に引きづられる形で国内のバーツ価値が上がっているのでないかという説が出てきているのである。

また、FTIとしては輸出については現在の7%の付加価値税を免除せよという要求と一定の範囲内での外貨預金(銀行口座)を認めろという主張もしている。

いずれも輸出で生きていかなければならないタイにとっては一考に価する問題提起である。少なくとも為替の一本化にどう取り組むべきかという問題は中央銀行としては早急に対策を検討すべきであろう。こんなことを放置している国は中 進工業国ではいまや珍しい。

 

127-15.07年上期の輸出は18.6%増加(07年7月25日)

タイの07年上期(1~6月)の輸出は715.9億ドルに達し、前年同期比18.8%の増加となった。一方輸入は660億ドルと5.6%雑煮とどまり、貿易収支の黒字は55.9億ドルに達した。

6月は輸出は128.5億ドルと前年同月比17.7%の増加となった。はほぼ全品目にわたり好調で、農産品は18.3%、工業製品は18.9%、その他13.2%である。

農産品(含む加工品)の中でもコメの輸出が49.3%(数量ベースでは56.5%)増加が目立った。工業品は自動車、建設用材(セメントなど)、プラスチック製品、宝石、化粧品、医薬品、印刷物が好調であった。

国別では米国向けが6月には5.8%マイナスになった。これは米国の経済活動が鈍ってきていることと、GSP(特恵関税制度)が外された品目が出てきたためである。

6月の輸入は119.6億ドルと前年同月比5.2%の増加にとどまった。貿易収支の黒字は8億8300万ドルであった。

07年上期の見通しに付いてはバーツ高の影響や米国経済の先行きの不透明感やGSPの適用除外があり、必ずしも楽観できないというのが商務省の見方であるが、07年全体の目標の12.5%の達成はさほど困難ではないと見ている。

一方、極端なバーツ高を緩和するためにも1997年の通貨危機以降とられてきた為替管理政策を大幅に緩める方針が出されている。

タイの上場企業は直接海外投資のためであれば1億ドルまでの外貨取得が可能となる。金融機関などは外国の銀行に預金することが自由に出来るようになり、個人も海外資産の取得などで100万ドルまで送金できるなどである。

 

⇒07年7月の輸出の伸びは5.9%と鈍化、自動車は好調(07年8月23日)

商業省の発表によればタイの07年7月の輸出は、米国向けの不振とバーツ高によって118億ドルと伸びが前年同月比5.9%にとどまった。これは29ヶ月ぶりの低い伸びであった。

財務省は 07年の輸出目標伸び率8.15%を6.5%に引き下げた。これはバーツ高に対するアナンス効果を狙ったものであろう。

ただし、GDPの目標値4%は変えないという。個人消費は相変わらず不振だが、財政支出を増加させて内需の不振をカバーすると財務省のパニー財政政策局長は語っている。また投資委員会はこのところ外資の申請が好調だという。

 

(自動車輸出は好調を維持)

タイ産業連盟によれば自動車の輸出は依然として好調で、07年1~7月の7ヶ月間で19%増加した。

自動車生産は7ヶ月間で706,749台で前年同期比2.25%にとどまっているが、これは輸出に比べ国内販売が不振のためである。輸出向け自動車生産は370,885台と前年比22.5%増であったが、国内向けは335,864台とマイナス12.43%であった。

セダン車の輸出向け生産は7月は12,349台と前年同月比37.1%増加した。07年1~7月では80,041台と前年比16.66%の増加であった。

1トン・ピックアップ車の7月の輸出向け生産は45,663台と実に46.6%増加であり、1~7月計では290,844台と21.76%の増加であった。

7月の輸出船積み台数は56,024台で前年比38.17%像であり、金額ベースでは239億バーツ(≒8,370億円)と33.67%の増加であった。

自動車輸出に関する限り、輸出の好調は続いている。

(バンコク・ポスト、07年8月23日、インターネット版参照)

 

127-16.タイの07年2Qの成長率は1Q並みの4.3%(07年7月27日)

タイの財政政策局のパニー(Pannee Sathavarodom)局長の語ったところによれば07年2Q(4~6月)のタイの実質GDPの伸び率は4.3%と1Q並みの水準になるであろうとのことである。

個人消費は相変わらず不振であるが、政府の歳出が4,173億バーツと36.3%増加する。一方、歳入は4,298億バーツと前年同期比3.2%の増加である。これは06年2Qがやり直し選挙後のゴタゴタで政府予算の執行が遅れていたことを意味する。

個人消費が6月に至っても低調なのは付加価値税(消費税)が前年同月比0.7%しか増えておらず、かつ07年1Qの水準から3.3%減っている。自動車の国内販売は7.9%のマイナスになるなど耐久消費財の売り上げが不振である。

一方、民間設備投資はプラスに転じてきており、2Qの資本財の輸入が3.9%増加した。

輸出は好調を維持しており、2Qは前年同期比19.1%増となった。

外貨準備は07年6月末で730億ドルに達した。

07年2Qの公式の経済成長率はNESDB(国民経済社会開発委員会)から8月末頃に発表される予定であり、パニー局長の説明はあくまで部局内で試算した数字であろうと思われる。同局の予想では4.0%の伸びであり、実際はそれよりもやや良好であるという。

(バンコク・ポスト、07年7月27日、インターネット版参照)

 

⇒タイの07年2Qの成長率は4.4%(07年9月3日)

タイのNESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると07年2Q(4~6月)の経済成長率は1Qの4.2%(速報値は4.3%)をやや上回る4.4%と なった。

内需は民間消費も投資も相変わらず不振だが、輸出の伸びに引っ張られている形はここしばらく変わらない姿である。

民間消費は0.9%の伸びにとどまった。これは1Q1.3%よりもさらに鈍化した。耐久消費財の落ち込みは-6.9%と大きく、自動車をはじめ家電製品が所得の伸び悩みに歩調を合わせる形で減少した。

消費についてはタクシン政権時代にクレジト・カードによる消費を煽ったツケが出ていることも影響している。いまや家計の借金は過去最高水準にあるといわれている。

輸出 は名目のドル・ベースでは18.3%増加したが、バーツ高のためバーツ・ベースでは7.6%の増加にとどまった。おそらく輸出の平均利益率は落ち込んでいるものと思われる。これがタイの不況感をつのらせている原因のひとつであろう。

輸出はインドネシアへのコメやカッサバ(タピオカ)の輸出増といった要因があり、1次産品が今後とも伸びる可能性があり、自動車にくわえて、タイの今年後半の輸出は悪くないと見られている。ただし、エレクトロニクス関連は中国の安値におされ苦戦を強いられている。

民間設備投資は-0.8%と1Qの-2.3%同様不振である。しかし、機械類の輸入は増加傾向にあり、先行き増加が見込まれる。

部門別には農業部門がバイオ燃料ブームもあり、天候にも比較的恵まれ9.7%という高成長を遂げた。

製造業は4.4%で伸び率がジワジワ鈍化している。これは輸出産業は良いが、内需型産業が不振のためである。建設は2Qに入り3.7%伸びたが、販売そのものは好転していない。

 

127-17.タイの上場企業の07年上期の純利益は17%減(07年8月20日)

タイ証券取引所によれば上場企業469社の07年上半期(1~6月)の純利益は合計で2,295億バーツ(≒8,050億円)にとどまった。これは06年上期に比べ476.7億バーツの減少(-17.2%)である。

利益を計上した企業は367社であった。

07年2Q(4~6月)の利益は1,145.7億バーツであり、前年同期比-10%であった。

いずれにせよタイ企業は07年になってから利益率が低下しているが、その最大の理由は異常なバーツ高にあるというのが証券取引所の説明である。

タイ全体では輸出金額は20%近く増加しているが、収益は低下していたということになる。

政治的混乱による内需の低迷も収益悪化の原因であることは確かである。

しかし、8月19日の国民投票で新憲法がきまり、年内に国会議員選挙が実施される段取りになり、タイ経済もこれか落ち着きを取り戻すことになろう。

バーツ高も徐々に解消に向かっている。

(バンコク・ポスト、07年8月20日、インターネット版参照)

 

127-18.マツダ・フォード5億ドルを小形乗用車生産に投資(07年10月10日)

マツダとフォードのタイにおける自動車生産の合弁企業AAT(Auto Alliance Thailand)は従来の1トン・ピックアップ重点の生産から、小形乗用車生産もおこなうこととし、5億ドルの投資計画を発表した。

生産能力は年間10万台とし、その80%を近隣諸国への輸出に向けたいとしている。生産開始は2009年からになるとしている。

また、ホンダもエコ・カープロジェクトに67億バーツ(≒250億円)を投資する計画であるが、さらに62億バーツを追加投資すると発表した。これによってホンダの乗用車生産は年産12万台から24万台に増加する。

ホンダは今年は部品を含む自動車輸出で22%増加の615億バーツを見込んでいる。

タイの自動車産業は今後は輸出をターゲットにした投資が増えてくるものと考えられる。

 

127-19.日系食品加工メーカーが中国からタイにカムバックの動き(07年10月12日)

本日付のバンコク・ポスト(インターネット版)によると、昨今の中国の食品衛生上のトラブルで一旦はタイから中国に工場を移転した日本の食品加工メーカーが最近タイに再び帰ってくる動きがあるという。

