ストイックな、彼を評するならそれに尽きる。
 それなりに人材を抱える社の中で、部署が違えば普段使うフロアさえ違うのだから、同じ社員証を持っている、それ以上の関わりなどありようがなかった。
 ただ、目についたのは銀色の髪。外国の血が混ざっているというよりは、日本に紛れ込んだ洋犬のようだと思ったそれは、恵まれた体格や容姿も合わせて彼を目立たせるには十分な役目を果たしていた。
 けれど、噂などあてにならない。女性が彼に色目を使うことはあれど、彼がその誘いに乗ったところを実際に見たものはいなかった。彼自身は一途に、次期社長候補の補佐として無欲に働いているだけのように見える。

 社からそう遠くない、一本入り込んだ路地にある飲み屋は居心地のいいところだった。金曜の夜はそこで軽く飲んで帰る、というのが半ば習慣のようになっていて、たまに彼も同僚と連れ立って店に入っているのを知っていた。
 そう、ただの偶然の積み重ねに過ぎなかった。きっかけなどというものはなくて、彼が僕の隣に一人で座ったのもたまたま同僚の都合がつかず放り出されたからだと聞いた。

 その彼が、僕の下にいる。
 欲求がない訳じゃなかった。ただ忙しさにかまけて自分で処理をすることすら忘れていて、もともとそんなに貪欲であるつもりはなかったのにこのザマだ。
 スーツ越しにその手が僕の背を撫でる。欲情する。それは仕方ない、本能だ。唾液ごと舌を絡め合うたびに、髪と同じ色をした睫毛が揺れるのに魅せられている。
「ベッドに行かない?」
 誘いを掛けた。断られたらそれで終わるつもりだったのに、彼は熱に浮かされたように頷きを返した。
 長い夜だった。