「 空に向かって 」





ふと見上げたら飛行機雲

白い線がまっすぐと伸びていく

空はこんなにも大きい

そして

ひとは

ちっぽけだ



泣いたり

笑ったり

大忙し



さあて

今日はどこへ行こうか

気の向くまま

足の向くまま

飛行機雲を追いかけて

どこまでも歩いてみようか



忘れていた何かを

見つけられるかもしれない

見失ってた何かを

見つけられるかもしれない



涙を拭いて

立ち上がろうか

あの

空に向かって

2004/08/11 19:28









「 小さな花のように 」





たとえば

あなたが野を渡る風ならば

吹かれて揺れる花になりたい



たとえば

あなたが空を行く雲ならば

よこぎりさえずる小鳥になりたい



ささやかな

ささやかな夢を抱いて共に歩く

たとえ

並んで歩けなくても

後ろから

追うように付いていくだけでも

同じ道を歩けるならば



たとえば

あなたが夜の闇ならば

息をひそめる時になりたい



たとえば

あなたが輝く太陽ならば

光を受けてきらめく水面になりたい



たとえば



たとえば



全てがあなたのまわりでまわるように



全てがあなたに繋がるように



そんな小さな夢をだいて

そっと咲き続ける

小さな花のように生きたい



2004/08/12 23:30








「 海辺にて 」


波の音
波の音
寄せてはかえす

風の音
風の音
潮騒の音に協和して

透き通るような青い空に
真綿を薄く伸ばしたような白い雲

子供達のはしゃぐ声
人々のざわめき

心の中が空白になる
溶けていく
溶けていく
我の存在そのものが

無にかえる
空白の
こころ

さらさらの砂
湿ったすな
散らばる貝をそっと踏み
歩く

波打ち際を
そっと
そっと

潮風に巻き上げられ
あの青空に吸い込まれるように
こころが

浄化されてゆく


2004/08/21 22:10








「 沈黙 」


どんより曇った空からは
憂鬱だけが降ってくる
気まぐれに覗く青空が
今は少し恨めしい

埋め尽くせないこころを
あの雲で覆い尽くしてしまえれば
雨が降ってすっきりするのかもしれない

いつか山で見た緑
輝くほどの命のきらめき
太陽よりも眩しかった

あんなふうに
胸をはって生きていられたら

今日は
この重たい空とともに眠りにつこう


2004/08/30 18:24








「 出会い 」


この広い世界で
たったひとりのひとと出会う
なんて不思議なこと

約束したわけでもなく
だれかに教えられたわけでもない
ある日あるときある場所で

偶然とよんでしまえば
それまでだけど

そうして
人生を共に歩き出す
子供の頃には
思っても見なかった
人生を

たとえ
それが別れで終わったとしても
また新しい出会いが必ずある

だから
今は辛くても生きるのをやめられない
まだ見ぬ明日をおもえば
ほら
なんだか胸が
わくわく
どきどき

この広い世界のどこかに
出会うべき人が
出会うべき時を待って
一生懸命生きているかもしれない

こんなにたくさんの
人がいるんだもの


2004/09/02 21:42








「 新宿の夜 」


夜の明かりに憧れたわけじゃない
その冷たい横顔に
抱かれたかっただけ

この身を投げ出して
涙を出さずに泣く

そんなことも可能な街
誰も見てやしないから

明るさに目を奪われて
本当の姿なんて見えやしない
見ようともしない

笑い転げて
おしまい

それでいいんだよね
都会の夜なんてさ

みんなひとりぼっち
笑顔の下に
さまざまな心を隠して
馬鹿騒ぎ

帰りたくない
帰れない

この街に
朝なんかこない
この街に
明日なんてない

今が全て
今宵ひとときの夢を

闇の中で
何かがほくそえんでいるのも
知らないで



2004/09/05 19:43








「 まあるい石 」


ゆるやかな川の流れの
水底の見える
たまりのなかで
ゆらゆらと
ゆれるように
静かに佇んでいる石

水面がゆらめいて
水底の石が煌いている
水流に磨き上げられ
角のとれたまあるい石

はじめは
ごつごつとした岩だったのだろう
こんなふうに
まあるくなるには
さぞ
長い年月がかかったにちがいない

人のこころも
流されたり
水流にもまれたりして
いつかは角が取れて
まあるく
まあるくなるのだろう

じっと
耐えてこその
まるさ

生きることに
耐えてこその
まあるいこころを持ちたい



2004/09/06 21:07








「 雑草のように 」


ただ微笑んでいる
ただ笑っている
否定もせず
肯定もしない

雨に濡れ
風を受け
わずかの陽を堪能して
いきをひそめて生きている

それでも
葉は朝露を受けて輝くし
小さいけれど
花もつける

こんな
小さな花になりたい

こつこつと生きてきた
それが
認めてもらえないのなら
何を信じて生きていこう

黙々と歩いてきた
障害物が多すぎる
よけてもよけても
乗り越えても
乗り越えても
まだ
続く

随分強くなったよ
随分たくましくなったよ

ただ
先を見る勇気はないけれど
今できること
このまま
まっすぐに生きていく

それしかないのなら
少しでも笑顔でいられるように

聞こえる
自分の中で何かが
ひびわれていく音が

深い森の
大木の陰でひっそりと息づく雑草のように
それでも顔を上げて這い上がろう

この命ある限り



2004/09/07 23:17








「 漂流者 」


こころの深いところから
湧いてくる言葉を
拾い集め
並べてみる

いろんな顔の
わたしがいる

泣いていたり
笑っていたり
怒っていたり

ときには
遊び呆けていたり

何かを探し続けているのに
見つからない夢
何度も同じ夢を見る

知らない街だったり
迷路の中を逃げ回っていたり
そんな
不思議な感情が
ことばの羅列の中に潜んでいる

一番届いて欲しい人には
届かない
一番欲しい言葉が
もらえない

何を求めているのか
本当は良く知ってるくせに
わからないふりをし続ける

わたし
言葉の海で
難破中



2004/09/08 20:03








「 帰り道 」


それと気づかせないくらい
ひそやかに雨が降る
フロントガラスに微かな水滴
ワイパーもいらないくらいに

夕暮れ時の街は
帰りを急ぐ車がせわしなく
まぶしいヘッドライトの川が流れる
歩道の人影など
目をやる隙もないくらいに

しびれるくらいに疲れた頭に
飛び込んでくるものは
光の川
一日の残像
麻痺したような腕でハンドルを切る

ねえあなた
待っていてくれるかな
灯りをつけて

とびきりの笑顔をちょうだい
それが一番の薬
あたたかいぬくもりをちょうだい
それが一番の休息

何も語らない雨が
ひそやかにフロントガラスを濡らしている
通り過ぎる景色に
きらめきを添えて



2004/09/09 22:09