タイ産業連盟(FTI)の加工食品産業部会のパイブーン会長は最近の中国の食品の化学物質汚染や食品安全上の問題がクローズ・アップされメイド・イン・チャイナの加工食品が日本の消費者に敬遠されてきてタイが再び見直されているという。

FTIは日本商工会議所やジェトロと今後のネット・ワーク作りをおこなう計画だという。これに日ータイの経済協力協定が早速うまくかみ合うときわめて楽観的である。

タイの国民食品協会(National Food Institute)は今年の食品輸出は177.2億ドルと前年比18.3%増となる見込みだが、バーツ高のためバーツ・ベースでは6080.4億バーツと7.8%増にとどまるという。

パーム油、砂糖、キャッサバ、非アルコール飲料は特に好調で、40%増の勢いだが、果物、野菜ジュース、ツナ缶、エビは各国の供給能力が過剰で、横ばいか減るとみている。

コメは今年は850万トン来年は900万トンの輸出が見込まれるという。

確かに、タイの農産品や、それをベースとする加工食品は日系企業の指導が良かったためか、造り方が比較的丁寧で、「短期に儲かればよい」という思想からは脱却している企業が多いことも事実である。

 

127-20.タイの輸出は年間目標をクリアーの見通し(07年10月23日)

クラーククライ(Krirk-krai Jirapaet)商業相によれば07年の輸出目標1,450億ドル(前年比+12.5%)は1~9月の実績からみて、クリアーできそうだという見通しを明らかにした。また、同時に年間の貿易収支の黒字も目標の90億ドルを突破する見通しであるという。

最近のタイの輸出は米国をはじめとする景気減速傾向のなかで、9月は132.7億ドル、前年同月比+10.4%(8月は+17.8%)とやや伸び率が鈍化した。

米国向け輸出は5ヶ月連続のマイナスで9月は16.7億ドルと-6.6%となった。日本向けも14.6億ドルと-1.3%と今年初めてマイナスを記録した。ただし、07年1~9月では10.7%となっている。日本向けは11月からJTEP(日ータイ経済協力協定)の発効により、今後輸出が増えると楽観しているという。

東ヨーロッパやインドは中国向けは高い伸びを示しているので何とか2桁の伸びを示している。

輸入は1~9月で1,020億ドルと7.4%増であった。輸出は1104.5億ドルと84.5億ドルの黒字であった。

タイはコメをはじめゴム、タピオカなどの1次産品とエレクトロニクスや自動車などの軸になる工業製品の輸出があり、東南アジアではもっとも安定した輸出を続けるであろう。

 

127-21.タイの消費と投資は3Qから回復基調にあり(07年10月30日)

タイ財務省の経済局長パニー(Pannee Sathavarodom)女史は7~9月期からタイの経済は個人消費と民間企業投資で上向き始めたと述べた。

3Qは付加価値税の徴収が実質(物価上昇分を差し引いた後に)で前年同期比3.1%増加した。これが2Qはわずかに0.7%増に過ぎなかった。

自動車販売も2.3%増加した。ただし9月だけをみると前年同月比2.1%のマイナスであった。また、モーター・サイクルは23.2%と大きく減少した。これは大都市にくらべ地方の景気回復が遅れていることを意味するとパニー局長は分析している。

消費財の輸入は数量ベースで2Qの17.5%増に対し、3Qは17.6%増であった。これはかなりのレベルであるといえよう。既に2Qから消費回復の動きがあったと見てよい。ただし、消費者信頼度指数が69.7%というのはまだ消費の本格回復には至っていないことを物語っている。

投資関連では3Qの資本財輸入が数量ベースで2.7%増加した。これは2Qは1.5%増であった。商業車の販売は3.8%増加した。不動産販売にかかわる取引税は5.2%増加した。また、投資者信頼度指数は79.6%とかなり改善を見せている。

政府投資は17.5%増加した。

一方、輸出は数量ベースで6.7%増という低い伸びにとどまった。2Qは13.2%増であった。これは米国の景気低迷を反映したものであると思われる。

経常収支は3Qは11億ドルの黒字であった。

パニー局長はタイ経済は4Qに向かって引き続き拡大傾向にあるという楽観的見通しを語った。

タイの株価はこのところ好調で10月29日は915.03ポイントと20.46ポイント上昇し初めて900ポイントの大台を突破した。また、為替もこのところやや安定した動きを示している。07年7月下旬には1ドル=29.50バーツまでバーツ高が進んでいた。

 株価指数  対米ドル  円/バーツ
7月23日 862.60 29.48 4.112
10月1日 852.47 31.75 3.647
10月10日 875.10 31.45 3.734
10月26日 894.57 31.81 3.596
10月29日 915.03 31.80 3.601

 

⇒.タイの07年3Qの成長率は4.9%とやや上向き(07年12月3日)

タイのNESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると07年3Q(7~9月)の経済成長率は2Qの4.3%を上回る4.9%と なった。

内需は民間消費も投資上向きに転じ、輸出の伸びに引っ張られている形はここしばらく変わらない姿である。

民間消費は2Qの0.8%からわずかながら1.9%に伸びた。前Qまで不振であった家具、家電、自動車といって耐久消費財に回復の芽が出てきた。

民間投資もわずかながらプラス(+1.1%)に転じた。政府投資も+5.8%と加速された。

輸出 は名目のドル・ベースでは12.6%と依然好調だが2Qの18.3%に比べややペースが落ちた。数量ベースでは7.8%、価格は4.5%増加した。しかし、バーツ高のためバーツ・ベースでは1.8%の伸びにとどまった(2Qは7.6%の増加 )。

輸出は実質ベースでは3.5%増にとどまったが、他の東南アジア諸国と異なり、1次産品のみならず、工業品が 伸びている。タイ中国貿易でもタイは押されていない。製造業の伸びが一貫してGDPの伸びを上回っているということはタイの輸出産業の強さを物語っている。

製造業は5.8%の伸びで2Qの4.5%からはっきり上向きに転じている。

 

127-22.タタ自動車が08年3月からタイで1トン・ピックアップ車生産(07年12月7日)

インドのタタ・モーターズ(TTM)社は08年3月からタイで1トン・ピックアップ車の生産を開始すると発表した。生産能力は年間3万5千台、投資資金は13億・バーツ(≒47億円)であるという。

なお、タタ財閥は昨年末チョンブリ県に50トン高炉を建設資金36億バーツ(≒130億円)をかけて新設すると発表し、また、同時にミレニアム・スチール(Millenium Steel)の株式67%を今年取得し、社名をTata Steel(Thailand)と改めた。この会社は 熱延広幅帯鋼のミニ・ミルを中心に現有生産能力は170万トンである。

それ以外にも06年にはシンガポールの国営企業NatSteel(鉄筋棒鋼主体)を買収するなど、東南アジアに対して積極的な進出を図っている。

(WSJ,インターネット版、07年12月5日付け参照)

 

127-23. タイの07年4QのGDPは5.7%、輸出好調、消費低迷(08年2月27日)

タイのNESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると07年4Q(10~12月)の経済成長率は5.7%と3Qの4.8%を上回る 数字となった。これは輸出の好調と、それ輸出の好調(+8.6%)に引きずられて製造業が8.1%と3Qの5.8%をカナリ上回ったためである。

内需は民間消費も投資上向きに転じ、輸出の伸びに引っ張られている形はここしばらく変わらない姿である。

民間消費は1.6%と3Qの1.8% にくらべやや落ちた。民間消費が1%台で5%大の成長を遂げたのは東南アジアではタイだけである。政府消費は高い水準を続けているが額が小さいためあまり経済成長には貢献していない。

固定資本形成(設備・建設投資)は4.0%と回復してきている。

なお、2007年通年でのGDPの伸びは4.8%と06年の5.1%をやや下回った。 個人消費の低迷が響いたといえよう。これを軍需クーデターによる政治的混乱のセイにする論調もあるが、基本的にはタクシン時代のクレジット・カード大増発による家計の借金の増加が消費を鈍らせたと考えるべきであろう。製造業が良くなってきているので雇用も増加し、やがては消費の拡大につながっていくであろう。

 

表110-17-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

  2005  2006  2007 06/3Q 06/4Q 07/1Q 07/2Q 07/3Q 07/4Q
農林水産 -1.9 3.8 3.9 2.2 1.4 3.8 7.5 1.7 2.9
製造業 5.2 5.9 5.8 5.0 4.8 4.6 4.5 5.7 8.1
電・ガ・水 5.3 4.8 4.3 6.3 6.5 4.3 0.6 8.6 2.4
建設 5.7 4.3 2.1 4.5 2.6 0.5 1.7 1.4 5.1
商業 4.4 3.9 3.2 3.6 3.6 3.3 3.6 3.4 2.5
運輸通信 4.8 6.3 6.3 3.3 6.9 5.9 6.0 8.1 6.2
ホテル等 2.1 11.2 4.9 8.3 8.8 6.2 3.5 3.0 7.0
金融 7.3 3.3 5.7 2.7 1.9 0.6 4.7 8.5 8.7
不動産賃貸等 5.3 5.5 2.9 5.4 5.5 3.6 3.9 2.1 2.0
政府サービス 3.9 0 3.1 2.6 0 3.4 -0.7 3.5 6.3
その他 7.1 4.8 3.3 3.5 -0.7 4.4
GDP 4.5 5.1 4.8 4.5 4.3 4.2 4.3 4.8 5.7

 

