EUの経済危機⇒クリック


ギリシャの経済危機


G8で米国とフランスがギリシャに声援(2012-5-20)


ギリシャではユ-ロ脱退の懸念から銀行取付騒動(2012-5-17)

ギリシャの再選挙は6月17日、選挙管理内閣が近く発足(2012-5-16


ギリシャは6月に選挙のやり直し、左翼政権誕生の可能性(2012-5-15)

左翼民主党(Democratic Left)が再選挙回避で与党連合に参加の可能性(2012-5-10)


ショイブレ・ドイツ財務相曰く、「ギリシャがユーロを離脱するのはご自由である」(2012-5-10)

ギリシャの国会議員選挙で与党が大敗、新左翼連合が第2党に(2012-5-7)


ギリシャの軍事予算はユーロ圏でも突出(2012-4-21)

ギリシャは農業人口が12%と高い(2012-4-16)

ギリシャの77歳の老人の自殺の反響(2012-4-6)

ギリシャの債務問題決着へ(2012-3-7)

カネが無いのはクビ(財政主権)がないのと同じ(2012-1-30)

日曜はダメかーいわれなきギリシャ批判(2011-9-25)

(ギリシャの選択⇒2011-11-11)

(ギリシャ新政権、超緊縮予算を決定⇒2011-12-11)



日曜はダメかーいわれなきギリシャ批判(2011-9-25)

ギリシャ政府が借金(国債)が払えそうもなく、いわゆる「デフォールト」を起こしそうだというので、世界的にパニック現象が起こりつつあり、欧米のみならず、日本をはじめとするアジア諸国も株価の急激な下落に遭遇している。アジア株は9月26日も暴落を続けたが、ヨーロッパ株は26日はそろってプラスに転じている。

IMFがいうにはギリシャだけでなく、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリーも同様な危機にあり、ヨーロッパの銀行は4,100億ドルもの危険な債権を抱えているという。約30兆円であるが、日本は1980年代のバブル崩壊後100兆円くらいの打撃を金融機関が被った。

ギリシャの銀行と政府の抱えている実際の負債はいずれはヘアー・カット(債権放棄)と救済融資によってしか短期的には処理できないが、各国の思惑があってなかなか意見の一致を見ずに、6週間はみないと解決案(Options)が出せないという。

ということは意外に切羽詰まった問題ではないということであろう。最もゴタ付いているのは言うまでもなくドイツである。ドイツの主要銀行の貸し込みが最も多く、いざヘアー・カットという事態になれば最も打撃をうけざるを得ないからである。「獣(しし)食った報い」だから仕方がないが、日本の銀行と違ってドイツの銀行は「往生際が悪い」らしい。

テレビ報道によるとギリシャが財政危機に陥ったのは、役人がたるんでいて、税金をきちんと徴収しないだとか労働者がロクに働かないだとか、誰の口まねかしらないが、悪いのはギリシャ人そのものと政府であると悪口雑言の限りを尽くしている。

私は非工業国で観光資源以外これといった外貨収入のあてのないギリシャが、ユーロという域内共通通貨(2001年から)のもとで、域内関税をゼロにして長年やっていればこうなるのは当たり前だといいたい。

ギリシャ人は10人に1人は役人だなどといって「役人天国」のように言われるが、工場で働こうにも職場が極端に少ないのだ。工業製品はドイツが中心になって供給しており、ドイツの銀行はギリシャの銀行に多額の債権を持っている。

ユーロと無関税の体制の中ではギリシャはどうにも生きていけないのである。今からどんな産業を起こせというのか?ギリシャがドイツのような先進工業国と同じ土俵で最初からやっていけるわけはない。それはポルトガルもスペインの同じである。程度のさこそあれイタリーも決して立派な工業国とは言えない。まるで金魚バチの中に金魚とナマズが一緒にいるみたいなものである

それに、近年は中国もEUへの輸出を急激に伸ばしている。そうなるとEUの諸国は「雑貨」ですら国内生産ができなくなる。グローバリズムやWTO体制も確かに問題を含んでいる。ドーハ・ラウンドなどまとまるはずがない。

中国はべつとして、EU内部でユーロという共通通貨を作ったのは最大の間違いである。食えない国が出てくることを経済学者は予見できなかったのであろうか?ネオ・リベラルの経済学者の頭の中には最初からそういう問題意識は存在しない。

労賃が相対的に安くなれば「たちどころに其国に自動車工場であれ家電工場であれ移転する」はずだから問題が起こりようがないのである。なんとも幼稚な経済学である。しかもせれが政府当局者の経済学となってしまっては大変な実害が起こる。日本もその被害を国民の大多数が受けている。
1960年代のギリシャにはそんな問題はなかった。ギリシャといえば、1960年にはジュールス・ダッシン監督、メリナ・メルクール主演の「日曜はダメよ」という映画が大ヒットした。

ダッシン監督は「赤狩り」でハリウッドを追われ、メリナ・メルクールはその夫人であった(双方とも再婚)。私の青春時代の記憶に残る面白い映画であった。メリナ・メルクールはその後社会党の国会議員になり、文化相にもなっている。ともかく「存在感」にみちた大女優であった。

いまやギリシャは何もかもダメになりつつあるようだ。労働者は30~40%も賃金をカットされ、大学での若者には食がなく、職場から多くの人が追い出されるという。しかし、彼らにはそもそも何の責任もない。

IMFは1997-8年のアジアの通貨危機と同じ手法で、欧米の銀行を救済するために、ギリシャ国民に犠牲を迫ろうとしている。そこにあるのはまさに「残酷物語である。


(ギリシャの選択⇒2011-11-11)

ギリシャはパパンドゥル-(George Papandreou)首相が辞任し新しい首相としてヨーロッパ中央銀行(European Central Bank=ECB)もと副総裁のパパデモス(Lucas Papademos)氏が指名され、近く就任する。ギリシャはさまざまな改革要因を受け入れ、結局ドイツ、フランス、EU、ECB,IMFからの80億ユ-ロ(約8400億円)の援助を受けユーロ圏内にとどまることとなった。

