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タイの経済


22-12. ArcelorMittalがG.Steelの株式40%を取得計画(2011-3-30)


22-5.⇒サハヴィリヤがイギリスのCorusのスラブ設備を買収(2010-9-10)

⇒サハヴィリヤとタタの正式契約(2011-3-31)



22-11.タイに新日鉄とJFEが高炉建設計画提出(09年7月7日)

22-5.⇒サハビリヤがベトナムか中国で投資をすると脅す(08年11月17日)

   ⇒プラチャ工業相がサハビリヤに協力を約束(08年11月17日)

22-10.タイで―新日鉄、JFE,ミッタルなどがいっせいに高炉建設計画(08年2月3日)

   ⇒タイの新製鉄所建設でミッタルがタクシンに面談(08年4月10日)

22-5.⇒サハビリヤのサイトの紛争でついに死者が出る(08年1月24日)

22-5.⇒サハビリヤの支持者が環境活動家を襲撃(07年12月20日)

22-9.新日鉄が南タイに一貫製鉄所建設計画(07年11月17日)

22-5.⇒サハビリヤ環境評価申請を取り下げる(07年6月7日)

22-5.⇒サハビリヤの新工場建設用地は使用許可が下りず(07年2月22日)

22-8.タタ鉄鋼がミニ高炉をチョンブリに建設計画(06年12月13日)

22-5⇒サハビリヤの新工場建設に住民から反対の声(06年12月2日)

22-7. ワタナ工業相 曰く、タイにも高炉が必要(05年4月18日)

22-6. 中国が高炉建設に興味を示す?(04年11月26日)

 

22-1. 熱延薄板の関税大幅アップ、自動車、電機メーカーに打撃(03年5月26日)

商務省は地元の熱延薄板(ホット・ロール・コイル=HRC)メーカーを海外からのダンピング輸出から「保護」すると称して、大幅引き上げを決定した。これは緊急関税引き上げ措置6ヶ月間の期限(5月末)が切れるのに合わせて5カ年間の措置であるという。

HRCはかなりの部分が冷延薄板(コールド・ロール・コイル=CRC)に加工され、自動車や電機製品に使われるが、それらのコストが大幅に引き上げられることとなり、今後のタイのこれらの製品の輸出競争力に大きな影響をあたえることになる。

HRCメーカーはサハビリヤ・スティールには日本の旧日本鋼管(現JFE)が出資しているが、他のミニ・ミルは倒産寸前ではあるが地元資本の所有するものであり、ここでもタクシン政権の見境のない「華人資本救済政策」が表面に出てきたといえよう。

新しい反ダンピング税率は国によって異なり、従来の10%の関税に上乗せして、日本は36.25%、南アフリカは128.11%、ロシアは24.2~35.17%、カザフスタンは109.25%、インドは26.81~31.92%、韓国は13.96%、台湾は3.42~25.15%、ベネズエラは78.44%、

アルゼンチンは37.94~53.09%、アルジェリアは33.26%、ウクライナは30.45~67.69%、インドネシアは24.48%、スロバキア共和国は51.95%、ルーマニアは27.95%である。

日本製品の関税率が韓国と台湾製より高いのは理解に苦しむが、タイ政府としては地元資本のサハビリヤなどを救うためには日本の自動車メーカーや電機メーカーの利害は考慮しないという態度である。

現在はSiam United Steel(1995)Co.(SUS)とThai Cold Rolled Steel Plc(TCRSS)の2社が高級鋼のCRCの生産をおこなっている。

TCRSSはサハビリヤと日本のJFE(旧NKKと川鉄)でむしろ受益者であるが、SUSはサイアム・セメント、新日鉄 、POSCO(韓国)などの連合企業(旧川鉄も多少の出資をおこなっている)であり、大きな打撃を受ける公算が強い。

今回の措置によりタイにおいてはJFEグループが優位に立ったことを意味している。被害者は自動車や電機メーカーである。

日本側は冷延用のHRCについては適用除外にするよう要請を出しているもようだが、タクシン政権としては地元華人系資本家の救済が目的である以上、すんなり耳を貸すとは言い切れない。

また、日本企業側もサハビリヤ・グループに大きく食い込んでいるJFEと新日鉄との利害は一致してはいない。

(03年5月31日)

アディサイ商業相はこの反ダンピング課税が日本企業から強い反発を呼んだことにやや驚きの色を見せている。かれは地元資本家から話を聞き、タイ産の熱延薄板でも自動車や家電用に使えると聞いて鵜呑みにしたらしい。

あきれてものが言えないが、商業省の無知と勉強不足は明らかである。しかし、サハビリヤ一族は日本から高級スラブ(自動車用に使える)の供給を受けられれば、それを熱延薄板に囲うし、独占的に冷延メーカーに売って大もうけができると考えた可能性もある。

そのようなことをJFEが認めるであろうか?そうなると被害者は新日鉄系のSUSと自動車、家電メーカーである。サハビリヤや他のミニ・ミルのオーナーは自分さえ良ければという考えが強すぎる。

アディサイは実態を調べて善処するといっているので最悪の事態は何とか回避されるであろう。

(6月28日)需要業界は日本から冷延薄板を直接輸入へ

熱延薄板のダンピング課税という無理難題を押し付けられた、日系の冷延薄板メーカー2社は商務省とネゴをおこなっているが、なかなかラチが開かない。

商務省の役人はサハヴィリヤ・スチールの言い分だけを鵜呑みにして「決定」を下しただけに、おいそれと引き下がれないという点は否定できない。引き下がれば、自分の落ち度になるからである。

そうこうするうちに、冷延用の熱延薄板の在庫が底を付き始め、自動車や家電メーカーに材料を支給できなくなることが見えてきた。

そこで、トヨタや東芝といった現地の日系企業は冷延薄板を日本から直接輸入することを検討し始めた。

(7月2日)AD税につき日本ミルと妥協成立

7月2日付けのバンコク・ポストによると、日本からの熱延薄板(Hot Rolled Coil=HRC)の反ダンピング課税はタイで生産されていない品目については賦課されないことで決着をみたようである。

そのかわり、5年以内に、該当するHRC品目の輸入をゼロにして。地元企業すなわちサハヴィリヤ・スチール(SSI)社に生産させるようにするというものである。

ただし、5年後にそれが実現しなければ、そのとぎ再度交渉するという。

SSI社は元NKK(現JFE)が技術・資金両面で面倒をみてきた会社であるが、HRCの市場を他のミニミルとともに市場独占をおこなおうとして、反ダンピング課税を商務省に働きかけ、商務相アディサイが技術的な検討もせずにあっさりそれに乗ったものである。