表110-17-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

    2005   2006  2007 06/3Q 06/4Q 07/1Q 07/2Q 07/3Q 07/4Q
GDP  4.5 5.1 4.8 4.5 4.3 4.2 4.3 4.8 5.7
民間消費 4.5 3.2 1.4 2.8 2.7 1.4 0.9 1.8 1.6
政府消費 10.8 2.3 10.8 3.2 -4.0 9.1 9.3 9.5 16.0
総固定資本形成 10.3 3.8 1.4 3.1 1.9 -1.3 0.2 2.6 4.0
 民間 10.6 3.7   3.2 1.9 -2.3 -0.7 1.1  
 政府 10.8 3.9   3.0 2.0 2.2 2.7 5.8  
輸出 3.9 8.4 7.1 4.7 7.2 8.7 7.8 3.4 8.6
輸入 8.7 2.6 3.5 5.4 4.4 2.2 3.0 2.6 5.9

資料;NESDB(07年3Qより修正)

表は一部未完成ですが、早急に埋めます。

 

TE08.2008年のタイ経済

TE08-1.米価の高騰にもかかわらず農民に恩恵なし(08年3月31日)

このところコメの国際価格は連日のように史上最高値を記録している。これは最近3ヶ月の動きである。つい先ごろまでコメの国際相場はトン当たり350ドル程度で比較的安定していたが、瞬く間に500ドルを突破し、3月27日(木)の国際米価は前日(580ドル/トン)比30%高の760ドル/トンと言う異常な急騰振りである。

3月12日の価格が755ドル(最高級のジャスミン・ライス)にまで達し、近いうちに1,000ドルをこえるだろうと見られている。

なぜそうなったかと言うと、世界最大にコメ輸出国であるタイは別として、それに続くベトナムやインドヤエジプトが国内需要をまかなうためにコメの輸出を規制もしくは禁止する動きにあり、エジプトは公式に輸出禁止をきめたと言われる。

そのきっかけになったのが、昨今のバイオ燃料ブームでトウモロコシの作付け面積が急増し、そのしわ寄せが小麦やコメの減産につながったといわれている。また、農地を奪われた農民が食糧をコメに求めている影響もあるという。

それ以外に肥料の高騰(2年前はトン当たり5~6千バーツ⇒現在8千~2万バーツ)やディーゼル油の高騰もコメ生産のコストを2倍ほどに押し上げている。(1ライ≒500坪当たり、3~4千バーツ⇒7~8千バーツ)

タイは2007年では920万トンのコメを輸出し、1,190億バーツ(約3,800億円)の外貨を獲得した。タイのコメ生産は年間約2,000万トンであり、1期作目(5~10月の雨季作)が1,4549万トン、2期作目(乾季作)が442万トンである。

米価の高騰は実際は今年に入ってからの動きであり、タイ農民はほとんどどの恩恵を受けておらず、コメの在庫を持つ輸出業者、仲買人、精米業者に利益は吸い取られていると言う。

現在、タイでは2期作目の収穫期に入っており、最近コメ泥棒が横行している。夜中(午前1時~3時ごろ)にトラクターを持ち込んで、ごっそり刈りとってしまうという手荒な手口である。最近捕まった犯人は精米業者であり、180トンほど窃盗したという。



TE08-2.タイの08年1Qの成長率は6%と製造業中心に好調(08年5月28日)

タイのNESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると08年1Q(1~3月)の経済成長率は6.0%と07年4Qの5.7%、同3Qの4.8%を上回る好調な推移を示している。これは輸出の好調(+8.7%)に支えられた製造業が9.7%(前Q8.0%)と大幅に伸びた結果である。

内需は民間消費が2.6%と前Q(1.8%)に比べ若干の改善をみせたものの相変らず不振である。一方、総資本形成(設備投資が中心)は5.4%と上向きに転じている。

輸出は自動車(含む部品)やコンピュータ部品やエアコンなどの工業製品にくわえて、世界的な食糧不足を反映してコメの急増(金額面)があり、タイ経済は他の東南アジア諸国に比べて恵まれている。

輸入(+34.5%)は石油価格の高騰による要因(+68%)以外に設備投資の活発化を反映して資本財輸入(+39.4%)も増加している。

 経常収支は30億6800万ドルの黒字であった。しかし、07年1Qの46億8900万ドルに比べ黒字幅が減少している。これは石油価格の高騰や資本財輸入の増加によるものである。

1Qのインフレ率は石油製品と食品の上昇により5%とカナリ高くなった。07年4Qは2.9%であった。今後も石油価格によるインフレが続けばタイの経済も相当な打撃を受けることは間違いない。

NESDBの08年の成長見通しは4.5~5.5%であるが、先進国(特に米国)の景気動向によっては成長率の鈍化は不可避である。内需型成長はタイでは目下のところ期待できない。

表110-17-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

  2005  2006  2007 06/4Q 07/1Q 07/2Q 07/3Q 07/4Q 08/1Q
農林水産 -1.9 3.8 3.9 1.4 3.8 7.5 1.7 3.1 3.5
製造業 5.2 5.9 5.8 4.8 4.6 4.5 5.7 8.0 9.7
電・ガ・水 5.3 4.8 4.3 6.5 4.3 0.6 8.6 2.4 5.2
建設 5.7 4.3 2.1 2.6 0.5 1.7 1.4 5.1 1.1
商業 4.4 3.9 3.2 3.6 3.3 3.6 3.4 2.5 3.0
運輸通信 4.8 6.3 6.3 6.9 5.9 6.0 8.1 6.2 6.1
ホテル等 2.1 11.2 4.9 8.8 6.2 3.5 3.0 7.2. 6.8
金融 7.3 3.3 5.7 1.9 0.6 4.7 8.5 8.7 9.1
不動産賃貸等 5.3 5.5 2.9 5.5 3.6 3.9 2.1 2.0 3.4
政府サービス 3.9 0 3.1 0 3.4 -0.7 3.5 6.3 -3.8
その他 4.8 3.3 3.5 -0.7 4.4
GDP 4.5 5.1 4.8 4.3 4.2 4.3 4.8 5.7 6.0

 

表110-17-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

    2005   2006  2007 06/4Q 07/1Q 07/2Q 07/3Q 07/4Q 08/1Q
GDP  4.5 5.1 4.8 4.3 4.2 4.3 4.8 5.7 6.0
民間消費 4.5 3.2 1.4 2.7 1.4 0.9 1.8 1.8 2.6
政府消費 10.8 2.3 10.8 -4.0 9.1 9.3 9.5 16.0 -0.7
総固定資本形成 10.3 3.8 1.4 1.9 -1.3 0.2 2.6 4.0 5.4
 民間 10.6 3.7   1.9 -2.3 -0.7 1.1  
 政府 10.8 3.9   2.0 2.2 2.7 5.8  
輸出 3.9 8.4 7.1 7.2 8.7 7.8 3.4 8.5 8.7
輸入 8.7 2.6 3.5 4.4 2.2 3.0 2.6 6.2 10.3

資料;NESDB(07年3Qより修正)


TE08-3. タイの08年5月のインフレ率は通貨危機以来の7.6%(08年6月3日

08年1Qは何とか順調であったタイ経済も4月以降やや変調をきたしてきた。石油消費量のほぼ全量を輸入に頼り、交通手段も過度に自動車に依存しているタイとしては石油の国際価格の高騰が直接大きく物価上昇に跳ね返ることになっているか亜rである。

08年5月のタイの消費者物価指数は前年同月比で7.6%上昇した。これは通貨危機後、極度のバーツ安となった1997、98年以来の高水準である。

政府は国営製油所PTT(一部民営化)似たいし、ディーゼル油の上昇率を抑制するように指示している。

公定歩合(Repurchasing Rate, 1 day)は3.25%で変わっていないが、CPIの動向如何では引き上げもありうる。プライム・レートは6.85~7.13%である。

ちなみにインドネシアの5月の消費者物価指数(CPI)は10.4%上昇したとみられる。

08年4月のタイの国際収支は18億ドルの赤字になった。4月の輸出は136.3億ドルと前年同月比27.7%の増加となったが、輸入は153.9億ドルと実に41.5%もの増加になった。石油の輸入増加(金額)は80%も増えた。

経常収支の赤字は16.6億ドルとなった。これは外国企業の利益送金も影響している。


タイの最近の国際収支(単位;100万㌦、%)

  08/2月  08/3月   08/4月
 輸出   12,849 14,648  13,631 
 対前年同月比  16.2%  15.1% 27.7% 
 輸入  13,514 14,306  15,399 
 対前年同月比  32.5% 31.2%  41.5% 
 貿易収支  -620 342  -1,768 
 経常収支  752 920  -1,861 
 外貨準備高(億ドル)  1,005 1,100 1,098 


TE08-4.タイ・バーツ売りに中央銀行介入(08年6月10日)

サマク政権発足以来の政治的混乱に嫌気がさした外国の機関投資家の一部がタイの株式市場から撤退をし始めたということと、石油価格の高騰から貿易収支が最近赤字に転じていることもあって、バーツを売りドルを買う動きが出てきている。

6月9日(月)には07年5月以来13ヶ月ぶりに1ドル=33.45バーツにまで下がったため、バンク・オブ・タイランド(中央銀行)は急激な下げを防止するために、為替市場への介入を行ったとスチャダ(Suchada)副総裁は語った。9日の終値は1ドル=33.17バーツ(5月21日=31.86バーツ)であった。

