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by mfuku/84-1
■地獄!?のセイルトレーニング 掲載日 99.1.3

 セイルと言ってもこれはウインドのセイルのことではありません。ウインドには直接関係ありませんが、同じセイルクラフト同士ということで、あながち近い親戚とでも言っても遠からず。帆船の航海訓練に参加した時の話です。優雅に大海原を帆船でクルーズして楽しもう!という軽い気持ちで参加したら。。。



 とある日、うちの会社内の社内誌に海星のセイルトレーニング公募の記事を見つけ、応募したらラッキーにも当選して参加することになりました。クラブのメンバの岩本とともに。(海星は実は結構有名な帆船だったみたいです。岩本によるとビーパルにも記事が掲載されていたそうです。)

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JD-27
1997年11月7日(金) 11:00 〜 11月9日(日) 16:00
出航地、帰港地とも横浜港(ぷかり桟橋)
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乗員:23名(女性6名)
クルー:
 船長(かわ)、機関士(おだ)、ナビゲーター(けい)
 コック(くぼ)、クックスメイト(まま♀)
 ボースンズメイト(ちず♀、はる♀)、インストラクタ(ひろ♀)
スタボーワッチ:
 リーダー(かま)
 トレイニー(てつ、わ〜、しば、あき♀、ふく、きくの6名)
ポートワッチ:
 リーダー(なお♀)
 トレイニー(めぐ、まいく、きよ、はる、ろい、さる、まきの7名)


