ナウな音を求めるホットな君に今話題のレコードを推薦しましょう。これこそ僕は現代のサウンド
であると信じるモーグ・サウンド。このサウンドを有能なアメリカのスタジオ・ミュージシャン達が
集まって研究している数々のグループの中に『ホット・バター』という奇妙な名前の一団がある。
『ホット・バター』はガーションキングスレイという人物が中心となり活躍しているが、この人実は
モーグ・サウンドの第一人者なのです。以前、この人は「ガーシュイン・アンダーグラウンド」
(STET-8324)をプロデュースして話題を呼びました。そのレコードではガーシュインのラプソディ・
イン・ブルーを取り上げていましたが、オーケストラのすべてのパートをモーグで演奏して私達を
驚かせたものでした。各社からこの種のレコードが数多く発売されたので知っている方も沢山いる
ことでしょう。モーグ・シンセサイザーとはアメリカの理工学者、モーグ氏が考案した楽器の
ことなのです。
この楽器は非常に複雑な機構をもっており、音を出すまでに一〜二時間かかるというしろものです。 しかし無限に音の合成が可能になり千差万別の音色が造り出せるしくみになっています。アメリカでは この種のモーグを使用したレコードがミリオン・セラーを記録していますし、日本でもグ―ンと のびてほしいですね。ぎんぎんのロック花盛りのポップス界に一服の清涼剤となってほしいと 願っているのは僕一人ではないでしょう。 「モーグ・サウンドにストリングスをプラスした軽快なナンバー”ポップコーン”」「インストルメンタル・ ナンバーのヒット曲が最近ないんで、少々僕は悲しいのです。」 「ひとつ、大いにこの曲を皆でプッシュしちゃおうよ」 「しかし、ポピュラーもこうやって聞いてみるとだいぶかわってきたね」 ガーションキングスレイを中心としたグループ『ホット・バター』は一流のスタジオ・ミュージシャン の集まりだけに、他のいろいろな楽団にくらべて非常にサウンド追求という画がより良く出ていると 思います。B面は『アット・ザ・ムービー』です。こちらもリズムが大変はっきりしていて、 モーグ・サウンドの基本レコードのようですね。「何度も何度もくり返して聴いてみると味がでてきて いいね」「では”ホット・バター”の諸君は次回の作品に早くも取りかかっている様だから期待して 待つことにしよう」 D.J.良藤有三 |
ナウを求めるホットな君にゴキゲンなアルバムを紹介しましょう。
先にシングルで発売された「ポップコーン」が世界中で大ヒットしたことは皆様もよくご存知の
ことでしょう。競作盤も数多く発売されましたが結局オリジナルのホット・バターの演奏が
予想通り圧倒的な人気を勝ち取ったようですね。
最近はラジオのテーマにも使用されているようですし、これからも末永く愛され親しまれる
ことでしょう。立体感あふれるサウンド。これこそ僕は現代のサウンドであると信じます。
有能なスタジオ・ミュージシャン達が集まってこのサウンドを追求しているグループが アメリカに現れました。ご存知、名前を「ホット・バター」。ジェローム兄弟が中心となり 全部で六人のメンバー。 メンバーと楽器編成は次の通り。 ●デーブ・ムルラニー(オンディオライン) ●トニー・スピノサ(タンブリン) ●ジョニー・アボット(ギター) ●ビル・ジェローム(シェイカー) ●スティーブ・ジェローム(エレクトリック・ピアノ) ●スタン・フリー(モーグ・シンセサイザー) 「オンディオライン」とはストリングスの音色を出す一種のオルガンのようなもの。 「シェイカー」はリズム楽器のこと。「モーグ・シンセサイザー」はアメリカの理工学者、 モーグ氏が考案した楽器(装置?)。楽器の規模にもよりますが、だいたい三つ以上の発振回路を 持ち互いに音を混ぜ合いながら色々な音を造り出すしくみになっているのです。 その混ぜ合わせかたによって無限の音色造りが可能な訳です。外見は電話交換機に鍵盤が ついたような形になっています。 そのモーグ・シンセサイザー、このアルバムでは十二分にその機能を発揮して僕達の 耳を楽しませてくれていますが、この楽器、実は音を出すまで大変な苦労が必要なのです。 しかも思い通りの音色を出すのにまた手間がかかるという大変に厄介なしろものです。 この厄介な装置をメインに起用したアルバムが既に何回となく発表され、そのたびに 大変な話題として注目を浴びましたが、どれも単なる試みの域から脱しきれずに終って しまったようです。一方、これをメイン楽器として使用せず、装飾的な扱いをしたもの、 または他の楽器と合わせたものなどは頻繁に登場してきています。事実、ロック・グループの 中にもモーグを使用しているところはかなりあります。しかし、モーグをメインに打ち出して 大成功を収めたのはホット・バターによるポップコーンが初めてでしょう。とに角、 世界中で大ヒットしてしまったのですから。 さて話しは変わりますが日本で「ポップコーン」を最初にラジオのヒット・チャートに ランクさせた名古屋にあるT放送局のSディレクター氏は『最近のインストルメンタルの シングル・ヒットが無かったのでこの曲を聴いた時、このユニークな演奏が必ずや日本人 にも受けると直感し、深夜放送で流してみた。 案の定、手ごたえがありヒット・チャートに顔を出してきた。』また同局のTディレクターも 『要するにマンドバーニーやレイモン・ルフェーブルのサウンドではついてこない。その点、 モーグを基調とした「ホット・バター」のサウンドは若い人達の心を確実に掴んだようだ。 この演奏は必ずロックの谷間にとうもろこしの花を咲かせるようなことになるでしょう。』 と語っています。とに角、大成功に気をよくした彼らはついにアルバムを完成させたのです。 ★曲目について簡単に★ まず一曲目は”ポップコーン”。作曲者のG・キングスレイという人はモーグ・シンセサイザー の権威として知られています。恐らく彼らにも良いアドバイスをしてくれたことでしょう。 そして懐かしのナンバーから「アパッチ」と「パイプライン」です。「アパッチ」は10年前に ヒットしたナンバーで大変リズミカルな曲で、ホット・バターは完全に自分達のスタイルに 変えて演奏しています。もともとのメロディーはスウェーデンのもので作者はヨルゲン・インゲルマン。 これがアメリカに渡り大ヒットしアルカイオラやヨルゲン・インゲルマンやサファリーズなどの 演奏で有名、次いでの「パイプライン」はご存知、エレキ時代を築いたベンチャーズの作品から どうぞ。 3曲目は「ホット・バター」でホット・バターが演奏します。これは彼らが全員で作曲しています。 トルネードスでヒットした「テルスター」、そして「トリスターナ」ですが、後の曲も ホット・バターのオリジナル作品です。 B面へと参りましょう。一曲目、まずは映画「小さな巨人」の中でも使用されたスコットランドの 古くから伝わる民謡でジュディー・コリンズによって歌われ、親しまれています。 ブロード・ウェイでも好評のミュージカル「ゴッド・スペル」から代表的ナンバーの 「デイ・バイ・デイ」をどうぞ。そして次は先にシングル・カットされた時に「ポップコーン」の B面に収められていたナンバーです。まあ全体的に云えることですが大変リズムがはっきりしていて、 モーグ・サウンドの基本レコードのようですね。 4曲目と最後の曲は、ニール・ヘフティーの作品から「トマト」、そしてロバート・マクスウェルの 作品で「ナロビ・トリオ」の2曲でこのホット・バターのデビュー・アルバムは終ります。これからも 彼らの演奏活動に注目しましょう。 では、次回作で又ね。 (良藤有三) |
2002. Past&Future