07年の今頃はバーツ高で輸出競争力がなくなるとして、短期資金の流入を阻止すべく中央銀行は躍起になっていた。


最近のタイ株式市場と為替相場

  タイ株式指数  バーツ/米ドル  円/バーツ
07年5月16日   721.86 33.38  3.609 
 07年6月8日 752.0  32.60  3.729
 07年7月23日  862.6  29.47  4.112
 07年1220日  791.71  30.75  3.680
 07年1227日 852.06  30.01  3.810
 08年2月28日  842.12   29.73  3.583
 08年5月21日  884.19  31.86  3.235
 08年5月30日  833.65  32.50  3.248
 08年6月9日  805.58  33.17  3.187


TE08-5.タイ中央銀行金利0.25%引き上げ3.5%に、株価急落(08年7月16日)

バンク・オブ・タイランド(タイ中央銀行)はインフレ抑制策として7月16日(水)に基準金利(one-day repurchasing interset rate)を0.25%引き上げ3.50%とすることを決定した。

これは最近のインフレ率昂進を抑制するためのものであり、数日前から引き上げが噂されていた。

タイのインフレ率は石油燃料と食品中心に08年6月には前年同月比8.9%に達しており、金利を上げなければ近々2桁インフレは避けられないと見られていた。

政治的な不安定も背景にあり、ここ数日タイの株価は急落している。先週末の730.29からみると7月16日(水)の669.92は8.3%も下落した計算になる。

7月16日は外国人投資家の売り越(ネットで36.9億バーツ)が目立っている。エネルギー関連と金融関連株の下げが大きかった。

  タイ株式指数  バーツ/米ドル  円/バーツ
 08年5月21日  884.19  31.86  3.235
 08年5月30日  833.65  32.50  3.248
 08年6月9日  805.58  33.17  3.187
08年6月30日 769.59 33.44 3.154
08年7月11日 730.29 33.65 3.180
08年7月14日 717.06 33.65 3.169
08年7月15日 693.41 33.48 3.125
08年7月16日 669.92 33.47 3.105


TE08-6.タイの08年上期の成長率は5.9%か、財政局試算(08年7月23日)


タイの財務省財政局(the Fiscal Policy Office)の試算によればタイの08年2Qの成長率は5.8%と予想され、1Qの6.0%と通算で上期(1~6月)の成長率は5.9%になる見込みだという。

また下期の成長見通しは5~5.5%に鈍化し、2008年通年では5~6%になると予想している。

成長を主導するのは輸出で08年1~5月の実績で前年同期比22%増、数量ベースでは10%増加している。

国内消費も以外に堅調で付加価値税は上期で前年同期比10.4%増であった。これは農産品価格が32.4%上昇したことが部分的に寄与しているという。

また、設備投資も好調で「資本財輸入」が15%増加した。軍事クーデター直後の07年上期はこの増加が1%増に過ぎなかった。

一方、商業省が発表した08年6月の貿易統計では輸出が163億ドルと前年同月比27.4%増加し、輸入は156億ドルと30.7%増加した。貿易黒字は6億2800万ドルであった。

08年上期の輸出は872億ドルと前年同期比23.1%増、輸入は882.8億ドルと33.6%像であった。貿易収支は10.7億ドルの赤字であった。

輸入増の主因は原油価格の高騰によるものである。輸出増はコメなどの農産品価格の急騰がかなり寄与しているが自動車やエレクトロ製品も貢献していることは間違いない。今の段階では詳細は明らかにされていない。


TE08-7.タイの家計の負債急増(08年8月24日)


タイ商工会議所大学(UTCC=University of the Tha Chamber of Commerce)が最近行った調査によると、タイの家計の負債総額は約2.5兆バーツ(8兆1000億円)に達し、2007年よりも16.6%増加していることがわかった。

1世帯あたりの負債額は135,166バーツ(約44万円)で2007年の116,681バーツに比べ15.8%増加した。また、タクシン政権発足(2001年)前の2000年の平均68,406バーツに比べ2006年(クーデターによるタクシン政権崩壊)には116,840バーツと70.8%増加した。

2008年の増加について UTCCが8月8~17日にかけて1,232人に対して行ったアンケート調査では74.1%の人が支出を収入以内に抑えていると答え、13.8%の人が収入以上に支出していると答えた。

借り入れを増やした理由としては日常の消費に当てているという人がもっとも多く、ついで自動車ローン、住宅ローンと回答した。
また、UTCCの調査では、物価高などの理由で、これ以上消費は増やせないという回答がほとんどであったという。

家計の負債がタクシン時代に急増したのはタクシンが「消費は経済を活性化させ美徳である」という政治的キャンペーンを行ったことと、韓国同様、個人のクレジット・カードを大流行させたことが響いている。

それまでのタイ人の生活態度は「質素倹約」を旨とするものであった。

表、タイの家計における負債の推移

1996 1998 2000 2002 2004 2006 2007 2008
世帯数(100万) 16.4 16.4 17.2 17.9 17.9 18.02 18.14 18.26
世帯あたり負債額
(バーツ)
52,001 69,674 68,405 82,485 103,940 116,840 116,681 135,166
増減率(%)   n.a. 33.99% -152% 20.58% 26.01% 12.41% 0.08% 15.84%
負債総額(億バーツ) 8,528 11,428 11,765 14,765 19,645 21,055 21,166 24,668
増減率(%)   n.a. 33.99% 2.97% 25.49% 33.05% 14.79% 0.53% 16.55%
家計の負債/GDP1 1850% 2470% 2390% 2708% 2987% 2909% 2494% 2597%

資料;タイ統計局、経済・ビジネス予測部
バンコク・ポスト、08年8月22日記事を修正引用。


TE08-8.タイの08年2Qの成長率は5.3%に鈍化(08年8月28日)


タイのNESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると08年2Q(4~6月)の経済成長率は5.3%と1Qの6.1%にくらべ鈍化した。

内需の不振にもかかわらず、5%台の水準が維持できたのは輸出の好調(+9.3%)に支えられた製造業が9.7%(前Q8.0%)と大幅に伸びた結果である。また、農業部門も6.5%(1Q=3.5%)と好調であった。

内需は民間消費が2.4%と1Q(2.6%)に比べ若干鈍化している。また、1Qには5.4%増と改善した総固定資本形成(設備投資が中心)は1.9%と再び減速した。

輸出は08年2Qでドル・ベースで26.3%(1Q=22.9%)も増加した。これは米国やEU向けが1ケタ台だったのに対し、アジア向けが好調だったためである。自動車(含む部品)やコンピュータ部品やエアコンなどの工業製品にくわえて、世界的な食糧不足を反映してコメの急増(金額面)があり、トウモロコシ、タピオカ、ゴムなど主力農産品がそろって好調だったことによる。

輸入は08年上期で前年同期比32%増加した。

貿易収支は1Qは1億860万ドルの赤字であったが、2Qは4億2500万ドルの黒字に転じた。

2Qのインフレ率は石油製品と食品の上昇により7.5%(1Q=5%)と高くなった。しかし、これは一過性のものという見方ができる。世界的な不況が進む中で石油やその他の原材料価格が下げに転じることは自明である。

NESDBの08年の成長見通しは4.5~5.5%であったが、これよりはやや高くなるであろう。ただし、内需型成長はタイでは目下のところ期待できない。

表110-17-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

 表110-17-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

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TE08-9:タイの9月の輸出は前年比+19.4%と好調を持続(08年10月22日)

タイは米、ゴム、砂糖といった1次産品の輸出が好調で、158.7億ドルの輸出実績をあげた。伸び率は前年同月比19.4%と高水準を維持している。向け先としては米国、EU,日本などの先進国向けが+17.7%であったのに対し、新興国向けが21.2%と上昇した。

輸入は157.4億ドルと+39.4%と以上に増加した。これは原油価格の高騰によるものが主因だが、鉄鋼などの中間財の価格上昇も響いた。

貿易収支は1億3330万ドルの黒字であった。8月は7億8200万ドルの赤字であった。

08年1~9月の実績では輸出が1,359億2000万ドル、前年同期比23.9%であった。農産品(含む加工品)が43.7%の伸びを示した。

輸入は1,386億6000万ドルと、35.8%増加した。主因はやはり石油であるが、設備投資関連の資本財や中間財も増えた。貿易収支は27.4億ドルの赤字である。そのためか、最近はバーツ安で推移している。

2009年の経済見通しとしてはIMFは08年=5.3%に対し、来年は4.4%に鈍化すると見ているが、タイの代表的なシンクタンクであるTDRI(Thailand Development Research Institute)は3.8%以下になるであろうという厳しい見方をしている。

欧米、日本向けに加え、中国向けの輸出もかなり鈍化することが予想され、加えて1次産品(米、ゴムなど)の価格も下落することから、確かに09年のタイの経済成長率はかなり鈍化しそうである。個人消費は当分増加が期待できないので、政府支出と大型プロジェクト頼みになるであろう。

タイ経済の強みは米・ゴム・パーム油、砂糖、タピオカなどといって農作物に加え、エレクトロニクス関連、自動車などといった広範囲にわたる輸出力があり、ASEANの中では最も恵まれたポジションにある。政治面からタクシン的要素が取り除かれれば、安定した経済発展を遂げられるであろう。