パパデモス新首相は国債の50%ヘアー・カット(棒引き)などの未決着の条件交渉をツメなければならないが2012年の2月中旬には議会選挙を控えている。新閣僚は与党の社会党(PASOK)のみならず野党の新民主党(New Democracy)からも副首相として入閣してもらうことにしているという。挙国一致内閣である。そうしなければこの難局は乗り切れない。

しかし現在のユーロ体制にとどまってもギリシャの未来が開けることにはまったくならない。ギリシャ国民は現在の自ら招いた(きりぎりす的に)とされる責め苦を背負い続けこれから先半永久的に忍ばなければならない。一般国民にとっては何のためにユーロ圏に入ったのかということになる。

ユーロという強い通貨体制のもとではギリシャ経済は輸出に活路を見出すことはできない。むしろ昔通りの
ドラクマ(Drachma)という独自の通貨体制に戻り、貿易赤字の増減によって通貨価値が変動するという「柔軟な通貨システム」に戻すほかない。ユーロ条約の取り決めでドラクマにもどることはありえない。その場合にその場合ギリシャはEU(欧州共同体)に残は残りうる。

いまのユーロ体制の下ではギリシャ製品は国際競争力を持ちえない。しかし、強い通貨のもとえは輸入はいくらでも入ってきてしまう。つまり、底抜けの貿易赤字国であり続けることになる。通貨が弱くなれば、輸入物価が高騰し、いやでも輸入にブレーキがかかるし、輸出はやりやすくなる。しかし、ギリシャは国営企業が多く、労働生産性も押しなべて低いといわれる。縫製加工業のような中小企業を育成しなおさなければならない。それには時間がかかる。

もちろん、ユーロからドラクマに変更するには準備期間も要るし、今までの債務をどうしていくかとか多くの問題が残されている。しかし、このままではギリシャ人はユーロ体制下で恒常的に失業や賃金切り下げなどを強いられるばかりか他国民から「ヤッカイモノ」扱いを強いられる。こんなことにギリシャ人がいつまで耐えられるはずがない。

あきれたことに、日本の学者だけでなく欧米にもギリシャは財政規律をキチンと守り、税金をキチントとれば問題ないみたいな議論をする人がすくなくない。これは「経済学の貧困」である。

ギリシャだけでなくポルトガルやスペインやイタリーも工業国としてはかなり遅れている。フランスも同じ体質である。イタリーは繊維製品と家電製品をなぜあれだけ大量に輸入しなければならないのか(特に中国から)疑問である:。それでいて失業率が10%だなどというのはどう考えてもおかしい。

ギリシャの貿易統計をみると下表のようにたとえば2008年では輸出252億ドルに対して輸入は778億ドルである。貿易収支の赤字は524億ドルと輸出額の2倍以上に達している。この分を観光収入で補えばよいのだがそうは簡単にはいくまい。ちなみに2003年は輸出132億ドル、輸入444億ドルで貿易収支の赤字は312億ドルであった。

抜本的な輸入削減策と輸出振興策が必要だが、ユーロ体制下で周辺国からの借金が容易にできればそいう努力をしないでも今までは済んできたということであろう。

表1 ギリシャの輸出(単位:100万$)

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
Austria 118 158 154 169 207 206 191
Belgium 204 242 234 271 383 324 310
Cyprus 625 707 893 1,323 1,547 1,626 1,460
France 581 643 718 921 987 992 750
Germany 1,756 2,000 2,138 2,306 2,722 2,729 2,227
Italy 1,466 1,571 1,801 2,343 2,574 2,995 2,214
Netherland 357 409 412 451 477 594 520
Spain 501 509 618 839 892 756 504
Euro Area 5,971 6,670 7,323 9,130 10,436 11,233 8,740
United Kingdom 996 1,146 1,160 1,746 1,285 1,218 881
USA 758 812 912 911 980 1,279 992
Japan 82 74 55 72 173 48 40
Korea 73 50 60 42 45 43 36
China 61 75 97 157 152 154 130
Albania 353 428 430 471 621 557 541
Bulgaria 829 970 1,009 1,324 1,523 1,846 1,351
Romania 347 477 504 752 1,056 1,151 778
Russia 325 335 336 404 494 614 329
Western Hemis 93 113 285 224 276 249 191
Middle East 671 937 1,262 1,547 1,187 1,257 1,250
World Total 13,195 14,996 15,511 20,180 23,472 25,231 19,958



表2 ギリシャの輸入(単位:100万$)

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
Austria 444 558 568 730 93 1,151 820
Belgium 1,631 1954 1,952 2,222 2,923 3,174 2,591
Cyprus 133 253 368 525 841 992 869
France 3,002 3,353 3,118 3,780 4,241 4,631 3,642
Germany 5,663 7,009 6,982 7,987 9,813 10,748 8,200
Italy 5,619 6,767 6,740 7,315 8,926 1,334 7,591
Netherland 2,378 2,911 2,993 3,276 3,810 4,337 3,594
Spain 1,634 2,002 2,143 2,258 2,760 3,174 2,435
Euro Area 21,805 26,227 26,463 30,121 36,647 40,931 31,609
United Kingdom 1,856 2,188 2,034 2,366 2,751 2,904 2,797
USA 2,282 2,335 1,912 1,139 1,727 2,421 1,821
Japan 1,908 1,542 1,160 1,611 1,694 1,362 963
Korea 2,474 2,148 1,470 2,658 2,550 2,076 3,394
China 1,389 1,767 2,117 2,279 3,828 4,911 4,231
Albania 20 23 24 42 94 147 106
Bulgaria 423 577 731 978 1,188 1,737 1,184
Romania 401 625 540 635 734 790 625
Russia 2,678 2,876 4,213 4,493 4,295 6,635 1,291
Western Hemis 510 856 830 794 1,311 1,281 1,300
Middle East 3,058 4,004 5,367 6,449 6,387 9,934 1,492
World Total 44,375 51,559 49,817 59,121 75,100 77,831 59,293


