「こっちだ」
 ようやく連れてこられたのは、並盛でも有名な高級ホテルだった。その一室で赤ん坊は僕と会うという。奥まったエレベーターの中で説明を聞く限りは僕が一人で来ても問題なかったとは思うのだけれど、案内役がいることくらいは仕方ないと目を閉じた。
 やがてエレベーターがついたそこは、階全体がひとつの部屋になっているようだった。しつらえられた家具は華美ではないが僕の目で見てもそれなりの品だということはわかる。なるほど、赤ん坊は自分を一級のヒットマンだと言っていたのだからこういうところに滞在しているとしてもおかしくはない。
 けれど、通された先には予想していたのとは全く違う光景が広がっていた。
 中央に、気弱そうな男がソファに腰を下ろしている。右手側には赤ん坊がいたけれど、反対側、そこには見知った顔があった。
「よく来たな、ヒバリ」
「……誰、これは。なんなの」
 口では疑問を唱えながらも、脳は冷静に答えをはじき出していてた。一度話に聞いた赤ん坊の教え子が、気の弱そうな男。そしてその隣に立っていた彼はその部下、あのときはそこの男を車に乗せていたに違いない。
「落ち着け、リボーンはな」
「うるさい!」
 袖口から手のひらに落としたトンファーを瞬時に武器の長さにする。けれど、空気すら変えることはできなかった。ここにいるのは皆、僕より長く何度も修羅場を越えてきた手練であろうことはわかっている。苦い顔をして視線を逸らしている彼も、そのうちの一人だ。
 踊らされていたのは僕一人だった。