某一般紙は現在のタイの政治的混乱を「金権民主主義」対「王室中心主義(保守主義)」の争いだというような解説をしていたが、それは間違いで、「金権主義+形式民主主義」対「ブルジョア民主主義」の争いと見るべきであろう。ブルジョア民主主義の陣営には「新中産階級」が加わっている。PADに代表される後者は「保守主義」や「権威主義」ではない。ましてや「右翼」などではありえない。この辺を米国の一部の新聞記者は誤解している。誰かタクシンの回し者が「基本的なシナリオ」を書いて、欧米の一部ジャーナリストがそれをなぞっている感じがしてならない。

TE08-10. タイの08年10月の輸出は5.2%増と鈍化(08年11月22日)


タイの商業省の発表によると、タイの08年10月の輸出は152.6億ドルと前年同月比5.2%増にとどまり、IT不況時の2002年7月以来の低い伸び率となった。

一方、輸入は21.8%増の158.2億ドルと活発で、貿易収支は5.6億ドルの赤字を記録した。

輸出は米、冷凍エビ、ブロイラーなどは好調を維持しているが、エレクトロニクス部品などが4.2%、家電製品が16%、家具が3.9%のマイナスとなった。


08年1~10月の累計では輸出が1,511.9億ドルと前年同期比21.68%伸び、輸入は1,544.8億ドルと34.22%伸びた。その結果32.9億ドルの貿易収支の赤字となった。


この10ヶ月間で米国向け輸出は1.4%の伸びにとどまった。日本向けは7.8%、EU向けは5.9%の伸びであった。ASEAN向けは5%のマイナスになった。先進国向け輸出は伸びが鈍いが、中進国、途上国向けの輸出の伸び率が高かった。

このような、エレクトロニクス関連の輸出が減少傾向にある中で、ニコンは非正規社員(下請け契約)1500人の解雇を発表した。

ニコンは1990年からアユタヤ地区の4工場で、正社員8,000名、非正規社員4,000名、合計12,000人を雇用してきたが、受注が落ちているため、非正規社員1500名を解雇すると発表したが、事前通告は無かったという。(バンコク・ポスト、11月22日電子版)今回の不況で日系企業が大量の解雇者を出すのははじめてである。


アユタヤ地区のタイ産業連盟支部では来年はじめには約30,000人が失職する可能性があるとしている。


TE08-11.タイの08年3Qの成長率は4.0%に鈍化(08年11月26日

NESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると08年3Q(7~9月)の経済成長率は4.0%と2Qの5.3%と1Qの6.0%にくらべ期を追うごとに鈍化してきた。

内需は民間消費が2.6%と相変らず不調である。輸出は一応8.2%と好調を維持してはいるが2Qの+9.1%に比べ、鈍化してきている。

製造業が6.1%(1Q=9.5%、2Q=7.7%)と大次第に減速してきている。世界的な不況の影響を受けつつあることを物語っている。10月以降はさらにその傾向は顕著となり、すでにレイオフがいちぶで始まっている。

農業部門は9.9%(2Q=8.6%)と好調であったが、これはコメ、冷凍エビ、ブロイラーの輸出の好調によるものであったが、1次産品はすでに急速に減速しつつある。

建設部門はすでに、不動産投資が減速している。これは1997~8年の経済危機の痛い経験から、過剰な不動産投資には慎重になっているためであろう。

世界不況の影響と、タイの政治的混乱への過剰反応から外国からの観光客が減ってきており、ホテルは0.2%の伸びにとどまっている。タイの場合は「観光業」はかなりウエイトが大きい。

輸入は3Qには+10.5%と増えている。これは石油と機械である。

NESDBの08年の成長見通しは4.5~5.5%であり、一時5.2~5.7%と上方修正されたが、輸出の急激な落ち込みが予想され、4.5%に下方修正された。

2009年は3~4%となる見通しを発表している。

表110-17-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)            

表110-17-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

資料;NESDB(08年11月に全面修正)



TE08-12.タイ基準金利を1%下げ2.75%に(08年12月4日)


バンク・オブ・タイランド(中央銀行)は12月3日(水)に基準金利(one-day repurchase rate)を1%切り下げ2.75%とすることを決めた。

このような大幅な切り下げを予想する関係者は少なく、大方の予想では0.25~0.5%であった。今回中央銀行が大幅切り下げをおこなった背景は、現在の内外需の不振に加え、国内政治の混乱が当面は治まりそうもないという要因を考慮したものと思われる。

政治空白により大型公共投資(高速鉄道網の整備など)の実施もかなりの遅れが見込まれる。


TE08-13.タイは11月に7万人が失業(08年12月29日)

タイ統計局の発表によれば08年11月の失業者は52万人に達し、10月の45万人から7万人増加した。

タイでは現在雇用労働者は3760万人いるとされ、失業率は1.4%となった。失業率としては一見低いように見えるが、3,760万人というのは農業就労者を含んだ数字であり、製造業部門だけの失業率はもっと高いが、その数字は今回発表されていない。

タイの場合は都市労働者といえども農村部の出身者が多く、前回の通貨・経済危機時(1997~8年)にも失業者の多くは農村部に帰郷しさほど大きな社会問題は引き起こさずにすんだ。

今回も失業すれば農村に帰れる人がかなりいるとは考えられるが、農家の所得は低いので、農村の貧困問題が激化するという方向に向かっていく。

失業はこれからさらに増加すると考えられ、アユタヤ県だけでも10万人以上の失業者が出るとみられている。

既に各地で解雇問題、給与不払い問題などで労働争議が起こり始めている。労働争議が起こるとしばしば「道路封鎖」がおこなわれる傾向が最近は目立ってきている。

タイ郊外のサムット・プラカン県ではSammi Sound Tech(Thailand)という韓国系の企業が倒産し、200人の従業員が総額1,600万バーツ受け取れるハズの退職手当が400万バーツしか支払われなかったとして付近のTheparak Road を封鎖した。


TE08-14.タイの輸出は11月-20.5%、12月-14.6%と激減(09年1月23日)

タイは他のアジア諸国と同様、08年10月あたりから、輸出が変調を来たし、10月は前年同月比+3.0%(9月は+20.0%)、11月は-20.5%、12月は-14.6%となった。金額レベルでは08年10月までは毎月150~170億ドル輸出していたが、11月は118.7億ドル、12月は116億ドルと30%もの落ち込みとなった。

最大の理由は中国向けの輸出に急ブレーキがかかったためである。中国の米国向け輸出が落ち込んだことが直接響く形となった。もちろん他の国々への輸出も多かれ少なかれ減っている。

2008年全体の輸出は1778億4100万ドルと前年比+15.6%とそこそこの伸びであったが、11月、12月が前年比大きくマイナスになったことから、2009年の輸出は2008年比マイナスになる公算が大である。

下の表はバンコク・ポスト(09年1月23日、電子版)から借用したものである。
特に、10月以降の輸出の伸び率の急変にご注目ください。

輸入も、11月から伸び率が急減している。これは石油価格の下落が影響しているが、部分的には中間材料や資本財が減ってきているものと考えられる。12月に輸入が前年同月比-6.5%となったが、これは2002年5月以来のことである。

2002年は米国のITバブルの崩壊によってアジア諸国はやはり大きな打撃を受けた。

いずれにせよ、2009年のタイ経済は容易ならざる事態が予想される。これはマレーシアなど他の東南アジア諸国も同じ事情である。



⇒タイの09年1月の輸出は前年比-26.5%、輸入は-37.6%(09年2月20日

タイ商務省の発表によると09年1月の輸出は104億9000万ドルにとどまり、前年同月(142億7500万ドル)比-26.5%と大幅に落ち込んだ。

農産品が-25.6%、工業品が-24.2%、その他が-34.6%であり、工業品は主力の自動車、エレクトロニクス部品が、家電製品などがいずれも大きく落ち込んだ。

一方輸入は91億1000万ドルと前年同月(146億1300万ドル)に比べ37.6%と大幅に減少した。石油価格の下落の影響が最大の要因ではあるが、輸出減に伴う中間材料の減少と設備投資の減少による機械類の輸入減も影響している。貿易収支は13億8000万ドルの黒字にはなった。

タイ中央銀行では、いつ世界経済が回復に向かうかは予測できないが、2009年の輸出が2008年実績を上回ることは困難だという見方をしている。


TE08-15,タイの08年4QのGDPは-4.3%、通年で2.6%(09年2月23日)

NESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると08年4Q(10~12月)の経済成長率は-4.3%と3Qの3.9%と2Qの5.3%にくらべ大きく落ち込みマイナス成長になった。

マイナスになった最大の要因は輸出が3Q+11.2%と好調だったものが4Qには前年同期比-8.6と大幅なマイナスになってしまったためである。これはいうまでもなく米国をはじめとする世界的な不況の急激な進行によるものである。

製造業が-6.8%と3Qの6.1%(1Q=9.5%、2Q=7.7%)から一気にマイナスとなった。建設の-12.8%、運輸・通信の-10.6%、ホテル・レストランの-8.3%、商業-3.0%と総崩れの中で、金融が+5.0%であった。

農業部門も1.8%と3Q=9.6%(2Q=8.6%)に比べ大幅鈍化となった。これはコメ、冷凍エビ、ブロイラーの輸出の急速な減速が響いた。

建設部門はすでに、2Qから不動産投資が減速したためいっそうの落ち込みをみせた。

不況の影響と、タイの政治的混乱への過剰反応から外国からの観光客が減ってきており、ホテルは3Q=0.2%から4Q=-8.3%となった。反タクシン・デモ隊による空港占拠事件も影響したが、世界不況の影響のほうが大きい。