●11月7(金) 横浜港〜追浜沖/晴れ/風弱し

 横浜桜木町で電車を降り、歩いて出航場所である「ぷかり桟橋」に向かった。出航場所に向かう途中に停泊する「日本丸」を見て期待を膨らましながら。ぷかり桟橋に着いた時には既に「海星」は停泊中。日本丸に比べるとかなり小さめ。乗り合い漁船を一回りか二回りか大きくしたくらいで、少々期待外れでした。先に到着してた岩本を見つけ、海星をバックに記念写真を取ってるうちに集合時間に。Kaisei笑顔が眩しい!?女性(イントラのひろさん)の集ってください!という声に、みんなぞろぞろと集ってきた。思ったより結構人数がいて、あんな小さな帆船にこんなに乗り込むんだと思ったりしていた。船に乗り込んだら、暫くはここに停泊したまま操船に必要な基本訓練を行うとのこと。直ぐに出航できると思っていたのでややがっかり。一旦乗り込んだら二度と降りれないよ!なんてひやかされながら乗船し、メスルーム(食堂)でスモッグ(作業衣)、安全ベルト、雨合羽を受け取り、階下のキャビン(船員室)に向かった。私の部屋はCabin6で、狭い窮屈な部屋にベッドが6つ。もちろん2段式。同居人は、ワッチリーダのかまさん、訓練生(トレイニー)が他に2名。適当に自分のベッドを選んだ。後から分かったことだが、そのベッドの長さは170cmくらいしかなくて後で大変な思いをすることに。ベッドによって長さが様々だそうです。
 荷物を置き、ベッドメークをした後、メスルームに集り、航海訓練の簡単な説明を受け、クルー全員の紹介も行われた。みんな気の良さそうな人ばかりで、若い女性のクル〜もいるんだなぁ。。。その後トレイニーはスタボーと、ポートのワッチに分かれて、簡単な自己紹介をして、航海中の呼び名(いつもやってることらしい)もその時に決めた。ちなみにスタボーワッチの福島は「ふくちゃん」、ポートワッチの岩本は「マイク」という名前で3日間を通した。スタボーワッチは全部で6名(うち女性1名)で、なんとNTT社員が5名もいた。Memberポートワッチも7名中6名がNTT社員。こんなことは珍しいそうです。
 各ワッチごとに別なローテを組んで、いよいよ操船訓練の始まり。スタボーワッチは、「舵取り」を最初に。右に舵を切る時はスタボー○○。左に舵を切る時はポート△△と指示が出る。ウインドでふだん聞き慣れた言葉なので、船長の指示を復唱し、舵を切り終えたら報告するという感じで、計器に従って舵を回すだけで楽勝!楽勝!(実際の舵取りは、スタボーあるいはポート○○度とラダーの角度、船の進む方向○○度という2通りの指示が飛ぶ。この方向指示が結構曲者で、実際にその方向を維持するのは結構難しい)。ここで一旦昼食時間に。食事はワッチ毎に30分時間をずらして取ります。
 各自、食事の後片付けを行って、引き続いて「ロープワーク」を行う。ロープの固定方法、結わえ方、引き方等を一通り練習する。リーダーの指示に従い、ホールアウェイをという掛け声でロープを解き、ツー・シックス・ヒーブという掛け声を出してロープを引いて固めていきます。みんな元気な声を出し、やる気まんまんでモチベーション極めて高しといったところ。指示の言葉は全て英語(あるいは英語もどき)なので、ここでは言葉を覚えるのが一番大変だった。