5年後にどうなるかは、5年後にJFEがどうするかにかかっている。

JFEはSSIを使ってタイのHRC市場の独占をえきるチャンスが回ってきたが、新日鉄との付き合い上多分それは避けるであろう。

 

22-2  サイアム・ストリップ・ミル社のトリック(03年6月11日)

97年のバブル崩壊で破産状態に陥った熱延広幅帯鋼メーカーのSSM(サイアム・ストリップ・ミル)社は伊藤忠、住友商事、シティ・バンク東京支店などから260億バーツの借金を背負っており、その80%が日本企業からのものである。

ところが、社長のソムサクは奇策を思いつき、SSMの子会社で電気炉用の発電設備を持っているSIPCO(Siam Power Generation Co.)から電気代の借金と先行予約分の借金あわせて350億バーツの負債があるということにした。

SSMの言い分はSIPCOは天然ガスの供給会社であるPTT Plc. とガスの引き取り契約をしており、SSMが電気を買ってくれなくなった分はSIPCOの損害となり、SSMに請求できるということのようである。

そうなると、日本側より大きな債権者としてSSMの子会社SIPCOが登場してくることになり、実際金を貸した債権者の取り分が大幅に減らされ、かつ債権者会議においても少数者の立場に追い込まれることになる。

この件はバンコクの破産裁判所で争われているが6月10日に予定されていた判決は延期された。さきのTPI事件で地元資本有利の判決を出したことで国際問題に発展したが、今回もタイの裁判所の良識が問われている。

本件には日本政府の輸出保険(3億8千万ドル)がかけられており、日本側に不利な判決が出れば、新たな日タイ間の紛争の種となることは明白である。

このように本来の債権者の取り分を薄める手口は東南アジアの華人資本の間では常用の手法であり、最近もインドネシアでカナダの会社がこの手に引っかかった。

 

22-3 反ダンピング税撤廃にSSI抗議(04年3月13日)

HRC(Hot-rolled Coil=熱延広幅帯鋼)に課していた反ダンピング(AD)税につき、タイ政府は3月17日からとりあえず6ヶ月間停止することとした。その理由は国際的な鋼材不足(HRCを含め)、によりタイへの輸入価格が高騰しているためである。

同様な動きはインドネシアにもあり、インドネシア政府は4月1日から鉄鋼製品の輸入関税をゼロにする方針である。

これに対し、タイで最大のHRCメーカーであるSSI(Sahaviriya Steel Industry PLC=サハビリヤ・JFE出資)は「今の現象は中国のバブルによる一時的なものであり、SSIとしてはここ数ヶ月政府の決めた上限価格を守ってきた。タイではHRCは不足していない。

反ダンピング税の撤廃は時期尚早である」と強く反発している。

SSIによれば現在のタイでのHRCの市況はトン当たり15,710バーツ(約44,000円)であり、1年前は13,800バーツであったのでたいした上昇にはなっていないとしている。また、SSIは100億バーツ以上の負債を抱えている。

HRCの輸入は2002年の210万トンから2003年には230万トンに上昇した。一方、HRCの国内消費は2003年は540万トンであった。

国内のHRCメーカーの名目生産能力は650万トンあるといわれている。しかし、これは名目的なものである。

一方、ユーザー側はAD税撤廃は大歓迎でありSUS(Siam United Steel=冷延鋼板メーカー・新日鉄が最大株主)は6ヶ月で今の需給状態が改善されるとは思わないと主張している。

同社の山田社長によればHRCの価格は2003年1Qはトン当たり330ドルであったものが今は450ドルにまで高騰しているという。

⇒3月10日付ネーション紙の報道による関連情報ー産業連盟の働きかけ

タイ政府に対して鉄鋼製品の輸入関税の引き下げ要請を行ったのはタイ産業連盟(FTI)である。自動車産業、家電産業など軒並み鋼材価格の上昇と不足の被害のあっている。

政府は一握りの鉄鋼メーカーの利害にばかり注意を向けていて不公平であるというのがFTIの主張である。

タイ鉄鋼協会の調査によると現在の鉄鋼製品の市況は以下のとおりである。

ビレット(鉄筋棒鋼、線材などの中間材料)の価格はトン当たり440ドル(17,200バーツ)であるのに対し、棒鋼価格は500ドル、線材価格は550ドルである。

また、政府の「国内取引局」が定めた上限価格については最近の国際相場を勘案し、次のとおりとする。①HRC15,710バーツ/トン⇒20,500バーツへ、②HRシート(切り板)は16,510バーツ⇒21,430バーツへ、③ステンレスは105,940バーツ⇒115,790バーツへ。

⇒熱延コイルの反ダンピング課税復活(04年9月20日)

今年3月から一時凍結していた熱延コイル(HRC)の反ダンピング課税を9月20日から復活することをタイ商業省は15日決定し、実行に移す。

HRCはタイでも地元資本が生産しているが、上に見たように、品質的に一般用途(主に建設材料)にしか使用できず、自動車や電機製品に使用される冷延コイル(CRC)の素材はほとんど日本などからの輸入に頼っていた。

にもかかわらず、今回タイ政府が反ダンピング課税を復活するのは地元資本が鉄鋼市場の好況に便乗して一気に利益を上げようとする要望に沿ったものであることは言うまでもない。

今回の措置はタイの自動車部品業界や電気製品業界に多大の打撃を与えるものであり、タイ国内からも反発は必至である。なまじ国内メーカーがHRCの生産設備を保有しているがために関連業界が被害を受ける形となる。

これは過去においてインドネシアのクラカタウ・スチールについても同様の現象がみられ、1980-90年代に外国の家電メーカーなどからインドネシア進出を忌避された経緯がある。最近はマレーシアも程度の差こそあれ同様の問題を抱えている。

日本とタイはFTA交渉を行っているがたい政府は国内鉄鋼産業(特にHRC)の保護に固執しているといわれている。タクシン政権は華人資本の保護者として登板してきたのであるから、それは当然の行為ともいえよう。

サハビリヤ・スチール社のウイット社長は2004年のHRCの消費は570万トンに達する見込みであり、このうち270万トンが輸入品である。国内生産は300万トンであるが生産能力は600万トンあると称している。

この話は誇張である。600万トンというのはミル能力の名目値である。しかも鉄源が不足していて300万トンの生産が精一杯のところであろう。

サハビリヤの言い分をウンウンといって聞いているワタナ商業相はチャロン・ポカパン(食糧・小売などの大財閥)の一族である。

産業発展を華人資本家が妨害するという最悪の形ができつつある。これが1970年代から80年代半ばまでのタイの工業化の発展を妨げていたのである。歴史は繰り返すというべきか?遺憾至極である。

