「すみません、10代目」
 獄寺君が、床に頭をつけそうなぐらいに頭を下げている。最近は昔のように先走って問題を起こすことも少なくなったけれど、本当に自分のせいだと思いこんでいるときはこういう謝り方をするんだ。
「獄寺君、いいから顔を上げて。とにかくこれからどうするか考えないと、ね?」
 プライベートな部分が関わっているから、あくまでも慎重に。リボーンもディーノさんも事情を聞かなくても察したらしく、獄寺君に視線を向けている。
「ちっ、もうちょっと見る目を鍛えやがれ。状況をややこしくした責任は取ってもらうからな」
「ちょ、リボーン!」
 確かに獄寺君は彼がこちらの世界と関わりがありそうだとは思っていなかったんだろう。けれど、ほっとくとこの傍若無人な家庭教師様は獄寺君の頭を踏みかねない。慌てて間に入って距離を取る。
 それにしても、驚いたのは獄寺君もだけど、ヒバリさんもそうだろう。あの取り乱しようではとても状況を理解できていたとは思えない。リボーンかディーノさんのフォローが必要だろう。あぁ、でも電話が繋がらないって言ってたっけ。
「獄寺君、ヒバリさんとは親しく…してたんだよね? 他にわかることはない?」
「いえ…」
 重苦しい表情で首を振る。知っていることはほとんどなくて、あるとしても言えないようなことだろうか。
「このままファミリーに誘っても断られちゃうと思うから、その話は当分置いとこう。いいよな、リボーン」
「しょうがねぇ、急ぐ話じゃねぇからな。だが守護者の空席を埋めるのはあいつしかいねぇ、そいつは覚えとけ」
 リボーンがどこから見つけてきたのかは知らないけれど、ヒバリさんの実力はこの場にいる全員がわかっただろう。中学生ですでにあれくらいの力があるのだから、リボーンの指導を受ければもっと凶悪なくらいの実力を身につけることくらいは容易に想像できる。できれば、これ以上一般人を巻き込みたくはないんだけど。
「わかってるよ。ただし、ヒバリさんの意志を尊重すること。嫌だって言ったら諦めるんだからね?」
 獄寺君も、頭を下げて話を聞いている。まぁ、仕方ない。初めて好きになった相手、それが中学生、しかもリボーンが組織に誘おうとしている相手、だなんて。
 ちらりと横目で最強の疫病神を見たけれど、考えは読める訳じゃない。逆に、こっちを睨まれた。
「さて、どうしようか……」
 これもボスとしての采配を試されているのだろう。ため息を押し殺して、慎重に息をついた。