表3 ギリシャの貿易収支(単位:100万$)

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
Austria -326 -400 -414 -561 114 -945 -629
Belgium -1,427 -1,712 -1,718 -1,951 -2,540 -2,850 -2,281
Cyprus 492 454 525 798 706 634 591
France -2,421 -2,710 -2,400 -2,859 -3,254 -3,639 -2,892
Germany -3,907 -5,009 -4,844 -5,681 -7,091 -8,019 -5,973
Italy -4,153 -5,196 -4,939 -4,972 -6,352 1,661 -5,377
Netherland -2,021 -2,502 -2,581 -2,825 -3,333 -3,743 -3,074
Spain -1,133 -1,493 -1,525 -1,419 -1,868 -2,418 -1,931
Euro Area -15,834 -19,557 -19,140 -20,991 -26,211 -29,698 -22,869
United Kingdom -860 -1,042 -874 -620 -1,466 -1,686 -1,916
USA -1,524 -1,523 -1,000 -228 -747 -1,142 -829
Japan -1,826 -1,468 -1,105 -1,539 -1,521
-1,314 -923
Korea -2,401 -2,098 -1,410 -2,616 -2,505 -2,033 -3,358
China -1,328 -1,692 -2,020 -2,122 -3,676 -4,757 -4,101
Albania 333 405 406 429 527 410 435
Bulgaria 406 393 278 346 335 109 167
Romania -54 -148 -36 117 322 361 153
Russia -2,353 -2,541 -3,877 -4,089 -3,801 -6,021 -962
Western Hemis -417 -743 -545 -570 -1,035 -1,032 -1,109
Middle East -2,387 -3,067 -4,105 -4,902 -5,200 -8,677 -242
World Total -31,180 -36,563 -34,306 -38,941 -51,628 -52,600 -39,335

IMF

表4 ギリシャの貿易収支

輸出 輸入 収支
04 414 600 -186
05 437 613 -176
06 475 698 -223
07 514 786 -272
08 555 860 -305
09 443 695 -252
10 482 677 -195
11/1Q 118 154 -36
11/2Q 103 188 -85

IFS2011年8月号より


ギリシャ新政権、超緊縮予算を決定⇒2011-12-11


新たに発足したテクノクラート政権(ルーカス・パパデモス=Lucas Papademos首相)は超緊縮予算案を議会に提出し258体8h等の圧倒的多数の賛成で成立させた。議会は一応与党勢力があり、ギリシャ社会党のPASOK,新民主党ND、右翼政党LAOSの3楼である。

この緊縮予算はトロイカと呼ばれるEU(Europran Union), ECS(European Central Bank)およびIMFからの要求にそって作られたものである。これによって80億ユーロ(約8,300億円)の借り入れが可能になった。これによって年内の債務不履行はは回避されt。

従来の予算に比べ50億ユーロの歳出削減と36億ユーロの増税、来年1月1日からの年金給付の15%カット、公務員給与のそれ以上のカットが織り込まれている。それでも財政赤字はGDPの5.4%に達する見込みである。EUが現在認めているのは赤字3%まで出ある。

パパデモス政権は来年3月の選挙までだが、PASOK幹部はさらに2~3年はやってもらうことになるという見通しを述べている。


カネが無いのはクビ(財政主権)がないのと同じ(2012-1-30)


ギリシャは債券保有者に対して50%のヘア・カット(債権放棄)ということで昨年末一応の合意を見たが、それでもなおデフォールトの危険があるとして、第2弾の債務削減交渉がおこなわれつつある。そのきっかけとなったのは例年スイスのダボス(Davos)で行われる世界経済フォーラムでギリシャ危機問題がいまだ決着していないことが明らかにされたためである。

イギリスのオズボーン財務相が「2012年のはじめになっても依然ギリシャについて協議しているということは、問題がいまだに対処されていないことを物語る」と述べた。

EUの首脳は急きょ1月30日にブラッセルにあつまり、これら一連の問題を協議することになった。

ギリシャ問題の中心はさらなる「債務軽減」であるが、これをやるにはギリシャの全ての政党が一致してEUの提示する改革案に賛成することが必要だとドイツのジョイブレ財務相が言明している。また、EUと銀行が選出する「EU予算委員会」がギリシャ政府の予算執行権を取り上げるという案が検討されている。

これは、いうまでもなく国家主権の剥奪である。ギリシャ政府が強く反発していることはいうまでもない。ジョイブレ財務相は「ギリシャはこの案をのまなければカネはこれ以上引き出させない」と言っている。ユーロ体制もついに来るべきところまで来つつあるといえよう。

ドイツの言い分としては2010年にギリシャが1,100億ユーロの救済を受けた時に、「今後は赤字削減目標を掲げてきちんと実行する」と約束したにも関わらず、今回また総額1,300億ユーロの救済要請であり、許しがたいということであろう。

しかし、ギリシャにとっては「稼ぐ手段が見つからない」まま毎年貿易収支の赤字を積み上げ、財政も赤字を続けてきたのである。「心がけを変えれば」どうにかなるという問題ではない。ユーロ体制下にいること自体に無理があったのである。いくら制裁を厳しくしても改善は見込めないのである。

ギリシャ政府の選択肢は「デフォールト」しかなくなりつつある。その後はEUによるギリシャ政府の共同管理などできるはずもなく、ユーロからの離脱に向かっていくほかないであろう。


ギリシャの債務問題決着へ(2012-3-7)

ギリシャの債務交換(債務の切り捨て)は53.5%の債権放棄という線が出されており、それに合意して団体で債務交換がおこなわれるにはには債券者の75~%の参加が必要とされていた。しかし、債権放棄に合意できないといって最後まで抵抗していた銀行もかなりあり、一時は予断を許さないという観測も流れていた。そのため3月7日の日経平均も下げの一因となったといわれていた。