⇒早速国内から反発の声(04年9月21日)

国内の鋼材問屋は質が悪くて高い鋼材を販売させられることになるとして早くも反発している。(ネーション、インターネットト版)

また、タイ産業連盟のプラパート会長は「商業相は鉄鋼メーカーの偏った情報に基づき今回の決定を行った。もっと多方面から情報を収集し合理的な判断を下すべきである」と苦言を呈している。

プラパート会長は地元企業のHRCの供給能力は290万トンであり、600万トンではないとSSIの言い分を批判している。また、05年になっても供給能力は310万トンにすぎず少なくとも200万トンは輸入する必要があると述べている。

これに対しワタナ商業相は「地元の鉄鋼業が競争力を付けられるように今回の措置をとった。他産業への影響についても調べたがどこからも苦情はなかった」と開き直っている。

一体誰に何を質問したのか疑いたい。影響がないはずはないではないか?少なくとも産業連盟への意見聴取は行うべきであったろう。

タクシン政権のやり方は「特定の華人資本家」にフェイバーを与える傾向があり、中小企業やまして日本企業などへの配慮は極めて希薄である。

 

22-4 プラユットがタイノックスの株を買い戻し、再びオーナーに(04年3月15日)

3月15日のバンコク・ポストによればタイのステンレス鋼板メーカーでアセロール社(Arcelor)が所有するタイノックス(Thainox Steel)の株を前の最大株主プラユット(Prayudh Mahakitsiri)が150億バーツ(約420億円)相当分買い戻すという計画が進んでいる。

プラユットはタクシン首相率いるタイ・ラク・タイ(TRT)党の副党首である。

プラユットは当初タイノックスの株式を60%所有していたが、97-98年の経済危機のとき借入金が支払えず、持ち株は1%にまで下がっていた。

一方、Arcelorは当初はタイノックスの持ち株比率が28%であったが、現在は94%まで所有し経営を続けていた。

タイノックスは1993年11月に操業開始(当初能力年間6万トン)以来赤字を続けていたが、2002年になってようやく初めて利益を計上したという。

ステンレス薄板の生産能力は現在年間16万トンであり、今年は19万トンにまで生産能力を増強する。04年の売り上げ予想は150億バーツを見込んでいる。輸出比率は40%である。

なおArcelor社は2002年2月にフランスのUsinor,ルクセンブルグのArbed, スペインのAceraliaの合併により成立した会社であり、タイノックスには4億ドル投資しているという。

タイノックスには日本の鉄鋼会社(新日鉄、住友金属など)が出資していたが、赤字が継続していたため、現在はほとんど手を引いている。

プラユットは個人資産がさほどあるとは考えられず、資金提供者のなかにはタクシン財閥がいる可能性がある。

 

22-5. サハビリヤ5,000億バーツを投じて高炉建設を目指す(04年9月14日)

タイのホット・ストリップ・メーカーであるサハビリヤ・スチール(SSI)のウィット(Wit Wiriyaprapaikit)社長は今後5,000億バーツを投じて、15年がかりで年産3,000万トンの高炉一貫製鉄所の建設を行うことを決定したと述べている。

5,000億バーツは日本円で1兆3,500億円ほどであるが、その金額で3,000万トンの製鉄所は建設できない。ウィット氏は工業相に援助を求めたという。

工業相は一応政府としても「国策に沿うプロジェクトである」という返事をしといわれているが、ウィット単独では資金的にも技術的にもこのプロジェクトは実現できない。

SSIにはJFE(もとNKK)がついており、JFEとどの程度話し合いがもたれているかも不明である。

ただし、現在のSSIの敷地は臨海製鉄所の用件を一応満たしており、物理的にはある邸ドン老一貫製鉄所の建設は可能である。

第1期段階では年産500万トンの高炉を建設するという。建設は2005年に開始し07年に完成させる。建設費は20.7億ドルを見込んでいる。

第2期は2010年の完成を目指し高炉は2基体制で年産900万トンを見込む。建設資金は16.9億ドルを見込む。

第3期は2013年の完成を目指し、高炉は3基体制として年産1,400万トンを目指す。建設資金は18.8億ドルを見込む。

第4期は建設資金34.9億ドルを当時高炉年産2,200万トン体制を目指す(高炉の能力が800万トン増加するので、おそらく2基同時建設をするものと思われる)。完成は2016年である。

第5期は30億ドルを投じ、3,000万トン体制を目指す。完成は2019年である。

圧延設備については明らかにされていない。これははっきり言って「誇大妄想」プロジェクトである。現実性に余りに乏しく、「楽しい夢」であるともいえない。

ただし、タイとしては鉄源生産設備として高炉2本、約年産1,000万トンぐらいはあってもおかしくない。それとて日本の高炉メーカーの援助がなければ実現しない。

ウィットは華人事業家らしく案外中国からの援助を期待しているのかもしれない。JFEがこんな話に簡単に乗るとは思えない。

(http://www.bangkokpost.com/ 04年9月14日参照)

 

⇒サハビリヤの新工場建設に住民から反対の声(06年12月2日)

サハビリヤのバン・サパン地区の高炉建設計画が進められようとしているが、建設予定地は1,800ライ(約90万坪)の泥炭湿地帯であり、多くの鳥類や魚類が生息する自然環境であると同時に、周辺の住民にとっても漁業などの生活の場でもあるという。

住民の多くは「闇社会=暴力団」の影響を恐れて声を潜めてきたが、このままでは自然環境が破壊され、住民の生活も脅かされるとして、環境保護団体に調査を依頼し、新工場建設反対の運動を展開していくという。

しかし、地方公共団体の役人は建設推進派であり、住民の声を聞こうともしないという。

サハビリヤは公共用地の土地権利書を違法に取得し、あくまで建設を強行する構えであるという。

また、既にあるサハビリヤの工場(ホット・ストリップ・ミル)も排気ガスなどで環境破壊をおこなっており、労働者10名が原因不明の呼吸器疾患で死亡しているという。これに対して会社側は工場の操業とは因果関係はないとしている。

タイの「野生動物保護基金」では「国民的重要性のある湿地」として政府に指定を迫っていく考えであることを明らかにしている。

タクシン政権時代はサハビリヤのオーナーのウィット(華人)はタクシンの支持者として知られていたがクーデター後は、サハビリヤに対しても住民が容易に反対運動を展開することが出来るようになったと考えられる。

(バンコク・ポスト、11月27日付インターネット版参照)

 

⇒サハビリヤの新工場建設用地は使用許可が下りず(07年2月22日)

サハビリヤのバン・サパン地区の高炉建設計画が進められようとしているが、建設予定地は1,800ライ(約90万坪)につき、王室森林局はそのうちの約300ライの同社の使用許可申請を却下した。