石油価格の値下がりにも関わらず、タイ行きの航空運賃が高額の燃料サーチャージを課していたのも無視できない。一流航空会社のやり方はあまりに硬直的である。

民間消費は2.2%と意外に堅調である。これは3Qまでの輸出好調の余波が続いたためであろう。これからは、失業がさらに増えてくると思われるので2%を維持することは難しくなるであろう。

輸入は3Qの+13.1%から4Qは1.0%へと鈍化した。輸出用の中間材料と石油消費減が影響している。

08年の成長は2.6%にとどまった。2009年はNESDBは-1%~0%となると予測している。アピシット首相は外国商工会議所を集め講演し、0.5%程度のぷらす成長は可能であると述べたという。

輸出の回復が下期にずれこむが、政府予算(2010年度会計は今年10月1日からスタート)の前倒し執行ため何とかプラス成長に持って生きたいというのがタイ政府の目標である。

アピシット首相は比較的楽観している。トップの政治指導者が「100年来の大不況だ」などといって騒ぎまくる国に比べ、首相自身が「自分なりの観測に基づいて」経済の展望を国民に語り掛けるというのは立派なことである。

私自身は今年のタイ経済は-2~3%のマイナス成長は避けられないと思うが、見かけのGDPの数字がどうであれタイの経済の中長期展望は明るいとみている。

今回の不況からの回復も他のASEAN諸国に比べタイが最も早いであろう。それは工業化のレベルがタイは高く、全般的に設備・技術も比較的高度化されているからである。

政治的にも真の民主化が進み、国民のエネルギーが開放的に発揮される、それが経済発展にいっそう寄与することは間違いない。

ともかく、今の日本は万事に「暗すぎる」。不動産バブル崩壊後にでてきたネオリベラルの主張だが(米国の口真似だが)、「少数の金持がより豊になれば経済が発展する」というのは根本的に間違いである。

アダム・スミスがいうように、一般国民の所得レベルが上がり、消費が増えてこないと真の成長はありえないのである。過去の日本はアダム・スミスの思想と全く逆なことをやってきた。

年寄りは預金を持っていても金利がほとんどつかないから、怖くて消費を増やせない。働き盛りの人間は不安定な雇用環境で大して所得も増えない。短期雇用で低賃金で働かされる人が多い国になってしまい、消費は一向に増えない。

社会的なセーフテイ・ネットはボロボロで医療制度もドンドン改悪されている。要するに「不安だらけの将来」を国民の多くが背負わされてしまってきたのだ。それも一握りの金持を豊にさせる為に。

民間のシンク・タンクやジャーナリズムもこの「小さい政府論=市場経済万能論」に乗り、小泉改革でそれが最高潮に達した。小泉のクローニーが「民営化企業」のトップに座り、わが世の春を謳歌していた。しかし、結果は見てのとおりである。

国民特に若者を総貧乏にするような国に未来はない。

表110-17-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

 2006  2007 2008 07/3Q 07/4Q 08/1Q 08/2Q 08/3Q 08/4Q
農林水産 4.6 1.8 5.1 -0.0
2.3 3.1 8.5 9.6 1.8
製造業 6.0 6.2 3.9 6.1 8.5 9.5
7.7 6.1 -6.8
電・ガ・水 4.7 5.1 4.3 8.9 3.0 5.9
5.8 2.9 2.5
建設 4.3 1.6 -4.7 1.5 3.0 1.1 -3.4 -4.5 -12.8
商業 4.4 4.6 1.9 5.2 4.6 4.1 3.4 3.1 -3.0
運輸通信 6.2 5.9 -0.4 5.3 6.2 5.4 3.6 1.5 -10.6
ホテル等 11.1 4.1 1.6 2.7 6.2 9.2 6.5 0.3 -8.3
金融 3.2 6.5 8.0 9.4 9.5 10.2
8.8 8.0 5.3
不動産賃貸等 5.5 3.4 0.2 2.1 2.6 3.0 -0.4 0.7 -2.3
政府サービス 0.9 3.0 -1.3 4.5 -1.1 -5.6 1.0 -2.9 3.0
その他 3.7 4.1 -0.9 5.3 1.8 -2.2 -1.5 -1.7 1.7
GDP 5.1 5.0 2.6 5.1 5.7 5.9 5.3 3.9 -4.3

 

表110-17-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

   2006  2007 2008 07/3Q 07/4Q 08/1Q 08/2Q 08/3Q 08/4Q
GDP  5.1 5.0 2.6 5.1 5.7 5.9 5.3 3.9 -4.3
民間消費 3.0 1.6 2.5 1.9 1.9 2.7 2.5 2.7 2.2
政府消費 2.4 9.2 0.4 8.9 9.0 -0.4 -3.7 -2.9 10.4
総固定資本形成 3.9 1.3 1.1 2.5 3.8 5.4 1.9 0.6 -3.3
 民間 3.7 0.4 1.1 3.9  6.4 1.2
 政府 3.9 4.0  5.8 4.5  2.0 7.4
輸出 9.1 7.1 5.5 3.8 9.1 8.9 11.9 11.2 -8.6
輸入 3.3 3.4 7.5 2.7 6.0 9.3 6.7 13.1 1.0

資料;NESDB(09年2月23日発表)


TE09-1.タイの財政赤字が拡大、税収減少響く(09年1月9日)

タイ政府は景気対策として、1,000億バーツ(≒2,600億円)の補正予算を組み、今年度(2009年9月末まで)の財政赤字は3,500億バーツと見込んでいたが、このところ税収が政府予算を下回っており、1,200~1,300億バーツの歳入欠陥が予想され、財政赤字は4,800億バーツに膨れ上がるという見通しをコーン財務相は語った。これはGDPの4.8%に相当する。

予算では歳入が1兆5,800億バーツであったが、既に1兆4,000億バーツしか歳入が見込めないという悲観的な見通しも出てきている。新年度が始まって(08年10月1日~)最初の3ヶ月で付加価値税(消費税)、石油税などの上がりが2,720億バーツで目標を16.1%も下回っているという。

一方、折からの不況で失業者は月を追うごとに増加しつつあり、その多くが農村に還流していくことから、農村対策も同時におこなう必要があり、財務省は「農業および農業協同組合銀行(BAAC=the Bank of Agriculture and Agriculutural Cooperative)」、社会保障局、高等教育局などと失業者や新卒学卒者への救済策を協議している。

BAACはとりあえず100億バーツの失業者救済援助融資金を用意したという。新たに発生した10万人の失業者に対しては60億バーツ、15万人の新卒者へのローンとして40億バーツが割り当てられた。個人の借り入れられる上限は4万バーツであり、金利は6%である。

また、失業者への給付金は従来の6か月分から8か月分に延期することを検討している。

2008年4Q(10~12月)は600の企業からは5万人が解雇された。09年1Qには被解雇者が20万人に膨れ上がると見込まれている。さらに年末には失業者が100万人に達すると見込まれている。

また、教育省は30万人の新規大卒者が労働市場に登場してくると見ている。大卒者の70%が人文系で、25%が化学・工学系であり、5%が医療・看護系である。

工場で働く労働者の多くは農村出身者であり、大量の解雇者が出ても、失業者巷に溢れるという現象は1997.98年の通貨経済危機のときもあまり見られなかった。

これは日本でも1960年代までみられた「出稼ぎ型賃労働」(大河内一男教授)であり、失業すれば郷里の農村にかえって、農業を手伝いながら急場をしのぎ、また景気が回復すれば都会に出て賃労働に従事するというものであり、農村が「ソシアル・セイフティー・ネット」の役割を果たしていたのである。

しかし、10年後の現在は事情がかなり変わってきているものと思われる。離農して長年月たつ年労働者は農村には帰りにくくなるのは、日本の経験からも言えることであり、今回は失業対策が10年前とは比べものにならないくらいの重要性を帯びている。アピシット政権も発足早々、大きな難題を抱えたことになる。

アピシット政権の滑り出しは比較的好調であり、タクシン派による選挙妨害はあるものの1月半ばの補欠選挙では与党連合が勝利するという見通しが出ている。

TE09-2.タイ中央銀行総裁曰く、1997年不況よりはずっとマシ(09年3月17日)

タイ中央銀行(Bank of Thailand)総裁のタリサ(Tarisa Watanagase)女史は「今回の不況は1997年の通貨危機のときと比べたら、さほど問題は多くはない」と語った。(フィナンシャル・タイムズ3月17日電子版参照)

タイは09年の1月の輸出が前年同月比26%もマイナスになり、製造業は21%も落ち込んだという。中央銀行としては問題の深刻さを十分認識しており、公定歩合も1.5%にまで切り下げてきているが、さらに金融政策として打つべき手段は残していると余裕を見せている。

タリサ総裁は「不況からの脱出のカギを握っているのは中国の動向である」と見ている。もうすこし様子をみないといけないが中国には少し明かりが見え始めたという見方である。

前にもどこかで書いたが、確かにタリサ総裁のいうとおりで、「民間の需要」が経済成長の出発点であって、設備投資が先に出てきて経済を牽引していくことはない。需要がなければ、ソモソモ投資をするアホはいない。

その点、中国はウソか本当か知らないが1人当たりのGDPが3,000ドルに達したという。経験則(シルバー・ストーン曲線)からいえば、これくらいになると、自動車を持ちたいという願望が国民の中に強く出てくる。中国は今そういう段階に来ているようで、自動車の売り上げが最近増加しているという。