しかし、ギリシャ政府は「債務交換」に応じない債券者の債務は切り捨てる(デフォールトする)という公的債務管理庁(PDMA)のクリストドゥル長官の強硬発言もあり、土壇場でドイツ、フランスなどの大手銀行が次々合意を表明したため、7日現在ではすでに60%近くが合意し「債務交換」はなんとか成立にこぎつけた。7日のヨーロッパ株式は一斉に上げに転じた。

ヨーロッパの銀行にしても2月29日に実施されたヨーロッパ中央銀行の第2次融資には800行が申し込みを行い5,295億€が3年間金利1%で貸し出された(2011年12月21日の第1次融資には523行が申請し4,890億€が貸し出された。)

したがって、各行とも手元資金は潤沢であり、債務切捨て(債務交換)に応じても、損失は出るが資金繰りには影響がほとんどなく、また交換を拒否すればすべてを失う可能性が高いという判断に立ったものと考えられる。

しかし、ここにきて主に米国系のヘッジ・ファンド(Greylock,Marathon, Saba, Vegaなど)がギリシャ国債の4分の1をかき集めギリシャ政府と個別に交渉し、少しでも有利な条件を引き出そうとしているらしいが、結局彼らも同意するであろうことは間違いない。

いずれにせよギリシャ政府は国内法に基ずいて「強制手段」をとるとしているのでこの問題はこれで決着へと進んだ。3月8日の午後10時が締切である。

実際問題としてこういう巨額債務問題では借り手国のほうが貸し手国よりも実際の立場は強いのである。かつてのインドネシアがその典型的な例であった。貸し手のほうは「債権国会議」なるものを開いて毎年、インドネシの経済をどう立て直すかというテーマを中心に大会議を開いていた。

ギリシャはこれから経済の再建に取り組まなければならないが、現在のユーロ体制下では輸出拡大のための産業基盤の整備などという話は先が遠く、経済引き締めにより民需を抑制し輸入を抑えることぐらいしか考えられない。ギリシャ経済の自立は夢のまた夢である。


ギリシャの77歳の老人の自殺の反響(2012-4-6)

4月3日(火)ギリシャで77歳の年金生活者が白昼アテネの国会議事堂前で自らに短銃を発砲し、壮絶な自殺を遂げた。名前はディミトリス・クリストウラス(Dimitris Christoulas)という元薬剤師であった。かれは次のような遺書を残していた。

「今のギリシャ政府は第2次大戦中にナチに占領されていた時の政府と変わらない。私はほかの何十万人の同年齢の人々と同様、政府から予算不足を理由に年金を剥奪された。・・・私は正義を得られない以上、ゴミ箱をあさったり、子供たちの重荷になる前に、潔くわが生涯を終わらせよう。」という内容のものであり、ギリシャの人々に深い悲しみと憤りを与えた。

彼の遺書は最後にこう締めくくられている「未来に希望を持てない若者はいつの日か武器をとって蜂起し、裏切り者をシンタグマ・広場 (Syntagma Square)に引きずり出し、1945年のイタリーのムッソリーニのように逆さづりにするであろう。」

こういうことがユーロ圏の各地で起こっている反面、ドイツは通貨のユーロ安で輸出が大いに伸び、雇用も拡大し、内需も旺盛でわが世の春を謳歌している。ドイツ人に言わせれば、こうなったのもドイツは構造改革をしっかり行い、輸出競争力を強化するための技術革新や投資を行ってきたおかげである。なぜ我々の努力の成果を他の貧しい国々の人々に分かち与えなければならないのかということである。

これがEUの理念とされる「ヨーロッパの統一がもたらす平和と繁栄」なのであろうか?今やドイツは居丈高に自らの繁栄を誇り、他国をさげすみ、どこに行ってもドイツ語で各国政府に「もっと財政を引き締め、国民に節約と規律というものを教えろ」と命令を下す存在になってきた。

強者が弱者をいじめるような現実を前にヨーロッパの統一などという空虚なセリフは色あせていくだけである。だからドイツの政府当局者や経済学者や「ユーロ体制の特権階級」は通貨ユーロの持つ「本質的な矛盾」など口にできないのだ。


ギリシャは農業人口が12%と高い(2012-4-16

WSJ(4月16日)によればギリシャの農業人口は12%と高く、ポルトガルの7%がこれに次ぐ。ユーロ圏の平均は3%でドイツは2%でありスペインとイタリーは4%である。ギリシャは小規模農家が多い。生産性は低い。EUには「農村発展政策(Rual Development Policy)」なるものが存在する。

農村地帯は地価が安い。しかし、都市の賃金が高いので脱農するものが多い。この傾向は止まらない。しかし、工業化が遅れたギリシャではまだ多くの人が農業に従事している。



ギリシャの軍事予算はユーロ圏でも突出(2012-4-21)

ギリシャ経済には隠された秘密があった。それは軍事支出である。イギリスのガーディアン(Guardian)紙が2012-4-20付のインターネット版で詳細記事を書いている。ギリシャの労働組合連合(GSEE)のイアニス(Yiannis Pangopoulos)委員長がドイツのメルケル首相と面談し、ギリシャの軍事支出についてどう思うかという質問を発したらしい。というのはギリシャの労働者は賃金を大幅カットされ、年金も減額されているのに、ドイツからの武器購入だけは相変わらず行われているからである。

メルケル首相は「それはギリシャ政府の意向であり、ドイツの責任ではない」と即答したという。ギリシャは潜水艦などの購買で多年にわたりドイツ企業に借金を支払い続けているという。ギリシャ政府は先に決められた1,300億€(13兆9000億円)の緊急融資(2015年まで)の交渉の中で軍事支出を400億€を削減することで合意した。

