黒髪の、学生を無意識に探すことは習慣になっていた。この辺りは学ランを制服としている学校も少ないから、自然と黒を目で追っていた。
「10代目、この後はどうなさいますか?」
 信号待ちの合間、指示を仰ごうと首を回した時だった。
「──ッ!」
 バックミラーに映る、遠くの黒に目を奪われた。纏う空気がそこらの学生とは違う、彼独特の存在感。
 だが、その側に見覚えのある金髪の男がいるのも同時に見えた。
「獄寺君?」
「あ、いえ…行きます」
 動き出した車の流れに沿ってアクセルに足を乗せ変え乗せ替え、ゆっくりと踏み込む。視線だけで確認しても、もうヒバリは見えはしなかった。
 どういうことだ。あの男が、なぜヒバリといた?
 一瞬で見えたのは、車に乗り込もうとしている姿。ヒバリに躊躇う様子も、抵抗する素振りも見えなかった。
 噛み締めた奥歯がぎり、と鳴った。

 わかっている。これは、ただの嫉妬だ。