天然資源・環境省も同じ結論であり、同地区の環境問題を考慮した結果であるという。

この300ライの森林地帯というのは現在のサハビリヤの工場と新工場の建設予定地400ライの中間に位置し、原材料置き場として使用する計画のものであったという。

新工場予定地の400ライについてもタイ人権委員会は同社が既に保有する「使用許可証」の入手について不正があった疑いがあるとして調査を進めるとしている。

同委員会は本来取得できるはずのない公共用地でしかも自然環境保護の対象の土地を如何にして取得したのか関係官庁を含め調査をするという。

サハビリヤ・グループはタクシン前首相のクローニー(利権仲間)と目されており、クーデター後は何かにつけて厳しい監視を受けることは間違いないであろう。

(バンコク・ポスト、2月21日付インターネット版参照)

 

⇒サハビリヤ環境評価申請を取り下げる(07年6月7日)

サハビリヤ・グループは鉄鋼設備拡張のために取得していたバン・サパン地区の自然林(泥炭湿地)の環境評価(EIA=Environmental Impact Assessment)申請をとりさげ、事実上同地区での設備拡張を当面断念した。

その理由として土地使用の許可が地元の役所から下りないためだとしている。

同地区の泥炭湿地自然林は周辺住民の「入会地」であり、彼らの日常生活と密接に関係しているため、1企業が占有して大規模な整地を行い工場を建設すると住民の生活が脅かされ、環境破壊にもつながると考えられている。

タクシン時代にサハビリヤはこの土地の所有権を獲得したことになっているが、その経緯について疑惑がもたれており、将来取調べを受ける可能性がある。

これによって、サハビリヤの大設備拡張計画(#22-6.参照)は一頓挫きたしたことになる。

タイにとっては高炉一貫製鉄所は必要であるが、タクシン政権という後ろ盾を失ったサハビリヤが独自に建設することは困難である。

 

⇒サハビリヤの支持者が環境活動家を襲撃(07年12月20日)

サハビリヤ・グループはバン・サパン地区の現有プラントの近くの泥炭湿地自然林地帯を新高炉用立地として使用することをあきらめてはいない。

最近もタイのスラユット政権が全国的に戒厳令を解除しつつある最中に、プラチュウプ・キリ・カン(Prachuap Kiri Khan)の地域だけなぜか新たな「戒厳令力」に指定するという全く逆行的な決定を下した。

これは、タイの財閥サハビリヤが軍部に働きかけて環境運動家グループを締め付ける狙いがあるのではないかとみられている。ほかに、合理的な理油は見当たらない。

危機感を募らせた付近の住民を中心とする環境保護運動メンバーがメー・ラム・プアン(Mae Ram Pueng)村役場前で緊急集会を開き泥炭湿地を埋め立てることに対する反対の決議文を作成し、10名の活動家が当局に提出しようとしていた。

その矢先、100名ほどの赤いTシャツを着たサハビリヤを支持する集団が活動家グループに罵声を浴びせつつ彼らにナイフや棒切れを持って襲い掛かり、負傷者が出て病院に運ばれた。

無防備の彼等は赤シャツ集団の暴行によって負傷させられ、自動車も破壊されたが、それを100名ほどの警察と軍の警備隊が止もせずに眺めていたという。これは警察がサハビリヤとグルになっていることを意味している。

警察に言わせれば、戒厳令下に環境団体メンバーが無許可の集会を開き戒厳令違反をやったのだから自業自得だといわんばかりの説明をしていたという。

サハビリヤの動きが活発になっている背景には新日鉄が南タイ(比較的中部より)に高炉一貫製鉄所を建設しようと検討しているというニュースがあったためであろう。(#22-9参照)

(バンコク・ポスト12月20日、電子版参照)

 

⇒サハビリヤのサイトの紛争でついに死者が出る(08年1月24日)

サハビリヤは環境問題で住民との話し合いがついていないバン・サパンの拡張工事に踏み切るべく、現地にブルドーザーを入れて整地を始めるという強行策に出た。

サハビリヤの拡張工事は自然環境破壊であるとして緑色のTシャツを着た反対派(村人が中心)が現地で1月24日午後2時から集会を開いていた。そこに建設賛成派の10代の若者を中心とする赤いTシャツを着た集団が棍棒やピストルを持って殴りこみをかけ乱闘となった。

約200人の警官が警備に当たっていたが、とめるまもなく(とめる気あったかどうかは不明)乱闘が始まり、発砲もあった。乱闘が鎮まり、両者が分かれると赤シャツの若者が倒れており、銃で撃たれ死んでいたという。

反対集団のリーダーによると自分達は年配者の集団で棍棒は持っていたが銃などで武装していたものはおらず、赤シャツ・グループが仲間の誤射で死亡したのではないかと語ったという。

推進派といってもカネで駆り集められた若者の集団で前回の事件と同様、最初から反対派に殴り込みをかける目的で突撃したという。

警察はナニをしていたのかとということになるが、こういう場合警察はたいてい会社側の意向を汲んで、支持者側の暴力を「黙認する」姿勢をとるのが世の常である。前回もそうであった。

サハビリヤはもともとタクシンのクローニー(お仲間)といわれており、今回タクシン派のPPPが政権をとることになり、いっそう強気に出たともいえよう。それにしてもピストルを所持する殴りこみというのは殺人予備行為と見なされても仕方のない蛮行であり、警察の責任も問われかねない。

タイの人権委員会(NHRC)は土地局(Land Department)nに対し、懸案になっている200ライ(約10万坪)の泥炭湿地に対する土地の所有権を明確にするように迫っている。

土地局はサハビリヤに土地の取得許可を与えたというが、行政手続き上の違法性が指摘されており、環境局などの許可を得ないでサハビリヤに土地を売ったといわれている。

サハビリヤは環境評価を一度は環境局に提出したが、計画をやり直すとして、その書類を撤回しているという。

一方環境局はその周辺の土地1,200ライについては改めて「環境保護区」に指定し、保全する方針だという。それは洪水対策上も必要な措置だとしている。

サハビリヤの言い分は現在の環境保護区の外側の土地の利用をしているだけだという。真相は不明だが、村民の入会権の問題も以前からあり、それを暴力で排除するというのはいささか問題であろう。

しかし、タイには変な理屈をこねるインテリがいて、いかなる悪事を働こうとも裁判で有罪になるまでは万人が無罪だという。タクシンもしたがって無罪だというのである。彼が逮捕状が出ているが、捕まって裁判にかけられて有罪が確定するまでは無罪だというのだ。

こういう理屈は一応ゴモットモな面はあるが、「悪者」にとっては途方もなく都合のいい理屈である。この手の論調がバンコク・ポストなどに堂々と出てくるのだからすさまじい。麻薬撲滅事件で2,500人が虐殺されても「犯人」は一人もでてこない。

ソムチャイ弁護士の拉致誘拐暗殺事件も警官が拉致誘拐の実行犯であるという目撃証言はあるが、死体が見つからないから殺人事件ではないらしい。汚職をいくらやっても裁判で有罪になるまでは汚職をやったことにならないらしい。一体どうなっているのだろうか?