それでも国民所得の4%が軍事費でユーロ圏の平均の2%を大幅に上回っている
。ギリシャはキプロス問題で対トルコへの戦備を整える必要があるとして、最新式の潜水艦をドイツから購入したほか、1990年台末から数百台のレオパード式戦車、小型ミサイル、ミラージュ戦闘機、F-16戦闘機などを独、仏、米から次々購入してきた。

ギリシャが受けてきた国際援助はフランスとドイツから武器を購入するという条件が付けられていたのではないかという疑惑をギリシャ国民は抱いているという。1974年にトルコがキプロスの領有権を巡って軍事行動を起こして以来ギリシャは2,260億ユーロのを武器を購入してきたという専門家の分析がある。

今週、アキス(Akis Tsochadzopoulos)元国防相がドイツのフェロシュタール(Ferrostaal)社から潜水艦購入に際し、8億€(8億5000万円)のワイロを受け取った容疑で逮捕され、裁判にかけられている。容疑は12年前に4隻の214級潜水艦を同社から購入した際のキック・バックだという。

フェロシュタールはポルトガルとの取引でもワイロを支払ったことを認識しており、昨年今までの贈賄行為を謝罪し、総額1億4000万€(約150億円)の罰金支払いに応じたという。

ジーメンス(Siemens)社もギリシャ政府と「法廷外」で和解し、2004年のアテネ・オリンピック以前に閣僚などへのワイロについて認めてしかるべき(額は不明)の弁償金を支払った。マンデリス(Tassos Mandelis)元運輸相は1998年にジーメス社から10万€(1070万円)の支払を受けたことを認めている。

ギリシャでは汚職・腐敗がはびこっているという指摘は多いが、これにはドイツのフェロシュタールやジーメンスといった有力企業が持ちかけたワイロが多いことも事実である。ギリシャ国民は奢侈生活の果てに今日の苦境を招いたなどと不当な悪口を言われているが、それはどう見ても的外れである。

ギリシャとしてはEUがトルコとの平和協定に協力してくれれば、核も膨大な軍事支出を行わないでも済んだはずで、トルコとギリシャの対立を口実にしてドイツの軍事産業が多額の武器輸出をギリシャに対して行ってきたとギリシャ国民は言いたいところであろう。


ギリシャの国会議員選挙で与党が大敗、新左翼連合が第2党に(2012-5-7)


5月6日に行われたギリシャの国会議員選挙で、与党の新民主党が2009年の得票33.5%から18.9%に大きく後退したが第1党であり、ボーナスの50議席を獲得し合計108議席を得た。

従来第1党であった中道左派の社会党(Pasok)は43.9%から13.3%と壊滅的な打撃を受け議席数41で第3党に滑り落ちた。この新民主党とPasokが昨年の11月から連立政権をを作ってユーロ圏の「緊縮政策」に協力してきたが、今回両党合わせて149議席と過半数に及ばず、国民から厳しい評価を受けた。

一方急進左翼連合(Syriza)は16.8%と52議席を獲得し、第2党に躍進した。彼らは左翼グループと「みどりの党」の連合組織であり、「緊縮政策反対」の立場で国民の支持を集めた。彼らはEUにはおどまる意向である。

第4党は右翼の独立ギリシャ(Independent Greeks)党で10.6%の票を得た。(議席数は33)。パノス(Panos Kammenos)党首は最初から今の連立政権に参加するつもりはないと宣言している。
共産党は8.5%でも26議席は獲得した。

極右・ネオ・ナチのGolden Dawn(黄金の夜明け党)も6.9%の票を獲得し21議席を得た。

これ以外に民主左派党(Democratic Left)があり、6.1%で19議席を得た。同党はEUにはとどまる方針である。

新民主党のアントニス・サマラス(Antonis Samaras)党首は「救国内閣」を組織してユーロ圏にとどまり、そのうえで経済成長のためにユーロ圏/IMFとの協定の改定を目指すと語った。しかし、ドイツなどが頑として首を縦に振らない限り、どうにもならないことは目に見えている。

一方、急進左翼連合(Syriza)のアレクシス(Alexis Tsipras)代表は左翼連合政権を作り、「ギリシャ救済協定」を拒否していく(従わない)と述べた。このユーロ圏/IMF協定にサインした連合政府は国民の3分の1の支持しか得られなかったというのが彼の言い分である。そうしないとギリシャ人は際限もなく悲劇に追い込まれていくというのである。しかしSyrizaはEUにはとどまる意向である。

一方かつて第1党であったPasokの党首であり、財務相でもあったエバンゲロ(Evangelos Venizelos)氏は「広範な連合政権」を作り、ヨーロッパとの協調を維持していくべきだと主張している。

Pasokが政権にあった2010年にはギリシャは1,110億€の救済(bail out)資金を受けている。2012年には新民主党との連合政権で新たに1,300億ユーロの救済をうけた。

まだ開票の途中であり、最終議席が判明してから新たな動きが出てくるものと考えられる。今の与党連合と組む政党はが現れず、第2党のSyrizaに組閣の権利は移っているがこれまた困難である(5月7日現在)。

急進左翼連合(Syriza)の要求は次の5項目である。

①救済条件の撤廃。特に賃金と年金カット条項。
②労働法の改悪阻止。特に5月15日から「団体交渉圏」の剥奪条項を撤廃する。

③民主主義と社会正義を深化させる。
④毎年公的資金2,000億ユーロを受け入れる銀行についてのチェック。
⑤ギリシャの公的負債の原因を究明する特別委員会の設置。












上の図表では急進左翼連合(Syriza)が組閣するにはPasok(社会党)の41議席を集めても138議席にしかならず、右翼の独立ギリシャ党3議席をも取り込まないと組閣できない。また、共産党26議席は政権に参加しない。結局アレクシス・ツィプラス(38歳)首相誕生は無理で、6月初めに再選挙の公算が最も大である(5月9日)。彼らはEU/IMFとの協定を破棄し、ユーロから脱退するーEUからも脱退するという道を走っているように思える。そうなったのもメルケルーサルコジはギリシャ人を追い詰めすぎたかあらである。

