殺伐とした夜伽話

　

　

　血の匂いと、射殺すような眼差し。

　それを認識した瞬間に、俺は地に伏していた。

　

　それから、互いの背徳に惹かれてか、いつの間にか俺達は時折寝所を共にしていた。

　濡れたように艶を放つ髪や、その威圧感からはとても想像できないような細い体に俺は嵌っていったが、こいつは相も変わらず毒舌ばかりで、「早い」とか「下手」などという言葉を容赦無く投げ掛けてくる。
　だったら何で付き合うんだ、と一度問い正したら、今度は「嫌がらせ」とまで言い出しやがった！
　お陰で、決して聞くのが怖いなんてことはないが、そのことについては二度と言及することはなかった。

　今も、耐えるような顔ばかりして抱かれながら、何を考えているのかはわからない。

「―――っ…！」

　今にも達しようというその時に身をよじって逃げられ、白い肌に液体をぶちまけた。

「…終わったの？」

　心底嫌そうに体を押し離し、汚いと呟きながら眉を顰める。だったら何でするんだと心の中で叫ぶのはいつものことだから気にしないが、それにしたってこいつのこの態度は、今まで体を重ねていた相手に対するものじゃないだろう。

「あのなぁ…」

「用、済んだら出てってよ。僕は君と違って忙しいからね」

　俺のシャツで体を拭って、平気そうな顔して立ち上がる。

「もうちょっと言うことねぇのかよ」

　仕方なく体を起こし、煙草に火を点けながら言えば、それを軽く取り上げられ、馬鹿にしたように見下ろされた。

「優しくして欲しいなら他に行けば？僕が君に同情する余地はないし」

　煙草を灰皿に投げ捨てながら、心底軽蔑したように息を吐く。そんな顔の方がこいつらしいよな、などと先刻の艶姿を思いながら、空になった紙箱を不機嫌そうに握り潰してみる。

「…るせぇよ」

　まぁ、こいつに甘い言葉だとか情事の余韻とか説いても一刀両断どころか蹴り飛ばされるのはわかってる。それにしたって、毎回嫌そうに追い出されるのは不満ではある。

　煙草を取られた手持ち無沙汰で、丸めたゴミを親指で弾いた。その瞬間、風を切る音が眼前を過ぎり、いつの間にか身なりを整えた雲雀がトンファーを構えていた。

「そんなもの、捨てていったら承知しないよ」

　額に打ち付けられたゴミに、遂に堪忍袋の尾が切れた。

　

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