インドもやがてそうなるであろう。ローン・ファシリティーさえ与えられれば自動車は中国に限らずアジアではもっと売れるようになる。

とkろが経済大国のはずの日本では気が付けば貧乏人があっというまに増えてしまって、民間消費が盛り上がらない。その根本原因は、バブル崩壊後の「金融機関救済のための長期にわたるゼロ金利政策」である。これで高齢者層は消費に対して極度に保守的になった。

タイに即していえばタリサ総裁は「今回はタイは通貨問題はない」という。確かに前回は未曾有の通貨危機に見舞われ、あまつさえIMFの「ネオリベラル」的愚策によってタイは必要以上に不況に追い込まれた。

タリサ総裁はタイの立場としては先日のG20中央銀行・財務相会議で決められたいくつかの方針が、大変有効に機能するであろうと期待している。各国がいっせいに景気刺激策をGDPの2%を目標に実行するというような政策が良いという。こういうことはブッシュ政権下では起こりえなかったかもしれない。

おそらく、それ以外にヘッジ・ファンドの「登録制」といった、ヘッジ・ファンドの動きを規制しようということも評価されよう。これに一番の抵抗咸を持つのは米国で、一気に規制強化まではいけないということであろう。しかし、「野放しのやりたい放題」がどういう結果を招いたか見れば答えは明らかである。

EUから提起された株式のカラ売り規制についてはコンセンサスを得られなかった模様であるが、これは何らかの規制が必要であることはいうまでもない。歯止めのないカラ売りが必要以上に株価を暴落させ、そのために「資金調達が困難になり、危機を増幅させる」ことは明らかである。

日銀が銀行の保有株を買い上げるというのは最近ではマシな政策であるといってよい。しかし、これは「空売り屋」への後追い対策である。こんな手間ヒマかかることをやるよりも、空売り規制のほうが話しが早い。

空売り規制などという問題については日本では掛け声はたまに聞こえるが、実効ある具体策はあまり見えてこない。これは絶対に放任できない問題である。

大体、日本の政治家や官僚は国際会議で世界を唸らせるような発言はほとんどしない。アジアでは威張っていてもグローバルな会議ではさっぱりである。これは酔っ払っているからではなく経済についての知識が極度に不足しているののと、先ずアメリカ様のご意向はどうかなどというほうに関心がいってしまっているからである。

今回にようにアメリカがオアバマ政権になってから、大胆に政策転換しようものなら、まさに右往左往である。

ネオリベラルの経済学の一番悪いところは「歴史観」が著しく欠如しているのである。「自由競争に任せておけば、後は神様が何とかいい塩梅(アンバイ)にやってくれる」などというのが経済学であれば、わざわざ大学で経済学を学ぶ必要はない。

これは根拠のない「お題目であって社会科学ではない。こういうシンプル極まりないお題目を「経済学だ」と錯覚しているとロクなことはない。

そのいい例が小泉時代の「郵政改革、規制緩和、民営化万能論」である。民間企業の方も悪いやつは結構いる。しかし、そういう悪いやつは簡単には取り締まれないのである。

内部告発でもないと問題が浮上してこない。ところが、それを取り上げてくれる受け手がいないから、ほとんどが闇から闇である。仮に捕まったところで経済事犯はほとんどが執行猶予つきである。

歴史を知らないからこそ今回は「100年来の不況だ」などというセリフが出てくるのだ。タリサ総裁だって「10年前の通貨危機よりはマシだ」と言い切っているではないか?

タイのアピシット政権とまではいかなくとも、次の日本の政権は経済が良く分かっている政治家に担ってもらいたいものである。ウルトラ保守主義だけではどうにもならないことは良く分かった。


TE09-3.タイの09年1Qはマイナス7.1%成長(09年5月26日)

NESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると09年1Q(1~3月)の経済成長率は-7.1%と08/4Qの-4.2%にくらべさらにマイナス幅を広げた。

マイナスになった最大の要因は輸出が08/3Q+11.2%と好調だったものが4Qには前年同期比-8.6と大幅なマイナスり、それが09/1Qには-16.4%にまで減少したためである。

輸出減に引きずられて製造業が-14.9%と08/4Q=-6.8%からさらにマイナス幅を拡大した。

建設の-7.9%(08/4Q=-12.8%)、運輸・通信の-6.5%(08/4Q=-10.6%)、ホテル・レストランの-5.0%(08/4Q=-7.7%)、商業-4.0%(08/4Q=-3.2%)と総崩れの中で、金融が+4.2%(08/4Q=+5.0%)であった。

農業部門は3.5%と(08/4Q=1.8%)とそこそこの貢献をした。


不況の影響と、タイの政治的混乱への過剰反応から外国からの観光客が減ってきており、ホテルは-5.0%(08/4Q=-7.7%となった。

民間消費は-2.6%(08/4Q=2.2%)とやはり雇用の悪化を反映してマイナスになった。

固定資本形成は民間が-17.7%(08/4Q=-1.3%)と大きく減少した。これは不況の影響によるものであり、すぐにはプラスにはならない。政府も-9.1%(08/4Q=-10.2%)とマイナス幅が大きい。政府関係の投資は政治的混乱が落ち着きつつあり、これからは安定に向かっていくであろう。

輸入は-31.4%と(08/4Q=+1.0%)へと大幅にマイナスになった。輸出用の中間材料と石油消費減が影響している。

私自身は今年のタイ経済は-2~3%のマイナス成長は避けられないと思うが、見かけのGDPの数字がどうであれタイの経済の中長期展望は明るいとみている。

今回の不況からの回復も他のASEAN諸国に比べタイが最も早いであろう。それは工業化のレベルがタイは高く、全般的に設備・技術も比較的高度化されているからである。

政治的にもタクシン派の暴力的な運動により4月のサミット延期、ソンクラン騒乱を契機にタクシン派は急速に国民の支持を失いつつある。逆にアピシット首相への求心力は高まり、タイは真の民主化に向かった大きく前進した。

表09-1-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

 

表09-1-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

資料;NESDB


TE09-4.タイの輸出、09年5月も不振続く(09年6月20日)

タイの5月の輸出はドル・ベースで116.5億ドルとなり、前年同月比で26.6%のマイナスになった。バーツ換算では4,115億8000満バーツであり、17%のマイナスである。

コメの輸出は735,048トンと前年同月比15.9%の減であったが、金額ではマイナス38.1%と大きく減少した。これはいうまでもなく国際米価の下落を反映している。

ゴムは169,162トンと19.6%の減少となったが、金額ベースではマイアンス21.7%であった。

工業製品の輸出の数字は明らかにされていないが、同様な傾向にあることは間違いない。ただし、エレクトロニクス関連はやや上向いているという。

5月の輸入は92.5億ドルと前年同月比-34.7%であった。貿易収支は24億ドルの黒字であった。

09年1~5月の輸入は458.1億ドルで、前年同期比63.8%減となり、貿易黒字は100.5億ドルに達した。このため、タイ・バーツはこのところ強めに推移しており、これがいっそう輸出を困難にしている。

アジア各国は輸出の大幅減を上回る、輸入のさらなる大幅減という傾向が見られ、これがかえって世界経済の回復の足かせにもなりかねない。

今年に入ってからの輸出は一向に改善される兆しが見えず、このままでは2008年比20%程度のマイナスになることもありうる。このままでは2009年のタイの経済成長率はマイナス5%(1Q=-7.1%)程度にまで落ちることも考えられる。(今のところの政府見通しは-2.5~-3.5%)

これは韓国、台湾をはじめ東南アジア各国に見られる共通の現象であり、米国、ヨーロッパ、日本などの需要増加がない限り、回復は見込めない。ただし、タイの場合は中国向けの比率が比較的高いのでやや有利である。

タイ政府は内需振興策に本格的に取り組んでおり、先ごろ4,000億バーツ(≒1兆1,500億円)の政府借り入れを議会が承認し、首都圏鉄道網などの大型案件がようやく動き出すことになった。しかし、実際は税収減の穴埋めにかなりの部分が当てられるおそれがある。目下、上院で審議中であるが特に問題はない。

政府はさらに4,000億バーツの追加借り入れを検討中である。これはおそらく8月には実施に移されると見られている。

TE09-5.タイの自動車生産目標を130万台から94万台に引き下げ(09年6月23日)

タイ産業連盟(FTI)は09年の自動車生産の目標を当初の年間130万台から94万台に下方修正すると発表した。(2008年は約140万台)

輸出向けは当初の目標の78万4千台から51万台に引き下げ、国内向け生産台数も51万6千台から43万台に引き下げられた。

タイの経済自体は最悪期を脱しつつあるという見方が出てきているが、エレクトロニクス関連の輸出は比較的早目の回復が期待できるものの、自動車はやや遅れ気味である。タイの乗用車生産は低燃費の小型車が多いので、世界的な需要回復にうまく乗れる可能性はあるが、今のところ目だった効果はみられない。

また、最近のタイの話題としてバンコクで4,000台の天然ガスを使用するバスをリース契約するという計画が出されているが、バスは全量輸入するという計画の上に、リース代やメンテナンス費用が異常に高いということで政治問題化している。