こうなると警察の悪事は全てが無罪となってしまう。誰も犯人を捕まえないのだから当然である。タイ人の小利口なインテリも自分達の社会の将来のことを少しは考えろといいたい。刑法上の無罪が社会道徳上の無罪とは限らない。大事なのは後者である。


⇒サハビリヤがベトナムか中国で投資をすると脅す(08年11月17日)

バンコク・ポスト(11月13日電子版)によれば、環境問題で暗礁に乗り上げているサハビリヤ・スチールはタイ政府の投資優遇策も不十分だとして、このままでは「同社にべとなむや中国からも好条件で投資しないかという誘いがあるので、そのどちらかでやることも検討している」とウィン(Win Viriyaprapaikit)社長代行が語った。

他の国では電力や工業用水といったインフラを提供し、機械設備の輸入も免税だし、ベトナムにいたっては賃貸コスト(土地など)の安い場所を紹介してくれている。

また、すでに投資委員会がこのサハビリヤに与えている優遇期間をさらに延長すべきであると述べた。

環境問題で周辺住民との折り合いがつかず、すでに計画fが2年間も遅れたというのがウィン社長代行の言い分である。

環境保護派との対立では、反対派を殺害してしまった(上記記事参照)こともあり、ますます問題がこじれ10月には現地で一大反対集会が開かれた。

しかし、サハビリヤがこれらの環境問題や「優遇措置」に対する要求が全て解決したところで、同社が自前で年産500万トン規模の高炉一環製鉄所を建設するなどということは困難である。

また、すでに鉄鋼の過剰設備能力で四苦八苦しているベトナムや中国が新たにサハビリヤに「招待状」を出すなということはおよそありえないことである。

サハビリヤはどうやらいままでさんざ支援を仰いできた日本のJFEともかなり「冷たい関係」に自ら追い込んだようである。

⇒プラチャ工業相がサハビリヤに協力を約束(08年11月17日)

サハビリヤの「脅し」を受けルような形で、プラチャ(Pracha Promnok)工業相は「何とかサハビリヤの大型高炉建設プロジェクトを実現させたい。これができれば下工程の鉄鋼業の助けになるし、膨大な鉄鋼輸入を減らすことができる」と語ったという。(11月17日、バンコク・ポスト電子版)

「そのために現地にいって、工業省としてどうしたらよいか考えたい。」と現地サイドの環境保護グループとの話し合いにまで乗り出す考えを明らかにした。

また、タイ鉄鋼協会のウィクロム(Vikrom Vajragupta)理事も「政府はサハビリヤと環境保護団体との相互理解の推進に努めて欲しい」と語った。

タクシン派政権は「クローニー華僑資本家」の代弁者という色彩が強く、サハビリヤ・グループも「クローニー(お仲間」の一員であった。2006年9月の軍事クーデターで一時期鳴りをひそめていたが、タクシン派政権の復活で、また強気になってきたようである。

ソムチャイ政権が変わらないうちにサハビリヤとしても何とかしたいところであろうが、サハビリヤの強引な手法が周辺の住民の強い反発尾買ってしまったので、動きが取れないところであろう。

サハビリヤの大型高炉プロジェクトが優先されるようなことになれば、新日鉄やJFEのプロジェクトがサハビリヤによって妨害されることは明らかであり、そうなると自動車や家電に使われる「高級鋼板」などの自給が困難になり、かえってタイの工業化にとって大きなマイナスになることは間違いない。

サハビリヤ・クラスの鋼材は「高級鋼」にほど遠いレベルであり、しかも「国産品保護」の名目で「輸入鋼材に高関税」を課するという行動に出てくるであろう。

そうなるとマレーシアの二の舞で、自動車や家電が徐々にダメになっていくことは自明である。このサハビリヤ問題は「タイの工業化の将来」にとっては大変大きな影響を及ぼす。

マレーシアにおいてはライオン・グループ(マハティールのクローニー)がホット・ストリップ・ミルを完成させるやいなや熱延広幅帯鋼(冷延薄板などの材料)になんと50%もの関税をかけたのである。それ以降、マレーシアの工業化自体が低迷し始めたともいえる。

幸家不幸かソムチャイ政権もさほど長持ちはしそうもない。民主党政権になればもっと先を見据えた「リーゾナブルな政策」を採るであろう。いやこれはあくまで「タイ」のお話です。為念。

⇒サハヴィリヤがイギリスのCorusのスラブ設備を買収(2010-9-10)

2010年8月27日におよそ信じがたいニュースが報じられた。2010年2月に閉鎖されたインドのタタ・スチールが所有する英国のCorus社のティー・サイドのスラブ工場を、タイのローカル・メーカーのサハヴィリヤが約5億ドルで買収するという。

タタ・スチールは2007年に137億ドルでCorus社を買収した。Corus社とは元ブリティッシュ・スチールとオランダのホーゴベンスが合併してできた会社であるが設備の老朽化がひどく、先の展望の開けない会社であった。

その中でもイギリス東部にあるTeeside Cast Productsは2010年2月に閉鎖され1600人の労働者が解雇された。しかし、この上工程(スラブ)工場を買おうという会社が現れた。その奇特な企業名はタイの大手鉄鋼会社サハヴィリヤである。

イギリスではこの青天の霹靂ともいうべき奇跡を大歓迎していることはいうまでもない。

サハヴィリヤのウィット社長がいうにはCorusのスラブは品質がよく、大変気に入っていたとのことである。

スラブの年産能力は350万トンで、コークス設備と発電設備も含まれるという。その他の詳細は不明である。

サハヴィリヤがこのような信じがたい行動にでたのは地元での高炉建設計画が環境問題で前進しないことが原因であることは明らかである。

これによって、日系企業がタイに高炉一貫製鉄所を作るチャンスは高まったといえよう。


⇒サハヴィリヤとタタの正式契約(2011-3-31)

サハヴィリヤ(SSI)は2011年2月24日にタタ・スチールとイギリスのTeeside Cast Products (TCP)の資産買収契約に調印した。これに対する評価は上に述べた通り、タタ・スチールにとっては経営用の重荷が取れたということでホットしたということに尽きるであろう。