 続いて、な、なんと、マストに登って、帆船のシンボルでもあるスクエアセイルを開帆することに。Kaiho高さ30mもあるそうです。下から見るとそんなに高さを感じないが。スクエアセイルを張るヤードがフォアマストに4本水平に取り付けてあり、それぞれ上からトギャラン、アッパー、ロワー、フォアコースという名前が付いています。スタボーワッチは、上から2本目のアッパーに登るよう指示が出た。船の両側の縄梯子を登っていき、途中の踊り場近くで、90度以上の傾斜角度のオーバーハングの梯子をよじ登ります(結構恐い)。さすがにここでは、安全ベルトのフックをワイヤーにかけますが、それでも手を滑らせて滑落したらただじゃ済まなそう。そこからさらに上部に向けて縄梯子を登る。上に行くに連れて梯子が細くなり、最後は片足がやっと入るくらいの幅に。結構プレッシャーを感じる。ようやくアッパーヤードにたどり付くと、そこは目がくらみそうな高さ(もう一つ上のトギャランはビルの9階相当)で、ここからヤードの下に張ってある小指大の太さのワイヤー上を伝って、ヤードの端に移動します。ヤードの下に手掛かりがわずかにあるだけで、ワイヤーは揺れるし、結構緊張しました。隣の人は緊張のあまり足ががくがく震えていて、その震えがワイヤーを伝ってこっちまで感じ取れました。セイルを縛っていたロープを解き(ガスケット)、セイルを開帆して、ようやく下に降りることに。下りの際もオーバハング部では、またまた緊張。
 続いて、「ヤードブレイス」(風の向きに合わせてヤードを回転させる)を行った。スタボー側とポート側に人が付き、片側を緩めながら、反対側を締めていく。実際は4本のヤードのそれぞれに、スタボー、ポートの両サイドに数人ずつ人を張り付け、全員で帆の向きを変えていきます。みんなで操船してるんだなぁと感じ取る一瞬です。
 一通りの訓練を終え、出航のためにメインセイル(メインセイルのブーム、ガフは滅茶苦茶重く、引っぱり上げるのにみんなでひ〜ひ〜言ってロープを引っぱりました)とバウ側のアウタージブをみんなで張り終え、いよいよ出航(出航時間は15:00)です。
 毎夏行われる実連の「横浜港ボード天国」のレース会場を抜け、ベイブリッジの下をくぐり抜け(下からベイブリッジを見るのは初めて)、期待で胸を膨らませる。いよいよ浦賀水道へ向けて出航だ。横浜港の沖でタッキングとウェアリング(ウインドでいうところのジャイブ)を練習することになりました。私がこの場面での舵取りを行うことに。横浜港沖には結構沢山の船がいて、他の船の迷惑を顧みることなく、タッキング、ウェアリングを行いました。舵は基本的には船長の指示に従い、スタボー側、ポート側に切るだけだったので、むしろ大変だったのは、ヤードグレイスをする他のメンバだったと思います。でも舵切りも1回転で4度しか回らないので、スタボー30度と指示された後にミジップ(ニュートラル状態)なんて言われた時には、大急ぎで7回半も舵を戻したりと、結構おおわらわでした。
 タッキングとウェアリングの練習を終えた後、浦賀水道に入り、今日の停泊地となる横須賀の追浜沖に向かった。舵を交代し、今晩のギャレイヘルプ(料理の手伝い、後片付け)当番となったので、17時から厨房に向かう。クックスメイトのママの指示に従った。最初の仕事は、地下の冷凍室の霜取りを命ぜられ、氷点下20度の冷凍室で凍える恐怖と戦いながら、厚さ数cmもある(これは霜とは言えないレベルだな)氷をハンマーと、ドライバーを片手に掘削しました。食事の後片付けは結構な重労働で、最後には雑巾で厨房の床磨きまで命ぜられ、みんなのために夜食のおにぎりを作り2時間ほどギャレイヘルパーを務めました(なんでお金払って参加してるのに、こんなことやらされるねん!と少々苛立ち気味だった)。