上の犬の写真はメーデーの時にアテネに登場した犬である。「犬のごとく働くのはゴメンだ」というスローガンを咥えている。せめて「牛馬のごとく働け」というのであればまだ救いはあったかもしれない。働こうにも「職がなければ」どうにもならない。ここにメルケルの「財政規律」なるものの矛盾がある。ギリシャを経済的に搾取してきたのはドイツがその一翼を担ってきたという思いがギリシャ人にはある。すでに経済問題を通り過ぎて「ヒューマニズム」の問題に突入した。



ショイブレ・ドイツ財務相曰く、「ギリシャがユーロを離脱するのはご自由である」(2012-5-10)

ドイツのショイブレ財務相はブラッセルで「もしギリシャがユーロを離脱したいのならば、それはギリシャのご自由である。ただし、ギリシャ人の多数はユーロ離脱までは考えてはいないのではないか。ユーロ圏にとどまりたければEU/IMFとの取り決めを守るほかなないであろう」と語った。

ギリシャがもしユーロ圏を離脱すれば、新たな経済的混乱に巻き込まれるのは必至であるという見方を示した。それはそうかもしれないが、ギリシャがユーロ圏にとどまっても、先行き何の展望もひらけないのも事実であろう。

ギリシャには現在ダイムラーとジーメンスが工場を持っていてその潜在的価値は500億ユーロだとドイツ産業連盟(BDI)は見積もっている。

しかし、ギリシャにはこれといった輸出工業品は少ない。窯業関係が多少ある程度である。




急進左翼連合(Syriza)アレクシス(Alexis Tsipras)代表も組閣にはほど遠かった。結局6月に選挙のやり直しになるであろう。それでも決定的なマジョリティーを得る政党は出てきそうもない。いずれにしてもギリシャはユーロ圏から出ていかざるをえないであろう。そうするとポルトガルはスペインなどもそれに続く可能性がある。


左翼民主党(Democratic Left)が再選挙回避で与党連合に参加の可能性(2012-5-10)


最初は新民主党、次いで急進左翼連合(Syriza)が組閣に失敗し、現在は第3党のPASOK(社会党)のベニゼロス(Evangelos Venizelos)党首が組閣工作を行っているが、これも多数連合を形成することが困難であるとみられていた。しかし5月10日に突如として左翼民主党(Democratic Left=19議席)がのフォーティス・クベリス(Fotis Kouvelis)党首が「再選挙を避けたいという意向を表明して、PASOKの連立に参加してもよいという意向を表明した。

これが実現すれば、現在の政府の新民主党(108議席)とPASOK(社会党41議席)にDemocratic Lest(19議席)が加わると168議席となり、組閣が可能となる。

しかし、まだユーロ圏/IMFと現政権の協定をそのまま左翼民主党が飲んで実行するかなど大きな問題が残されている。このまますんなりと新政権の発足となるかどうかは予断を許さない。しかし、ギリシャ政治は新たな動きが出てきたことはたしかである。(結論的に左翼民主党は連立に加わらなかった5月11日)

このような動きにはギリシャ国民が反発する可能性が高く、一層の反政府運動がおこることが予想される。

再選挙となると第1党になるのは急進左翼連合(Syriza)であろうといわれており、新民主党やPASOKはさらに議席を減らすとみられている。PASOKのベニゼロス党首としては左翼民主党のクベリス党首の提言に政治生命を託している感がある。しかし、クベリスにしても、何らかの条件を引き出さねば、ここで連立政権に入れば、国民から裏切り者扱いにされる。

次に大統領のあっせんで「挙国内閣」を作る道が残されているがユーロ圏/IMFとの協定を取り結んだ今の政権には国民からはっきり「ノー」の答えが出されており、実現は困難である。ドイツは高飛車な態度を崩す様子がなく、結局ギリシャは「わが道を行く」ことになりそうである。ユーロからすぐには脱退するかどうかはわからないが、いずれ脱退せざるを得くなることは間違いない。

そうなると、ギリシャは「亡国の道」を歩むかというとそうはならない。彼らは5,100億ドル(約40兆円)の債務がある。これを踏み倒されては債権国(EUとIMF)もタマリゴトないから、「債権国会議」のようなものを設置してなんとかギリシャを支えていく必要がでてくる。


5月14日(月)パプリアス大統領が各党の党首を呼んで組閣に持ち込もうとしたが、野党側の合意を得られずに15日再度話し合いを持つことになったといわれるが、パプリアス大統領はギリシャもイタリーのように「テクノ・クラート」内閣をつくたらどうかという提案があったらしい。

これはPASOKベニゼロス党首との提案というふれこみだがEU当局の入知恵であろう。そんないい加減な内閣を作っても国民は納得しない。6月に選挙のやり直しをするというのがスジであろう。どちらにせよギリシャはユーロ圏に長くとどまることはできない。ただし、ギリシャ人の80%はユーロ圏にとどまりたいというアンケート結果が出ているという。これは明らかな矛盾である。

なお、ギリシャは10億ユーロの送金がストップされているため、6月の支払いに困難を生じているという。5月に選挙があり「徴税」も停滞しているという。6月にデフォールトする可能性もある。


ギリシャは6月に選挙のやり直し、左翼政権誕生の可能性(2012-5-15)

パプリアス大統領が各党の党首を呼んで最後の話し合いが行われたが、急進左翼連合(SYRIZA)アレクシス・ツィプラス(Alexis Tsipras)代表は今の政権がギリシャに持ち込んできたユーロの「緊縮財政」には国民が耐えられないことは明らかだとして、新民主党(ND)と社会党(PASOK)が参加する政権には加わらないという「最後のダメ」を押したものと思われる。