契約内容は4億6900万ドルでRedcar とSouth Bankのコークス炉とTCPの発電設備と焼結機とRecarの高炉とLadenbyの製鋼設備と鋳造設備の一式をサハヴィリヤが買い取るというものである。

加えて、タタとサハヴィリヤがRedcar Warf (荷役岸壁)の共同経営をおこない、Tata Corus (タタのCorus社本体)が相互に操業上必要とする便宜を提供するというものである。(タタCorusにはほかの高炉があり原料岸壁や荷役設備などは共同利用となる)

これによってタタはTCPの閉鎖に伴うもろもろの債務から逃れることができたといえよう。TCPは2011年末には操業を再開する見通しであるという。高炉(炉内容積3,628㎥)の再稼働には巻き替えが必要であり最短でも6ヶ月間を要する。これにはSSIはさらなる追加投資が必要であり、今後2年間に10億ドルは投資する必要がある。

SSIのウイット(Wit Viriyaprakit)社長がいうには1億5000万ドルの予備費と4億ドルの運転資金を用意するとしている。SSIにとっては総額約20億ドル(約1,700億円)の投資となる。加えて鉄鉱石と原料炭を新規に購入しなければならない。

これらが全て順調にいけば年間350万トンのスラブの生産が可能になる。いままでSSIはスポット市場から熱延広幅帯鋼用のスラブを買っていた。

(メタル・ブレテン、2011年2月28日号参照)

 

22-6. 中国が高炉建設に興味を示す?(04年11月26日)

タイの工業省によれば、中国政府がタイの大型高炉建設に対し共同出資への関心を示しているという。

ポンサク工業相は「中国政府は最近海外投資に熱心であり、特にタイへの関心が強い。リュー・チー(Liu Qi) 金属工業部長(こういう役所があるかどうかは 私には不明)に会った際に、タイで鉄鋼設備(上工程)を一緒にやらないかと話を持ちかけられた」と語った。

中国の関心は上工程(高炉ー転炉の製銑、製鋼)にあり、現在中国には1億1千万トンの設備能力しかない(ということは製銑=高炉を意味する)。これを2億5千万トンに将来、増加させたい。(http://www.bday.net/ 04年11月26日版参照)

ということは、サハビリヤの大風呂敷計画の話が既に中国に行っていて、中国政府筋から前向きの反応が返ってきたことを意味する。

中国は04年の粗鋼生産は2億3千万トンは優に超えるらしいが、はっきりいってロクな上工程設備を持っていない。製鉄所は宝山製鉄所を除いて、全て内陸部にあり、日本のような「臨海製鉄所」は少ない。

海外の良質な鉄鉱石や石炭を購入して使うには中国では宝山以外は陸送が必要であり、とてつもないコスト高になる。かといって、中国で「臨海製鉄所」を新たに建設するには、ほとんど適当な立地が見当たらない。

こういう基本的な点を、日本の新聞記者や経済評論家の多くは見逃している。 「日本での製鉄所は止めて、東南アジアや中国でやればよい」などという素人談義そのものとしか言いようのない記事が日本を代表する経済新聞に出てきたことがある。

それではタイに「臨海製鉄所」の立地があるかといえば、残念ながらサハビリヤの製鉄所ぐらいしか候補地がない。しかし、本当にサハビリヤの製鉄所で大型高炉が建設できるかというと、まだフィージビリティ・スタディはできていないはずである。

港湾については深さが十分にあることだけはわかっているが。(#22-5、 参照)

 

22-7. ワタナ工業相 曰く、タイにも高炉が必要(05年4月18日)

日本とタイのFTA交渉はタイ側の「鉄鋼と自動車部品の自由化反対」というやや意外な工業品についての反対論によって暗礁に乗り上げている格好になっている。

私はタイとFTAを結ぶというよなことは止めてWTOをまとめるのが日本の務めであると力説してきたが、グローバルな視野などというものには関心が無いらしいナショナリスト集団の小泉政権としては 人一倍優れた経済学者や政府の広報活動の一翼を担う一流新聞などを動員してあくまでFTAで頑張るのだなどといっている。

タイもナショナリズムでは日本には負けていないらしく、作れもしない高級鋼板が何十年か後には作れるかもしれないということで鉄鋼の自由化、関税大幅引き下げに抵抗を示している。 これはタイの自動車産業政策の自己矛盾である。

これに地元華人資本家の雄チャロン・ポカパン・グループ出身のワタナ(Watana)工業相が一枚加わっているから、この話はまとまりそうも無い。もともとタクシン政権とは「地元華人資本最優先」のナショナリスト(?)政権だから仕方がないといえよう。

タイが鉄鋼で何故こんなに頑張るのか私にはまったく訳がわからないが、タイ人に言わせると日本はコメコメといって騒いでいたが、砂糖でも4年間の猶予期間を要求したではないかという。なるほどね、こいつは参った。

日本では北海道で大量の砂糖大根を栽培しているのである。特に某閣僚の出身地ではそうらしい。砂糖大根などはジャガイモとかタマネギとかトウモロコシに転作が利きそうなものだが、私ごとき都会人にはわからない事情があるらしい。

また、オーストラリアとは日本政府はFTAをやらないらしい。なぜなら、オーストラリアは農業大国でコメ以外にも酪農製品などが大量に入ってきてはまずいかららしい。

要するに「日本のFTAはWTOの遅れの補完だ」などとキレイゴト(タイではキレイとはキタナイという意味)を口を開けば人一倍優れた経済学者や一流新聞がいっていたが、ようするに日本の農業保護策,すなわち特定政党の選挙対策にすぎないのだということがダンダン明らかになってきた。

それならば、タイも鉄鋼や自動車部品について好きなことを言わせて貰うということになっているのではないだろうか?

