10代目からの指示は、とにかく会って話を、それだけだった。話せば通じると、俺にはその自信はなかったが何より10代目の言葉を信じないわけにはいかない。そのために必要なのは、まずはヒバリの居る場所を特定することだった。
 ヒバリのいる場所については、その気になれば調べることは簡単だった。並盛町にある中学校といえば並盛中学で、そこの風紀委員は一般生徒の着ている制服とは違い、学ランに風紀の腕章をしているのだという。それはまさしくヒバリの格好そのものだったし、何より、最も恐れられている風紀委員長の名が雲雀恭弥だということは並盛町の住人の間では半ば常識のようなものだったのだ。10年前、10代目と出会った頃の並盛中学では風紀委員はそんなに目立つ存在ではなかったから、気付かなかったけれど。
 武器を構えていたヒバリの殺気を思い出す。確かに、暴力で街を支配している中学生なんて、他には居そうもない。けれど、自分の知っているヒバリはあくまでもただの少年でしかなかった。
 学校の表門から少し離れたところに車を停め、車内から下校する生徒を眺める。何の変哲もない中学生ばかりで、風紀委員らしき姿も見かけなかった。やがて日が暮れて生徒の数もまばらになり、諦め掛けた頃だった。暗がりの中、一台のバイクが走り出てきた。はっきりとは見えなかったけれど、ヒバリだと確信した。即座に車を動かして追跡すれば、街灯に時折浮かぶ、ヘルメットも被らずバイクを駆るその姿は間違いなくヒバリのもので、けれど、すぐに尾行に気付かれたのかしきりに後ろを気にしているように見える。やはり組織の車は少々目立ったか、などと後悔している暇はない。ヒバリのバイクはすぐに速度を上げ始めてしまう。
「逃がすかよっ!」
 バレたのならそれなりの追いようがある。ギアを切り替えてアクセルを踏み込めば、馬力のあるエンジンは唸りを上げた。