「夏」





蝉時雨
焼け付くような陽射し

激しい夕立と

そのあとに訪れるむぅとした空気


麻痺していく思考回路



強い睡魔

痺れた様な感覚

自分の存在が蜃気楼のように



かすれていく

かすれていく

わたしという存在



深く眠りに落ちて

這い上がれないほど

深く

思い出せないほど深い眠りの中で

夢を見よう





夏だから



(08.07.30)












「夏の中で」





口の中に溶けて広がる淡い味

記憶の底ではなお甘く

クリームでもないチョコでもない

粉砂糖のようなやさしい甘み

そんな思い出に包まれて

眠る

午後の浅い眠り



たくさんの思い出

たくさんの宝物

まわりに一杯ちりばめて

現に目隠し



おそらく

そうやって生きてきてしまったんだと

ほろ苦い後悔



もう一度やりなおせるなら

いったいどこからやりなおそう

生れ落ちたそのときまでさかのぼる



もしも

ゆるされるなら



そんなことをうらうらと思い巡らし

今は蝉の音に身を委ねて



2008-08-05












「 安堵 」





かかえた苦しみ

こころの傷

全部ここへ持っておいで

そうして真っ白になって

帰っておいき



母の懐へ抱かれにきたのだから

何も案ずることはない

何も苦しむことはない



生きているのだから

また顔を上げて歩きなさい

全て受け止めてあげましょう



だから

いつも笑顔で

精一杯誰かのために働きなさい

けして自分のためだけではなく



生きているのだから

働きなさい



倒れそうになったら

帰る場所がここにある



2008-08-07












「溶ける」





沸点に近く

体中の血液が温度を上げる

こころから湯気が立ち上るのが見えるでしょう

頬は熱く

反比例して冷めていく思考回路



立ち尽くす

立ち尽くす

燃えるようなアスファルトの上



それでもなお

夢を見たいともがいている

輝く瞳を維持しようと



広げた羽は熱に溶け始めているというのに



2008-08-07












「夏の終わりに」





これで最後

これで最期と蝉が鳴く

命の終わりに謳う歌

残された時間を

新しい命のために使い尽くす



長い長い沈黙の人生

光も差さない土の中

やっと明るい所に出られるのは

最期のときだなんてね



人に生まれたことへの感謝を

移り変わる季節を堪能し

たくさんの人とふれあえる幸せ

もっともっと感謝しなければと想う



この騒々しくも哀しい蝉時雨の中で



2008-08-09












「海辺にて」





力強い波の音

体の芯まで響かせて

荒々しく波



水面は留まらない



動き続ける

常に新しい顔見せて



洗い流せ

洗い流せ

蹲るこころ



空は青い

強い風の中

かもめが飛ぶよ



羽を広げれば飛べるんだと

そう言いたげに



2008-08-14












「 祭り 」





元気の良いお囃子が聞こえてくると

そわそわ

うきうき

楽しいことが待ってるような

お宝発見できるような

そんな期待と夢で胸が膨らむ



小銭を持って出かけたお祭り

少ない小遣いで

どれだけの夢を買えるか

子供心に一生懸命計算した遠い日



もう小銭ではない小遣いで

大人になった今も

何を買おうかと

瞳輝かせ



売ってるはずのない夢を探しにでかける

お囃子の音に誘われて



2008-08-23












「 出会い 」





たったひとりの人と出会う奇跡

ほんの少し歯車が違っただけでも

ほんのひらめきで進路を変えただけでも

出会うことが叶わないこともある



絶妙な運命の糸に操られ

人と人とが出会う

触れ合う



愛し合うための出会い

憎しみ合うための出会い

さまざまな出会いがある



それが素晴らしい出会いなのだと

気付かずすれ違ってしまうことも



ねえ

あなたとわたし

素晴らしい出会いだったと思えるように

歩いていけたらいいね

2008-09-08












「 のぞみ 」





あなたの胸の中で

静かに咲き続ける一輪の花でありたい



華やかでもなく

大きくもないけど

自然と笑みがこぼれるような

そんな存在でありたい



辛いときに顔をうずめられるような

ふくよかな胸は無いけど

やわらかい存在でありたい



いつまでも

いつまでも

そんな存在であり続けたい



2008-09-26












「とおせんぼ」





とおせんぼ

ここから先へは行けません



踏み込めない領域が

人には必ずあるのだと

どんなに愛していても

こころの深いところへは入れない
 


抱きしめても抱きしめても

同化することが不可能なように



とおせんぼ

むこうで笑っているのは誰でしょう



2008-10-06












「花」





色褪せても

枯れ落ちるそのときまで

可憐であれ乙女よ



美しき日々は短く

激しい季節の中を渡る

雨の降る日も

風の吹く日も

人々の心和ませ



朽ち果てる

そのときまで

可憐であれ



2008-10-19