鉄の話の戻ると、タイは東南アジアのデトロイトを目指すなどといって自動車産業の育成に重点をおいていることは間違いない。それには自前の高炉一貫製鉄所(新日鉄の君津や住金の鹿島のような)がいるのだということもうなずける。04年の鋼材全体の輸入量は1000万トンに達したそうだ。

そこでサハビリヤ社は上(22-5と6)で見たような構想を打ち出してきたともいえよう。初めは中国とやろうなどといっていたが、よく調べてみると中国の鉄鋼業の技術レベルでは自動車用の高級鋼板はムリで日本の高炉メーカーの独壇場であることに気が付いた。

このへんは日本を代表する経済新聞の某某記者などよりは、さすがプロだけあって感覚が鋭い。そこで日本の高炉メーカーの担ぎ出しにかかっているのである。日本のメーカーが出て行くとすればJFEであろう。もしかすると、この話は「瓢箪から駒」となる可能性がある。

サハビリヤの今のホット・ストリップ・ミルのある場所は「港湾」としては問題ないようである。しかし、問題はインフラが非常に不足しており、その建設には膨大な資金が必要であるということにある。もちろん、技術者やワーカーの問題もあるがこれは日本のメーカーなら何とかできる。

日本側もどうせやるならJFE単独でやるより、新日鉄グループも巻き込んでコンソーシアムでやることが望ましいであろう。そのほうが経営的リスクも軽減されるし、マンパワーの面でも楽なはずである。

ワタナ工業相もすっかり乗り気で、サハビリヤと急遽打ち合わせをやるなどと言い出している(もう既にやっているに相違ないが)。

(http://biz-day.com/ 05年4月18日記事参照)

 

22-8.タタ鉄鋼がミニ高炉をチョンブリに建設計画(06年12月13日)

Corus(英国とオランダの大鉄鋼会社)の買収劇で話題を呼んでいる、インドのタタ財閥のタイ子会社タタ鉄鋼(タイランド)はチョンブリ県のボー・ウイン(Bo Win)工業団地内に年産50万トンの小型高炉を建設する計画であると発表した。

建設資金は36億バーツ(約120億円)であるという。目下、環境評価などを実施中であり、早ければ07年1Q中には着工し、08年3Q(7~9月)中には完成させたいとしている。投資委員会には「優遇措置」を申請した。

日本の大手高炉メーカーの高炉は内容積5000立方メートルで日産1万トン以上のものが標準であり、このミニ高炉は日産1,370トンというから内容積5~600立方メートルの規模のものであろう。この規模のミニ高炉は中国では最近多く建設されている。

経済的にペイするかどうかは不明であるが、現在タイが輸入している自動車用鋼材よりもトン当たり1000バーツは安く供給できるとしている。しかし、同社は現在のところ棒鋼と線材ミルしか保有しておらず、タイに進出している日本の自動車メーカーがタタの製品を買うことは当面はありえない。

将来は、ミニ薄板ミルでも設置するのであろうか?そうだとするとかなりの追加投資が必要になる。

インドのタタ財閥はタイのミレニアム・スチール(Millenium Steel)の株式67%を今年取得し、社名をTata Steel(Thailand)と改めた。この会社は現有生産能力は170万トンであるが、工場も3箇所に分散しており、旧式な小型設備が多く110万トンしか生産していない。

タタ財閥の鉄鋼部門の全体の粗鋼生産能力は05年現在は年間400万トンであるがCorus(年産能力1900万トン)の買収などにより2015年には3000万トン規模にまで持っていきたいとしている。

今年はシンガポールのNatSteel(鉄筋棒鋼主体)を買収した。

また、Corusの買収についてはブラジルの大手メーカーCSN(Companhia Siderurgica Nacional) がタタの買収価格1株500ペンスより高い515ペンスの価格をつけ買収に乗り出してきた(06年12月11日現在)。

タタがどこまでCSNと張り合えるか疑問が出てきた。CSNは鉄鉱石鉱山も所有しており、鉄鋼業界での実力という面ではタタは到底太刀打ちできない。おそらくCorusの経営陣はCSNからの合併話しに傾いていることであろう。

 

22-9.新日鉄が南タイに一貫製鉄所建設計画(07年11月17日)

バンコク・ポスト(’07年11月17日、インターネット版)によれば、来日中のコシット(Kosit Panpiemras)工業相は新日鉄から、政府の所有する南タイ工業団地に一貫製鉄所を 建設する計画があるという話を聞いたとのことである。

新日鉄は30億ドル(≒3,300億円)を投じて高炉一貫製鉄所を建設する計画書を近くタイ政府に提出することとなる模様である。 この金額には土地代やインフラ建設費は含まれていないという。

新日鉄が今回、タイの政府ミッションに具体的な金額を提示して、話しを持ちかけたとすれば既に事前の調査がかなり進行しているものと思われる。

新日鉄はPOSCO、住金などとの合弁でSiam United Steel(1995)Co.(SUS)という年産100万トン規模の冷延鋼板工場をラヨンで操業している。

現在、タイの鉄鋼需要は粗鋼換算で1,200万トン(内容積4,000立方メートルの大型高炉4基分)はあり、今後さらにタイの工業化が進めば、需要はさらに拡大することは間違いない。 また、自動車や家電生産が多いことから高級鋼材の需要も今後ますます増える。

南タイといっても比較的バンコクに近いチュンポンからナコン・シ・タマラートの間だと考えられている。この辺は比較的良好な港湾(水深、岸壁など)があると考えられ、製鉄所操業に欠かせない水も豊富にえられる。

しかしながら、環境保護区も多く、広大な敷地を擁する大型製鉄所の適地はそれほど多くはないと見られるが、工業化が極端に遅れている南タイにとってはこのプロジェクトは非常に大きな経済効果をもたらすことは間違いない。(私のホーム・ページPartIIの南タイ旅行記を参照)

タイでは上(#22-5参照)にみるようにサハビリヤ社が中国と組んで現在のバン・サパン地区(ホット・ストリップ・ミルがある)に高炉を建設すべく計画している。しかし、その計画は環境保護地域にまたがるためになかなか実現が難しいと考えられている。

また、サハビリヤは元の日本鋼管(現JFE)が出資をし、技術協力を行い、冷延鋼板工場Thai Cold Rolled Steel Plc(TCRSS)をサハビリヤとJFEを合弁で操業している。

しかし、サハビリヤ製鉄は華人資本家であり、過去において日本側とうまくいっていなかった可能性がある。特に、タクシン政権時代はタクシン首相のクローニーであることをよいことに、かなり勝手な振る舞いがあったことは独自に大型一貫製鉄所計画を打ち出したことからも窺われる。

JFEも一貫製鉄所の建設に関心を持っているといわれているが、今後サハビリヤとの関係をどうするかなどの課題が残されておる。今後サハビリヤ一族が経営に関与する限り、会社のマネージメントに相当の問題を抱え込むことになるのは間違いないであろう。

 

22-10..タイで―新日鉄、JFE,ミッタルなどがいっせいに高炉建設計画(08年2月3日)

英字紙ネーション(2月2日インターネット版)が伝えるところによれば、新日鉄、JFE,ArcelorMittal、宝山鉄鋼(中国)の4社がタイの投資委員会に泰氏、高炉一貫製鉄所の建設に伴う優遇税制の申請を出したという。

投資委員会(BOI)のサニット(Sanit Charnjavanakul)事務局長によれば4社とも最近申請を出したところであり、NESDEB(国民経済社会開発委員会)とも協議の上、立地問題などなど検討したいとしている。