これは民主党と連立関係にあるネーウィン率いるブーム・チャイ・タイ党から出ているソポン(Sophon Saram)交通相が提案しているものである。

当然、利権のニオイふんぷんということで政府部内はもとより議会内外に論争を巻き起こしている。結論としては政府のシンク・タンクであるNESDB(国民経済社会開発委員会)が検討して、結論を出すことになっているが、バスの国産は十分可能だし、コストもかなり下げられるという結論が出てくるものと思われる。

アピシット政権も少数与党のため、あまり素性の良くない政治家とも連立を組まざるを得ず、かえって国民から疑惑の目で見られるという悲哀を味わっている。早めに総選挙を行い、白黒をつけたほうがよさそうである。


T09-6.タイ政府のコメ在庫は700万トンに達する(09年7月15日)


タイ政府が農民から買い上げた精米在庫が溜まり、公式統計の600万トンを突破して約700万㌧にまで達しつつあるという。昨年の米価高騰ブームはいまや完全に沈静化しているが、タイ政府はトン当たり345ドルの固定価格でコメを買い続けてという。

これは、タイ農民が仲買業者の買い叩きから救うための方策ではあったが、片やコメの国際相場と需給関係があり、「農民救済」のためにコメを政府が買い上げるリスクが今回露呈した。

政府は、現在栽培中のコメが市場に出てくる11月までにかなりの程度の処分をしなければならないが、政府米の放出によって国内市場は値下げを余儀なくされる。

この農民救済策は中部タイの富農には大きなメリットはあったが、東北タイの貧農層には大してメリットがなかったとも言われている。というのは貧農はコメの外販余力が少ないからだという。

また、この政府買い上げ制度は汚職の原因にもなってきた。倉庫業者やコメを安く払い下げてもらった輸出業者から、少なからぬ政治家がワイロを受け取っているといわれている。

すでにタイ政府はコメの精米と保管の費用だけで110億バーツ(約310億円)負担しており、コメの在庫を処分するとさらに200億ばーつ(約560億円)の欠損が出る見込みだという。

民主党政権としてはコメの買い上げ制度よりも「補助金」制度で農民を救済したい意向だが連立している他党の反対で政策変更は難しいという。

タクシン元首相は2001年に政権をとってから、農民の借金の棒引きなど、農民対象に典型的なポピュリズム政策をとってきたので民主党政権も同様なポピュリズム政策をとらざるをえない。

それ以外にも「30バーツ診療」政策などタイ政府の財政を圧迫する要因には事欠かない。それらの政策で貧農はあるていど救済されたことは事実であるが、そのコストを支払っているのはバンコクの中産階級である。タクシン政策のツケは当分なくなりそうもない。

(Bangkok Post, BBC 09年7月15日 電子版参照)

T09-7.タイの6月の輸出-25.96%と依然回復せず(09年7月20日)

タイの商務省の発表によれば6月の輸出は123億3.500万ドルと前年同月比-25.9%であった。輸入は113億9800万ドルと同-29.3%となり、貿易黒字は9億3700万ドルであった。

5月の輸出はドル・ベースで116.5億ドルとなり、前年同月比で26.6%のマイナスであったから、対5月比では5.8%の増加になったが、輸出の回復感はまだ出てこない。

09年1~6月合計では輸出は682億700万ドルと前年同期比-23.5%、輸入は572億1600万ドル、同-35.4%、貿易黒字は109億9100万ドルであった。

貿易黒字は増えているがこれがバーツ高の原因になっているが、工業製品の輸出の回復の展望は未だに開けていない。韓国や台湾の輸出が回復すればタイも2~3ヶ月のタイム・ラグで回復に向かうと考えられる。タイの工業製品が国際競争力がないということではない。

タクシン元首相は「オレが首相に返り咲けば、内需も輸出も回復する」などと赤シャツのデモ隊の集会で電話演説しているが、今のアピシット首相は「タクシンの失政の後始末」に苦しんでいるのである。

タイの日本人社会でもタクシンを熱烈に支持しているグループがいるらしい。支持をするのはご自由だが、ブログなどを使ってタイ国内でバカ騒ぎをすることだけは止めて欲しいものだ。日本人の評判を悪くするだけである。愚にもつかない気勢をあげる前にもっとマトモに勉強しろといいたい。


T09-8.タイの09年2Qの成長率は-4.9%やや改善か?(09年8月24日)

NESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると09年2Q(4~6月)の経済成長率は-4.9%(1Q=-7.1%)と発表した。

マイナス幅はやや縮小したものの依然大きなマイナスである。その最大の要因は輸出が-21.8%と1Q=-16.7%よりも悪化したためである。

輸出減に引きずられて製造業が-8.4%となったが、1Qは-14.9%であった。やや改善を見せているのは政府の投資(+9.6%)と消費(+5.9%)が多少なりとも貢献していると見ることができよう。

建設は2.5%のプラスである。1Qは-7.9%(08/4Q=-12.8%)であった。運輸・通信の-7.6%(1Q=-6.5%)、ホテル・レストランの-5.6%(1Q=-6.0%)、商業-3.3%(1Q=-4.0%)と総崩れの中で、金融が+5.6%(1Q=+4.0%)であった。

農業部門は-2.7%(1Q=3.5%)とマイナスになったのはやや深刻である。


民間消費は-2.3%(1Q=-2.6%)とやはり雇用の悪化を反映してマイナスになった。東南アジア各国とも大体条件は同じはずである。インドネシアやフィリピンの数字がおかしいと見るべきであろう。

固定資本形成は民間が-16.1%と1Q=-17.7%に引き続き不振である。政府関係の投資も消費もプラスになった。いわゆる景気対策の効果であるが、全体に及ぼす影響力はさほど大きくはない。

NESDBは09年は-3~-3.5%と前の見通し-2.5~-3.5%よりも成長率をやや低めに見直した。これは輸出が依然ハッキリした改善傾向をみせていないためである。しかし、経済としては1Qが底であり、家電製品の売り上げなど個々には改善を見せているという。

表09-8-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

 2006  2007 2008 08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2q
農林水産 4.6 1.8 5.1 8.5 9.6 1.6 3.4
-2.7
製造業 6.0 6.2 3.9 7.7 6.1 -6.7 -14.4
-8.4
電・ガ・水 4.7 5.1 4.3 5.8 2.9 2.5 -2.7 -0.8
建設 4.3 1.6 -4.7 -3.4 -4.5 -12.8 -7.9 2.5
商業 4.4 4.6 1.9 3.4 3.1 -3.2 -4.0 -3.3
運輸通信 6.2 5.9 -0.4 3.6 1.5 -10.6 -6.5 -7.6
ホテル等 11.1 4.1 1.6 6.5 0.3 -7.7 -6.0 -5.6
金融 3.2 6.5 8.0 8.8 8.0 5.5 4.0 5.6
不動産賃貸等 5.5 3.4 0.2 -0.4 0.7 -2.3 -3.7 0.4
政府サービス 0.9 3.0 -1.3 1.0 -2.9 3.8 3.2 0.6
その他 3.7 4.1 -0.9 -1.5 -1.6
2.3 2.0
-0.8
GDP 5.1 5.0 2.6 5.3 3.9 -4.2 -7.1
-4.9

 

表09-8-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

   2006  2007 2008 08/2Q 08/3Q 08/4Q 09/1Q 09/2Q
GDP  5.2
5.0 2.6 5.3 3.9 -4.2 -7.1 -4.9
民間消費 3.0 1.6 2.5 2.5 2.7 2.2 -2.5 -2..3
政府消費 2.4 9.2 0.5
-3.7 -2.9 11.0 3.6 5.9
総固定資本形成 3.9 1.3 1.1 1.9 0.6 -3.3 -15.8 -10.1
 民間 4.1
0.6
3.2 4.3 3.5 -1.3 -17.7 -16.1
 政府 3.3
3.4  -4.8 -5.2 -5.5
-10.2 -9.1 9.6
輸出 9.1 7.1 5.4
11.9 11.2 -8.9 -16.7 -21.8
輸入 3.3 3.4 7.5 6.7 13.1 1.0 -31.6 -25.3

資料;NESDB09年8月24日発表。


T09-9.タイの09/3Qの成長率は-2.8%まで回復(09年11月24日

NESDB(国民経済社会開発委員会)の発表によると09年3Q(7~9月)の経済成長率は-2.8%(2Q=4.9%、1Q=-7.1%)であると発表した。

マイナス幅はかなり縮小してきた。輸出が-15.0%と2Q=-21.7%よりもやや改善したものの依然マイナスが大きい。09年10月の輸出は前年同月比-3.0%まで戻ってきているので2010年にはプラス成長に戻ることはほぼ間違いない。

輸出減に引きずられて製造業が-5.9%(2Q=-8.4%、1Qは-14.4%)とやや改善しつつある。

農業部門は-2.5%(2Q=-1.35%)となっているが、米の輸出など次第に回復のきざしがあり、さほど悲観材料ではない。

政府の投資(+8.0%)と消費(+4.7)と政府は精一杯の頑張りをみせている。

民間消費は-1.3%と2Q=-2.2%よりも少しは良くなっているが雇用の悪化が続いているためにマイナスから脱するのは2010年に入ってからであろう。

2009年は通年で-3%、2010年はプラス3~4%と当局者は予想しているという。全ては輸出如何である。

表09-9-1 タイ部門別実質GDP伸び率(1988年価格、%)           

 

表09-9-2.タイ実質国内総支出伸び率(%)

資料;NESDB09年11月23
日発表。