 19時過ぎに解放された時には、追浜沖に到着し、錨もうち終え、セイルもかなり畳み終わっていました。まだメインセイルが残っていたので、畳帆に参加したが、これまた結構な重労働。畳帆よりギャレイヘルプをやっていてラッキーだったかな。さらに、ロワーヤードに登りスクエアセイルの畳帆を行う。3段目のヤードなので高さに対する恐怖は、最初に登ったアッパーの時ほどではなかったものの、日も沈み暗闇の中(マストに明りは灯すが)、マストに登り、重いセイルを引っぱりあげ、足場の悪い場所で畳帆する作業は苦痛以外の何者でもなかった。くたくたに疲れ今日の作業も終わり、今日初めての休憩タイム。疲れた体に暖かいミルクティーは何よりの一服となった。
 休憩後、全体ミーティングを行い、その後ワッチ毎に分かれて、何故この訓練に参加したのか?各自の抱負も含めて全員の前で発表することに。なんかまるで子供の臨海学校みたいなノリでした。が、私も結構楽しんでワイワイガヤガヤと。私は何故このセイルトレーニングに参加したかって?まずはNTT WEEKLYで目に止まったからなんだろうな。ウインドやっていて、同じセイルクラフトでありながら、ヨットや帆船のことにはあまりにも無知だったので、一度経験してみたかったというのが本当のところでしょうか。あまり大きなことは考えてなかったな。他のメンバも対した理由なかった。ヨットの経験者は二人ほどいた(あきちゃん、きくりん)。
 ワッチリーダのかまさんも、なおも、ボランティア参加で、他にはクックスメイトのママも、ボースンズメイトのはるさんもボランティア参加だそうです。ボランティアでこの海星が支えられていることを初めて知りました。みんな海星を愛してるんだなぁ。かまさんはNTTデータの社員で今シーズンは10回以上の航海に乗り組んでいるそうです。ワッチリーダになるにはクルーの推薦がいるんだとか。みんなこうしてハマって、会社をドロップアウトしていくんだろうね。何だかウインドと同じ世界だ。海星にボランティア参加するのも悪くないかななんてちょっぴり思ったりもした。
 自己紹介も終わり、夜間の監視体制に。本当を言うと、くたくたに疲れていたので、別に停泊してるんだから、何の心配もないんだし、監視なんかしなくてもいいのではと思ったりもしましたが。とはいいつつもやっぱり我がまま言える状況でもないし。私は0:00am〜2:00amの監視当番に。30分毎に船の停泊場所(これはレーダーで計る)、風速、風向、さらに1時間毎には、先ほどの項目に追加して天気、気圧、気温、水温、水の浸水チャック(船内5箇所)を行う。
 取り敢えず当番の時間まで解放されたので、今日一日の汗を流すためシャワーとする。シャワーの後は足元に溜まった水を、ハケで排水溝にかき出す作業が必要だが、何故か排水溝が一段高い位置にあり、汲み出すのにえらい手間がかかった。まったく頭にくることが多い。ようやく11:00pm頃に一段落し、1時間程度寝ようとしたが、発電機用のエンジン音が結構騒がしい。そして何よりもベッドが短い。体を折曲げて寝るはめに。うとうとしかけた頃に起こされた。同じ当番のテツと、ワーさんとメスルームでだべりながら、時間が来たら、チャートルームで監視項目をチェックする。何とも静かで穏やかな夜だ。海星のクルーも交代で私らに付き合ってくれていた。はるさんは色々と話し相手になってくれたが、ちずは眠そうですごく不機嫌。1:45amに次の当番を起こしに行き、2:00amにバトンタッチ。ようやく寝床に付ける。ふぅ...