各プラントとも年産200万トンという最小規模でも5,000~10,000ライ(1ライ≒500坪)は必要であり、立地の選定だけでも6ヶ月から1年はかかるとしている。以前には東海岸が高炉建設に適当だと考えられていた(Eastern Seaboard Development Plan)が、今となっては工場が多く進出したため手狭になっており、新立地としては南部ということになろうという。

既にこの件はスラユット政権のときから検討を開始しており、チュンポンからソンクラまで検討領域に入っているという。深い港湾と良質な工業用水が確保できることが絶対的な条件になる。また、観光地や環境政策に抵触するような場所は避けなければならない。

タイの地元鉄鋼業界の最大手サハヴィリヤ製鉄はチュンポンのやや北のバン・サパンの現有工場の隣接値で高炉建設を計画しているが環境問題をめぐって地元住民とトラブルを起こし、死者まで出していることは既報のとおりである。

また、BOIとしてはサハヴィリヤには「特典」を与える考えはないとしている。というのは同社は進んだ生産技術もなく、環境対策上も民代を起こしかねないからだという。(単独もしくは中国との合弁で計画を進める考えのようである)

JFEはサハヴィリヤに資本出資しており、旧NKK(日本鋼管)が長年にわたって技術指導もしてきたが、サハヴィリヤのオーナーとの関係が必ずしもシックリいっていなかった経緯もある。

今回の高炉一貫製鉄所はタイの自動車産業の発展を念頭においたものであることは間違いなく、世界で最高級品の自動用鋼板の生産を目指すとすれば、日系の新日鉄とJFEの2社に対象が絞られることは間違いないであろう。

現在タイの粗鋼見かけ消費は年間1,250~1,300万トンとみられそのうち450万トンが高級鋼板であるとされている。(続く)

 

⇒タイの新製鉄所建設でミッタルがタクシンに面談(08年4月10日)

世界一の粗鋼生産規模を誇るアルセロール・ミッタル(ArcelorMittal)のラクシュミ(Laksmi Mittal)会長が新たに高炉一貫製鉄所を建設すべくタイを訪れ、どういう思惑かはわからないがタクシン元首相と面談した(写真がネーション紙のインターネット版、4月10日付けにのっている)。

一体タクシンはタイの高炉建設にいかなる関係があるのだろうか?

タクシンの子分が政権を取ったということで、カゲの実力者タクシンに協力を要請したとしか思えない。

そもそもミッタルは出来合いのオンボロ製鉄所を買収して大きくなっただけの会社であり、高炉建設を始めととして、新規に一貫製鉄所(高炉ー転炉ー連続鋳造ー圧延)などを建設したことはない。

製品も、高級鋼板も乗用車用の外装材などはは新日鉄の技術協力無しでは生産できない。

しかし、ミッタルの今回の行動は不気味である。タクシンが口出しするようなことがあればタイの今後の鉄鋼業の発展にとってプラスになるようなことは絶対にない。何でもかんでも「利権化」される恐れがある。

利権の対象になり政治家の餌食になりボロボロにされた典型的な鉄鋼会社はインドネシアのクラカタウ製鉄所である。こういう製鉄所があるがためにインドネシアの工業化はワキ道にそれてしまい、今日に至るまで悪影響を受けている。

ベター・ザン・ナッシングどころかナッシング・イズ・ベターである。

製鉄業のような国民経済にとっての重要基礎産業は清潔な政府を有する国でなければまともには運営されない。タイの場合は変な製鉄所ができれば、きまって「保護政策」を要求する(マレーシアがその良い例)し、そうなると関連の自動車産業や電機など計り知れない悪影響をこうむる。

今のタクシン派サマク政権が続けば、その危険性はきわめて高いと言えよう。要注意である。


22-11.タイに新日鉄とJFEが高炉建設計画提出(09年7月7日)


バンコク・ポスト(’09年月7日、インターネット版)によれば、新日鉄とJFEはタイの投資委員会(BOI)に対し、一貫製鉄所を 建設するための「環境評価」と「地域対策(Community management)」の計画書を提出したとBOIのアチャカ(Achaka Sibunruang Bimbre、女性)事務局長が語った。

タイ政府としては日本の高炉メーカーの操業技術や環境技術に全面的な信頼を置いており、また地域社会と企業のあり方についても日本の高炉メーカーがソフトな対応をしてうまくいっていることを認識している。

そう申してはナンだが、地域社会の住民の反対運動を暴力団を使って粉砕したり、銃殺するようなことは日系企業ではありえない。

ただし、問題は日本の2社がタイに同時に高炉を建設することは需要規模から言ってやや心配がある。今後ごの調査に待つほかないが、いずれは需要が増えてくることは間違いないにしても当面は1社しか認可されない可能性がある。2社の共同投資がベストな方法だが、難しいことは自明である。

第2の問題はサハヴィリヤなど既存のタイのメーカーがかなりの抵抗を示すことにある。特にサハヴィリヤはかつてタクシン政権に密着していたことがあり、民主党政権にも積極的なアプローチをおこなうことは明らかである。タイ政府はJFEに「サハヴィリヤを入れてやってくれ」ということを言い出しかねない。しかし、それは最悪の結果をもたらしかねない。(続く)


22-12. ArcelorMittalがG.Steelの株式40%を取得計画(2011-3-30)

Mrtal Bulletin (7 March, 2011)によればArcelorMittal社はタイのミニミル・ホット・コイル・メーカーであるG. Steel社の株式40%を75億バーツ(約203億円)取得することでG.Steelのオーナーであるソムサク(Somsak Leeswadtrakul)社長と合意した。

同時にミッタル社はG.Steel社に対し5億ドルの信用保証をおこなうという。これでG.Steelは倒産を免れたといえよう。

ただし、G.Steelは今後20年間にわたり、総額8億5600万ドルのマネージメント・フィーを支払うことのなっているという。これはミッタルから与えられる信用保証に対する金利に相当するものといえよう。

G.Steelの採算は2008年=12億バーツの赤字、2009年=103億バーツの赤字、2010年(9か月分)=71億バーツの赤字ときわめて苦しい経営状態が続いている。同社のホット・コイル生産能力は年間250万トンである。

ソムサク氏はもともと溶接鋼管工場を経営していたが1995年にミニミル(熱延広幅帯鋼工場)を設立したが、1997-8年の通貨・経済危機に遭遇し、その後も何度か経得危機に襲われたが、今日まで何とか持ちこたえてきた。しかし、資金的にもギリギリの状態に追い詰められていた。

こういう会社に狙いをつけて拡大してきたのがミッタル流のやり方である。