会談は2時間以上行われて行われたが、結局話し合いは平行線に終われ6月に再度選挙を行って「民意」を問い直すことになった。SYRIZAが第1党になればボーナスの50議席が与えられ、単独で100議席以上獲得するとみられ、他の左翼政党を加えれば組閣可能になる。

問題は新左翼政権ができたらどうなるかということであるが国民の80%はすぐにユーロからの脱には反対だといわれ、アレクシス・ツィプラス(Alexis Tsipras)代表もユーロ離脱は考えていないという。彼がその時に首相になっていればどうするであろうかということだが、ユーロにとどまることを表明した上に従来ギリシャ国民に課せられていた「緊縮政策」の緩和を要請することになるであろう。

これにはドイツが早くも「反対」の立場を表明している。その場合にギリシャはユーロからむりやり脱退させられることになる可能性が高い。通貨は元の「ドラクマ」に戻るが国際的信用は皆無であり、たちまちインフレーションと失業の増加という事態に陥るであろう。そうなるとユーロではなくEUがギリシャ救済に乗り出すことになるであろう。

これまでにギリシャが抱えている借金はデフォールト(支払不能宣言)すれば40兆円の損害を他国は被ることになるが、そうなる前に「債権国会議」が開かれ、共同で救済策を提示することになるであろう。

どちらにしてもギリシャは輸出品が少なく単独では経済的に立ちいかないのでEU諸国の「お荷物」であり続けることとなるのは自明である。幸いギリシャは農業人口が8%もあり、衣食住の最低線は他のヨーロッパ諸国の援助があれば充足できるであろう。ただし、軍事予算などは大幅カットを余儀なくされる。


ギリシャの再選挙は6月17日、選挙管理内閣が近く発足(2012-5-16

日本のテレビでもギリシャ問題がここにきて連日報道されている。ギリシャに日本人がこれほど関心を示すというのも不思議な気がする。再選挙は6月17日だという報道が欧米のメディアに流れている。それにしてもギリシャがユーロを離脱するかどうかが大きな関心事のような報道だが、ユーロを離脱するなどとはギリシャの与野党とも誰も言ってはいない。

ドイツの政治家(ショイブル財務相)がギリシャはEUが決めた「財政規律を守らなければユーロを離脱するほかない」と脅しをかけているだけの話である。ギリシャがユーロに参加した当時の取り決めでもなんでもない。ギリシャをユーロからドイツが追放したいというのはドイツの都合というより、政治的な脅迫にしか過ぎない。スペインなどは最初から取り決めを守っていない。

取り決め自体の正統性と合理性がいずれ議論されるであろう。ユーロはドイツのためにだけ存在する組織ではないからだ。ただし「財政緊縮策を守らないと制裁を受ける」ことには各国とも同意している。それはただちにユーロからの「追放」ではない。そんなことをフランスやラテン諸国が認めるはずはない。

ギリシャの与党はドイツの声援を受けて「規律を守なければユーロから追放される」ということが唯一の選挙スローガンにするであろう。前からそういってギリシャ国民を脅かし続けてきた。急進左翼連合(SYRIZA)アレクシス・ツィプラス(Alexis Tsipras)代表は結果はどうあれ、「緊縮政策」を改めてもらわなければギリシャ国民はどうにもならないところにきているので「緩和」交渉をするといっているのである。代表自身もユーロ離脱は考えていないと主張する。ドラクマに戻ったら経済的混乱は一時的に加速するからである。

ドイツがいかなる場合も「ギリシャを追放する」権限を持ってはいない。ここでフランス大統領がオランドに変わった意味がある。ドイツの野党社会民主党も「ギリシャ追放」などに賛成するはずがない。ドイツ社民党はメルケルのキリスト教民主同盟への反発をここにきて急速に強めている。緑の党なども同様である。彼らはギリシャ国民の「災難」に同情的である。フランス社会党にとってもドイツ社民党にとっても「インターナショナル」は共通の歌なのである。

オランド大統領は「大統領就任式」を終えるや否や、その足でドイツに飛んでいきメルケル首相と会談している。共同の記者会見ではユーロ圏できめた「財政緊縮策」は維持するならばギリシャの「成長策」をともに考えようという話をした。その具体策はこれからである。オランド大統領の乗った飛行機が落雷にあい、別な飛行機に乗り換えてドイツに行ったという。何かシンボリックなアクシデントではあった。

ギリシャ危機が迫っているというので5月16日のアジア株は一斉に下げた。日本はずっと前から下げ続けている。肝心のヨーロパは朝方は下げに始まったが午後には平常に戻って主要国の株式はすべて小幅ながらプラスで引けた。それを受けてニューヨークの株式市場もプラスのスタートである。要するに欧米にとってはギリシャ問題は「命に別状はない」問題なのである。

ところが日本の東証は8801.17と-99.57(-1.12%)、香港のハンセン・インデックスは19259.63と-634.4(-3.19%)と大きく下げている。上海コンポシットも2346と-28.65(-1.21%)である。台湾は-2.18%、韓国は-3.08%とそれぞれ大幅に下げている。どうにも馬鹿げた騒ぎである。しかし、17日にはこれまたプラスに転じるであろう。

確かにギリシャ危機はヨーロッパの経済危機には直結するとはいえその「震度は意外に小さく」、メルケル-サルコジ(メルコジ)コンビの作り出した「財政緊縮」の経済的悪影響のほうがはるかに深刻な危機を生み出すのである。とんでもない非現実的な愚策を考え付いたものである。しかし、これを大真面目に支持している学者がいる。それは言うまでもなく「市場派右翼」(ネオリベラル右翼)学者で日本にもうようよしている。


ギリシャではユ-ロ脱退の懸念から銀行取付騒動(2012-5-17)

ギリシャでは6月17日の選挙で
急進左翼連合(SYRIZA)が勝利し反ユーロ政権が誕生し、ユーロから脱退するのではないかという疑心暗鬼に陥った人々が銀行から預金を引き出す動きが急造している。