●11月8(土) 追浜沖〜館山沖/晴れ/10KNOT未満

 7:00am起床。すぐさま召集が掛けられ、デッキウォッシュで今日1日が幕開ける。海水をポンプで汲み上げて豪快にデッキにぶちまけ、デッキブラシでゴシゴシと。デッキ掃除が終わると、スタボーワッチは朝食タイム。昨日の航程と今日の航路予定について船長から説明があり、今日も気合いを入れて頑張るぞ!と一同奮い立つ。相変わらず全員のモチベーションは高いまま。出航のために錨を巻取り、マストに登りスクエアセイルを展帆。今日はトギャラン、アッパー、ロワーの3枚を開帆する。我々のワッチはアッパー、ロワーを担当する。さらにメインセイル、アウタージブ、メインステイスルを、昨日の要領で張り上げ、出航の準備が全て整い、いよいよ館山に向けて出航。
 残念ながら風は弱めで10KNOT未満。それでもエンジンを停め、風の力だけで帆走する。なんと静かな走りなのか。見かけの風向はほぼアビームだったので、進行風を考えると、風下に下るような感じで進んでいたはず。船のスピードは人が小走りくらいの速さ。ウインドだともっと速く走れるんだけどなぁ。まぁ図体でかいから、しゃぁないね。出航時のデューティ(舵取り当番)はスタボーワッチで、今日も舵取りを担当できた。Kajitori船長の指示で船を一定の方向に保とうとするが、これが至難の業で、ウインドみたいにクイックレスポンスではないため、先を読んだ先手先手の舵取りが求められる。油断しているとあっと言う間にあらぬ方向に向かってしまう。
 海星は館山に向けて順調にクルーズする中、HAPPY HOURに突入。語感からすれば、のんびりお茶などしてくつろぐことかと考えていたが、大きな間違い。なんと船内の掃除タイムのことでした。スタボーワッチはデッキ回りを担当し、陽の光をさんさんと浴びながらHAPPY HOURを過ごせたのでまだラッキーだった。私は真鍮磨きを担当し、手始めに海星のツリガネから。金ぴかに磨きあげるのは何とも気持ちいい。ポートワッチは、部屋掃除、シャワー室、トイレの掃除でした。お疲れさま。
 HAPPY HOURの後は、ワッチリーダの手を借りず、トレイニーだけでさらに2枚セイルを張り上げた。多数のロープが交錯する中、求めるロープを探し当てるのも一苦労。どのロープに誰を当てて、それぞれどう引くのか?あるいは緩めるのか?みんなで知恵を絞り、ああでもないこうでもないと、ようやく意見収束したものの、セイル開帆のための指示の言葉はどう言うんだっけ?ってな感じでわいわい楽しめました。
 昼前からデューティがポートワッチに変わり、昼食後は1時間ほど昼寝する時間が取れてラッキ〜。Kanpan甲板で陽の光を浴びながら寝ていたが、ポートワッチに申し訳ないので、キャビンに戻りベッドで熟睡しました。14時に召集がかかった時には、あまりにも風が弱くなっていたため海星はエンジンで進んでいた。寝起きでまだぼけていたが、スクエアセイルを畳帆することになった。今度はスタボーワッチが、最上のトギャランの畳帆に。未体験の高さにかなりびびる。海面のうねりは小さいが、横揺れもマストの最上付近ではかなり大きい。開帆は楽であるが、畳帆作業は本当に重労働。足場の悪い中、相当時間を費やしへとへとに。さらにその下のアッパーの畳帆も担当する。途中で気分の悪くなったあきちゃんは、マスト上からコマセを撒くはめに。畳帆も終わり、ようやく甲板に降りれたものの、先程のあきちゃんのコマセの掃除が待っていた。まぁしゃぁないですが、理不尽な怒りを感じながら、後片付けを手伝う。ったく!
 スクエアセイルも畳み終わり、館山も目の前に見えて来た頃、甲板に集合がかかった。メインマストのスタボーサイドに何やら蜘蛛の巣みたいな網が張ってある。こりゃ何だ?恒例の「海星オリンピック」を開催するらしい。各ワッチ毎に網をくぐり、一度通った穴は二度と通過できないというルールで、ワッチメンバ全員が網をくぐり抜ける時間を競うという、いたってシンプルな競技。網は3列×3段あって、上の2段を抜ける場合は、全員でくぐり抜ける人持ち上げて通すことに。シンプルだが結構燃えた。特に腹の出てるおやじ、胸のでかい娘が網をくぐる時には野次も大きかった。結果は残念ながらポートワッチの勝ち。でも負けたスタボーワッチも賞品(チョコ)がもらえ、みんなにっこり。子供だましのゲームだった割には、みんな白熱した。
 ゲームの後は、ノックステイスルの畳帆を行うが、マストに登り、足場の悪いロープの上で困難を極めた。足場のロープはミシミシ音をたてるし、全く冗談じゃないぜ!ロープが切れて滑落するかもしれない悲壮な覚悟で臨んだ。夕食後、さらにメインステイスル、メインセイルの畳帆の続きを行い、今日もへとへとに疲れた。全体のミーティングが終わり、各ワッチに分かれて反省会を行う。かなり疲れていて、すっかりブルーな気分。海星の乗船記念に、トラックチャートの作成と6か月後の自分自身へ宛てた手紙を書くように指示があった。疲れているが、もうひと踏ん張り自主的に取り組まなければと自分に言い聞かせる。海星の航海記や過去の航海訓練の写真なんかも飾ってあり、これは結構楽しめた。特に会社の専務に騙され、海星に乗船させられた人の体験記は大いに笑えた。スタボーワッチのトラックチャートの作成リーダは紅一点のあきちゃんにお願いすることに。
 今日はセイル開帆にあたってのセイル毎のロープの場所と種類が覚え切れず悔いが残った。一通り復習してから眠りに付こう。今日のワッチ当番は、2:00am〜3:30amにシバさんと二人で。今日は特に疲れ果てていたので、さっさとシャワーを浴び眠りに付いた。熟睡の中1:45amに起こされた。ふぅ...
 甲板に出るとかなり風が上がっていた。2:00am時点では18KNOT程度にまで上がっていた。外気温もかなり低く、冬型が強まっているか?明日こそは北風が期待できそうだ。3:50am頃もう一度眠りにつく。


●11月9(日) 館山沖〜横浜港/晴れ/25〜30KNOT

 6:45am起床。7:00amに出航するため、早速展帆に取りかかる。かなり風が上がっていて、20KNOTくらい吹いている。今日は北上するため、向かい風となり、スクエアセイルは閉じたままだということで、マストに登ることもなく、やや安堵する。メインセイル、アウタージブ、メインステイスルを張り上げるが、今日は風をはらみ、セイルがかなり重く、ロープを引く手にも一層力が入る。3日目になるとセイルの開帆もかなりコツが掴めスムーズに。残念ながら横浜までの航程を考えるとエンジンも使って、北上することになった。でもメインセイル一杯に風をはらみ、船体を風下に傾けながら波を切って進む姿は感動的であった。館山沖でさらに風が上がり、25〜30KNOTくらい吹いている。ウインドで言えば、5.5m2で完プレの世界。白波も沸き立っている。さすがでかい帆船は、これくらいの海面のうねりではびくともせず、悠然と風に向かって進んでいく。見かけの進行風は、真風上から10〜20度くらい落とした角度であった。実際の風に対する上り角度はどれほどだったのかは不明。今日の舵取りは結構シビアで、油断すると上り過ぎてセイルに裏風をはらんでしまう。
 朝食後は今日もHAPPY HOURとなる。スタボーワッチは今日はキャビン回りの掃除当番となる。私はCABIN6の部屋、トイレ掃除を行い、船長室の掃除も行った。全くBULE HOURである。船長室は一般の乗船員室に比べ個室で立派。HAPPY HOURの後、インナージブ、ノックステイスルの開帆を行う。今日はインナージブ開帆のリーダを務める。いい気分だ。横浜に帰港時の要領と、各自の担当について説明を受ける。帆船では帰港の際には「トウショウレイ」という儀式を行うそうだ。これは水兵全員がマストのヤードに登って帰港することです。昔はヤードの上に直接立ったそうですが、そこまではやらなくてもいいことに。奇麗に決まればかなり圧巻な光景になるそうです。私はトギャランのスタボーサイド一番端に立候補しました。いい位置を確保できたかな。マイクも同じトギャランに挑む。
 観音崎も近づいた所で、突如NEVERLAND号(ヨット)の襲撃を受ける。NEVERLAND号には海星のOB,OGの関係者が乗り込んでいた模様。海星もロケット花火と風船の水爆弾と、放水で応戦する。子供じみていたけどまぁ楽しめた。ヨットにはこういう楽しみ方もあったんだなぁ。でも何かいただけないなぁ。海星のクルーは楽しんでいたようですが。
 横須賀の走水沖では、ヨットレース(誰かがJapan CUPと言ってた)が行われていた。ヨットのクローズの上り角度より20〜30度ほど海星の上り角度が良かったので、かなりエンジンの力の恩恵を受けて航海していることを感じた。
 ここまで来ると彼方の丘の上には横浜プリンスホテルが、みなとみらい21地区にはぷかり桟橋そばの3日月型のパシフィコが見えてくる。いよいよ横浜が迫ってきた。
 今日張り上げた4枚のセイルをいよいよ片付けることに。だいぶ手慣れたが、やはり大変な作業には変わりない。全てのセイルの畳帆を終えた時には、横浜湾が迫り、ベイブリッジも目の先に見えていた。トウショウレイまで、ほんの一時の休憩時間。スタボーワッチ全員で写真を取ったりしていた。ベイブリッジの辺りで集合がかかり、トウショウレイのためトレイニーは順次マストに登り始める。これがマストへ登る最後になるだろうなぁと思いつつ、3日目には高い所もだいぶ慣れたもので、みんなするすると登り詰めていく。Tosyoreiいつもは足元を見て高さを感じていたが、帰港時には目の前の建物の高さと比して、改めて高さを感じ取る。全くの絶景!横浜港ボード天国の会場の公園も一望できるし。
 残念なのは、出迎えの観客が少なく、ぷかり桟橋には家族連れ、アベックがぽつりぽつり。それでも子供達が手を振って応えてくれたり、写真の背景にマストに登っている我々を撮るお父さんに笑顔を振りまいたりした。
 マストから降り、最後の集合がかかり全員メスルームに集合した。船長からクルーのみんなを労う言葉があり、またトレイニーの奮闘を称える言葉があった。船長からトレイニー1人1人に海星の乗船証明書が配られた。全行程のうち帆風できたのは5分の1くらいしかなかったけど、みんな(自分達の手で)航海を終えた達成感を味わっていた。最後に船長からトレイニーに対して有難う!と感謝の労いをもらい、クルー全員から拍手を受けた時には、さすがに胸が熱くなった。海星を離れる未練を味わった。

 キャビンを片付け、デッキに荷物を持って上がり、海星乗船記念のTシャツを握り締め、名残惜しさ半分、上陸できる嬉しさ半分と言った気持ちで3日ぶりに地面を踏みしめた。今から思えば、ブルーな気分や、投げやりな気分になることも多少はあったが、海星という小さな社会(世界?)の中で過ごしたこの3日間は本当に貴重な思い出でとなりました。特にボランティアを含め、航海訓練を成功に導いてくれたクルー全員に感謝しています。Memberまた航海を一緒にした13名のトレイニー1人1人にも感謝します。みんな一人一人が貴重な仲間なんだという意識は、普段の生活ではなかなか味わえなかったものです。
 自然をダイレクトに体感することは、ウインドの方が一歩も二歩もリードしていると思いますが、海上で生活を共有しチームワーク活動を通じて何かを達成する喜びは、帆船に乗って始めて感じ取ったことです。実生活でどれくらい役立つかは今のところ全く不明ですが、下船して暫くの間は目の前に見えるものが、何もかも新鮮に写ったのも事実です。
 もし今度海星に乗る機会があれば、外洋航海にチャレンジしたいと思っています。さらにいつの日か帆船レースに参加できる機会があればいいなとも思い始めた今日この頃です。そのためには厳しい航海訓練を積まなければいけませんが。皆さんも機会あれば、一度参加して自分を磨いてみてはいかがでしょうか?まだ磨き切れていない私が言うのも何なんですが。。。 ^^;)

 海星のHomePageがこちらに開設されています。今後の航海予定なども掲載されています。

追伸
 上陸後、時間に余裕がある仲間と関内で打ち上げをしました。3日ぶりのビール、なんて美味しかったか。文字通り五臓六腑にしみわたりました。(^o^)


Point



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