急進左翼連合(SYRIZA)は「緊縮政策」を改めてもらわなければギリシャ国民はどうにもならないところにきているので「緩和」交渉をするといっているがユーロ離脱は考えていない。それを今更聞く耳をもたないから嫌ならユーロから出ていけと言わんばかりの発言を繰り返しているのがドイツのショイブル財務相である。

実際にギリシャがユーロから離脱すれば周辺国は全体で30兆~100兆円程度の損害を受けるといわれている(イギリスのシンク・タンクの推定)。

ギリシャもドラクマに戻せば急激なインフレに見舞われ、失業者はさらに急増するなど経済的大混乱は避けられない。脱退するにしても「秩序ある脱退(前後昨を考えた)」しかありえない。ドイツのショイブル財務相の発言はそういう意味で無責任かつ独善的発言であると云えよう。だいたい首相を通り越してギリシャのユーロ脱退論などを財務相が口にすること自体が普通ではない。

メルケル首相はギリシャに対する柔軟な政策を考える必要があるという発言をしているという(ニューヨーク・タイムズ)。それは当然のことであって、瀕死の重病人にも軽度の病人にも「同一の処方」をほどこすなどということは本来ありえないことである。

先に決めた「緊縮財政」協約もドイツが発案し、サルコジが盲目的な支持を与えたことによって強行されたものである。フランスの新政権の経済相であるモスコビッシ氏は今のままでは「緊縮協定」に批准できないといっている。国際協定には「署名」はしても各国内で「批准」という手続きが通常必要なことは言うまでもない。

フランスにオランド政権が誕生した意味は極めて大きいのである。

フランクフルトに本部のあるヨーロッパ・中央銀行(ECB)のドラキ総裁はギリシャの銀行で自己資本比率が一定基準以下のところには「送金」をしないと言い出したことが、今回の取り付け騒ぎを加速させている。ECBというのはドイツ政府やドイツ連銀の言いなりになる可能性が大きく問題含みである。個別銀行への融資で今回の経済危機を乗り切ろうと基本的に考えている。

国別には「財政規律」の強化のみで今回の危機を乗り切るという方針にしたがって、余計なことはしない方針である。しかし、今回のECBのギリシャの銀行に対してとった行動は問題が大きい。というのはECBに対して800行以上の銀行が融資を受けているが、自己資本比率による融資制限などということをどれだけ厳密に守ってきたのであろうか?ギリシャにだけ厳しい措置をとった可能性もある。ECB自体がギリシャのユーロからの「追い出し」に加担し始めたといえなくもない。


G8で米国とフランスがギリシャに声援(2012-5-20)


5月19日にアメリカのキャンプ・デービットで開かれたG8でオバマ大統領とフランスのオランド新大統領がヨーロッパ危機問題でほぼ完全なる意見の一致をみせギリシャをEUとユーロから追い出すようなことがあってはならないという点が特に強調され、メルケル首相とサルコジ前大統領がきめた「緊縮政策」だけの硬直的な政策に対し「クロワッサン政策(成長政策)」をも併用すべしという意見が大勢を占めた。

メルケル首相は「緊縮施策」の重要性を主張したが、それだけでは危機を回避できないという米国とフランスの主張が体制をリードした。

それまではドイツはギリシャに対し、ユーロを脱退するかどうかの「国民投票を実施しろ」という発言をメルケル首相がギリシャのパプリアス大統領に電話で行ったと伝えられ、「内政干渉」であるとしてギリシャ国民の強い反発を生んだ。あわててドイツ政府はこれを否定したというが、それまでもショイブル財務相の発言からしても、ギリシャ政府に対しドイツ政府やドイツ中央銀行は極めて「威圧的」な態度をとってきたことは否定できない。

急進左翼連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス(Alexis Tsipras)代表は「ユーロには家主も間借り人もいない」(メンバーの地位は対等である)と強く反発した。

今までの新民主党とPASOK(社会党)がほぼ無抵抗にドイツなどの主張を受け入れてきたというのがSYRIZAの主張であり、おまけに「ギリシャ人は怠慢である」というドイツの宣伝を世界に流布してきたというのである。確かに今回のギリシャ危機はギリシャの一般国民や労働者階級には何の責任もないのに、その犠牲を一身に背負わされて来たことは事実である。

SYRIZAが政権をとったらユーロ圏からもEUからも追い出される可能性があるという脅迫がドイツの財務相から発せられるというのはまさに国際的にみても「暴言」のそしりは免れないであろう。SURIZAはユーロ圏にとどまるということを再三主張している。しかし、現在ギリシャに課せられている条件はあまりに過酷であり、何らかの「クロワッサン政策」が同時に必要とされるということも明らかである。

メルケルはフランスの大統領選挙えもサルコジの応援を熱心にやってきた。ヨーロッパの「盟主」としての「自覚と思い上がり」が返って自分の立場を弱める結果となろう。今になってナチス時代の傲慢なドイツ人の姿勢がヨーロッパのあちこちで思い出されているのは良識あるドイツ人にとっては苦痛そのものであろう。

5月20日付のガーディアン(Guardian)紙によればメルケル首相はオバマ、オランド両大統領に対し、一歩も引かず緊縮財政策を主張したという。しかし、そんなことで今後ユーロをまとめていくことはできないであろう。ただし、共同コミュニケでは"Our imperative is to promote growth and jobs"とうたっている。しかしメルケルとしてもドイツの国内世論がギリシャなどへのこれ以上の援助には反対しているため、強硬姿勢を続けざるを得ないという。それではユーロはおしまいである。

EU共同債で景気刺激プロジェゥトをやるべしというオランド大統領の提言も到底実現には至りそうもない。ユーロ圏内でナショナリズムが幅を利かすということ自体ユーロ発足の精神から大幅に逸脱してしまっているのである。「理想主義」なるものは最初から「幻想」だったのである。